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自由な形式で書かれた個性的色彩の濃い散文<投稿欄>
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一竿風月&深海 |
●現代短歌 深 海(平17.3.3) 現代短歌をほとんど読まない。人で云ふと斉藤茂吉ぐらゐまでだらうか。最近の歌人の歌は凝つた修飾や比喩の歌が多くて難しい。歌人の自己満足か、私の読解力が足らないのか。多分後者だと思ふが。 水原紫苑といふ歌人がいる。春日井建の弟子で私より十歳上だがいつも和服姿の少女のやうなひとだ。そのルックスに惹かれ一冊歌集を読んだ。ほとんど理解できなかつた。ためしに一首引いてみる。 あぢさゐのほろびし空にみづ満ちて見えがたき魚あをき魚降る 先日友人のお母様から歌集を頂いた。ご自身の第二歌集だ。読みながら何度か落涙した。一首たりとも奇を衒つた歌がなくこころのまにまに詠ひ、祈りに近いものがある。誰にでも判る歌だがものすごく深い。こういふ歌は誰にでも創れるわけではない。凡百の言葉を書き連ねても歌の凄さは伝はらないだらう。是非多くの人にこの歌集を読んで頂きたい。「冬椿」福永真由美・鳥影社 歌集に収録された最後の歌を一首引いておく。 老い母とひそまり生くるたまゆらをまぼろしのごと桜花舞ひしきる ●和歌と異言語 深海(16.10.29) 一竿風月さんが外国語で書かれた短歌のホームページを紹介されてゐたが、私は、英語に翻訳された万葉集を読んだことがある。図書館で見つけたのだが、リービ英雄といふアメリカ出身の人が訳した「Man yo luster」といふ本だ。文学、特に詩歌を違ふ言語に訳すのは訳者のセンスに左右されることが大きいが、英語力の乏しい私には、なるほどかう訳すのか、としか分からなかつた。ただ、全頁カラーで写真がとても綺麗なので、写真と日本語の原文だけを見てゐても楽しい。他の国の詩歌について詳しくはないが、和歌は外国語に訳すのが難しいといふか、最も形が変はつてしまふ詩歌の部類に入るのではなからうか。日本の伝統文化「和歌」を海外に伝へることの難しさを感じる。試みに一首紹介してみる。 On the eastern fields I can see the flames of morning rise. Turning around, I see the moon sink in the west. 誰でも知つてゐる超有名な歌だ。判つた人はBBSに書きこんで下さい。 同じやうに万葉集で全頁カラー写真なのが、角川文庫からでてゐる「恋ノウタ」。こちらは多分若い女の子むきに作つてゐるのだらう。恋の歌だけ集めて、現代語訳(意訳?)と原文を載せてゐる。ここに書くのも恥づかしいのだが、一首紹介しておく。 胸の奥でずつと愛し続けてきた君の背中のホツクをいま僕は外さうとしてゐる (原文)真薦刈る大野川原の水隠りに恋ひ来し妹が紐解くわれは 読み人知らず ●「武士道」ラストサムライ以降 深海(16.10.29) 映画「ラストサムライ」以降、武士道がブームだ。本屋に行くと何冊も同じやうな本がならんでゐる。先日も一冊新刊がでてゐた。著者の名前を見て驚いた。山川健一だつた。山川健一といつても、会津の山川健次郎とは全く関係がない。ロツクやバイクの小説ばかり書いてゐた作家だつた。今まで武士道の武の字も小説、エツセイその他で見かけたことはなかつた。数年前、ライターの石丸元章が「カミカゼ」といふ特攻隊についての本を出した時にも驚いたが、それ以上に驚いた。石丸氏は、シヤブの体験ルポをやつてゐるうちに中毒になり、捕まつたといふ滅茶苦茶な人だが、文章もうまいしおもしろいので私はフアンだつた。「カミカゼ」も割りと真面目に書いてゐた。しかし山川健一が「武士道」とは。ブームに乗つたのであらうが、恥づかしくはないのだらうか。 映画「ラストサムライ」は賛否両論あつたが、概ね武士道や日本に敬意を払つた良い映画だつたと思ふ。もちろん納得出来ない所もあつたが、今までの外国の映画の中では、一番日本に敬意を払ひ、正しく映さうとしてゐたやうに思ふ。 映画「ラストサムライ」が公開されてゐた同じ時期、NHKで剣道の世界選手権のドキユメンタリーをやつてゐた。その年はイギリスで開催されエリザベス女王もみにきてゐた。知らなかつたのだが、欧米では今、剣道はかなり盛んらしく各国から参加してゐた。試合は五人で戦ふ団体戦で、日本は今まで一度も負けたことがなかつた。毎年日本の一番の敵は韓国で、前の年もからうじて勝つた状態だつた。 その年も両者順調に勝ち進み決勝戦となつた。一進一退がつづき、勝負は大将戦になつた。日本の大将は栄賀選手といふ小柄な体躯の、北海道道警のお巡さんだ。この人は前年の日本選手権で初めて優勝した苦労人だ。対する相手は、今まで一度も日本人に負けたことがないといふ身長190センチの大男だつた。勝負は延長戦にもつれこみ、膠着状態になつた。その膠着状態のなか、韓国選手がほんの一瞬、息をついた。その一瞬の隙をつき、見事な突きで一本を決めた。信じられないやうな劇的な一瞬だつた。勝負が決まり、礼をし、仲間のところに戻り、静かな涙で喜びを分かち合ふ。その挙動たるやまさにサムライを見るやうだつた。その小柄な体で日本を、伝統を背負ふプレツシャーたるや、一般人には想像もつかないぐらひ大きく重たいものだつたらう。相手の韓国選手とは、技術は互角に近いのかもしれないが、その精神力は天と地ほどの差があつたのではなからうか。 この映像を見て、大袈裟でなく、全身が打ち震へるやうな感動を覚へた。この感動を伝へる文章力が私に無いのが、なんとももどかしい。見てきたばかりの映画「ラストサムライ」なんかどこかにいつてしまつた。映画は所詮映画だ。本物には敵はない。オリンピツクなどと違ひ、注目を集めるやうなことは無かつたが、スポーツ化してしまつた柔道にはないものが見れた気がした。 繰りゐだすその一突きにもののふの心を世界にみせし人はや ■とつくにの歌 一竿風月 あるホームページを偶然発見した。そのホームページとは、Ingridといふオランダ人女性がドイツ語とオランダ語で俳句や和歌をつくり、それを掲載してゐるページである。見てみると、万葉集の紹介などもきちんとされてをり、なかなかのページではないか。そこで、皆さんにも珍しからうと思ひ、彼女がつくつた和歌から二つほど紹介したい(もちろん、ドイツ語とオランダ語では三十一文字にはなつてゐない。あくまで和歌の雰囲気なのだが……無理に和訳してみた。なほ紹介と和訳につき本人の許諾を予め得てゐる)。 So leicht, die Flocke in meiner offenen Hand -kaum mehr als ein Hauch.Werd' auch ich so verschwinden am Ende meines Winters? 手の上に 舞ひし粉雪 すでになし 冬のわが身も かくと消えなむ In meinem Garten werde ich wieder Kind, liegend im Gras zwischen Stimmen von fr殄er und Mutters Maigl喞kchen. わが庭の 草にねころび 子に戻る 母の俤 スズランの声 ちなみにそのホームページのアドレスはhttp://www.ingrids-haiku.de/index.htmlである。興味があれば覗いてみてほしい。 ●右傾化? 深海(平16.10.7) 今、日本が右傾化してゐるといふ。確かに新聞や雑誌などを見てゐると、十年前には考へられなかつたやうな主義、主張が当たり前のやうに並んでゐる。朝日新聞などは、だいぶ部数を減らしてゐるらしひ。精神科医の香山リカなどはこの風潮を危惧してゐるらしく、新書版で二冊本をだしてゐる。読んでみると、ナシヨナリズムや国、公などを悪と考へてゐるらしく、過剰に反応し恐れてゐる印象をうける。狭い視野で、しかも偏つた見方をしてゐる。きつかけかどうかは分からないが、ワールドカツプの時の応援風景にシヨツクを受けたらしひ。君が代も知らなかつた若者たちが日の丸を振り、国歌を歌ふ光景にシヨツクを受けたんだと思ふ。確かにあの時は驚いた。それまで何十年、保守派や民族派が言ひつづけて省みられなかつたことが、一晩で変わつてしまつたからだ。ある研究会の直会で当時その話題がで、皆の意見を聞いてゐたら、壮年の人達はそれを肯定的に見てゐて、青年達は納得できないといふ意見が多かつた。多分肯定的に見るべきなのだらうが、青年達の心情も理解できる。同級生たちに白い眼で見られた記憶もまだ新しいのだらう。「なんだお前ら」と言ひたくなるのも分かる気がする。 この間のアジアカツプの中国の反日的な態度についての反応も記憶に新しい。私の周りでも、普段政治的な発言をしない人達までが怒りをあらはにしてゐた。日本国民に中国の反日度を見せつけるには、あれ以上のことはなかつたのではないだらうか。その点では実にありがたかつたと思ふ(笑)。中国といふ国がどういふ国かよく分かつたのではないだらうか。 先日、高校からの友人と話してゐてそんな話題になつた。その友人は、中国や韓国、北鮮が日本に対して侮辱的な態度を取ることにとても腹をたててゐた。また、大東亜戦争のときの特攻隊の遺書などもよく読んでゐて、涙を流したといふ。かういふ若い世代は、今、多いのではなからうか。小林よしのりの「ゴーマニズム宣言」の売り上げはその象徴だらう。ただ、この友人もさうなのだが、天皇陛下についての特別な思ひや、尊崇の気持ち、況や恋闕することなどはない。巷でいふところの天皇なきナシヨナリズムである。近年多い左からの転向組は殆んどがこれである。これでは世界のほかの国と同じになつてしまふ。私は香山リカとは別のところを危惧してゐる。どうしたらいいのかよく分からないが、まずは手近なところでこの友人に色々話をしてみたいと思ふ。 さう言へば岡井隆の歌にこんなのがあつた。 右翼の木そそり立つ見ゆたまきはるわがうちにこそ茂りたつみゆ ■田舎の母 一竿風月(16.10.7) 私は今年の夏、一歳になる娘を連れて故郷へ帰つた。石川啄木の有名な歌に「たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず」といふものがあるが、母は丸々と太つてゐて、背負はうなどとは夢にも思はなかつた。それどころか、母は一升瓶を数本酒屋から仕入れて来て、昼間から私に酒をすすめる始末であつた。 また、同じく啄木の歌に「ふるさとの訛りなつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」といふものがあるが、東京の自宅においても妻と山口弁で会話することを常としてゐるので、特に訛りを懐かしむこともなかつた(妻はネイティヴ・スピーカーではないが、現在はネイティヴ並に山口弁を解す)。久しぶりに会つた妹と基督教の神について、――啄木のやうに――議論することもなかつたし、初恋の人に会ひたいなどとも思はなかつた。私をとりまく環境は、啄木と正反対であり、およそ趣といふものがない。 しかし、このやうな環境のおかげで、私は仕合せを感じることができてゐる。詩人になるにはよろしくない環境なのかも知れないが、凡人として生きて行くつもりならば、最高に恵まれてゐるといふべきであらう。来年も母と酒を飲みたいと思ふ(酒に弱い父は帰省の日からずつと二日酔で寝てゐた)。 ●不良少年の詩 深海 音楽好きの友人達と酒盛りをしてゐて、無人島に三枚レコードを持つていくとしたら何を持つていくか、といふ話題になつた。その場にゐた中で一番若い友人がクレイジーケンバンドを挙げてゐた。実は私はケンさんがクールスにゐた頃からの大フアンだ。ケンさんは僕達田舎の不良少年の憧れの人だつた。 十四、五年前だらうか、当時私もバンドの真似事をやつてゐてバンド仲間の一人、洞口君が「今ケンさんと一緒にやつてるんだ。」と言つたので、横浜までハーピストの樫村君(本業は電気屋さんだが)の車で見に行つた。これがクレイジーケンバンドの前身の初ライブだつた。おみやげに貰つてきたステツカーは当時乗つてゐたヤマハのバイクに貼り付けた。その後も機会あるごとに見に行つた。さういへば女の子を連れて見に行つたこともあつた。その時、「かつこいいけど売れないだらうな」と生意気なことを私が言つたら「さうかな、すごいセクシーな人だね。人気でるんぢやないの。」とその子は言つた。女の勘は鋭い。しかしまさかテレビのCMにでる程売れるとはその子も思はなかつたに違ひない。ベーシストの洞口君はその頃、八百屋で配達のバイトをしてゐたけど、勿論もうやつてないだらう。 やはり当時の知り合ひの一人でケンさんと同姓同名の横山剣君はアメリカ、ヨーロツパ、そして日本で自分のバンドのCDを売りまくつた。しかも自分たちでレーベルを立ち上げ、マネジメントもやつたので多分何億と儲けたはずだ。いや、何十億か。(音楽業界の中間搾取が一切ないから)う、うらやましひ。 また別の友人はフランスの人気女優で、歌手としても有名なバネツサ・パラデイのバツクバンドに誘はれ、ギターを弾くため渡仏した。他のメンバーは勿論全員外人で、しかも誰もが知つてゐる有名どころだ。彼は英語もフランス語も喋れない。さういえば昔、イギリスの女の子二人組み(パフイーみたいなもの)が日本にツアーに来てそのうちの一人が帰国せず、彼の四畳半の部屋に住み着いたといふ事もあつた。もう一度いふが彼は英語は喋れない。若い男女に言葉はいらないのだ。いやいや、間違へた。ミュージシャンに言葉はいらないのだらう。彼も今や日本を代表するギタリストの一人だ。 多勢のバンドマンやミユージシヤンがゐた。何人かは成功したが、大多数は今どうしてるか消息も知らない。そんな中、同じバンドで演つてゐたサツクスの首藤君を三年程前、NHKの紅白歌合戦で見かけた。首藤君は早稲田に七年通つたが、卒業できず中退し、サツクスで喰つていこうとしてたのだ。それ以来テレビの歌番組でよくみかける。どうやら喰へてるみたいだ。いつか一献したいものだ。(16.9.16) |
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