大学3年生・夏合宿(北アルプス)
 大学3年になった。3年生はリーダーの学年である。3年の夏合宿が終われば、実質引退である。ワンゲル生活最後の集大成である。夏合宿の準備は前年の秋から始まる。学年会で山域、日程、パーティー数、そしてリーダーを決める。山域は順番からして、そしてみんなの好きな北アルプスにすんなり決まった。(ワンゲルにおいては北アはマイナーな山である)日程は前年はきつい藪こぎのため9泊予備2だったが、北アは長い稜線もあり、10泊予備2に戻した。パーティー数も4に戻した。夏合宿の1パーティーの人数は10〜12人が適当であるから。

 我々の学年は男子7名女子6名。やはり女子のリーダーは無理なので、男子7名から4名を選ぶことになる。立候補によりすんなり4名が決まった。私も立候補した1名である。夏合宿のリーダーは憧れであり、魅力的なものであった。しかし1年生の頃の自分から想像して、夏合宿のリーダーに立候補するなど、考えられないことであった。が、この頃の自分は、体力にも自信をもてるようになり、うぬぼれも強くなっており、リーダーをやらなければ、夏合宿に参加する意味はないと思うようになっていた。立候補した4名の内、1名が故障により、準備段階で交代というアクシデントもあった。

 ワンゲルの年度は10月に切り替わる。10月の総会で部長・副部長が決まる。部長は3年生が4年生の10月まで務める。副部長は3年生から1名・2年生から1名、部長の指名で決まる。私が2年生の時の10月の総会で、その時のK部長から2年生副部長に私が指名された。普通は事前に副部長をやってもらえないかと打診されるものである。それが、総会の場でいきなり指名されたので、驚いてしまった。(後にも先にもこういうことはなかったようである)指名されれば、もう決まりである。有無を言わさぬワンマン部長の誕生と、そのK部長との長い戦いに日々の始まりであった。(もともとワンゲルの部長はワンマンである。山ではリーダーの判断に絶対服従という団体の、そのまた長であるから当然ではあるが)

 夏合宿に限らず、山行計画は部長・副部長・運営委員で構成される運営委員会(全部で9名)という所で審議され、承認されて、山行が許可される。運営委員会は毎週火曜日の17時30分から始まる。終了時刻は決まっていない。審議が終わるまで無制限である。時に深夜に及ぶことも多々あった。途中お腹が空くと牛丼弁当の買い出し隊が出動する。

 山行計画書には日程・コース・予算・装備・食料計画などの他にリーダー方針なる項目が存在する。実はこれが真っ先にある。リーダー方針とは、「展望の山を楽しむ」とか、「新人訓練を重視する」といった、抽象的なものから具体的なものまで3点程書き出す。これがくせ者である。運営委員会ではまずこのリーダー方針からつっつくのである。どうしてそのような方針にしたのかとか、あとは細かい言葉尻を追求したり。普通は山に行くのに方針って必要なの、と思うのだが。つきつめていくと、どうして山に登るのか、という哲学的な話になってしまう。でもこういうことはリーダーを経験して、部長などの立場になるとわかることである。リーダー方針からそのリーダーが山に対してどういう考え方をしているか、甘く見ていないか、などを判断する材料になるのである。

 当然夏合宿にもリーダー方針なるものが存在する。私も夏合宿のリーダーとして方針を書いて提出した。しかし、K部長に何度も突き返された。言葉が抽象的過ぎるとか、何をしたいのか伝わらないとか、と。他の3人は結構すんなり通っていた。不器用さと情熱の空回りが、うまく表現出来ずにいた。

 私のやりたかったことのひとつにやはり藪こぎがあった。それも踏み跡すらないモロ藪を。そのためにほとんど資料のないコースを提出した。最後は航空写真を取り寄せて、資料はこれしかありません、といった状態。憧れと現実のギャップに、K部長も判断に苦しんだのだろう。結局、何回か突き返されたあと、そのコースは自主的に取り下げて、まったく新しいコースを提出することになった。(自分としては妥協したコースだったのに、実際行ってみたら、超モロ藪で結果的には満足出来るコースになったのではあるが)

 コース・日程などほぼ計画が決まると、新学期になり、新入部員が入ってくる。5月連休の状態を見て、メンバーを4パーティーに振り分ける。5月の総会でメンバー発表となる。私のパーティーには5月連休で超バテバテになったI君を私があえて選んだ。メンバー発表の時はどよめきのようなものが起こったものだった。前途多難な船出となる。

 メンバーが決まると準備会という会議が始まる。夏合宿本番まで10回位開いただろうか。装備・食料・医療計画を新人が提出して、それを審議する。運営委員会と同じようなことがここでも行われる。こういう会議をいっぱい経験すると人のあげあしを取ったり、重箱の隅をつっつくようなことが得意になって、困ったものである。例えばミリリットルのリットルが抜けているとか、誤字・脱字の類は小さなことなのに天下をとったような感じでつっついたりする。こういう場で本質をつくような質問が出来るようになれば一人前。そうすれば社会に出ても役に立つのだが。

 本番直前に打ち上げトレーニングなるものをやって、いよいよ夏合宿本番突入である。
打ち上げトレーニング(先頭を走るサブリーダー) 打ち上げトレーニング(筋トレ)
夏合宿bR 剱・仙人池パーティー (報告書を元に別ページで詳しくレポートします。別ウインドが開きます。)
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