|
ここでは、私が訪ねた中世の遺跡、あるいはゆかりの地や寺院を紹介させていただきます。
通常、遺跡といって思い浮かぶのは、かつて私もそうでしたが、石器時代、縄文時代、弥生時代、そして古墳時代止まり。けれど、ここ三十年ほどのあいだの中世遺跡のみなおされ方にはめざましいものがありました。はじめて従事した東京都三鷹市の島屋敷遺跡が、中世が中心の発掘だったせいで、それまでまったく興味がないどころか、暗黒のイメージで忌避さえしていた中世を知る必要に駆られ、関係の書物を網羅するごとくに読みあさって嵌まった世界は、思いがけなく新鮮で魅惑に満ちたものでした。
写真というのは、現実に存在するものにファインダーを向けて写すわけですから、いくら私が「中世」を撮りたいと思っても、すでに何百年もまえに消滅してしまった町並みや行事を写すのは不可能です。可能だとしたら、たまたまのこった仏像や建物くらい。けれど、私が撮りたいのはそういう単体で存在する「物」ではなく、それらを取り巻いていた環境。生きたその時代の状況、ようすですから、それはもうイメージでしかなく、方法としては多重露光かコラージュしかないかなあと。まして、宅地化してしまったような「現代」を、かつてここに何々がありましたみたいに撮っても仕方ない。そんなふうなジレンマを終始抱えながら、コラージュではないストレートな写真をと、とにかく、その場、そのとき、その地域でしか撮ることのできない光や色の加減をとこころがけました。景色は、多少の変貌をとげることがあるにしろ、何百年程度の風雪ではいちおう不変的にのこっているとみなして、できるだけ「現代」を排除して撮ってきました。中世の風を、光を、気配を感じていただけたらと思います。
TOPへ戻る |