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元興寺極楽坊 (がんごうじごくらくぼう)

南都七大寺のひとつに数えられる元興寺。そのような知識を頭に入れて元興寺に行きますと、実際の規模とのギャップに驚かされます。興福寺や東大寺のように広大な境内があるわけでもなく、巨大な建造物があるわけでもなく、住宅地の中にひっそりと建っています。

元興寺の歴史は、蘇我馬子の創建した法興寺にさかのぼることができます。仏教伝来後、蘇我氏などの崇仏派と物部氏などの廃仏派との争いは歴史の教科書でおなじみですが、それに勝利した蘇我馬子は法興寺の創建にとりかかります。後につくられた法隆寺などを上回る規模であったそうですから、どれほどの寺院だったのか想像できそうです。

710年に平城京へ遷都が行われると、主だった寺院も平城京へと移っていきました。法興寺も遷都に遅れること8年。718年に平城京へと移ったようです。このときに名称が元興寺となりました。平城京移転時の元興寺の規模は巨大なもので、東西・南北ともに数百メートルはあったようです。

元興寺衰退のきっかけとなったのが、平安京への遷都でした。時代の流れといえばそうなのでしょうか。平安京に政治の中心が移っていってしまうと、南都(平城京)の大寺といえども地位の低下はまぬがれなかったのでしょう。同じ南都の大寺である興福寺が、藤原氏との関係で強大な力を持つようになったのと対照的で、調べてみると面白そうな部分です。

衰弱しつつもなんとか伽藍を維持していたようなのですけど、ついに1451年に土一揆による出火で大部分を焼失します。現在の元興寺極楽坊と五重塔が難を逃れたのですが、五重塔のほうも江戸時代の出火による飛び火で消失。かつての大寺の記憶をとどめるのは、元興寺極楽坊のみになって現在に至っています。


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2004年1月12日作成。
2004年10月1日更新。

○撮影時期:
2001年9月下旬
2002年8月下旬

○アクセス:近鉄奈良駅より徒歩15分ほど。


元興寺極楽坊東門(重要文化財)

興福寺の南にある猿沢池から南へ住宅地を進みますと、左手に見えてくる門です。門の前が少し広くなっていますので、見落としてしまうこともないでしょう。現在、極楽坊は東側を正面としていますので、この東門が正門になっています。

これが南都七大寺に数えられた元興寺の正門であるとは…。興福寺は火災で失ってしまったとはいえ、往時を偲ばせるかのごとく南大門の土台が残っています。東大寺には重源による巨大な南大門が存在しています。それらと比べるとあまりにも小さい。初めて訪れたときは、そのギャップにしばし何とも言い難い気分にさせられました…。

元興寺極楽坊1
元興寺極楽坊東門。

いわゆる四脚門(よつあしもん)とよばれる形式で一間一戸、切妻造の本瓦葺。もともとは東大寺の西南院というところにあったのを、移築したものであるそうです。妻の蟇股(かえるまた)の様式などから、室町初期の建造であると考えられています。



元興寺極楽坊本堂(国宝)

東門をくぐってみると、すぐにあるのが極楽坊本堂。極楽堂とか曼荼羅堂とかとも呼ばれています。寄棟造で妻を正面としていて、三角形の屋根が美しいですが、現在の姿になったのは鎌倉時代です。この建物も七大寺らしからぬ、逆にそれがよい雰囲気を醸し出しているのですが…。

元興寺極楽坊2
元興寺極楽坊本堂東側。

正面は6間と偶数でして、ちょいと珍しい造り。どうやらもともとは西にある禅室(後述)とおなじ建物だったようで、二分して改築されたものです。もとの建物の一部、すなわち中央の二間に、左右2間づつを付け足したので、正面6間という珍しい形になったのだとか。側面も六間で、一番手前(東側)に庇(ひさし)が付いています。

元興寺極楽坊3
本堂正面の中心に柱がくる。

外観は和様を中心としてあるようですけども、ところどころに大仏様(だいぶつよう)が見られますかね。鎌倉時代に僧坊より改築されたという事を示すものです。内部は中央の内陣を二間の外陣が四方とも囲んでいて、仕切りとかもないので広く感じます。畳が敷いてあって、なんだか面白い空間。

元興寺極楽坊4
本堂正面の庇の様子。

この建物で見ておきたいのが、西側の屋根。この建物の屋根は本瓦葺でも、行基葺(ぎょうぎぶき)というものなんですけど、普通の本瓦葺とは違った感じを与えます。なんと飛鳥時代の瓦が残っていて、現役で使われているというのですから、うーむ、凄いことですな・・・。



元興寺極楽坊禅室(国宝)

本堂後ろ側(西側)すぐに建っているのが禅室(僧坊とも呼ばれています)。奈良時代に建てられた僧坊の平面をそのままに、鎌倉時代に改築されたもので、現在でも礎石や主要部材は奈良時代のものが使われているそうです。

元興寺極楽坊5
元興寺極楽坊禅室。

極楽坊本堂と違って内部には入れないので、どのようになっているのかが分からないのですが、写真とかを見ていると畳が敷いてあるようですね。東西に長い建物なのですけども、あらら、よく見ると東西・南北ともに4間ですねぇ。

元興寺極楽坊6
禅室南側の一部。これで一間。

ぐるっと一周できるのであたりをうろついて眺めてみますと、軒下の肘木がずらりと並んでいて印象的。北側と南側では窓のとり方が違っています。軒は先端に鼻隠板(はなかくしいた)が付けてあって、大仏様(だいぶつよう)が部分的に使われているのがわかります。



元興寺極楽坊五重小塔(国宝)

本堂、禅室の南側に収蔵庫があります。そこの目玉はなんといっても国宝の五重小塔。高さ5.5メートルほどの塔です。大きな塔をそのまま縮小したような感じで、細かなところもきちんと造られています。それゆえに奈良時代における建築様式の研究に重要な資料となっているようです。

収蔵庫内部は撮影禁止ですので、画像はありません。ぜひ元興寺極楽坊まで行って、拝見してみてください。



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