これでいいのかな?ULTRA-TRAIL Mt. FUJI

 

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2012.5.12

●最終調査の結果

 ウルトラトレイル本番前に出来る最後(明日13日から一週間仕事で出張となるため。)となるヨタカ調査を10日の夜実施した。ヨタカは夜行性なので日没後に囀りが聞かれたら繁殖の可能性が高まる。そこでコース上で繁殖する可能性のある場所に日没後の1730分に入った。幸いなことにヨタカの声は聞かれませんでした。この時点では、コース上で繁殖活動に入っているヨタカはいないということになる。

 ただし、安心してばかり入られない。ヨタカの渡来は比較的遅いので、10日からレース本番の18日までの間にヨタカが渡来し繁殖に入る可能性は否定できない。ヨタカの産卵時期は一般的に6月に入ってからというので、レース前に渡来・産卵しないことを祈るしかない。

 次に須山登山道から高圧線にコースが移る辺りで観察されたミゾゴイについて。この鳥も夜間の鳴き声を確認する必要のある種である。観察場所に夜間1時間程度登山道を登るのは私には出来ない。そこで、車で接近できる最も近い場所で鳴き声の確認調査を行った。これも鳴き声を確認することは出来なかった。調査時に鳥自体が生息していなかったのか、距離がある(1.5km)ために聞こえなかったのかは不明である。

 

尚、野鳥の会ではコース上に一定の区間を設定し、レース前とレース後にラインセンサス(生息数調査)を行い、レースの影響を調べることになっている。

2012.4.29

●新たな懸念

 28日、翌日の探鳥会の下見とUTMFコースの下見を兼ねて十里木から須山口登山道を歩いた。これまで影響が心配される貴重種で想定していなかった鳥を観察した。ミゾゴイである。オオタカやヨタカよりもランクがずっと上の鳥である。この鳥が正にコース上で採餌をしていた。もし繁殖するようだと大変なことになるかもしれない。

 ただ、見た場所の環境はとてもミゾゴイが繁殖しそうもないところであった。(しかし、直ぐ近くの須山口登山歩道沿いはあちこちで地下水が湧き出し、裾野市の水源となっている。十里木湿原という呼び名まである。その意味ではミゾゴイの環境とも言える。)時期がちょっと早いので、繁殖個体ではなく渡り途中の観察であることを祈りたい。

 ヨタカの繁殖可能性の高い所と同様、今後頻繁に調査する必要がありそうだ。

 

2012.3.23

UTMFのコースが漸く発表されました

 昨年の12月には発表されることになっていたコースの概念図が3月14日に発表されました。その後19日には高低差が発表されましたが、詳細図は未だに明らかになっていません。⇒http://www.ultratrailmtfuji.com/

大会開催のふた月前になって漸く発表というのは、これだけ大きな大会では異例のことではないでしょうか。コースは以前に実行委員から説明されていたものから大きな変更がなされていました。それは富士山南西から西を通過して本栖湖に至る部分です。以前は東海自然歩道を利用して朝霧高原の西端、つまり天子山地のふもとを通り本栖湖に至るものでした。発表されたコースでは、A8の西富士中を出た後に天子ヶ岳に登り、そこから長者ヶ岳、毛無山、端足峠を経て本栖湖に下るというものです。コース全体でも最も標高の高い部分への変更です。

このコース変更によって、私が心配していた麓集落近くのオオタカ一番は取り合えず安全になりました。しかし、そのほかにもコース沿いには数多くのオオタカが繁殖しているはずです。また、新しくコースに設定されたことにより別の野鳥が影響を受けることになるわけで、全体としては改善は殆どないといえます。また私たち野鳥の会では影響調査の計画を練り直さなければならなくなりました。

    影響を受ける可能性の高い貴重種オオタカについて

 オオタカは人里周辺の林で繁殖するタカです。標高が余り高いところでは繁殖しません。標高1000メートルを越えると生息数が少なくなります。発表されたコース概念図と高低差を見ると、コース周辺でオオタカが高密度で繁殖している可能性が高いのは、A7こどもの国からA8西富士中あたりです。現在、富士山南麓のコース間近で繁殖するオオタカ一番を把握しています。この番について、今年の繁殖状況を調査することにしました。大会開催時に既に孵化していればよいのですが、抱卵中の場合には最悪繁殖放棄という事態も考えられます。一般的に静岡県東部では5月20日頃はまだ抱卵中の可能性が高い!

 また来年以降のこともありますので、コース沿いでテリトリーを構えているオオタカを出来るだけ多く把握するための予備調査も行います。何れにせよ、詳細図の発表が待たれます。

2011.10.19

●ULTRA−TRAIL Mt.FUJI(ウルトラトレイル マウントフジ UTMF)って知っていましたか?

 ランナーの間でトレイルランニング(略してトレラン)が最近人気になっているそうです。トレイルとは人の踏み跡の意ですが、登山道、遊歩道、林道等々山の中の起伏のある道を走るのがトレランらしい。そのトレランのレースで世界最大の大会にUTMB(「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」http://www.ultratrailmb.com/accueil.php)がある。モンブラン山群を巡る100マイルもの距離を走り抜けるレースである。NHKのBSで10月10日に放映され(10月22日に再放送あり)、ご覧になった方もおられよう。これに参加し2009年には3位に入賞したプロのランナー鏑木毅(http://www.trailrunningworld.jp/ )氏が日本でもこのような大会を開催したいということで企画したのがウルトラトレイル・マウントフジ「UTMF」( http://www.ultratrailmf.com/ )というわけである。

 コースは富士山を一周する約100マイルが予定されている。(正式なコースは12月に発表予定)開催に当たっては鏑木氏を委員長とする実行委員会が結成され、名誉実行委員に三浦雄一郎氏他の著名人が名を連ね、周辺市町村の協力も得ている。実はこのレースは今年の5月に開催予定であったのだが、震災のため中止となった経緯がある。2012年5月に満を持して第一回の大会を開催しようとしている。

 さてこの大会の開催に関して、実行委員会は関係団体に対し説明責任がある。野鳥の会も関係団体のひとつであることは間違いない。今年の2月(開催予定の3ヶ月前!)に実行委員の一人で富士宮市在住の三好礼子氏他3人の方が野鳥の会の幹事会に来て説明をされた。このとき幹事からは大会の開催に対して否定的な意見が続出し、開催時期や場所(コース)等について改善を求めた。(今年は地震の影響もあり中止)そして先日の10月16日再び実行委員が幹事会を訪れて2012年の開催についての説明をされた。

 とりあえずどのような主旨の大会であるのかを知っていただくために上記のサイトをご覧頂きたい。その上で2012年の大会開催について野鳥の会や私の意見、要望をこの場で述べてみたい。

2011.11.7

●野鳥の会南富士の考え方 

さて、私たちは基本的にこの大会の開催には反対です。に何故私たちが反対するのか?今回は野鳥の会南富士の代表が会報「さえずり」の中で会員に対して呼びかけた意見をご紹介しよう。

ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)開催について

日本野鳥の会南富士代表 影山 秀雄

来年5月に”ウルトラトレイル・マウントフジ“という催しが計画されています。内容は〔富士山の周囲約160kmを登山道・歩道・林道などをつなぎ、人力のみで走り歩き続ける〕というものです。今年2月の幹事会に実行委員の方が3名出席され、「この競技を行うことで自然に対する影響はあるか?あればアドバイスを欲しい」と話されました。参加者が2000人という規模の大きな催しであることから、野鳥の会としては「繁殖期にこれだけの規模の競技が行われた場合、野鳥の繁殖に大きな影響が出るので、この季節の開催だけは避けて欲しい」と提言しました。

 当初の開催予定は今年の5月だったのですが、3月に起こった大震災を受けて延期され2012年5月18日〜20日に開催することが決定されました。これを受けてUTMF実行委員の方が再度10月の幹事会に出席され、我々の要望に反して開催が野鳥の繁殖期の真っ只中になってしまった経緯を説明していただきました。「競技に際しては野鳥などの自然に対して十分に配慮し、競技者にもこの事は徹底します」との言葉もありましたが、実際にこの季節に協議が実施されれば多くの野鳥たちの繁殖放棄(ヒナや卵の死亡)が懸念されることから、野鳥の会としては到底賛成できるものではなく、『反対』の意思表示をしました。今後は反対運動を起こすのではなく、競技開催の前後に野鳥の生息状況を調査し、競技が野鳥たちにどのような影響を与えたかの具体的な記録をまとめ、今後の開催に対しての提言ならびに反対のための資料を作成したいと思います。

 

2011.11.14

●私の考え方

 基本的に南富士代表の考え方と同じである。野外活動は多かれ少なかれ自然に負荷を与えるものだと思う。これはトレランに限らず全ての活動について言えよう。バードウオッチングだって例外ではない。鳥見をするために色々なところ立ち入ればそこの植生を踏み荒らしてしまうかもしれない。そこに生息している生き物の生活を脅かすこともあるでしょう。だからといって全ての野外活動を否定するわけにはゆかない。大事なのは、自分の活動が自然に負荷を与えているという意識を持つこと、そしてその負荷を可能な限り少なくするように行動しようとすることではないだろうか。

 さて、ウルトラトレイル・マウントフジに何故私は否定的なのか。私は鳥屋なので、野鳥の生息に対する負荷という点から述べてみたい。様々な問題点があるのですが、突き詰めればこのイベントが余りに大規模であること、そして開催時期が野鳥の繁殖期にあたっていること、この2点に集約できると思う。

5月の下旬といえば鳥たちは子育ての真最中です。種によっては早くも孵化したヒナが巣の中で給餌を受けているかもしれません。たいていの鳥はまだ抱卵中でしょう。そんな時期に巣の近くを2000人もの人が延々何時間にも渡ってひっきりなしに走り抜けて行く光景を想像してみてください。ご存知のように繁殖期は鳥たちは非常に神経質になって、警戒心が強くなります。抱卵中の鳥が警戒して巣に近付かなくなることが心配されます。いわゆる営巣放棄の可能性があります。勿論卵は冷えて死んでしまうかもしれません。林道、登山道、遊歩道等の環境を利用して繁殖する鳥も居ます。ミソサザイ、オオルリ、メボソムシクイ、ルリビタキ等等。

鳥に限って言えば、繁殖期さえ外しての開催であれば決定的なダメージを与えることはまず無いでしょう。野鳥の会南富士では繁殖期だけは開催しないよう強く求めたのですが、残念ながら受け入れていただけませんでした。

コースの地権者や自治体との関係等様々な理由はあるとのことですが、開催時期の変更が出来ない最も大きな理由はスポンサーの意向とのこと。このイベントと連携するウルトラトレイル・デュ・モンブランの両方のスポンサーとなっているスポーツ用品メーカーが、フジでモンブランをPRしたいというのである。つまりモンブランが開催される8月より前にフジを開催したいというわけである。経済的に成り立たなければフジでの開催はおぼつかないわけであり、スポンサーの意向を無視するわけにはゆかないということか。

 

次回は具体的にコース周辺に生息している種をリストアップしたい。特にRDBに記載されている貴重種を例に影響を推測してみたい。

 

2011.11.24

●コース周辺に繁殖期に生息する鳥種は35科90種

 「静岡県の鳥類第二版」に記載のある種に渡邉の観察種を加えました。

赤いセルの種は静岡県版RDBに記載のある種です。

 

1

ウ科

カワウ

51

 

マミジロ

2

カモ科

マガモ

52

 

クロツグミ

3

 

カルガモ

53

 

アカハラ

4

タカ科

ハチクマ

54

ウグイス科

ヤブサメ

5

 

トビ

55

 

ウグイス

6

 

オオタカ

56

 

コヨシキリ

7

 

ツミ

57

 

オオヨシキリ

8

 

ハイタカ

58

 

メボソムシクイ

9

 

ノスリ

59

 

エゾムシクイ

10

 

クマタカ

60

 

センダイムシクイ

11

ハヤブサ科

ハヤブサ

61

 

キクイタダキ

12

 

チョウゲンボウ

62

 

セッカ

13

キジ科

ヤマドリ

63

ヒタキ科

キビタキ

14

 

キジ

64

 

オオルリ

15

チドリ科

コチドリ

65

 

サメビタキ

16

シギ科

イソシギ

66

 

コサメビタキ

17

 

ヤマシギ

67

カササギヒタキ科

サンコウチョウ

18

 

オオジシギ

68

エナガ科

エナガ

19

ハト科

アオバト

69

シジュウカラ科

コガラ

20

カッコウ科

ジュウイチ

70

 

ヒガラ

21

 

カッコウ

71

 

ヤマガラ

22

 

ツツドリ

72

 

シジュウカラ

23

 

ホトトギス

73

 

ゴジュウカラ

24

フクロウ科

フクロウ

74

キバシリ科

キバシリ

25

ヨタカ科

ヨタカ

75

メジロ科

メジロ

26

アマツバメ科

ヒメアマツバメ

76

ホオジロ科

ホオジロ

27

 

アマツバメ

77

 

ホオアカ

28

キツツキ科

アオゲラ

78

 

ノジコ

29

 

アカゲラ

79

 

アオジ

30

 

オオアカゲラ

80

アトリ科

カワラヒワ

31

 

コゲラ

81

   

ウソ

32

ヒバリ科

ヒバリ

82

 

イカル

33

ツバメ科

ツバメ

83

ハタオリドリ科

スズメ

34

 

イワツバメ

84

ムクドリ科

コムクドリ

35

セキレイ科

キセキレイ

85

 

ムクドリ

36

 

ハクセキレイ

86

カラス科

カケス

37

 

セグロセキレイ

87

 

オナガ

38

 

ビンズイ

88

 

ホシガラス

39

サンショウクイ科

サンショウクイ

89

 

ハシボソガラス

40

ヒヨドリ科

ヒヨドリ

90

 

ハシブトガラス

41

モズ科

モズ

 

 

 

42

 

アカモズ

 

 

 

43

カワガラス科

カワガラス

 

 

 

44

ミソサザイ科

ミソサザイ

 

 

 

45

イワヒバリ科

カヤクグリ

 

 

 

46

ツグミ科

コマドリ

 

 

 

47

 

コルリ

 

 

 

48

 

ルリビタキ

 

 

 

49

 

ノビタキ

 

 

 

50

 

トラツグミ

 

 

 

 

2011.12.3

●最も影響が心配される鳥は?

UTMFのコース沿いで繁殖する野鳥全てが大なり小なり影響を受けることは否定できない。その中で数が少なく、減っている貴重種の中で、繁殖放棄や雛・卵の死という決定的な影響を受けそうな種を取り上げて具体的に検証してみよう。

上記の赤枠で表記した貴重種のうちで影響が大きいと予想されるのは、地上営巣するヨタカと大型で特に神経質な猛禽類である。ヨタカは恐らく御殿場から裾野市にかけての比較的標高の高いところに設定されたコース周辺で繁殖が予想される。この鳥は裸地に直接産卵し暖める。そのためコースとして使われる遊歩道や林道上に巣がある可能性が高い。しかし、巣の位置がコースから数十メートル離れていれば恐らく影響は少ないと思われる。一方原則として樹上に巣をかける猛禽類は兎に角神経質である。特に大型になればなるほど繁殖期の警戒心は高まる。種にもよるが、営巣地とコースの距離は200〜300メートルは欲しいところである。

コースの中でも子供の国から白糸の滝、そこから東海自然歩道を北にたどり山梨県との県境付近にはオオタカの繁殖適地である環境が広がっている。恐らくかなりの数の番が生息しているはずである。その中で昨年の6月初旬に行われた野鳥の会南富士の探鳥会の際に観察されたオオタカを取り上げてこのイベントの危険性を述べてみたい。

 

探鳥会が行われたのは6月12日、毛無山の東に広がる麓集落の周辺である。このとき私の参加していたグループは、足にツグミ大の小鳥を掴んで西に飛ぶオオタカの雄成鳥を発見した。猛禽調査を仕事としている私は仕事柄身についた習性で、オオタカが見えなくなるまで望遠鏡でその姿を追った。オオタカはUTMFのコースとなっている東海自然歩道の西に広がる杉林に姿を消した。このオオタカの行動が何を意味するか?間違いなく巣でお腹をすかせた雛のところに餌を運んだのである。つまりコースの近くにオオタカが巣を構えていた可能性が極めて高いということである。

 

ここでオオタカの繁殖スケジュールを見ておきたい。地域によって、また個体によって時間的な差があるのだが、静岡県東部のこの辺りでは平均すると3月になると巣作りを開始し、4月の中下旬に産卵、5月下旬に孵化、6月下旬に巣立ちする。6月12日の探鳥会で見られた餌運びはこのスケジュールにぴったりと符合する。UTMFの行われる5月20日は孵化する直前のステージに当たる。

 

一般に猛禽類に限らず鳥類は繁殖期は神経質になり警戒心が高まるが、繁殖ステージの前期ほど高い傾向がある。敏感度が極大となるのが抱卵期から孵化直後である。そうするとUTMFの開催時期は正しくこの極大期にあたる。この時期は巣に接近することは絶対に避けなければならない。不用意に近付くと、危険を感知した親は営巣を放棄してしまう可能性がある。我々が猛禽調査で巣の踏査をする場合はこの時期を避け、敏感度がより低下した巣立ち前に行う。その場合も巣の近くに30分以上滞在してはならないと言われる。

もし仮にこのオオタカの営巣地がコースの近くにあり(250メートル以上離れていれば安全?)、この時期(抱卵期)に大会が開催された場合には延々数時間に渡って途切れることなく巣に人が近付くわけであり、営巣放棄の可能性は非常に高くなるものと思われる。巣の位置が特定されていない現時点では、あくまでも推測であり、確たることは言えない。少なくともこのような危険性が予想されるのであるから、事前に調査を行って危険でないことを確認してから大会を実施すべきである。

来年の3月以降、このオオタカの巣の位置の特定を試みるつもりである。もし特定でき、それがコースから至近距離であった場合には改めて大会の中止または延期を申し入れたい。

 

鳥の生息に関して言えば、大会を非繁殖期に開催することでこのような危険性は殆ど避けることが出来るのですが、スポンサーが経済的なメリットの点から難色を示しているという。実行委員の中にも非繁殖期の開催を主張される方も居るらしいのですが、大きな力には太刀打ちできないのだろうか?