初秋の秀句





まだ見えぬ子の目涼しく秋立てり  中村初枝



初秋の蝗つかめば柔かき     芥川龍之介



けさ秋の一帆生みぬ中の海        原石鼎



新涼の身にそふ灯かげありにけり 久保田万太郎



秋暑し鹿の匂ひの石畳            木村蕪城



妻二夜あらず二夜の天の川    中村草田男



いなびかりひとと逢ひきし四肢てらす  桂信子



流星や旅の一夜を海の上            下村ひろし



七夕や髪ぬれしまま人に逢ふ        橋本多佳子



いつまでもいつまでも八月十五日    綾部仁嬉



流燈や一つにはかにさかのぼる      飯田蛇笏



づかづかときて踊子にささやける  高野素十



踊りの輪山から闇の流れ出て   川崎展宏



逢うて直ぐ別るることも大文字  下村非文



再びは訪ふ当てのなき墓洗ふ   山口牧村



生御魂生くる大儀を洩らさるる      大橋敦子



かなかなと鳴きまた人を悲します 倉田紘文



秋蝉ややがておのれも一基の墓  鈴木眞砂女



朝顔の紺の彼方の月日かな        石田波郷



咲きいでて風の芙蓉となりにけり    青柳志解樹



白木槿暮れて越後の真くらがり    森澄雄



葛の花むかしの恋は山河越え   鷹羽狩行