
『黒祠の島』/小野不由美/祥伝社 【bk1】
うーん、孤島ものなんだけどね。帯で『獄門島』『十角館の殺人』そして……とやるのはちょっとどうかと思う。確かに、孤島もので因習が原因らしい連続殺人が起こるわけだけど。そういう傾向ではないでしょう?むしろ、『屍鬼』との連続性を強く感じるのだな。やはり、ここでも扱われているのは集団という幻想ではないんだろうか?いくら因習にとらわれているとはいえ、現代日本でこの物語展開はないよな、という気分で読んではいるのだけれど、途中、いや待てよもしかしたらという気分になりません?そうなったとしたら、作者の思う壷というところなのでは。けっきょくのところ、現代人も何らかの<黒祠>につかえているのでしょう。それは、仕事というものだったり、家族というものだったり、まあ人によって違うとは思うのですが。<永続的な日常の繰り返しとその中でのみ通じるルールだけを頑なに守る人々>と『屍鬼』の感想で書いたけれど、それと等質の怖さがやはりこの物語の中にもあると思うのですよ。(2001.02.25)
『上と外4神々と死者の迷宮(下)』/恩田陸/幻冬社文庫 【bk1】
練と<王>の対決がもう少し盛り上がりを見せるかと思っていたので、ちょっと肩透かしを食ったような感じ。けっきょくのところ、この儀式がほんとうのところ何なのかも見えないままでありますし……。今回はむしろ千華子の数々の反応のほうが面白いかな。冒頭の<「よい」「わるい」というのは一つじゃない>っていう話は何か他のことの伏線にもなっているのだろうか?だとすると儀式ってのは……考えすぎか?クーデターとはどこでどうつながるんでしょうねえ?説明は次に持ち越しのようで。うーむ、ボリューム的におさまりがつくのか、ってな点がちょいと心配(2001.02.25)
『MAZE[めいず]』/恩田陸/双葉社
迷図・・・かな?内部に迷宮を内包した、誰がいつつくったともしれない辺境の建築物『存在しない場所』。そこでは、何の前触れもなく人が忽然と消えうせるという。主人公たちの目的は、その理由、なぜ何のためにではなく、そのルール、どのような場合に消えるのかを探し出すこと。
これの書き手が恩田陸だというところが微妙……。ミステリのみの書き手であるなら、まずは超自然的理由は考えなくてよいからねえ。しかし、最後まで疑いは捨て切れないのだよな。ミステリを模したホラーである、反対にホラーを模したミステリであるという考えを。謎解きのシチュエーションとしては限定されていて、ミステリな方々には少々退屈だったのだろうか?主人公たちのやりとりそのものを楽しめたので、なかなかによかったとぼくなどは思うのであるが……。(2001.02.25)
『グイン・サーガ77疑惑の月蝕』/栗本薫/ハヤカワ文庫 【bk1】
アルド・ナリス死す。1巻かけてそう説明されても、どうも信じることができません。なにしろ稀代の陰謀家ですから……。スカールのこの反応はまあ当然として、リギアがこうくるとは、ちょっと思いませんでした。あと、マリウスは、なんというか相変わらずですね。前巻より持ち越したはずのリンダの反応がわからずじまいだったのが、ちょっと気になる。反応を描かないということは、それ自身伏線なのかもしれませんね。このような展開ということは、そろそろ三国の衝突も近いということで、そちらが楽しみです。(2001年2月18日)
『かめくん』/北野勇作/徳間デュアル文庫 【bk1】
奇妙なお話です。「木星戦争」に投入するべく開発されたカメ型ヒューマノイド・レプリカメ、っておいおい、カメ型とヒューマノイドは矛盾してるやろ(笑)。
戦争は終わっているらしく、かめくんは不要になったらしい。でも新しい職場では、なにやらザリガニ状巨大生物と戦うのであった……。ううむ、なんてシュールで不条理なんだ。そもそも、なんで戦闘に台本があったりするんだよ、とか疑問が百出しながら読むことになる。どうも読んでいるうちに自分の頭の中までかめくん状態になるらしく、そのうち重要な情報の欠落とかどうでもよいような気になってくる。今が幸せならいいじゃん、てな感じである。しかしながら、人生、いやカメ生か、そんなには甘くないのであるよね。世の中には信じていいほんとうのことはあるのかしら?物語の終盤、このお話がじつは何であったのかわかる時に感じるのは虚しさでしょうか?いやいや、そうではないと、やっぱりぼくは信じていたいです。自分の手の中には、たとえ大事にしていた図書館カードさえ残らないのだとしても……。(2001.02.19)
『水郷から来た女 御宿かわせみ(三)』/平岩弓枝/文春文庫 【bk1】
「江戸の初春」こうしてみると東吾の立場の微妙さがよくわかります。部屋住みというのは、本来かなり窮屈なものなのでしょう。
「桐の花散る」不思議な味わい。桐の木の下でいなくなった女の子の二十五年後の運命というのを、これだけの長さの短編でさらりと書いてしまうところがすごいです。
「風鈴が切れた」るいがのやきもちが、なんというか可愛い一編。筋のほうはなかなか血なまぐさいのだけれど、キーワードが風鈴ってのが救いか?
「夏の夜ばなし」表題通りのちょっとした怪談もの。ほんとにこういう目に遭ったら怖いだろうに、その隙にさえ悪人というのはとんでもないことを考えるもんです……。
『栄花物語』/山本周五郎/新潮文庫 【bk1】
<白川の清きに魚も住みかねてもとの濁りの田沼恋しき>なんてのは、今でも小学校の歴史の授業で習うのですかね?賄賂政治の代名詞みたいに言われている田沼意次ですが、その人物をまったく別の視点からとらえなおしてみるという作品。まあ、だいたいにして、出る杭は打たれるというのはほんとうだな、というのが読んでいてしみじみとわかります。仮に田沼意次がこの作に現れているような先進性のある政治家であったとしても、周囲に押さえが効かないのではどうも……。<栄花>というのは、こうしてみるとかなり皮肉につけられた題名だということです。このように田沼意次をとらえるというと、池波正太郎の『剣客商売』もそうですね。最近はけっこうこういう見方もあるのでしょうか?物語の展開につれ信二郎と保之助の考え方がしだいに移っていくのが興味深く読むことができます。(2001.02.18)
『時空暴走気まぐれバス』/平井和正/集英社文庫 【bk1】
作者が高校生の頃の作品をベースにしたということだが、きっと全然別物になっているのでしょうね。平井氏というと、同じ作品をリライトしようとしても、あれよあれよと別物に化けてしまうという特技を持つ方ですから。きっと氏の頭の中には無限のパラレルワールドが内在しているのでしょう。ところで、この作品、題名だけからすると眉村卓の『とらえられたスクールバス』なんてのがぼくの頭には浮かぶのですが、あんなにまじめではないというか、たまに平井ワールドに現れるハチャハチャ系のものですね。集英社文庫ですから、先行してるのは『決定版 幻魔大戦』なわけで、そこから読み始めた少年少女はきっと驚くだろうなあ、と……。
(2001.02.18)