それにしてもいい天気だった。子猫に柔かな陽射し、白い洗濯物、土曜日、
あたり前のように過ぎゆく今が、淡々と穏やかで、鮮やかに残酷だった。
洗濯物を干しに外に出て、なかなか戻って来ない母親を待ちかねたのか、
私の子供達が外に出てきた。すぐさま子猫の入ったダンボールを見つけて
「かわいい〜」と近寄って行く、
はしゃいで覗き込んだあどけない顔が、すぐに強張っていった。
「どうしたの?この猫ちゃん、少し変だよ」「多分、車に跳ねられたのだろうね」
「ここで?」「うんん、ずっと上から歩いて来て、お母さんの足元に来たの」
「どうするの?」
そうまったく3歳の娘の言う通りなのだ、どうすればいいのだろう。
我家では、夫と姑が大の猫嫌いだったのだ。
3歳児と2歳児の子育てをしている私には、この小さな子猫の命が重すぎる。

私は迷う事なく役場の衛生課に電話をかけた。
「あの〜、車に跳ねられた猫がいるのですが…」
「あー、はいはい、それ専門の人に連絡しておきますから、
住所とお名前と電話番号を教えて下さい」とても馴れた応対だった。
「それが、まだ生きているんですよ」「あー、はいはい、伝えておきます。
あっ、だけどね、土日は休みで月曜日にしか引き取りに来ないですから、
どこか邪魔にならないところに置いておいてください。」
私は住所などを伝え、お願いしますと受話器を置いた。
「月曜日かぁ〜」と溜息混じりに復唱しながら、
"それ専門の人"という言葉にも意識が囚われていた。
きっと、こういうのに馴れているのだろうな。
道路で無残に横たわっている、猫や犬やイタチ、狸、時々猪なども、
数日のうちに何事もなかったように消してしまう。"それ専門の人"。
さて、月曜までの二日、このまま外にこの子猫をほうって置く事だけは
できないと思った。

夕方になり、夫と姑が帰宅し玄関の戸を開ける「ただいま」、
玄関に置いてある子猫の箱を見て二人とも後退りした。
私は今日の出来事を話し、なんとか月曜まで子猫をここに置く事を
無理やり承諾させてしまった。
子猫はずっとミヤァミャアと鳴いていた。母猫が恋しいのだろうか。
私は古毛布を適当な大きさに切って、子猫を包むようにかけた。
子猫は安心したのか、それから鳴かなくなった。

夜になり子供達を寝かせ付けて、私は子猫の様子が気になった。
私が覗き込むとピクリと顔をあげて私を見つめる。ああ生きていたと思う。
よく見ると箱の中に、おままごとの小さなお皿、
それに小さなおにぎりらしきものがのせてあった。
いつこんな事をしたのだろう、娘の仕業だとすぐわかった。
そうだよね。お腹すいたよね。私は牛乳を人肌に温めると、
小さな容器に移して、箱の中に入れてみたが子猫は飲まない。
容器を子猫の顔まで持っていき、飲む様に仕向けるけれど、
やはり飲まなかった。「飲まないと死んでしまうぞ」と子猫に言ったものの、
冷え込んできた玄関に、私の声が響くだけだった。


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