シモッホ・デ・マドリッド(1)


 2004年すどう美術館の「スペイン短期留学制度」に応募し選にもれたものの、マドリッド在住画家の山口敏郎さんのご好意でゲストハウスをかしていただけることになり、またシルクロード企画にもご協賛いただいて、2005年6月始めの2週間、マドリッドに滞在することができました。
 山口さんに手続していただきスペイン美術家協会のアトリエで連日デッサンとクロッキーの会に参加し、短いながらも観光客としては経験できない時間を過ごすことができました。

ご報告を兼ねて雑記のページを開設します。スペインに少しでも興味を持っていただけたら幸いです。



Jの落とし穴

 スペイン人は英語を話さない、という定説は正しい。知っていても話さないおフランス人と違って、圧倒的に判らない人が多いからだ。学校で専門のコースを取った人でないと会話はできない。ビジネスマンはさすがに使える人も多いが、一般的にはむしろ、南米から出稼ぎに来たコロンビア人やメキシコ人のほうが通じる確率は高い。
 私はスペイン語は全くできなかったが、名前だけでも分かってもらおうと名刺を持っていった。だが、名刺を渡すと皆口々にシモッホ!と読む。 「J」 がHの発音になるスペイン語ではSIMOJOはシモッホになってしまうらしい。 城島さんはもっと大変なことになるだろう。
 では、どうしたらシモジョウと読んでもらえるかといえば、SIMOLLOと書けばいいとのこと。
シモロー・・・・・
シモッホとどちらがましか、難しい問題だ。次回スペインを訪れるまでにゆっくり考えたい。




行き倒れ?



ヌーディストも安心して走れます
親切な泥棒

 翌日から伊豆に出張という知人に 「いいですね、マドリッドは温泉も無いし、日本人は首をしめられて金を盗られるらしいですよ」 などと冗談をいいつつ日本を後にしたのが5月末。
 ミラノ乗り継ぎのアリタリア航空は予想どうり(?)30分遅れの離陸で23:30マドリッド着となる。ヨーロッパ一の危険都市とガイドブックにあったので覚悟して空港のドアを出たら、意外にも東洋人が多く出迎えに来ていて、韓国人らしき男に「アニョハセヨー」と声をかけられた。

マドリッドでの第一声がハングルとは・・・・・
南米についでアジアからの出稼ぎもふえてきたらしい。山口さんが迎えに来てくださり、終電の地下鉄に間に合った。日本とおなじで1時台まで運行していて、酔っ払いも居らず、危険をかんじる事は無かった。
 その後滞在中独りで夜遅くなった時も同様だった。11時を過ぎても公園でサッカーをしていたり近所のご老人が集まって話しこんでいたりと、日本よりのどかだ。
ちょうど2012年オリンピック誘致活動中だったこともあり、治安対策に力を入れていて駅や車内で警備員をよく見かけた。首しめ強盗もここ数年で激減したとの事だ。

 というわけで首も無傷のまま帰国できた。今まで旅行中に物を取られたことが無いのが自慢だったが、今回1度だけ2人組に狙われた。2日間アーチストの利根川さんとご一緒させていただいた際、観光客を装った2人組の女の子に英語で道を尋ねられ、大きな地図を広げられた。 利根川さんがかばんを探られたのに気付き、難を逃れたが、やはり、狙われたのは私ではなかった。
 帰国後、後輩にそのはなしをしたら、「下条さんから盗ったらあまりに可哀想だ、って格好だったんじゃないの?」という一言が返ってきた。今回は穴のあいたジャケットや汚れた古着のコートはやめ、かなり小奇麗な格好をしたつもりだったのに・・・・
 次回、がんばります。(何を?)



シルクロから見た大通り

シルクロ

CIRUCULO DE BELLAS ARTES…スペイン美術家協会マドリッド中心部、スペイン銀行の近くにビルがあり、美術書専門店やギャラリー、小コンサートホールも入っている。
6Fに4つアトリエが有り、月〜土の16:00〜22:00会員に開放されていて自由に描く事が出来る。 2部屋は油彩用(人体モデルと静物)、他が人体デッサンとクロッキー用だった。
山口さんに手続きをお願いし私も1ヶ月の短期会員に。 さすがに連日6時間はきつかったので18:00から参加した。 時間曜日共に制約は無い。基本的に1ヶ月45ユーロで誰でも会員になれるが、広く宣伝していないうえ、入館時にはチェックがあり、入会手続きはスペイン語なので旅行者がちょっと参加してみたいと思っても難しいだろう。
1Fには大通りに面して由緒あるカフェがあり、ランチもとれる。
シャンデリアや重厚な大理石の彫刻がある一方で傍らの柱には妙にマンガっぽいヌードのイラストが描かれていたり、内装を見ているだけでも楽しい。








2005年展覧会フリーマーケット展
もごらん下さい

比較クロッキー論
     

 シルクロに講師はいない。個々人が自主的に描く場だ。画家、美大生、デザイナー、サラリーマン,リタイア後絵を始めた人…集まる人も多様。 
 初めて行った日はご老人が多くて驚いたが後で聞いた話では丁度試験期間だった為学生はお休みしていたとの事。 また、仕事を持つ人は週末の出席率が高いようだ。日本人が多いのにも驚いた。 シルクロの近くのギャラリーで個展をしていた男性や、リタイア後移住した女性、美大留学を諦め自主的に学んでいるという青年、ご主人の赴任で来た奥様方など。(もっとも奥様方は情報交換と次のランチの約束が主な目的のようでわきあいあいとしていた)。
 モデルは専属で男性1人、女性3人の交代制。ポーズは時間ごとに30分、15分、5分。プロ意識が強く、描く側の立場で考えて様々なポ-ズをとってくれた。モデルを囲んで描画板のついた長椅子がセッティングされ、それにまたがって描く。鉛筆かペン描きに絵の具で着彩、というオーソドックスな手法が主流だった。
 日本で通っている会場と勝手が異なり、かなり戸惑った。神楽坂のセッションハウスというギャラリーで毎月クロッキーの会があり参加しているが、モデルはダンサーで主にムービングを描くためポーズは1分、2分、長くて5分。
 床に紙を広げて描くので大きい紙にインクを垂らしたりにじませる手法が可能だ。 美大生はもちろん、版画家、彫刻家、デザイナーなど異なる分野の人が多く、人体を描く事自体よりも日々携わる制作にプラスして新しい方法を模索する人が多い。 線にこだわったり、量感の表現をテーマにしたり、描き方も様々。 素材もインク、和紙に墨、ノートPCを持ちこみ描画ペンで入力するなど幅広い。
 そんなこともあって、海外ではどんな風に人体をとらえ表現しているのか興味があったし、異なる環境で自分の絵にどんな化学変化が起こるのかかなり楽しみにしていたのだが…世の中そんなに甘くなかった。
 シルクロでは時間が長い分いじくりまわして余分な線をひいてしまったと反省。なにより、モデルの肉体そのものが美しく、(まるでミケランジェロの彫刻の様!)形を写すことに囚われすぎ、表現する事を見失った。 完全にモデル負けしてしまった。自分に納得がいかず、旅行先で初めて日本に帰りたくなった(約5分)・・・5分後、初心にかえってデッサンをやり直す機会ととらえなおすことにした。
 だが、画材屋でさらなるギャップに愕然とすることに…



ビセンテさんのアトリエ 
スペイン画材屋事情
     

 マドリッドの画材屋では買い物をしないと山口さんが言っていた訳が行って見て良く判った。 3件回ったが圧倒的に品物が無い。 ペン先はセットで無いと売っていないし、インクは水性とアクリルの2種類のみ。色つきの紙も2種類、クラフト紙も無かった。
 仕方なく封筒で代用したが、日本の世界堂なら紙は迷うほどの色と種類が置いてあるしアクリルインクだけで数種類から選ぶことができる。
 スペインといえば、ダリ、ミロ、ピカソとアートなイメージが強いだけにそのギャップにショックを受け、また日本で絵を描くということがいかに恵まれた環境であるかを始めて思い知らされた。
 スペイン旅行でスケッチしたい、と言う方は日ごろ使い慣れた画材を日本から持参することをお勧めします!


下条幸子 S.Simojo

〒194−0041
東京都町田市玉川学園 8−2−17

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