ここには呼吸器系の代表的な病気について簡単に説明しています。スペースの都合であくまでも概略にとどめます。同じ病気でも例外的なケースや、治療法でも施設により若干の違いがある場合もあります。ここに書かれていることが全てではありませんので注意してください。
アスベスト(石綿)による肺の病気について
最近、新聞やテレビで話題になっていますが、専門医の間ではずっと知られていたことです。ただ、この被害を受ける人が思っていたより広範囲で、作業着を洗濯した人などは予想されてましたが、付近の住民までは予想外でした。
アスベストを吸い込むことによって出来る病気は、@悪性胸膜中皮腫、A肺癌、B胸膜斑という胸膜の肥厚、C肺の繊維化などがあります。
@は胸膜(肺を包む膜)から発生する悪性腫瘍で非常に難治性です。
Aの肺癌は肺の中に発生する癌で、発見した時の進行具合(病期)によって予後が全く異なります。つまり早期発見が非常に大切です。
Bの胸膜斑は、アスベストを吸い込んだ人に最も多く見られる変化で、これがきっかけで患者さんに「どこかで石綿を扱ったことがありませんか?」と質問することが結構あります。症状はなく、また、生命にも問題はありません。ただ、アスベストを吸い込んでしまっていたという証拠になり、他の病変を発症する可能性があるわけですからこまめに経過を追う必要が出てきます。
Cはアスベストのよる反応で肺が進行性に繊維化し硬くなっていくので、咳や呼吸困難が出ます。
以上のようなものがあります。では、どうすればいいのかと言うとアスベストを吸った可能性のある人は胸部CTを行って下さい。胸膜斑などが見つかれば肺の深いところまでアスベストが入り込んでしまったという証拠になります(一度入りこんだアスベストは何年たっても抜けません)。その場合、とにかく悪性のものを早期に見つけるよう努力していくしか今のところありません。具体的には6ヶ月に一回のCT検査をやっていくことです。ご心配な方は当クリニックへいらして下さい。予約なしでもCT検査が行えます。

睡眠時無呼吸症候群
最近新聞やテレビなどで話題になりましたが、その名のとおり寝ている間に呼吸が止まってしまう病気です。10秒以上呼吸が止まっているのを1回の「無呼吸」と定義し、この無呼吸が基準以上見られるものを「病気」として扱います。呼吸が止まる原因は、脳から命令が出ない中枢型と、命令は出てるのに(胸や腹は呼吸しようと動いてる)舌根(舌の奥の部位)が落ち込み気道が塞がれてしまう場合の閉塞型、両方が混ざる混合型があり、頻度は圧倒的に閉塞型が多く見られます。
人間の全ての臓器は酸素をエネルギーとしていますが、呼吸が止まると各臓器は低酸素の状態にさらされ、長い年月繰り返されると臓器の機能が落ちてしまいます。特に心臓は寝ている間でも拍動を続け酸素を多く必要とし、また脳にも十分な酸素が届かず、深い睡眠とはならず、時間的には十分なのに睡眠不足の状態となります。実際に、呼吸が止まったあと呼吸を再開する時の脳波は起きている時の脳波になっています。つまり自覚はなくても苦しくて目が覚めたことを意味しており、1晩の睡眠中に寝たり起きたりを繰り返していることになります。これにより、短期的には、起床時の頭痛や熟眠感が無いこと、日中の眠気や居眠りをしてしまうことなどが生じ、長期的には高血圧や不整脈、脳卒中の原因になります。閉塞型睡眠時無呼吸症候群の寿命を研究した結果では、1時間当たりの無呼吸が20回以下と20回以上の人では20回以上の人のほうが寿命が短い事も分かりました。従って、快適な日常生活という点と、長生きという両点から、的確な診断・治療が必要とされてきました。
体型では肥満で首が太かったり、顎が小さい人に多く見られます。喉が塞がって呼吸が止まる一歩手前の現象としていびきがあります。従ってこの病気はいびきがひどい人に多く見られます。いびきがひどく日中眠い人や、同居者に睡眠中呼吸が止まっていることを指摘された方は検査の適応となります。 スクリーニング検査は簡単な機械をつけて寝ていただくだけです。取り付け方法の説明を病院で受け持ち帰り、寝る前に付けていただきます。胸と腹の動き・呼吸・血液の酸素濃度を見るセンサーを装着し寝ていただきます。2晩行ったのち病院で解析します。これはスクリーニング検査なので、異常が見られた場合は更に精密検査を行います。
治療法として一番有効なのは、鼻を覆うマスクを付け機械で陽圧をかけ喉の閉塞を防ぐという治療です。もちろん保険が利きます。かなり有効で、機械をつけながら先ほどの検査をやり直すと無呼吸はほとんど無くなり、日中の眠気など自覚症状の強かった人は、初めて付けた翌日から効果が絶大で非常に喜ばれます。その他、扁桃肥大が原因の方は扁桃摘出術が適応となり、軽症の場合マウスピースを装着する方法もあり、肥満がある方はダイエットするだけで改善する場合もかなりいます。
以上、簡単にご説明しましたが、質問等ありましたら一度ご来院下さい。

肺がん
日本人の死因第一位となった病気です。喫煙が主な原因ですが、最近の傾向は喫煙にあまり関係ない腺癌が特に女性で増加しています。手術や放射線・抗癌剤などの治療法があり進歩はしていますが、一番確実な方法は早期発見して手術することです。発見が遅れると癌細胞がリンパ管や血管に進入して全身に散らばってしまいます(転移)。細胞はすごく小さく、リンパ管や血管に進入するのも一個や二個ではなく何千個と進入し、それらも細胞分裂するのでこうなっては物理的に(手術で)取り除くことは不可能です。放射線や抗癌剤である程度小さくなってもなかなか癌が消える(癌細胞がゼロになる)ことはありません。癌細胞は量(細胞の数)が増えるといろいろな変異をして、違った性質を持つものも出てきます。この一つが薬剤(放射線)耐性です。もともと効きにくいタイプも多いのですが、効いた場合でも耐性によりどうしても残ってしまいます。こうして、人の命を奪っていきます。肺癌患者数が増えたこと以外に、小さなうちから(早期から)転移しやすいこと、放射線や抗癌剤の効きがよくないことより死因の第一位となったと考えられます。もうお分かりと思いますが、早期発見が非常に大切です。では、仕事している人などは年に1〜2回はレントゲン写真を撮るのになぜ早期発見出来ないのでしょうか?レントゲンは「透かし絵」で、色々なものが写ります。肋骨や肺の中の多くの血管が重なり、心臓や横隔膜の裏に拡がる肺は、それぞれ心臓や横隔膜の影に隠れ見えにくくなります。これはレントゲン写真の限界です。最近ヘリカルCTと言う短時間・少被爆量で撮影できるCTが登場し、CTでの検診が普及してきました。CTは死角が少なく隅々まで見えます。この導入でどれくらい肺癌の死亡率を減らせるかは研究段階で結果は出てませんが、臨床の場では、CTと同じ日のレントゲンに映ってない癌が発見できたりしています。実際、レントゲン検診とCT検診で見つかった肺癌の進行度を比較した研究があり、CTではレントゲンより進行度の早いのが多く見つかっています。レントゲンにはある程度癌が大きくならないと映らないことを示しています。これは、当然その後の治療効果にも反映され、CT検診で見つかった肺癌患者さんのグループのが治癒率や予後がよくなってます。
このことについての続きは、ホームページの肺がんCT検診の案内を見てください。

気管支喘息
発作性にゼーゼーしたり、咳込んだりして、場合によっては呼吸困難から死亡することもある病気で、患者数は増加しています。発作時の治療はあまり以前と変化ありませんが、発作予防の治療が進歩し、きっちり行っている人は入院や死亡の心配はほとんどありません。症状がない時は、健康な人と全く変わらないので、ついつい薬や受診を忘れがちになりますが、予防薬なので、症状がない時にいかにきっちりやるかがポイントです。発作時にのみ受診し、それもぎりぎりまでがまんしてから受診するような方の中には、入院したり死亡したりする方もいらっしゃいます。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)(肺気腫など)
大気汚染やタバコなどが原因でなる病気で、全世界で死因の第4位となっています。タバコはいろいろな癌の原因といわれますが、これは吸わない人に比べ癌になる危険性が増えるだけで、もちろん癌にならない人もいます。しかし、タバコを40年も吸い続ければ程度の差はあってもほぼ全員が肺気腫になると考えてください。これが癌との違いです。肺がどうなるかというと、虫に食われたように薄い膜で覆われた穴がいっぱい出来て弾力性も無くなります(この穴は高分解能CTで確認できます)。肺機能では弾力性がなくなったことを反映して、息を吐く時に抵抗を感じ、吐く力(一秒量や一秒率と言います)も弱くなります。呼吸を早くするのが苦手になり動いた時に呼吸困難を感じたりします。咳や痰も増えます。風邪や気管支炎になると咳の力(咳は息を一気に吐き出す動作です)が弱いので重症化したり(肺炎になったり)、痰を詰まらせたりすることがあります。こう言ったことが死亡につながります。普段は呼吸をスムーズにする薬や痰切りの薬などで症状を緩和し、インフルエンザなどの予防接種を受け風邪の予防に心掛けるのが主な治療です。タバコを吸っていてもこの病気にならない予防法はなく、禁煙しかありません。タバコを長年吸っていて症状がまだない方は、肺ドックなどでご自分の肺のCT写真で肺に開いた穴の具合や、肺機能の落ち具合を見ると禁煙のきっかけになるかもしれません。
間質性肺炎(肺線維症)
肺が線維化し硬くなってしまう病気です。肺胞という壁が厚くなり酸素の取り込みが悪くなり、硬くなることで肺活量が落ちます。原因不明のものから膠原病に伴うもの、薬剤によるものなどさまざまで、進行も、急に発症して命を奪うものから慢性にゆっくり進行して徐々に症状がでるもの、長期間変化がなく自覚症状もないものまで様々です。従って個々の症例でどのタイプか見極めることが大切で、これには色々な検査が必要となります。治療は副腎皮質ホルモン剤や免疫抑制剤が用いられますが効き目に差があり、確実に有効な治療はまだありません。治療すべきか・治療の有効性が期待できるかなども精密検査で分かることもあります。

肺結核症・肺非定型抗酸菌症
この二つの病気を一緒の項で述べるのは、結核菌と非定型抗酸菌症が菌の分類上兄弟の菌種になるからです。酸に強い菌つまり抗酸菌のうち、人に特に害のある定型(典型的な)抗酸菌を結核菌と呼び、それ以外を非定型抗酸菌症と呼ぶと説明すると分かり易いと思います。肺結核症は以前は日本人の死因の第一位でしたが、薬の進歩により死亡することは稀になりました。しかし、人から人への伝染力が強いため、痰の中に菌がいっぱい出ている人は(排菌状態)2−3ヶ月入院しなくてはなりません(今はあまり使わない言葉ですが、昔でいう隔離です)。栄養状態の改善やBCGなどにより患者数はずっと減少していましたが近年増加傾向となっています。また、薬の効かない耐性結核菌による結核も問題になってきてます。高齢者の結核の発症は今回新しく他の人からうつったものではなく、過去に感染し(自覚症状はなくても)自分の免疫で押さえ込んでいたものが、長い年月生き残った結核菌が免疫の衰えにつけ込んで増殖し発症するとされています。
さて、ここで肺非定型抗酸菌症に話をかえますが、近年、中年以降の女性を中心に増加傾向にあります。結核菌との一番の違いは人から人にうつらないことです。この菌自体は土壌中や水の中などに存在します。この菌は激しい感染を起こすと言うより肺に住み着くようなイメージです。特に進行しないことも多いですが(この場合治療の必要なし)、長い年月の間にゆっくりと肺や気管支を破壊していくことがあります。また、薬の効きが悪いので進行性の場合には4種類くらいの抗生剤を長期にわたり内服しなければなりません。従って、この病気の場合まず、痰にどれくらい菌量が出ているかや進行性はあるのかなどを見極めることが大切です。
気管支拡張症・びまん性汎細気管支炎・慢性気管支炎
いずれも気管支の異常により、程度の差はあれ普段から黄色い痰が出る病気です(痰を出すために咳も伴います)。進行すると気管支にインフルエンザ菌や緑膿菌などが定着してしまい、体が疲れた時などに菌が暴れだし、感染増悪することがあります。感染を繰り返すと気管支の破壊がより進み、さらに菌がすみ易い状態になってしまいます。近年マクロライド少量長期投与という治療法が確立され効果をあげています。あまり気管支の破壊が進行しないうちにはじめたほうが効き目が高いとされてます。
慢性の咳について
慢性の咳はここまでに述べた疾患のどれにでも伴う可能性があります。しかし、ここまでに述べた病気は(気管支喘息以外)レントゲンやCTで異常が確認されますが、これら検査で異常がなく慢性的に咳が出ることがあります。これには、急性上気道炎(いわゆるかぜ)後の後遺症の咳(1−2ヶ月咳だけ残ることがあります)・気管支喘息(咳喘息・・喘鳴を伴わない咳だけの喘息)・アレルギー的な咳(アトピー咳嗽・喉頭アレルギー)・後鼻漏(鼻水や副鼻腔炎の膿などが喉にたれる)・逆流性食道炎・ある種の降圧剤の副作用などがあります。これらは詳しい問診の他、採血や痰の検査が必要となることがあります。
その他、急性の呼吸器感染症
かぜ症候群や急性気管支炎・肺炎は気道系にウイルスや細菌がくっついて増殖し引き起こす病気です。稀な菌による場合なかなか治療でよくならない場合もあります。よく知られた菌種でも近年いろいろな抗生剤に対する耐性菌が出現してきており、慎重な薬剤の選択が必要です。
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