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もう大昔のことですが、りんこは一度、テレビ局の制作スタッフと大喧嘩をしたことがあるんです(ちなみ
にフジテレビではありません)。
ある番組があって、生放送でありました。まあ局としては、感動お涙モノの作りにしたいという希望が見栄
見栄出ておりました。友人が、それに出演することになったのですが、そばにいる友人役として出て欲しいと いう電話があったんですね。友人には内緒でということでした。まあ、軽いドッキリみたいな企画で、涙の絵 が撮れたら尚ヨシって感じでした。放映日は平日の明日、朝の5時には来て欲しいっていう、いきなりの注文 でした。全くこちらの都合を一切無視した「お殿様」ぶりに心底呆れ返り断りました。当時、私はすごく忙し く急に仕事を休めるような状態ではなかったからです。友人は私が出ようが出まいが友人には代わりなく、そ んなことで友情関係その他がなくなるとか、そういうことも考えられず、また彼女の本意でもないように思っ たからです。すると、そのスタッフさんは、初めて話すりんこに向かってこう言いました。
「来れないなんて、それでも友だちなんですか?あなた、最低な人間ですね」
私はそれ以来、テレビ局の人間が大嫌いになったんです。
自分がいつでも一番偉いと思っていて、何でも思うとおりになる魔法のステッキを手にしたかのような驕
り、初対面の人間にモノを頼んでいるとは到底思えない態度。そこまでは、まあいいです。でもですね、思う とおりにならないとみるや、見も知らない人間に言うとは思えない言葉を吐き続けるという無礼。あたくし、 今でこそ体も気持ちも相当丸くなりましたので、彼の立場などを想像するに「お気の毒」で済ませることも出 来ますが、当時は我が身に突き刺さった手裏剣は抜いてでも投げ返すくらいのパワーがあったんですよね。当 然、大喧嘩に発展しました。全く面識もない人と電話口でいきなり喧嘩できるんですから若いってそれだけで 素晴らしいです。
そんなこんなで、たった一人のせいでテレビ局と聞いただけで「ウンザリ」って気持ちがありました。もっ
ともミーハーですから「えー?芸能人?会いたい、見たい、触りたい!」とか叫ぶんですけど、スタッフサイ ドと話すなんて冗談じゃないって気持ちが大きかったと思います。
はじめは「企画にも乗らないから勝手にどうぞ」って形でしたが急に不安になったんですよね。
「待て!待て!待て!好きにいじられたらどーすんじゃ!?」
前にもちょっと触れましたが、映像お届け軍団と文字お届け集団は根本的に考え方並びに趣向が違います。
まあ、どちらもお互いを好ましく思っていないというのは言い過ぎかもしれませんが、プライドがどちらもハ ンパじゃないので相手を見るときにお互い斜に構えるってところがあるのだと思います。
初めての打ち合わせに、りんこは自分が「トンボかよ!」ってほどの色メガネをかけてスタッフが待ってい
る部屋に入っていったんですね。
それから一ヶ月半。人は成長するというのか、学ぶというのか、1回やそこらのイメージで何でも決め付け
ちゃイカンというのか、先入観は何の情報にもならないとか、そういう当たり前のことにイチイチ反応してい たように感じます。
今回、ご一緒してくださったスタッフの方々は、お一人お一人が皆さん、丁寧で礼儀正しく、極めて常識的
で歳はお若いんですが対応が大人、しかも、ここが一番のポイントなんですけど「熱い」方たちだったんです ね。
どの仕事でもあっても「熱く」なければ、いい仕事は出来ないと思うんですよね。表面的には冷静であって
気持ちが熱いということをキープしていくのは至難の技ですが、そこがチームとして、うまく噛み合っていく と、どの仕事であってもいい仕事になるのかなーと思います。
りんこは、今回、数々勉強させていただいたと思って感謝しております。色んなことを感じておりました
が、とってもいい意味で刺激されたことがあったので、それを結びとして皆様にお伝え出来れば幸せに思いま す。
テレビ局は女性がタレントさんは別として、スタッフサイドからみれば、かなり少ない職種かなーと思いま
した。同行した編集者は昔からバリバリと働き、仕事も家庭も子どもも大事にしてきた女性ですから、どうし ても興味の対象がりんことは違うところに行くらしいです。
あっし?あっしはですね「この兄ちゃん、中々ナイスなマスク」ですとか「この兄ちゃん、ちょっとミバが
えーやん!」ってな観察が一番先にやる、どうしてもチェックしなければならん重大項目となるんですが、こ の編集者の場合はですね、一番先に女性の人数をカウントしたんですね。びっくりしました。だって、あっし にとっては女がそこに何人いようがアウトオブ眼中ですから。
「やっぱり、この業界は女性は少ないね・・・」
ちょっとがっかりした感じでした。
たまたま目にしただけなので、正確な数字は知りません。ただ表に見えた女性の数は三人だけです。メーク
さん、カメラの助手さん、そしてディレクターです。
このディレクターさん、ホンワカした可愛い方です。先述しましたがディレクターさんというのは沢山おい
でになるようでして、そのお仕事分担とかの細かい内容までは知る由もないのですが、打ち合わせのときは彼 女は控えめに、ただただ頷いてらっしゃったという印象でした。しかし、その内にプライベートなお話もさせ ていただきました。
彼女はまだお若く独身なのですが、中学受験の話とか、家の子のしょーもない話とかしていく内にこんな風
におっしゃってくださったんですよね。
「子どもって自分にイメージ湧かなかったんですが、なんかね、お話伺ってると子どもっていいなーって、
自分も欲しいなーって思うようになってきて不思議ですね」
私のメニューには自慢できるような話は一個もないわけでして、それこそどうにかなりませんか?系の話し
か出来ないんですが、座談会でも何の打ち合わせでも、鬼母列伝が主役に上る話が多い中で、どうしてこのよ うに思われたのかは分かりません。分かりませんが、彼女は「なんかね、すごく羨ましいです。いいなぁって 思いました」と言われたんですね。
「気持ちがあったかくなりました。久々に故郷の母を思い出しました」と。
彼女は比較的厳しい家に育ったということでしたが、ある時「テレビ業界」で働きたいと決意されたそうで
す。しかし人気業種なので、それこそホイホイと入れる人は非常に稀です。紆余曲折を経て、アルバイトから 入って徐々に徐々に仕事を覚えて段々と周りに認められるようにと懸命に努力してきたようです。「気持ち」 で重い扉をこじ開けたというところだと想像します。ガムシャラに頑張るってタイプにはお見受け出来ず、ど ちらか言えば自然体な方なのですが、きっと人30倍くらいの頑張り屋さんなんでしょう。
「怒られますよ〜、もうスッゴク、完膚なきまでに(笑)。でも、それで凹んでたら、もう前に進めないじ
ゃないですか?だから、もうそれは終わったことだし、今度は絶対同じミスはしないように頑張っていこうと か、そんな風に切り替えしていこうっていう連続です。
辞めて行く人は多いですよね。遅刻して謝りづらいので、もう現場に来れずに、そのままズルズルと居なく
なっちゃうとか、なんて言うか、怒られたらそこで凹んでおしまいって子も結構多いですよ。神経が太いんで しょうかね?残ってる人たち(笑)」
彼女が最後の打ち合わせの後に、こう言われたんですね。
「りんこさん、私、中学受験ってあんましイメージもなかったと思うんですけど、勉強するっていいなーっ
て、自分もしとけば良かったなーって痛切に思います。嫌いなものを無理強いさせてとか、机の勉強だけが勉 強じゃないとか言いますけど、そんなことないですね。やっぱり知識は知識です。その積み重ねなんですよ ね、きっと。今ね、猛烈に私も中学受験しとけばって言うか、りんこさんたちのお子さんたちが羨ましいで す。勉強できる環境にいられるって、こんないい事はないですよ。この子達が大人になるのが楽しみですよ ね。自分もこれからもっと頑張らないとねって思いました。本当に久々触発されました。ありがとうございま す。なんかとってもいい番組に出来そうだし、そうなるようにスタッフ全員で頑張りますんで見ててくださ い」
「いい番組にする」という言葉は、殆どのスタッフさんから直接かけてもらいました。りんこにとって、意
外とも望外な喜びとも言えるような空間でした。
収録時、床に中腰になってカンペを出したり、大きな声でスタジオをまとめていた人は彼女です。
今日も何処かのスタジオで彼女の明るい声が響いていることでしょう。
「ハイ、次、マルチ(画面)行きます!」
完
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