梅にウグイス
2007年3月号

 今年は記録的な暖冬ということらしく、本当に暖かな日が続いています。
そのせいか梅の開花も早かったようで、1月にはもうあちこちで咲き出していました。
 さて梅にくる鳥といえばウグイスが有名です。
「梅に鶯」とは、とりあわせよいことのたとえで使われる慣用句ですが、
確かに白梅が咲いた枝にとまる鶯はきっと美しいに違いありません。

ところが私は鳥見歴30年になりますが、まだ一度も梅に鶯という光景を見たことがありません。
それもそのはずで、この組み合わせは、ウグイスの習性から考えるとほとんどありえないのです。
ウグイスは暗い藪が好きなため、明るい場所に咲く梅にはまずとまることはありません。

 「いや、私は梅にウグイスがいるの見たことがある」という方がたまにいらっしゃいます。
私は、「そんなはずはないなあ」と思いながら「それは珍しいですね。
ところでウグイスはどんな色をしていましたか?」とたずねることにしています。
すると「きれいな鶯色の鳥だった」という答えが返ってきます。
これでことの真相がわかります。
どうやら別の種類の鳥をウグイスだと思っているようです。
じつはその誤解の原因は鶯色にあります。


梅にメジロの図


 この人がみた鳥はウグイスではなく、おそらくメジロです。
鶯色とは茶色がかった緑色のことをいいますが、実際のウグイスは褐色なので鶯色ではありません。
ところがメジロは、まさに鶯色そのものの色をしています。
そして梅の花の蜜を吸いにひんぱんにやってきます。
したがって梅の木にいた鶯色の鳥はウグイスではなくメジロだったのです。
そうとは知らずこの人は、鶯色の鳥がいたから「梅にウグイス」だ思いこんでしまったのでしょう。
花札にも「梅に鶯」という図柄がありますが、どう見てもこの鳥はウグイスではなくメジロです。
この混乱の背景には、「梅に鶯」がもとは中国から来た言葉で、
コウライウグイスという別の種類のことを指していたという説があります。
それを日本の自然にあてはめたために、こんなヘンテコなことになったのかもしれません。
 
ただし、自然は例外がつきもの。
もしかしたらたまたま偶然、梅にウグイスがとまることがあるかもしれません。
ぜったいにないと言い切れないのが自然のおもしろさです。
そんなことを思いながら梅の花を見るとなんだか心が豊かになる気がします。

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2007.3. 13
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