第56回総会−今日の性教育・性問題を考える−
☆特別報告「障害児の性教育とバッシング 」
東京都障害児学校教職員組合
東京の障害児学校で教職員が心を込めて進めている教育実践(性教育)が、都議会で一部都議から「不適切」と攻撃され、献身的に教育活動にとりくんできた百名を超す教職員が大量に処分された。障害児の性教育の現状とあわせ、養護学校の現場の状況や課題を述べてみたい。
【障害児・者の性と性教育】
障害児・者の性は、優性思想のもと、長い間、タブーとされてきた。この十数年、ノーマライゼーションの理念や性を人権としてとらえる視点の広がりとともに、障害者が人間らしく生きるうえでの性の大切さが認識されるようになってきた。一方、性的に利用されたり、性被害にあう障害者も多く、性被害・加害防止の面からも性教育の必要性が高まってきている。
障害児への性教育は障害や発達を考慮しつつ、自己肯定観を育むことをベースに、次のような内容で行われている。@自分の存在に自信が持てない障害を持った子どもたちが生まれたことのすばらしさや自分のかけがえのなさを確認する誕生や生い立ちの学習。Aボディイメージが育ちにくい障害児が大人への体の変化に見通しを持ち、混乱せず、期待感を持って受け止めるための第二次性徴の学習。B適切な人との関わり方や表現の仕方の学習。C自分には障害があり、努力してもできないことがあることを率直に受け止めさせ、堂々と援助が頼めるような障害の学びと権利意識を身につけさせる学習。知的障害児は言葉による理解が難しいが、実物に近く、見たり触れたりできる教材を使用することで理解を助けることができる。
【性教育バッシングの経過と背景】
七月二日、東京都議会において、性教育、国旗・国歌についての一部議員による一般質問があり「最近の性教育は、口に出す、文字に書くのもはばかられるほど内容が先鋭化し、世間の常識とはかけ離れたものになっている」と述べた。答弁に立った教育長は質問のあった七生養護学校で使われている「からだうた」や性器のある人形を「不適切な教材」と決めつけ、「全校で性教育に関わる図書や教材の保有状況を調査し、不適切なものは廃棄などを指導する。週案を提出させ、こうした不適切な教育が行われないよう、校長の権限と責任で教育課程の実施状況を把握させる」と述べた。
七月四日、都議らが産経新聞記者らを同行して、七生養護学校を視察。翌日の産経新聞は下半身の衣服を脱がせた人形の写真とともに「過激性教育」「まるでアダルトショップのよう」と報道した。七月九日、都教委が三十数人の指導主事を七生養護学校に派遣、全教員から「聞き取り」調査を行った。七月十四日、都教委「都立盲・ろう・養護学校経営調査委員会」設置。性教育、学級編成、教職員の服務などについて、盲・ろう・養護学校全校に調査に入る。八月二八日、調査委員会報告書発表。半数の二八校に「何らかの不適正な実態があった」とし、改善の方向として校長の権限と責任が強調された。九月十一日、校長の降格を含む教職員等一一六名の処分を発表した。
都議会での質問からわずか十二日間で調査委員会を設置する素早さ、都議会での質問、都教委による調査、新聞報道が連動していて作為的なものを強く感じさせる。七生養護学校の性教育は保護者だけでなく、校長会や都教委も高く評価されてきたもの。性教育への攻撃は教育内容への介入を禁じた教育基本法を踏みにじるものである。また、処分理由とされた学級編成の「不適正」については、現在、養護学校は深刻な教室不足や障害の重い子のための少人数学級を法令通り設置していないことからくる教師不足の状態にあり、現場の工夫として運用されてきたものである。
国も都も「構造改革」路線に立った福祉や教育の見直しを進めようとしており、一人あたりの経費がかさむ障害児教育は見直しのターゲットにされている。今回の処分は障害児学校と教職員を攻撃し、保護者・都民との分断を図るとともに、民主的な校長や学校運営をつぶし、都教委の意のままに動く学校経営体制を強引に確立しようとするものである。性教育はその攻撃の入り口に利用された。理不尽な性教育攻撃によって、障害児への性教育が禁止と抑圧の指導に後退することがないよう、子どもから出発した地道な実践をすすめていきたいものである。