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それなのに、東京地裁は、斎藤さんの義母は、意思能力も十分あったとした上、契約書の署名捺印は、本人がしたと認められるからと認定。「特段の反証のない限り、これらの契約書の作成部分は、いずれも斎藤さんの義母の意思にもとづいて顕出されたものと推定されるべきところ、斎藤さんの義母の意思能力がなカヽったとは認められないから、特段の反証は効を奏せず、上記推定は、覆らなかったっものである」と事実無視の銀行有利の予断と偏見による判断をなした》
【写真】印鑑被害書面を示して銀行の不当性を訴える斎藤綾子さん |
この被害報告を受け、主題のパネルジスカッションに入りました。
コーディネーターは銀行の貸し手責任を問う会事務局長の椎名麻紗枝弁護士。パネリストは田口良一氏(元国民金融公庫調査役)、山田厚史氏(ジャーナリスト)、山田敏雅氏(衆院議員)、ベンジャンミン・フルフォード氏(フォーブス誌東京支局長)の4氏。
討論で4氏は、それぞれの立場から、印鑑は、所持する者の利便のためではなく、契約の相手方の利便のためであることを指摘しました。
日本での生活の長いフルフォード氏は、「本の銀行は、本人の証明としてパスポートよりも、印鑑を重視し、印鑑がないと言ったら、預金口座開設を断られた」ことなどをはじめ、自分の経験を紹介しながら、「日本以外は、印鑑をこのように重用する国はない」ことなど、日本の銀行取引の後進性を指摘しました。
また、長年、金融業務にかかわってきた田口氏は、「日本のハンコ文化は、戦前戦後にわたって、国家的庇護をうけた銀行が、ハンコを利用し、銀行が免責される巧妙な制度を作り上げたものだ」ということを報告しました。すなわち、銀行には、債権者、債務者の双方の立場があるが、銀行は、債権者、債務者いずれの立場でも、ハンコを利用して、免責になるシステムを作りあげたというものでした。つまり、預金払い出しでは、銀行は、預金者に対して、債務者の立場に立つわけですが、このばあい、銀行は、通帳と銀行届出印を所持している者に対して払いだしをしたばあいには、たとえその者が、無権利者であっても、払い出しは有効とされます。
一方、融資では、銀行は、借り手に対して債権者ですが、融資では、契約書に印鑑さえ押されていれば、契約は成立したとされ、借り手は、請求されたお金を返さなければならないとされてしまうのです。
また、山田厚史氏は、民訴法学者の多くが、民訴法228条4項は、成立の推定であり、内容まで推定されるわけではないから、不合理な規定ではないと論じていることにたいして、自分が取材されたケースをもとに民訴法の学者の議論は、実態を知らない空論であることを指摘しました。
山田氏が紹介したケースは、現在弁護士になっているA氏が、父親から自宅とマンションの建築資金の融資5億円の連帯保証人になることを頼まれ、その連帯保証をひきうけたところ、A氏の印鑑が保証書の一番上の包括保証の欄に押されていることを理由に、A氏は、銀行が後から父親に変額保険への融資など20億近い融資したお金の支払いを求める裁判を起こされたのです。
まさに、保証書の内容どおり、包括保証が、成立しているということを銀行は主張していることを指摘しました。
ところで、包括保証というのは、限度額もなく、無期限な保証であり、商工ローンで問題となった「根保証」と比べても、はるかに保証人に不利なものです。A氏は、みずほ銀行から、支払えないなら、自己破産せよと言われ、弁護士資格を失う瀬戸際にまで追い込まれているのです。
また、田口氏も、「銀行が、印鑑をとるのは、単に文書が成立していることを推定させたいためではなく、銀行が主張する内容が契約として成立していることを推定させたいためである」という銀行の意図を明かしました。
現に、裁判では、文書の成立の推定と内容の推定とは、不可分に結びついています。
印鑑被害体験を報告された鈴木さん、斎藤さんのケースも、裁判所は、成立の推定イコール内容の推定をしているのです。
4人のパネリストは、民訴法228条4項が、金融機関と消費者では、取引において、優位にあるのは、間違いなく金融機関であるのに、民訴法228条4項は、消費者をさらなる不利な立場に追い込んでいること、またこの法律が廃止されても、弊害はまったくなく、かえって金融機関と借り手との間の契約でも、インフォームドコンセントが励行され、本当に当事者の完全な意思の合致による契約が行われるようになり、消費者被害は減少し、金融機関のモラルも向上するということが言われました。
山田敏雅衆院議員は、国会での審議の経過を報告し、今後、同議員に対する質問に対する森山法務大臣の答弁をふまえ、消費者保護推進議員連盟を軸にして、議員立法で廃止を目指して活動する決意が披瀝されました。
印鑑被害を増幅させたのは同条を拡大解釈した最高裁判例について、椎名弁護士は次のように批判した。
「最高裁の昭和39年判決は、印鑑は、署名と比べ、偽造しやすく、また他人による悪用が容易であるのに、本人または代理人の印鑑が押されていれば、本人の意思に基づいて作成された文書であると推定されると拡大解釈し、以後この判決が、裁判所の判例となっている。
最高裁昭和39年判決の拡大解釈が、我が国におけるさらなる印鑑偏重と印鑑さえとってしまえばこっちのものという悪徳商法をはびこらせている。
商工ローンの従業員の告白があるが、営業現場では、とにもかくにも客からハンコをとれという営業指導が徹底的に行われている。しかし、これは、いわゆるヤミ金融やサラ金だけの問題ではない。連帯保証の問題が、社会問題になっているが、連帯保証の問題は、民訴法228条4項の問題だといっても良いくらいである」
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最後に、山田克彦・銀行の貸し手責任を問う会世話人の音頭で、民訴法228条4項廃止目ざしして、シュプレヒコールで閉会しました。
出席した銀行被害者のA子さんは「シンポジウムの話はとても有意義でした。民訴法228条4項廃止の意義がよく分かりました。生きる勇気をもらいました。私たちを騙した銀行は許せない」、B男さんは、「銀行被害者の共通するキーワードは『銀行は騙す』ですが、シンポジウムを聴いて、悪徳な銀行の酷さの法的根拠が明確になった。銀行被害者の被害回復と再発防止のために、広く世論に訴えていきたい」と感想を語りました。 |
《シンポジウムで明らかになった印鑑問題》
★銀行被害を多発させたのは、印鑑の押印など取り扱いに起因するものが多く、その法的根拠が民訴法228条4項である。
・この民訴法228条4項とは「私文書は、本人または代理人の署名またば押印があるときは、真正に成立したものであると推定する」との条項で、「真正に成立したものであると推定する」という規定が印鑑問題の核心であり、銀行被害者が不利におかれている法的根源である。
★民訴法228条4項の趣旨=立証責任の転換問題の解明
【不当性の1】本来は、契約の履行を求める者が、契約の成立の立証をしなければならない。従って、貸金を請求するばあいは、貸金を請求する者(銀行等)・売買代金を請求するばあいは売買代金を請求する者(販売会社)が 契約の成立を立証することになる。
ところが、本人または代理人の署名押印ある契約書を提出したばあいには、民訴法228条4項により、その文書は、本人の意思に基づいで作成された文書であると推定される」とされることから、今度は逆に借り手あるいは買い手の側で、その文書は、自分の意思に基づいたものではないことを反証しなければならない。立証責任が借り手の側に転換されてしまうのである。
【不当性の2】拡大解釈した最高裁判例
最高裁昭和39年判決は、印鑑は、署名と比べ、偽造しやすく、また他人による悪用が容易であるのに、本人または代理人の印鑑が押されていれば、本人の意思に基づいて作成された文書であると推定されると拡大解釈し、以後この判決が、裁判所の判例となっている。
★民訴法228条4項「立証責任転換」の不合理性の解明
【不当性の1】この規定をもうけた大正15年当時と比べて、社会的経済的状況は,大きく変化している。現在は、貸し手は金融機関などの業者であり、売り手は販売業者であるのに対し、借り手あるいは買い手は、消費者であることが多い。情報において知識において、圧倒的力の格差がある消費者に立証責任を転換することは、さらなる取引の不平等をもたらす。
【不当性の2】最高裁昭和39年判決の拡大解釈が、我が国こおけるさらなる印鑑偏重と「印鑑さえとってしまえばこっちのもの」という悪徳商法をはびこらせている。
商工ローンの従業員の告白かあるが、営業現場では、とにもかくにも「客からハンコを取れ」ということが徹底されて行われている。
★民訴法228条4項の弊害の例証
痴呆状態の人の契約が有効と認められたケース、1000万円の保証のつもりが、いつの間にか4億円の連帯保証人にされてしまったケースなど、民訴法228条4項の弊害は枚挙にいとまがない。連帯保証の問題も、民訴法228条4項の問題だと言ってもよいくらいである。
★民訴法228条4項を廃止することによる効果の検討
民訴法228条4項の廃止は、消費者被害の防止、業者のモラル向上、対等な取り引きの保障(インフオームドコンセント)を実現する。