Schwedenplatz なんやらな?別館

新薬師寺 (しんやくしじ)

春日大社南門から若宮神社の前を経て、森の中をさらに歩いていくと、視界がひらけて住宅地に出ます。そこの道を左の方に行くと、柳生(やぎゅう)街道の一部である滝坂道(たきさかみち)。その坂道をハイキングするのもよろしいのですけども、今回は右のほうに行きまして、しばらくしてから道しるべに従って塀に挟まれた道に入っていきましょう。

このあたり一帯は高畑と呼ばれていまして、緩やかな坂にある静かな住宅地となっています。志賀直哉の住んでいた住居も残っており、彼はここで『暗夜行路』を完結させたそうです。新薬師寺へは車で行くことも出来るのですが、春日大社から、あるいは破石町のバス停から、そういう町並みを歩いてみるのがよろしいかと。

さて新薬師寺ですが、747年に光明皇后が聖武天皇の病気平癒を祈って建てられたと、伝えられています。現在では国宝本堂のまわりに、いくつかの建物がある程度の小さなお寺ですが、かつては十大寺に数えられた七堂伽藍があったそうで。どんな建築物が建ち並んでいたのでしょうか・・・。

780年に落雷によって大部分が焼失してから、復興が試みられたようなのですが、結局もとのようにはならず、現存する本堂以外の建物(鐘楼や地蔵堂など)は鎌倉時代に建てられたものです。

ついでに書いておきますと、「新薬師寺」は「新しい薬師寺」という意味ではありません。新薬師寺と薬師寺は宗派も違います。新薬師寺の「新」は、「あらたかな」という意味だそうです。「あらたかな」という語は普段あまり使わないですが、辞書を引いてみてください。


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2003年3月31日作成。
2005年1月5日更新。

○撮影時期:
2000年春頃、
2001年12月中旬、
2003年3月下旬。

○アクセス:
JR・近鉄奈良駅から奈良交通バス、破石町(わりいしちょう)下車徒歩800メートル。
春日大社南門から徒歩500メートル。


新薬師寺東門(重要文化財)

春日大社やバス停から歩いてきたら、最初に目にする新薬師寺の建物が、この東門でしょう。東側の狭い道に面して建っており、古寺のよい雰囲気が醸し出されているところでもあります。鎌倉時代に建てられた、一間一戸、切妻造・本瓦葺の門。

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狭い道に面している新薬師寺東門。

一見したところ、四脚門(よつあしもん)に見えますが、もともとは棟門(むなもん)だったものだそう。現在では中央の柱列の前後に、柱が二本ずつ計四本付けられていますが、建造当時はこれが無かったわけです。おそらく不安定なのを嫌って、取り付けたのでしょう。柱がその上にある蟇股(かえるまた)を噛んでいるのが面白いところ。

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左:東門の蟇股。柱の上部が割れていて、蟇股を噛んでいる。
右:東門の軒下の様子。疎垂木(まばらたるき)で質素な感じ。



新薬師寺南門(重要文化財)

新薬師寺境内への入り口になっているのがこの門。こちらはいわゆるところの四脚門です。東門と同じく鎌倉時代のものとされていて、一間一戸、切妻造・本瓦葺。蟇股が二種類あって、虹梁の上に見られる蟇股は、左右が「くるりん」とカールしていまして、見るものを楽しませてくれます。

新薬師寺4
新薬師寺南門。奥に本堂が見えている。

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左:南門の蟇股。
右:南門の軒下の様子。こちらは繁垂木で、東門より立派な感じ。



新薬師寺本堂(国宝)

南門を入ると視界にはいってくる優美なお堂が、新薬師寺の本堂。正面七間・側面五間、入母屋造(いりもやづくり)の本瓦葺。軒下の組物が大斗肘木(だいとひじき)であるあたり、もともとは伽藍の中心的建物(金堂など)ではなかったようです。食堂(じきどう)とする説もあるようで、お寺のパンフレットにはこの説を書いてあります。

新薬師寺7
南門より見た新薬師寺本堂。

傾斜の緩やかな屋根、丸い地垂木(じだるぎ)に、それと比べて短い飛檐垂木(ひえんだるぎ)。他には角が生えていない鬼瓦など、古い時代の特徴が見られます。いろいろな部分の特色から、新薬師寺の創建当初に建てられたものと考えられています。

新薬師寺8 新薬師寺9
左:本堂の垂木。画像では分かりにくいが、下の垂木の断面は円形。
右:本堂の組物。大斗肘木といわれるもの。
大斗と呼ばれる立方形の材の上に、横に長い舟肘木が載る。

この建物のもう一つの特徴は、窓が無いことです。前後左右四面とも扉以外の開口部はありません。そのために白くて大きな壁がとても目立つのですが、とりわけ側面は五間の中で一間しか開口部がありませんので、とても印象的。このお堂の優美さをうみ出している、大きなポイントであるかもしれません。

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本堂の側面(東側)。

内部に入りましたら、上を見上げてみましょう。化粧屋根裏と呼ばれるもので、天井板を張ってありません。棟を支える簡潔な内部構造もよく分かります。このあたりも現本堂が中心的建物ではなかった、という点の根拠のひとつです。白と茶のストライプが美しいのですが、春の晴れた日の4時過ぎ頃に行くと、なお映えて美しいように思います。

ついでなのですが、新薬師寺の本堂東側の扉には、ステンドグラスがはめ込まれています。一時期は国宝の仏堂にステンドグラスをはめるということで、結構話題になっていたようです。西洋の教会によくある人物像や物語の一場面ではなくて、抽象的なものでした。

新薬師寺11
本堂のステンドグラス。ステンドグラスとは不思議なもので、
中から見ると美しいが、外から見るとただの黒いガラス。

安置されている仏像も国宝がそろっています。円形の壇の中心にあるのが薬師如来坐像(国宝)。カヤの一木造でして、高さは2メートル弱です。第一印象は、ふっくらとした感じ。そしてその周りを囲むようにして外向きに立っているのが、あまりにも有名な十二神将立像(国宝)。高さ160センチ前後の塑像です。宮毘羅像は後の時代に造られたものですので、他の11躯が国宝指定です。


※十二神将立像は、波夷羅(はいら)、伐折羅(ばさら)、因達羅(いんだら)、安底羅(あんてら)、真達羅(しんだら)、珊底羅(さんてら)、招杜羅(しょとら)、摩虎羅(まこら)、毘羯羅(びから)、宮毘羅(くびら)、額に羅(あにら、「に」は人偏に爾)、迷企羅(めきら)の12躯。


新薬師寺鐘楼(重要文化財)

本堂から南門を眺めまして、左側にあるのが鐘楼。鎌倉時代のもので、南北三間・東西二間、二重・袴腰付き、入母屋造・本瓦葺と、袴腰付き鐘楼の典型的な形なのですが、縁の下側に組物が無かったり、袴腰のラインが直線であることなど、見た目は少し変わった感じでしょうか。

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新薬師寺鐘楼。スマートさが無い。



新薬師寺地蔵堂(重要文化財)

本堂から見て、鐘楼とは逆の右側にある小さなお堂が地蔵堂。一間四方の入母屋造・本瓦葺、妻入の建物です。中備にある蟇股(かえるまた)に視線がいきます。この蟇股はいわゆる本蟇股と呼ばれるもので、古建築のそろっている奈良でも、こういう質素な本蟇股は、あまり無いように思います。

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新薬師寺地蔵堂。



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