初秋の部


 朝 顔

朝顔の紺のかなたの月日かな  石田波郷  休暇はや白朝顔に雨斜め    中村汀女 朝顔の紫紺目覚めを確かにす 晴

芙 蓉

芙蓉咲きすなはち朝の風を享く 長谷川浪々子 芙蓉見し母との刻のかへるなし 新井英子 白芙蓉あしたの風はやはらかく 晴

木 槿

白木槿このごろ母の病みがちに  平絵美子 白むくげ咲きし日よりの風ゆたか きくちつねこ 白木槿ひと日ひと日を大切に 晴

桔 梗

八ヶ岳雲にうかべる野の桔梗  水原秋桜子 かたまりて咲きし桔梗の淋しさよ 久保田万太郎 女人らの佇む水辺桔梗濃し    晴   

カンナ

カンナ燃え異人眺めし海輝やく  清水甚吉 眼帯のうちにて燃ゆるカンナあり 桂 信子    大虻を吸ひしカンナの燃上り   上野 泰

露 草

露草の露千万の瞳かな      富安風生 露草や水に育ちて近江びと    渡辺すみ代 露草の小さきいのちに朝日さす  晴   

女郎花

ことごとく坊の跡なりをみなへし 黒田杏子 をみなへし信濃青嶺をまのあたり 大野林火  群れ咲きて黄の海となる女郎花  晴  

溝 萩(みそはぎ) 

 みぞはぎの露にとどけり昼の鐘  細身綾子 みそ萩や母なきあとの母がはり  稲垣きくの  溝萩や売らず作らず田一枚    皆川白陀

蓼の花 

 門前に舟繋ぎけり蓼の花     子 規 蓼あかしそよぎて父母は遙かな  石田波郷 母ひとり住むふるさとや蓼の花   晴