寺院揺曳

―まぼろしの廃寺を訪ねて・鎌倉佐々目遺身院―

2001年5月から2002年12月まで、21回にわたって
福島泰樹氏主宰短歌結社「月光の会」の同人誌『月光』に連載したものです。

佐々目遺身院は、今は神奈川県立金沢文庫に残る古文書のうちの
指図に名前が残っているだけで、正確な所在地は知られていません。
ただ、発掘調査によって、おそらくここだろうという場所がわかっているだけです。
それは、鎌倉大仏がある長谷から鎌倉の中心部へ向かう道の途中、
現在の地名でいう笹目のあたりで左折して入っていった奥・・・

今はすっかり、地元の人の記憶にもない寺院ですが、
鎌倉時代には、京都から、亀山天皇の皇子、益性法親王が下向され住していられた、
建物も寝殿造りの、とても雅な寺院です。
そこでは、仁和寺御流という仏教の宗派が継承されていました。

よく、鎌倉時代は日蓮・親鸞といった方々の活躍で、新仏教の時代といわれますが、
こうした由緒ある寺院から歴史をたどっていくと、
それは一面の問題に過ぎず、京都の宮廷におけると同じに、
鎌倉でも、旧仏教が変わらず勢力をはっていたことが、とてもよくわかります。

単純にはじめた古典探訪の随想ですが、
思いがけず、鎌倉時代の鎌倉における仏教のありようを見直す結果になりました。


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