近況。

HOME作品日誌歴史的かな遣ひ一竿風月&深海


 講師紹介

 講師近詠

平成16年8月
風ぐるま絶えてまはらぬ真夏日をわれと恋ふなる富士のいただき
  絶えて=全く、われと=自然と。
眼をほそめゆるり眼下を見下ろさばはつかに涼し茹だる真昼は
吾妻はやかくは告らしし足柄の峠ゆかしみたもとほるかも
  たもとほる=いきつ戻りつ。
酒折の宮居もとほり新治のみうた誦し來て一日ゆたけし
  もとほり=いきつ戻りつ。

平成16年7月
旱る田の雨と猛ばむひたごころひとつに寄せて国あらためむ
さらぬだに叢雲かかる今の世をおほふ常夜にひかり射しこよ
  さらぬだに=ただでさへ。かかる=掛詞
蛟すむ淵にも入らむますらをの現し心しとほりゆくべし




 会員の歌

平成20年正月歌会
兼題「餅」「雪降らば」
保子
《月間賞》
◎雪ふらば地吹雪を耐へ春待つと語りし出羽の人らなつかし
強士
○おだやかに師走の晦日むかへつつ安けくあれと懸くそなへ餅
酔郷
○餅つきの翌朝父は餅を切るその耳焼くは子ろの楽しみ
○雪降れば翌朝梅が枝ひそやかに氷の刃つけて輝く
征央
丸四角もちの姿は変はれども味は違はず新年の日も

第88回、平成19年12月提出歌
兼題「月」「この頃」

霧香子
○湯島辺歩むつれづれ塗物の弁当箱を購ひてみる
◎まっすぐに目を当てて来しをさな子の寝顔ほんのり唇開きたる
保子
◎娘の在らぬ夕餉の膳は一人鍋二つ用意し夫と向き合ふ
○見上ぐれば手裏剣のごと月は冴え息をはずませ逃げし犬追ふ
強士
○うまし酒ことはりつつも嘗め居りて患ひなごむ良薬と言ひし
酔郷
◎病癒えし友と酒酌み早々の帰りの道の月はほのぼの
○娘らはあの頃この頃変はりなく幼き仕草を残す瑕疵みゆ
征央
○電飾の色とりどりの街並に月の姿を見る人はなく
◎よろづ世を照らしゆきたる月影よ吾には注けや冴えゆく夜に
洋樹
国想ひいのち賭しても消えねども月よ千代先何を照らさん

19年11月提出歌
兼題「辞世」「余生」
一貴
○墓碑銘に辞世を残す人ありて読みつつ思ふ心の襞を
酔郷
【月間賞】
◎残るいのち夏の未練の蚊のごとく人の血吸はず生くるのみかは
○さすらひの果たてのあとに生あらば十七の志を遂げむとぞ思ふ
征央
○あきらけき月のさしたる床にをり瞼つむれず秋の夜更けは
保子
○子をひとりこの世に残すほこらしさ女のみ知る胸張るおもひ


平成十九年十月歌
兼題「秋の花」「人情」
征央
○轢かれたる猫のむくろに傘かざす人もをりたりそぼふる雨に
◎しらじらと明けゆくころに木犀の香にほへば朝寝せられず
保子
(月間賞)
◎ふぢばかま蕾ふくらむ庭のすみ彼岸へ去りし人恋ふる秋
○いつの世も変はらぬものは親心海の彼方の戦禍かなしき
酔郷
◎さりげなき友の仕草に潜みゐる人の情けの嬉しきろかも
○しみじみと人の情けに触るる夜は嗚呼いまは亡き母を想へり
〈宴のあと〉
○今回は各員非常にレベルが高いとお褒めの言葉を頂戴した歌会ではあつたが、歌会といふより宴会に近い状況でもあつた。比較的早めに講評が終はつたこともあり、酔郷夫人も同伴し、近所のカラオケ屋へ繰り出す。歌のあとの唄、それも新曲はデンデン虫でオールデイズ専門。

平成19年9月提出歌
兼題「野分」「時計」
保子
○多摩川を濁流と化し去る台風サンマ焼きつつ荒れ庭眺む
○十二時に飛び出る鳩を待つ子等はまばたきもせず秒針かぞふる
酔郷
伝統木構造の家 一首
○地震野分さだめなりせど百千歳木組ゆるがぬ妻子笑む家
○台風のやや凪わたる曇天にからす飛ぶのか流さるるのか
征央
○この夏も遠くなりけり故郷はかぼすの香に思ひ馳せつつ
九月の月間賞
○たまゆらの時と思へばかりそめのことにも心乱されざらん
和夫
盆花火消ゆる向かうに母の顔水面は遠久に変はらず映し
霧香子
友の訃を告ぐるを軸に旧交のメール飛び交ふ野分の朝
土橋長樹
▽マラソンのテープを切りし乙女子は腕の時計を止め忘れしぞ
○迫り来る最終「かいじ」の発つ時刻今日の時計の針の早さよ

19年8月の提出歌
兼題:「兄弟姉妹」「夏雲」
保子
○目をほそめまどろむ犬の背に語る太郎の姉ら今は何処に
○啄木の気分をまねて多摩川の青草に座し夏雲を追ふ
(参考)啄木の歌〈不来方のお城の草に寝ころびて雲に吸はれし十五の心〉
加藤征央
○ゑのこ草ゆれけむころにみまかりし母呼ぶ妹なぐさみがたし
  ゑのこ草(猫じやらし)
酔郷
○夏草の広野にたちて見上ぐれば往にし方人もこの雲を見しか
◎あと三歳古稀に届かず姉逝きぬ命継ぎませその子その孫

19年7月
兼題「夏の風物詩」「時」
征央
○友垣と夕立さくる軒下に何語りけむ今はなつかし
保子
○時移り母のおはこの言の葉を吾子の背に掛け独り笑ひす
酔郷
○昼下がりたらひの金魚の危ふさよ日照りのもとに傾き泳ぐ
○椎の木の根元を掘りて金魚二匹べそをかきつつ葬りにけり
深海
○大いなる野分また来ぬ秋津島そらの涯に夏の広ごる

19年6月
兼題「夏めく」「野菜」
征央
◎木の暗れの深さも知らず外つ国の人は行き交ふ明治の杜に
○青物を残す子供に言ひ聞かす吾も幼き日母にさとされ
岳夫
○部屋を掃き見つけし長き髪の毛を手に取り見つめ溜息をつく
保子
◎足裏に藤の敷物ここちよし挿し木のバラは今朝芽吹きたり
○この年も御所に育ちし蕗とどくすぢを取りつつ安寧ねがふ
酔郷
○言ひ訳のゆゑの汗とは覚ゆれど顧客に語る夏の気配を

19年5月
兼題「連休」「椀」
深海
○いつになき電話の向かうの妻のこゑ夜の静寂の空気ふるはす
征央
○頬辺に飯つぶ残し遊びをるあどなき姿見つつほほ笑む
保子
○連休も勤むる吾子を思ふ夕萌え立つ新芽庭にあふるる
○香り立つジャスミン手折る春盛り椀に一輪おとし楽しむ
酔郷
▽(都々逸)土筆つんだかたらの芽まだかかたくりあけびも待ちをるに

平成19年4月(北杜歌会)
夜もすがら春の疾風は吹き荒び満つる桜はこたへたりしか(征央)
ゆくりなく春風吹きて満開の花びらゆらぎわれひとり立つ(征央)
国手にも母の患ひ手に負へず児らに見取られ安らかに逝く(征央)
 (国手=名医)
梅林の花もをはりの樹のしたを緑の風とよきをみなゆく(酔郷)
春風よなれの生れにし国原のことなどしばし語らひてゆけ(酔郷)
春の風よ遠き国の花どもはいかなるさまに咲き競ひたる(酔郷)
 春の風よ(字余り)遠き国の(字足らず)
春の風ぢべたに生ふる草草へ隣の邑の便り告げをり(酔郷)
気づかずのうちに広ごる春の風人の歩みもそを醸しをり(酔郷)
東風の香の何ぞむなしき西風に伏すよもの草木をかなしみにけり(忠明)
大の字の遠き灯あかし今宵またかへりみおほく酌む酒にがし(忠明)
温家宝はる風ならぬ竜巻の余波あらはに去りし夜の瞋(忠明)
桃の花咲き乱れたる段丘に春風よぎれり友も逝きけり(一貴)
甲斐の山かしの葉あらばうずに挿せ命のまたけむ人つどひなば(一貴)
恩師よりいかなご届き春風と今もかはらじ愛し真心(利雅)
吹雪止め病臥の母の床側に我が身ささげて祈り願はん(利雅)

平成19年3月提出歌
兼題「外套」「寒ゆるむ」
征央
○ひだまりに幼児の顔は輝きて上着取り去り友とたはぶる
保子
○亡き長兄に見紛ふ背を見せおとうとは外套はおり月の夜帰る
深海
○南ゆ帰りし同友を囲みゐる夜は笑ひとともにふけゆく
酔郷
○長年の茶碗のふちの欠けたれば寒ゆるむころ替へんと思ふ
岳夫
○一匹の虫といへども父母が居ると思へば友をとがめり


平成19年2月提出歌
兼題「卒業」「食卓」
保子
○深まりし冬の食卓ことばなく夫と向き合ひカニの身ほぐす
征央
○晩飯を頬張る吾子を笑ひつつ囲む食卓せまくなりけり
岳夫
○三和土にて靴ひも結ぶその刹那わきしさびしさ何にたとへん
酔郷
○紫の袴のむすめ胸をはり春をひつさげさつさつとゆく
○あと半膳茶漬け欲りすも齢ゆゑか心ならずも箸を置きけり
深海
食卓を挟みてけんくわとなりぬ日々祖父は逝きたり父も老いたり


平成19年正月の歌
兼題「祝歌」「台所」「睦月一日」
深海
○母と君ならびてたつる厨べを父と二人し見てゐたりけり
▽二十年の時間を思へば長からずあぢさゐの咲く水無月までは
征央
○五十鈴川美し水面に身を映しみだれごころを流してしかな
○幾年も厨の妻に声かけず言葉なくとも心知らなも
保子
○新しき年を寿ぐ母もなし犬を傍へに屠蘇を酌むなり
○わくわくと正月を待つ幼き日祖父と掲げし日の丸そよぐ
酔郷
◎妻となる汝れとをろがむ元朝の相模の海のひかりたふとし
○十年後の汝のすがたよ相模の海ともに歩まないつかしの道

平成18年12月の歌
兼題「落ち葉」「店」
 保子
○亡き父の愛用の椅子庭にあり落ち葉焚きつつ揺らす命日
  祥月命日とは当月当日を指す言葉だが、世間では、
  毎月の命日の日を指す言葉として誤用されてゐる。
 酔郷
○にぎはひのすでに遠のき犬のこゑあの客思ひいまだ閉めざる
○はらはらとけやきいちやうの舞ふさまは心尽くしの天の手土産
 征央
○夏の日の日差し遮る木々の葉は落ち葉となりて暖をもたらす
 深海
○懐かしきあだ名を呼ばれ振り返り笑まへる顔の旧友を見つける
 早鐘のごとくなりたる胸内を隠してくぐる寿司屋ののれん
〈参会者の解釈〉
(1)寿司屋のかみさんとできてゐる。
(2)憎からず思ふ女性が高級寿司屋を待ち合わせ場所に指定した。
 〈答〉実は、恋人の実家が寿司屋でして、ご両親に、
 お嬢さんをくださいと挨拶に伺つた時の心境です。
〈講師評〉かういふ場合は、詞書きを付ければよい。
 ついでだから、来月は深海君の結婚を祝し、兼題は「祝歌」としませう。
 〈深海〉当事者のわたしはどう詠めば?
 〈講師〉こんな歌がありますよ。
 木に花さき君わがつまとならむ日の四月なかなか遠くもあるかな
  古泉千堅

平成18年11月の歌
兼題「神社・祭」「たとふれば」
 征央
○蟻地獄採る数競ひ友垣ともぐり込みけり社殿の下に
 保子
○人の世の別れ悲しもたとふれば孫を見ず逝く友と夏の日
○人の世の別れ悲しもたとふれば消したき過去を忘れ得ず生く
○老の背の般若のゆがみほほゑまし往時偲ばる宮入りの夜
 酔郷
○ふるき町御輿をかつぐ若い衆の足並みそろふ美しさかな
○山寺のにぎはひのなかあふぎみる飛行機雲のふたすぢ浮かぶ
○人の世の別れかなしもたとふれば笑まへる亡母の夢枕かな
 深海
○愛しけやし娘の晴れ着あがなはむ親の苦労を子ろは知らざり
 講師総評
「人の世の」は、諸兄姉の苦心の痕跡がありあり。見栄えあらしめるためには、読者の「なあるほど」と溜息を洩らすやうな、「えつ」「おつ」とびつくりして意表をつくやうな、小用にも立てぬほど腰をぬかすやうな、どんでん返しの技法を編み出す努力が要るだらうなあ、といふのが、上の句を随意に示した評者の感想です。


10月の歌
「登山」「出会ひ」
 征央
○秋風にゆらぐ葉裏のぬけがらは足とむるまでさびしら誘ふ
  さびしら(さびしの名詞形、副詞にするにはさびしらに)
 保子
○富士登山夢と消え去り早みとせ吐息みちづれ写真集繰る
 酔郷
○より高く登るは人の常なるも悲しむ人のゐることもあり
 深海
○木犀の甘きかをりの立ち込むる長雨続く秋深みかも
◎秋晴れの空とぶがごと駆けめぐる我が背に妹の鼓動ききつつ
  前回も深海さんは二重丸の絶賛を浴びたが、今回もと。連続は本歌会初の快挙。
  フィアンセの鼓動を聞けば、作歌にも力がはいるといふものだ。挙式は来春とか。


9月の歌
兼題「台風」「ペン」
 保子
○夕立に追はれ逃げこむガード下少女の濡れしおくれ毛光る
○青ジソを摘む手を止めて仰ぎ見るいづれの木にか初蝉の鳴く
○背に野菜汗をふきつつ遠ざかる安房の媼に亡き母をみる
 岳夫
○あの頃は信長のごとき心もて何者にでもなれる気がせし
 征央
○多摩川をのぞむ歩廊に吹く風は忙しき朝に秋を知らしむ
 深海
  ニューオーリンズ
◎大型の野分の過ぎてジャズの街人の形のけものあふるる
  久しぶりの二重丸。講師、あとから、「酔つた勢ひだつた」
 酔郷
○ペン先の乾く間もなきころもあり出番すくなきそれのかなしき

7月の歌
兼題「旅」「序詞」「枕詞」
征央
○ふるさとへ馳する思ひは長旅の憂かる心も忘れさせけり
 近来まれにみる出色のでき
○いとまなく過ぎゆく時も言の葉の道を進むを忘れざらめを
 「ざらめを」ざらめやと「や」にすると反語になる。この歌の場合は「を」でなくてはいけない。
深海
○一瞬を切りとり歌にせむ術のなきことまこと口惜しきかも
 近来出色。「一瞬を切りとり」が「今月の警句」になる。
○勤め人ならざる身にはともしかり一泊二日の友が出張
 ともしかり=うらやましい。ともしかり)「かり」も「かれ」もほぼ同じ意味だが、「かり」の方が、やや余韻を感ずる。
唐衣夕立ちがのち見上ぐれば入道雲の眼にあざやけし
 唐衣は「立ち」にかかるが、このやうに離れてゐてもよい。
保子
○緑陰の木もれ陽の道ひとり占めはづむ身かろくたどる奥入瀬
○十和田湖の茶店に憩ひ地酒酌む肴は媼のみちのくなまり
○友三人いはくはあれど夫はなし思はず噤む連れ合ひの愚痴
酔郷
○旅ごろも整へをはり早寝せむこころはづみて眠り難かり
○この夏の旅の宿りを描く夜は酒をなめをり地図もなめをり
○旅先のややに寂しき居酒屋ののれんのなかのあたたかさかな
徐々にではあれど徐々徐々序詞を選みをる夜は徐々に更けゆく
(本歌会では、自作の歌を二回朗詠し、講評を受ける。この歌に限り、一回朗詠した途端に、参会者から笑ひといふか失笑が湧き、二回朗詠するあたはず)。序詞にはなつてゐない。

6月の歌
征央
○あまあがり 道辺に光るみづたまり 連れたつ吾娘は やみくもに 水を蹴散らし さも楽しらし
深海
○色づきぬ 枇杷の実なれる ひともとの 木をながむれば 想ひいづ 清く烈しき  東雄大人を
岳夫
雨降りて不機嫌になる大勢の人の心に染まりたくなし
酔郷
○梅雨ちかき 空を見あげて 傘の有無 妻に問へども なれもまた 空をのぞきて 決めかねつ 天気予報を 見てはをれども

三人いづれも長歌が〇。といふことは、長いぶん言ひたいことが言ひ尽せるのだらうかとも思ふ。ならばこそ短歌で、三十一文字で言ひたいことを言ひ尽す努力が必要といふことになるだらうか。


5月の歌
征央
○食文化西と東と違へどもいつともなしに蕎麦湯たしなむ
○降りしきる雨の合間を惜しむやう木々の青葉も風とたはぶる
深海
○青山を駆けめぐる夢また見つつ現場仕事に足ばやにゆく


 千三歌会規定

●歴史的仮名遣ひ表記。
●古典的表記が原則。
●原則字余り不可。字足らず絶対不可。
●助詞「で」と形容詞の語尾「な」は絶対使用禁止。
●提出は電子メールがうれしい。

[一般会員]
●提出歌は一回につき5首以内を、歌会の前日までに提出。
●年会費5000円、参加費2000円。

[気まぐれ会員]
●提出歌は一回につき3首以内。歌会に参加する義務を負ひません。
●投稿料1回1000円(酒、饅頭など物納可)。年会費不要。

[詠はざる歌人]
●歌提出不要。飲み放題。発言、質問歓迎。参加費2000円。

名前の由来
千三歌会をなんと読むのかとしばしば聞かれる。漢字はこれに決まつてゐる
が、読みはまだ確定してゐない。
そもそも千三には深い意味はない。世間によくある、たとへば、毎月第三水曜
日に定例会があれば、「三水会」のたぐひである。
だいたいの方が「せんざん」「せんさん」とお呼びになる。メンバーに「千三
郎」さんといふ方がをられたが、その方の前では「せんざぶかくわい」ですと
答(いら)へた。「千三つ屋」「千三つ野郎」とあまりイメージはよくない
が、未熟ながら、和歌の道を歩む以上、目標がなくてはと愚考。千首こさへた
ら、せめて、その中に三首くらゐは秀歌があつて欲しいとの願望がこめられて
ある。もちろん、藤四郎が千首、万首つくらうが、だめなものはだめであら
う。それは重々分つてはゐるが、せめて、三首くらゐはとのはかない願望がそ
の名の由来なのである。
だから、「それにつけても、せんみつはまづいよ」と忠告されると、全くもつ
て、つらいのであります。
ちなみに、千三歌会の会報の題名は「階(きざはし)」。
かささぎの渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける
このわが敬愛する大伴家持の歌に典拠した。
渡せる橋→御階(みはし)→階(かい)→階(きざはし)
一歩一歩のぼつていかうよの心をこめて。この名前にはクレームがつかない。
さらに、ついでだが、このわが敬愛する大伴家持を主人公にした短編小説を書
いた。題して、「がんばれ、家持くん」処女作である。これを親しくしていた
だいてゐる時代小説の大家に読んでいただいた。「ウーン、小説といへるのか
なあ?」
時代小説はしばらく諦めて、現代のドキュメンタータッチの「鍋物はじめまし
た」を書いた。
「ウーン、小説といへるのかなあ? リアリティがないなあ?」
「先生、お言葉ですが、これは実録です。私の親しい友人がほんとに起こし
た、こころ暖まる事件なのです」
きりがないので、このへんで。


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