Have a Talk
当たり前だが、音楽は感じるものだ。本当に感動したときは「うおぉカッコええ」とか「サイコーッすよ、サイコー」とかいう言葉しか出てこない。それがこんなHPなんぞを作り始めると、少しでも人に伝わった方がうれしいし、自分の記録の意味もあるから、ああでもないこうでもないと表現を考えてしまう。その作業自体嫌いではないが、ちょっと違うなと思うこともある。もう少し素朴に、ふだんのしょうもない話も含めて記録する方法はないものかと考えて対談形式でやってみることにした。「好き者」たちに登場してもらい、ひたすら歌を語ります。
第5回 選曲職人宣言。ソウルフル披露宴を演出せよ
神戸・三宮「SugarFree」のお客さんで、ブルース〜ディープソウル好きのヨースケ君が近々結婚することになった。このよき日を演出する選曲をマスターのよっさんが頼まれたという話から、「結婚BGM選曲対談」が持ち上がった。かつては僕も友人の披露宴で歌ったり選曲したりすることが時々あって、こっちまで晴れがましい気分になって楽しんでいたのだけれど、もはやこの歳になると周囲に結婚する人は激減、たまにいてもオーソドックスな披露宴をやる人はおらず、ちょっと寂しく思っていた。そこで、この機会に便乗して大いにおめでた気分を味わおうという企画。よっさんと僕が選ぶのだから、当然世の中的に見ればひどい偏向選曲になるわけだが、われながらソウルフルでドラマティック、それでいて「主役はあくまで新郎新婦」とわきまえた心憎い選曲で(笑)、「ブライダルBGMプランナー」の名刺を作ろうかと思ったほどだ。一般的な披露宴の流れに合わせてMJセット、よっさんセットを各14曲。実は2次会まで想定して計20曲を選んでいたのだが、よっさんに「ノリすぎや」とたしなめられたので、それはまた別の機会に。
■頭の中にストーリーが…
MJ なんちゅうても人生の一大慶事ですからね。手放しの祝福あり、甘いムードあり、涙・涙あり…と、ドラマティックに行きましょうよ
よっさん 何をそんなに盛り上がっとんねん(笑)
MJ いやあ、なんか人の結婚式ってうれしいんですよね。オモロいやないですか。「いよっ、ご両人!」みたいな(笑)まずは客入れですね。数曲必要でしょうけど、とりあえずは1曲ずつで。僕は、Otis&Shuggで「Thank You for My Baby」。これね、イントロの2本のギターの絡みがええ。何かが始まりそうな、こう、甘い予感というか。歌に入ると、わりと淡々としてるんですけどね
よっさん まーた、お洒落ぶって。しかも聴き所はイントロやて。頭から聴かんかったら意味ないやんか。お客さんも遅れられへん(笑)まあ最初はほのぼのした温かい雰囲気作りが大事やからね、俺は60年代のスティーヴィーでいこうかな。「Hey Love」で。ちょっと短いのが難やけど、ええ感じで和むやろ
MJ 60年代のスティーヴィーはいいセンですね。僕も「For Once in My Life」あたり考えましたけど、スティーヴィーは違う場面で別の曲を使いますわ。ほんで、客が揃ったら新郎新婦入場ですよ。いきなり重要なシーン。最初のヤマ場です
よっさん 俺はちょいベタやけど、過去に知り合いの結婚式で使った曲で「Love's Theme」をいくわ。イントロでジャーンと扉が開いて、フワァ〜と盛り上がっていく感じ。タイトルからして「愛のテーマ」やしね。当然Barry Whiteのインストじゃなく、その手下の3人組Love Unlimitedがやってる歌入りバージョンね
■ MJのウェディング14曲
Explores Your Mind
Al Green
Atlantic Unearthed:
Soul Brothers
(Donny Hathaway)
Diana Ross
& Marvin Gaye
Front Page
RENT Soundtrack<開場>
Thank You for My Baby / OTIS & SHUGG
<新郎新婦入場>
Slow Jam / MONICA & USHER
<乾杯〜歓談その1>
Sha-La-La(Make Me Happy) / AL GREEN
Since You've Been Gone(Sweet Sweet Baby)
/ ARETHA FRANKLIN
Love,Love,Love / J.R.BAILEY
What a Woman Really Means / DONNY HATHAWAY
<ケーキ入刀>
Pledging My Love / DIANA ROSS & MARVIN GAYE
<スライド上映>
Those were the Best Days of My Life
/ THE MODULATIONS
<新婦お色直し退場>
Why I Feel This Way
/ TAKE 6 feat. STEVIE WONDER
<歓談その2>
I Let You Go / RICKY FANTE'
I'm Saving Your Place
/ GERALD LEVERT & EDDIE LEVERT
<お色直し入場〜キャンドルサービス>
You Make Me Feel Brand New / FRONT PAGE
<親への手紙〜花束贈呈>
If This World were Mine
/ LUTHER VANDROSS & CHERYL LYNN
<送賓> Seasons of Love / RENT Soundtrack
MJ あ、実際に使ったことあるんや。評判はどうでした?
よっさん 自分的には大満足やったね(笑)
MJ じゃ僕も、披露宴の生演奏BGMをやった時に入場曲に選んだ「Slow Jam」を、MonicaとUsherのデュエットバージョンで。若い2人の秀逸なデュエットですよ。サビの「Play another slow jam…」のコーラスに乗って新郎新婦が入ってくるわけですわ。ロマン亭チックやなあ
よっさん へえ、生演奏BGMでやったん? 評判はどうやった?
MJ まあ、自分的には大満足でしたね(笑)で、続いては開会の辞とか仲人の挨拶とかがあって、乾杯ですな。僕はAl Green「Sha-La-La」で華やかに軽やかに。サブタイトルが「Make Me Happy」ですよ、完璧でしょ。「カンパーイ!」ときたら、すかさず「Shalalalala…oh,Baby」と歌を出してほしいですね
よっさん たしかに頭出しのタイミングは大事やな。間違えたら間延びするもんなあ。俺は「Feel Like Making Love」を選んだけど、Jocelyn Brownバージョンのお洒落なダンサーにアレンジしたやつを。男声のコーラスはHeatwave。この絡みはなかなかおいしいやろ。で、このままご歓談タイムに流れ込む、と
MJ おおっ!このド頭のタイコのフィルインなんか、ばっちりですな。これを合図に場の空気が緩んで、「ミユキ久しぶり〜、最近どうしてんの」という会話とか、料理を取りに立ったりするさざめきが起こるわけですな。あー、目に浮かぶなあ
よっさん ミユキってだれやねん(笑)料理もバイキングの設定に決まってるんかいな
MJ 頭の中にいろいろとストーリーがね(笑)ご歓談タイムもきっちり練ってまっせ。前半と後半の2回ありますけど、それぞれにトーンを統一しました。前半は60's後半〜70's前半のニューソウル勢で。Donny Hathawayの最近出た未発表曲、これがムチャクチャええので、どうしてもかけたい。ダニーは「I Know It's You」のクライマックス感も捨て難いんですがね。「Love,Love,Love」もよく使われる曲ですけど、ここは原作者のJ.R.Baileyで揺れましょう。花嫁が席を外す2回目の歓談タイムは、新郎に思う存分ディープな歌を堪能させて、感慨と後悔にふけってもらおうと(笑)O.V.WrightとかJames Carrでもええぐらいですな
よっさん 結婚式でO.V.Wrightはキッツいな(笑)ダニーの未発表曲はたしかにええね。こっちでも使わせてもらうわ。その前に80'sメロウミディアムを2連発ね。サンプリングに多用され、ヤングにも大人気の(笑)DeBarge「I Like It」から始めよう。2回目の歓談は、ひな壇に1人残った新郎が初夜に思いを馳せるというストーリーね。アリ・オリーのやつはタイトルだけで十分伝わるでしょう。「ベッドルームでドラマを起こせ」みたいな(笑)
MJ 初夜て…おっさん丸出しやん(笑)次のケーキ入刀なんですが、僕はダイアナ&マーヴィンの「Pledging My Love」を。「Forever My Darlin',My Love will be True…」の熱唱ですよ。かつて先輩の披露宴でかかって「うわ!クッサ〜、でもカッコええ〜」と強く印象に残りまして。この2人のデュエットアルバムって「売らんかなの企画もの」「別々に歌録りしてソウルがない」とか酷評されてますけど、曲によっては結構ええですよね
よっさん 俺は考えに考えた末にthe Controllersの「My Love is Real」で
MJ く〜っ!エエのん選びましたなあ
よっさん そやろ。彼ら一世一代の名バラードが「2人の初めての共同作業」を演出するわけや。そういえば昔、知り合いの選曲をやった時、さあケーキ入刀!というところで、ホテルの人が勝手に曲を差し替えてたことがあってなあ。ホイットニーの「アンダ〜♪」(I'll Always Love You)やで(笑)コケたわ
■ よっさんのウェディング14曲
In Heat
Love Unlimited
All This Love
DeBarge
Legacy
The Temptations
Ali
Once Upon a Dream
Enchantment<開場>
Hey Love / STEVIE WONDER
<新郎新婦入場>
Love's Theme / LOVE UNLIMITED
<乾杯〜歓談その1>
Feel Like Makin' Love / JOCELYN BROWN
I Like It / DEBARGE
Very Special / DEBRA LAWS
What a Woman Really Means / DONNY HATHAWAY
<ケーキ入刀>
My Love is Real / THE CONTROLLERS
<スライド上映>
I'm Stone in Love with You / THE STYLISTICS
<新婦お色直し退場>
You are Necessary in My Life(The Wedding Song)
/ THE TEMPTATIONS
<歓談その2>
Drama in the Bed Room
/ ALLIE OLLIE WOODSON
Love Letter / ALI
<お色直し入場〜キャンドルサービス>
Love Songs are Back Again / BAND OF GOLD
<親への手紙〜花束贈呈>
It's You That I Need / ENCHANTMENT
<送賓>
Ain't No Mountain High Enough
/ MARVIN GAYE & TAMMI TERRELL
■膨らむ妄想 涙の大団円
MJ 2人の生い立ちを辿るスライドショーが終わると、いったん花嫁が退席するわけですが…
よっさん どこまで細々と設定しとるねん
MJ 僕的にはここもひとつのヤマ場です。Take6をバックにスティーヴィーがもう「素晴らしい」としか言いようのない歌唱を聴かせる名曲「Why I Feel This Way」を持ってきました。ちょっとジャジーにコーラスとピアノが絡んでね、花嫁が輝いて見えること請け合いですな!
よっさん 力入り過ぎやて(笑)たしかにええムード持った曲やけどなあ。俺はじゃあ、同じくコーラスをフィーチュアするパターンで、テンプスの「You are Necessary in My Life」を。サブタイトルに「The Wedding Song」て付いてるしな。しかし、それにしてもお色直しに出て行くだけで5分間もかかるかぁ?
MJ まあまあ細かいことは気にしない(笑)で、いよいよ再入場〜キャンドルサービスですが、これは盛り上がりとともに長さが必要ですよね。テーブルごとに写真撮ったりしはるし
よっさん そうそう。ものすごく出席者の多い披露宴で、用意した曲が足りんようになって冷や汗かいたことがあるわ。なので、その辺を考えて選びました、Band of Gold。これはタイトルになってる彼らのオリジナル曲に、StylisticsやBlue Magic、Chi-Litesといった70'sコーラスものの名曲が次々とメドレーになってるトラックですわ。「Betcha by Golly Wow」「Side Show」、あんたも選んでる「You Make Me Feel Brand New」とか。10分以上ある上に、おとっつぁん、おっかさんにも分かる有名曲連発やから安心やね
MJ おとっつぁん、おっかさんに分かりますかねえ(笑)僕も「You Make Me Feel…」はあまりにもベタな曲なんで、Front Pageという懐かしの90's B級グループバージョンをチョイスしてみました。で、それが終わると、さあついに披露宴最大の泣かせ場、お手紙コーナーですよ。僕は前にGolden Coversに書いた責任上、ルーサーとシェリル・リンの「If This World were Mine」でいきますね
よっさん うーん、TavaresとかBrian Mcknightとかいろいろ悩んだんやけど、Enchantmentの名曲にしようか。「It's You That I Need」。エマニュエル・ジョンソンのハイテナーに泣かせてもらいましょう。でも、親への手紙って5分間も読むもんかぁ?
MJ そこはもう、読み始めから花嫁の声が涙で詰まって…という想定ですから(笑)号泣に次ぐ号泣、もらい泣きに次ぐもらい泣き、拍手に次ぐ拍手、そして大団円ですよ。この予定調和な伝統的所作こそがセレモニーたるもので、そうなってもらわな困ります
よっさん ムリヤリやな(笑)
MJ すべてが終わると、客が三々五々に立つざわめきに被さるように送賓の曲が流れてきます。いわばアウトロですね。ここに選んだのが最近の僕のハマり曲で、映画「RENT」のテーマ。1年という時間をテーマにした歌詞も良ければ、コンテンポラリーなゴスペル的展開を見せる曲も良し、リードを取る女優が若いころのアリサに、男優がマーヴィンに似てるのもポイント高い。ちょうど映画のエンドロールが流れるように披露宴がお開きになるわけです
よっさん 映画のエンディングということでいうと、俺の「Ain't No Mountain High Enough」も「タイタンズを忘れない」とか「永遠のモータウン」のラストを飾ってたね。大団円的締め括りにはふさわしい歌やな
MJ そして気分が高まったところで2次会の乱痴気騒ぎに突入していくわけですが…
よっさん だから、ノリすぎやっちゅうねん(笑)
(2006・7・17 神戸・三宮SugarFreeにて)
第4回 シュガフリ3周年。激論!「歌を聴け」選曲会議
ミュージックマガジンの「無人島レコード」とか、音楽サイト主宰者たちによる「俺の10枚」とか、気合の入ったオールタイム・マイベスト企画は楽しい。自分も、と思ったりもするが、本当にやり始めたらきっと楽しすぎて夜も眠れなくなるだろうと思って避けてきた。が、ついにその時が来た。神戸・三宮のソウルバー「SugarFree」が3周年を記念して、「歌」に焦点を絞ったコンピレーションCDを作る、その選曲を手伝わせてくれるという。うれしいが、難題でもある。アルバムどころか、曲単位だ。マスターのよっさんと僕が「歌を聴け!俺の20曲」を互いに出し合い、計40曲の中からCD1枚分を絞り込むことにした。やってみて痛感したが、「歌がいい」という以外に何の縛りもなく20曲を選び出すのは無謀だった。「あれは相手が選ぶだろうから任せよう」という駆け引きもあった。そんな狭間に落ちていった名曲名唄は数限りない。それでもまあ、それなりに統一性のある、充実した歌モノのコンピができたんじゃないかと思う。この対談は、その「選曲会議」の模様である。下に掲げた互いの曲リストは交換せず、1曲ずつ提示し合う形で進めた。
■ベタに攻めるか ヤングでいくか
MJ ではジャンケンで先攻ということになったので、僭越ながら僕から行かせてもらいますが…。あの、20曲選んでみて自分でも意外やったんですけど、あんまりコテコテ・ディープな感じにはならなかったんですよ
よっさん さては、ヨソ行きのチョイスやな。ナウでヤングな感じを狙ったか(笑)
MJ いやいや(笑)なんかねえ。ライブの曲順考えるみたいに、自分なりに「流れ」を意識してやってると、そうなったんですわ。とりあえずA面1曲目はこれです、Bobby Womackの「Games」。名盤「The Poet」(81年)のハイライト的名曲ですが。このボビーは気合入りまくりやけど、緩急も抜群。コーラスと半拍遅れて絡むところとか、天を突くおなじみの雄叫びファルセットとかね。おいしいわあ。デヴィッド・Tのギターもたまらんですよね。デヴィT好きの間では、これぞ彼のベストプレーという声もあるぐらい
■ 先攻 MJの20曲 Games / BOBBY WOMACK
I Apologize / GORDON CHAMBERS
It's Alright / PERRY & SANLIN
Love You Down / SOLO
I'll Come Running Back To You
/ SAM COOKE
We've Only Just Begun/ GLENN JONES
Reachin' For The Sky / PEABO BRYSON
I'm So Proud / THE ISLEY BROTHERS
Slow Motion / GERALD ALSTON
When Your Life Was Low
/ LALAH HATHAWAY
Midnight Train To Georgia
/ GLADYS KNIGHT & THE PIPS
You Don't Know Me / RAY CHARLES
We Don't / THE CONTROLLERS
Don't Ask Me / SOLID SOLUTION
Tired Of Being Alone / AL GREEN
Hooked On You / LEW KIRTON
If I Should Die Tonight / MARVIN GAYE
You Made Me Over / MELVIN DAVIS
Toast To The Fool / THE DRAMATICS
For All We Know / DONNY HATHAWAY■ 後攻 よっさんの20曲 I Want To Feel I'm Wanted
/ MAZE feat. FRANKIE BEVERLEY
Never Repay Your Love
/ ANTHONY WHITE
Slow Motion / GERALD ALSTON
Midnight Train To Georgia
/ GLADYS KNIGHT & THE PIPS
Double Or Nothing / MELVIN DAVIS
Melancholy Fire / GLENN JONES
Special Lady / RAY, GOODMAN & BROWN
We Don't / THE CONTROLLERS
This Is For Real / LUTHER
Let's Get It On / MARVIN GAYE
Bring It On Home To Me / SAM COOKE
Try A Little Tenderness / OTIS REDDING
I'm So Glad I Feel For You
/ DAVID RUFFIN
Let Me Make Love To You / THE O'JAYS
Soul To Soul / THE TEMPTATIONS
Baby I'm For Real / SHERRICK
Remember / TEASE
It's Forever / EBONYS
All Toys Break / ELUSION
Wild Flower / NEW BIRTH
よっさん A面て…CDですけど?まあ確かにええねえ、これは。曲もクールでシブい。が、ちょっとオープニングには地味やない? 俺は流れとかは意識せんと、3周年記念やし、ベタな曲もOKでポンポンと選んでいってんけど、1曲目と最後だけはコレ!というのがあって。まずはやっぱりMarvin Gaye「Let's Get It On」、最初はこれで始めたいね。いきなりガツーンとシャウトで歌い出すインパクトがたまらん
MJ いきなり大定番で来ましたなあ。そらもう、曲としても歌としても文句なしですけどね。1曲の中でシャウトもファルセットも甘いテナーも使い分けて…
よっさん やろ?マーヴィンのおいしいところ全部入ってるし、オープニングとしてはハマるでしょう。まあ、とにかく俺はこのアルバムなんですわ
MJ ちょっと待った!実は僕、同じアルバムから「If I Should Die Tonight」選んでるんですわ。「Let's Get It On」も最高やけど、1曲といわれたら僕はこっちかなあ。サックスソロの頭なんか、もうめちゃくちゃヤラしいですよね。これで何回腰砕けたか分からん
よっさん たしかになあ。このアルバム全曲ええからなあ。あとは「Come Get to This」か。オープニング云々を抜きにしたら、俺はこれがいちばん好きやな。これぐらいのミディアムテンポやったら、曲の並び的にも使いやすいんとちゃう?終わり方もファルセットで余韻あって、次につなげやすいし
MJ いいですねえ!この曲、マーヴィンがピアノで弾き語ってる映像があってね。ラフな感じの短い場面やねんけど、哀愁があってものすごいエエんですよ。まあ、マーヴィンに関しては、いま出た3曲の中から全体の流れを見て決めるということでいきますか。で、僕の2曲目ですが、Gordon Chambers「I Apologize」としゃれ込みたいですな。僕にぴったりの(笑)ジャジーでクールなムード。とにかくええ声ですよね。後半小技を利かせるところも惚れ惚れする
よっさん さっそく若ぶってきたな(笑)いや、でもカッコええね。Anita Bakerに提供した曲やな。彼のアルバムは店でかけると若い子からの反応が特にええのよ。インディでしか出てへんこともあるし、この辺はたしかに押さえときたいな
MJ ありがとうございます。当確いただきました(笑)
よっさん じゃ俺は次、David Ruffinで行くかな。「I'm So Glad I Feel For You」。69年のセカンドアルバムから。ラフィンのソロの中でも名曲の呼び声高いバラードですわ
MJ へえ、えらいゴスペルチックなアレンジですねえ。熱唱ですやん。僕は、デヴィッド・ラフィンもテンプスも何曲かピックアップしながら結局落としたんですよ。まあ、よっさんが絶対入れてくるやろうと思ったしね。それにしても、選ぶ曲調が早くも食い違ってるなあ(笑)
よっさん (笑)これ実は、あんたがSoul Childrenの「Don't Take My Sunshine」とか、その辺を選んできた時に、同じような流れで使えるかと思ってね。ラフィンは熊本時代に行ってた店でよくかかってて思い入れもあるし。テンプスは、アリ・オリ時代の「Soul to Soul」(89年)を。最後の締めはこれを持っていきたいねえ
MJ 僕の3曲目、Perry&Sanlinはどないでしょ。「It's Alright」。歌をじっくり聴くとなると、どうしてもスローが多くなりがちなんで、バランス取る意味でもこういうダンサブルなアップも入れたい。フィル・ペリーのファルセットって通常でもテンション高いけど、この曲の後半の異常なハイテンションはなんやねん、と(笑)
よっさん ほんまほんま。昔、車で海行く時とかに聴いてて、突然カーンとテンション上がると、みんなゲラゲラ笑ってたもんなあ(笑)2人の絡みも素晴らしく熱いしねえ
MJ ハイテンションといえば、Solid Solutionの「Don't Ask Me」もね。これも歌い出しからフェイドアウト前のヒャオー!って雄叫びまで、終始いきっ放しやないかと(笑) Al Greenの僕が最も好きな「Tired of being Alone」も、ちょっと似たような魅力がありますねえ
よっさん フィリーソウル系も、俺はすごい好きなんでやっぱり入れときたいな。O'jaysは王道として、CDで再発されるまで俺らの世代には高嶺の花やったEbonysね。重厚なスローの「It's Forever」で。野太いバリトンとファルセットのコントラスト。いまの若者にもぜひ聴いてほしいねえ。あと、あんたの嫌ういわゆるレア盤やけど(笑)Anthony White。ものすごく歌が巧いとか、そんな感じでもないねんけど好きやなあ
MJ エボニーズ懐かしいですねえ。アンソニー・ホワイトは骨太のバリトンで、ちょっとテディペンぽくもありますな。僕はコーラスグループやと、Soloは何か1曲入れたいなあ。で、いつか歌ってみたいと思ってる「Love You Down」を選びました。結局自分がやってみたいとか、実際に歌って気持ちよかった曲に惹かれますねえ。Lalah Hathawayが歌ってるRandy Crawfordの「When Your Life Was Low」とか、クラシックだとSam Cookeの「I'll Come Running Back to You」とかね
■至福のビンゴ ジェラルド、グラディス、そして…
よっさん Soloが出たところで、90'sやけど、これはあんたと被ってるかな。Gerald Alstonで…
MJ お!きましたね。ジェラルド、僕も入れてます
Open Invitation
Gerald Alston
Imagination
Gladys Knight
& the Pips
Next in Line
the Controllers
よっさん 「Slow Motion」
MJ きた、ビンゴ!当確でお願いします(笑)この歌はジェラルドのソロでは不動の人気ですな。柔らかいし、熱いし、色っぽい
よっさん ジェラルドはManhattans時代も抜群やし、ソロになってからのファーストもええけど、やっぱり2枚目のこれかなあ。それにしても、やっと曲が一致したな(笑)
MJ いやいや、僕の予想ではもう1曲被ってそうなのがあるんですよ。Gladys Knight & the Pipsで…
よっさん ほう
MJ 「夜汽車よ!ジョージアへ」
よっさん ……当確でお願いします(笑)きたな〜、これはやっぱりええ曲やもんなあ。年配の方から若い子まで絶大な人気やね。グラディスやったら、あんたは「Neither One of Us」で来るかとも思ったけどな
MJ いやあ、その辺のモータウン後期からブッダ移籍直後ぐらいまで、70年代半ばごろのグラディスはもう何歌ってても素晴らしいですよね。Jim Weatherlyってカントリー系のソングライターの曲をよくやってて、それがすごくハマってる。なかでも、個人的には「グラディスってめっちゃええやん」と最初にしみじみかみ締めたこの歌をね。昔、この曲をピップスの役でコーラスやったことあるんですけど、もう楽しくてね(笑)
よっさん じゃ次は1曲、ファルセットもの行くで。the Moments、といいたいところなんやけど、ちょっと音がモコモコしてて浮くかもしれんので、Ray,Goodman & Brownで。曲はやっぱり「Special Lady」やな。アカペラで始まって、終わりもアカペラでフェイドアウト。「歌」を前面に出してる感じがええやろ
MJ なるほど。キャッチーですよね。ここらへんで僕はそろそろ、the Controllersを行っときたいんですけど。彼らの3枚目から…
よっさん 3枚目?ちょっと待て。俺もそこから選んでるで。スローか?アッパーか?
MJ え、ほんま?なんやろ、僕はスローなんですけど…「We Don't」で
よっさん うそー!「We Don't」か?俺もや、俺も
MJ ええっ当確ですか!すごい! いい曲ですけど、ちょっと地味やし、まさかこれがビンゴとは。ウアナ時代の彼らのアルバムは、歌いたくなる名曲の宝庫ですよねえ。「Somebody' Gotta Win」とか「My Love is Real」とか。「We Don't」は、Tommy Tateがカバーしてるんですけど、コーラスをコントローラーズがやってて、それも好きなんで印象に残ってるんです。いやあ、それにしても本日一番の盛り上がりを見ましたねえ
よっさん コントローラーズは最近お客さんから借りた12インチがあって、それもええ曲なんで迷ったんやけど、やっぱり後半がんがん歌い上げるこの感じがたまりませんな。あと、どこまで行列続くねん、というアホらしいジャケな(笑)あんたも素直にこの辺のオヤジ臭いセンスを出してくれんと(笑)
MJ まあ「サザンソウル」とか「フィリー」とか「デトロイト系」とか、何かテーマを決めてやらんと、とてもやないけど無理ということが分かりました(笑)
よっさん そやね。また「SugarFree & Singer's Delight Presents」で続編を作る時は、そないしよか
店の定休日、夜11時から始まった選曲会議。ビール片手に1曲ずつ聴きながら約4時間。「ルーサーは追悼の意味で入れとかなあかん」だの「Wildflowerは俺の涙腺緩ますベスト5やけど、ちょっと長い」だの「グレン・ジョーンズのスタジオライヴは完璧な出来だが、興奮した司会者の声が被るのが玉に瑕」だの、あーだこーだとやってるうちに疲れ果て、曲を絞る段階では意外に2人ともあっさり自分の希望曲を引っ込めたりして(笑)最終的には16曲に絞られた。何が入って何が落ちたかはお楽しみ。CDは12月10、11日のSugarFree3周年で配布予定。
(2005・11・14 神戸・三宮SugarFreeにて)
第3回 春。茶飲み対談。アンクル・レイをしのぶ
ほぼ1年半ぶりのマンボ松本との対談である。3月も終わりになって遅ればせながら「Ray」を観て深い感銘を受け、自己内レイ・チャールズ・ブームが来たので、だれよりもレイ・チャールズへの熱き思いを抱くマンボと、偉大なるGenius of Soulについて語ろうという話になった。当初は王子公園で「花見対談」としゃれ込む予定だったが、この時点ではほとんど花が咲いていなかった。しょうがないので、僕の自宅で「茶飲み対談」と相成った。
■融合って?レイ・チャールズのやったこと
MJ 公開終了間際にやっと「レイ」観てきた。ようできた映画で、ついついCDやらDVDやら買ってしもたわ。去年の6月にレイ・チャールズが亡くなってから、きみはずっと聴いてるらしいけど
マンボ そやねん。レイ・チャールズが亡くなるという「事件」があって、なんや、えらい悲しくてな。ブッカー・Tやらオーティスやら好きな人が他にもいて、それまで強力に意識してたわけでもなかったんやけど、1人のミュージシャンが死んであんなに悲しかったの初めてやなあ。ああやっぱり自分のアイドルは彼やったなあ、と。いちばん最初に買ったソウルのレコードも彼やしねえ
MJ おお、あの「Tell Me How Do You Feel」とか「What'd I Say」とか入ってるやつな。むかし、きみに借りた覚えがあるなあ
マンボ そうそう。「I'm Moving On」とか。アトランティック時代のベスト盤やね。あと、3枚組のボックスとかね。いや、もうカッコええなあ!とあらためて聴きふけってたんですわ
MJ ベタな言い方やけど、やっぱり「原点」ですか
マンボ そやねえ!まあ、その後いろんな音楽好きになって、いまのバンドやるようになって…。新しい曲を作るときにいろんなエッセンスを詰め込むというか、メンバーそれぞれに背負ってきたものをお互いにぶつけ合う作業がありますやん。「融合」ちゅうかね。自分の知らんロックとか歌謡曲とかでもエエもんはようさんあって、それをいろいろ聴かなあかんという強迫観念というか、その作業にちょっと疲れてた面もあったかもしれん
MJ おれも訃報には予想以上にガクっときたんやけど、あの映画観てあらためて思うところが多くてね。よく本なんかで「ゴスペルとブルースを融合させてソウルミュージックを作った」とか書かれてますやん。それって理解はできるんやけど、どうしても後付けの解説やから具体的に何をやったのか、その過程がよく分からん。それが映画観てると、ゴスペルの曲に「俺のカワイ子ちゃんが…」みたいな歌詞載せて、「あなた不謹慎だわ!」ってヨメさんに怒られたり(笑)、頭の固いおっさんが演奏中のクラブに乗り込んできて「こんな悪魔の音楽はやめろ!」とか(笑)。もちろん演出もあるんやろうけど、なるほどなあと
映画「Ray」より
マンボ 「T Got a Woman」誕生秘話な(笑)またそういう場面のディティールがよく再現できてるんやな。服飾文化とか楽器の感じとか
MJ 「ゴスペルとブルースを融合」というのは、音楽的にどうこう言う以上に、「別々に存在すべきもの」とだれもが思っていた音楽を、自分の中でぐちゃっとミックスして出してもうた─まあ、サム・クックもそうやけど─その発想みたいなところがすごいんかな、と。ゴスペルとブルースって、特に古いのになると、別に音楽的にはかけ離れたものじゃないしなあ。というか、一緒やんといってもええぐらいやろ
マンボ うんうん。それも意識してやったというより、ほんま自然に出た感じやもんなあ。日常的にゴスペル歌う、ブルース歌う感覚ってわれわれは肌で分かれへんけど、たとえばサム・クックが「おれ明日から歌謡曲歌いますわ」ってなったら、お父ちゃんがえらい嘆き悲しんだっていう時代に、レイがそういうことを自然にやってのけたというすごさやろね。その一方で、初期のころ、ナット・キング・コールやチャールズ・ブラウンの物真似みたいになったりしてたのも、気持ち的にはよう分かるわ。酒場で歌ったりすると、お客さんはやっぱり自分の知ってる曲を聴きたがる。求められるものができんかったら、自分はメシ食うていけんようになる…て考えてしまうんやな
MJ その2人のイミテイターから脱却する場面あったやん。スタジオでアーメット・アーティガンに「ちょっとやってみろ」って「Mess Around」渡されて、レイがやり出した途端に「おおっ急に目の前が開けた!」みたいなあの興奮。あの場面はレイ・チャールズという人のやったことをすごく象徴的に表してたと思うなあ
マンボ 音的にはシンプル。やけど、おしゃれやね。モダンな感じ。ミルト・ジャクソンと一緒にやったりとかクインシーとの関係とか、ソウル・ジャズ的な面もあって、いわゆるコテコテじゃない
MJ あとはカントリーか。そのあたりの60年代のABC時代になると、おれはほとんど知らんのやけど…
マンボ 「Modern Sounds in Country and Western」(62年)に入ってるんやけど、「You Don't Know Me」という曲が好きやねん。劇中でも、ボロボロになってる時期、自宅のピアノに1人で座ってやる場面があったやろ。スタ録ではわりとあっさり歌ってるんやけど、ライブのDVDなんかで観ると、これがもうすこぶるエエんですわ!「取り残される男」みたいな、レイ・チャールズの一貫した歌の世界がありますやん。それがほんまよう出てる
MJ 私生活では女やドラッグやいうて、相当悪さしてたみたいやけどなあ(笑)
マンボ ワルやねえ(笑)でも、そんなふうになる心情もちょっと分からんでもないけど(笑)
■「邪念なし」の境地に咲いた大輪
MJ ピアノのプレイについてはどうなん?わりと朴訥な印象があるんやけど
マンボ そやな。朴訥に聴こえるけど…、あれぐらい正確にヒットする人はおらんと思うな。目が見えないというハンディはあるんやけど、その分、指先で鍵盤を見てるというか。自分が心の中で歌ってることをそのまま弾いてるような感じやね。ダーティーに弾いてやろうとか、ガツンと弾いてやろうとか、そういう邪念がない。それで、タイム感ちゅうか、リズムのポケットに入っていくところがまたすごいんや
MJ 朴訥やけど、生々しいって感じかな。「彼は完全に音の世界に生きてる」みたいなことは、サム・クックとかジェームス・ブラウンも賞賛してるわな
マンボ レイ役のジェイミー・フォックスに「Mess Around」の弾き方を教えてる映像があってんけど、イントロのところな、♪ケンケンケンケンケンケンケンケン♪じゃなくて♪コケンケンケンケンケンケンケンケン、コケンケンケンケンケンケンケンケン♪なんやな。その(アタマで4分の1拍食う)感じが全然あざとくないねん
MJ 出たな、擬音(笑)。言うてることは分かるけど
マンボ グリン、ギュイン、ガイン、コキキーン…みたいなスタイルあるやん(笑)なんつーか、鍵盤を引きずるような。あれは確かに指で鍵盤見てるなと思ったな。あと、事前に鍵盤を触ってもないのに、いきなりバーンって入っていける感じな。あれはどないなってんねん(笑)
MJ 歌でいうと、俺はいつも感じるんやけどあのひしゃげたような声というか歌い方ね。基本的にはすごいええ声してはるねんけど、わざと語尾をつぶしたり、結構乱暴に放ったり、素っ頓狂な声出したりすることがあるんやな。まあクセなんやろうけど、おれ自身、ああいうのがR&B的な歌い方やと無意識のうちに刷り込まれてきたところはあるかなあ。巧いとか何とかいうより、その人の色で聴かせるというね。ベタな言い方やけど。で、そんなこと考えながら、ビリー・プレストンがカバーしてる「Let's Go Get Stoned」を聴いてたんやけど、あの人ってモロやな
マンボ そう!ビリーはレイのフォロワー一番手やな。直系。ライヴの「Let's Go Get Stoned」で物真似ショーやってるやろ。ほんま好きなんやと思うで。鍵盤のプレー自体はビリーの方が派手やし、カラフルな感じやねんけど、根底で音がうごめいてますやん、エエ意味で。クリックじゃないちゅうか、切って貼ったみたいな音楽じゃないもんな。最近のクラプトン・バンドでビリーがやってる映像があって、ヘンな野球帽かぶってホケーって弾いてるねんけど(笑)それがまたよろしいねん
Live-European Tour
Billy Preston
MJ ビリーって10代のころ、レイ・チャールズのツアーバンドにおったんやもんなあ。ほんでレイの遺作アルバムの「Here We Go Again」でもめちゃくちゃカッコいいオルガン弾いてる。まさに師匠と弟子。ああ、おれの大好きなビリー・プレストンはレイの子供なんやなあと思うとうれしかったよ。あとはアリサ・フランクリンか。彼女の「Drown in My Own Tears」とかええもんな。広い意味でいうとスティーヴィーもそうか。若い、というか幼いころに「Tribute to Uncle Ray」って、レイの曲ばっかりやったアルバム出してるよね。まあモータウンがそういう売り方をした面もあるかもしれんけど
マンボ いま出た名前ってどれも超ビッグネームやけど、若いころはほんま素直にレイ・チャールズみたいなスタイルでやりたいという純粋な憧れでやってた感じするねえ。レイ・チャールズっていう存在がデカすぎるから、影響とかフォロワーとかいっても見えにくいところはあるけど、ずっと受け継がれてるんやと思うで
MJ ま、今日は花見はできんかったけど、レイ・チャールズという大輪の花を眺めたということで…
マンボ ほな、このへんで
(2005・4・3 神戸市灘区にて)
第2回 35歳対談。「いぶし銀」の歌を聴け
コラムにも登場し、ライヴでもたびたびお世話になっているソウルバー「SugarFree」のよっさんとの初対談である。といっても、ふだんカウンターに張り付いて「あれが良かったっすよ」「これはどんなんですか」と、とりとめもなくしゃべっている内容と基本的には変わらない。ただし、対談は営業時間外。なんの気兼ねもなしに、底なしにディープな人間ジュークボックスと化していくよっさんを止められるか。テーマは「いぶし銀」。
■華はないけど味はある
MJ 35歳になったんですよ、このあいだ。人生折り返しやなあと思ってね
よっさん もう完全におやじやねえ
MJ 同い年やないですか、あなたも(笑)しかも、もう36歳も間近ですやん。…でね、最近ジョニー・ブリストルとか聴いてたんですよ
よっさん はあ?なんの関係があんねん(笑)
MJ いや、なんかいぶし銀でしょ。存在感や仕事ぶりが、とかもあるけど、純粋に彼の歌というか声がね。なんや地味なおっさん声やし、歌もうまくはないんやけど、耳に残るというか。彼の声って分かりますやん。まあ曲がええからというのもあるけど
よっさん いぶし銀…といえば、そんな感じかなあ。まあ確かに派手な歌い手ではないわな。もともとモータウンのソングライターで裏方のイメージ強いしね。でもさすがに曲はええよ。メロウな曲にグルーヴィなサウンドはフリーソウル方面で絶大な人気やったねえ
MJ やっぱり「Bristol's Creme」(76年)かな。美女のバスタブにミルク投入してるジャケのやつ。お肌すべすべになりまっせー、という主張か?
よっさん ええね。これね。♪「Do It to MY MIND」
Bristol's Creme
Johnny Bristol
MJ きたきた。このイントロ聴くとキャンディーズ思い出すんですけど。「わな」とか。♪スカートのすそ翻して帰ってくればいいさと…
よっさん 知らんわ(笑)ほかにも「Hang On In There Baby」とか「Strangers」とか人気盤多いよ、この人は。ソロ5枚目の「Free to be Me」も最近再発されたしね。ただ、歌がどうこうで聴かれてる人ではないやろなあ。全体的なサウンド、ま、メロウグルーヴの範疇やね、DJライクな。フロアでかける時に気持ちよくつながっていく感じかな
MJ しかし、この声聴けば聴くほど華ないなあ(笑)ルー・ロウルズに似てません?白いタキシード姿で夜の蝶舞うディナーショーで歌うのが似合うような。ソウルというよりポピュラー・シンガー声ですな。ジャズ〜ブルース・テイストの「Live!」(66年)とかは好きでよく聴きましたけど
よっさん あー、ルー・ロウルズはたしかにそんなイメージか…。でも味はあるよね。フィリーで出したアルバム「All Things in Time」(76年)なんかはソウルファンにも根強い人気あるよ。この曲とか。♪「You'll Never Find Another Love Like Mine」
All Things in Time Lou Rawls
Time is Slipping Away/Dexter Wansel
MJ あ、この曲はいいですよね。彼のクロスオーバー体質をギャンブル&ハフがうまく味付けした感じ。ストリングスやお姉さんのコーラスが効いてて、低音の魅力いうか、音域が決して広くない中で気持ちよいメロディを作ってる。僕ね、20歳そこそこのときにルー・ロウルズの曲やったことあるんですよ。ダイアン・リーヴスとデュエットの「Fine Brown Flame」ていう曲。全然歌われへんかった(笑)ていうか、なんであんなおっさんみたいな曲選んだんやろ(笑)
よっさん あんたは昔からおっさんやったいう話ですな(笑)フィリーといえばこんなんもあるで。デクスター・ワンゼルの「Time is Slipping Away」(79年)。この「New Beginning」いう曲ね。熊本時代にお世話になったソウルバーでよくかかってた思い出の曲ですわ
MJ おお、いぶし声ですなあ。染みる染みる
よっさん いま中ジャケ見てて気付いたんやけど、これ歌ってるのはデクスター・ワンゼル本人やなくて、ハーブ・スミスちゅう人みたいやね。ドラムとかギターでクレジットされてるわ。スタジオミュージシャンやね。デクスター本人の声はもうちょっと高いな。ジェントルとかムーディーとかいう感じではないね
MJ ワインレッドのナイトガウン着て、犬まではべらしてるのに!このルックスでいぶし声やったらハマるねんけどなあ(笑)
■突入!いぶしグルーヴの泥沼
よっさん なんとなく、あんたのいう「いぶし声」のイメージが分かってきた。これなんかどうや、マイケル・ヘンダーソン。「In the Night-Time」(78年)というアルバムのタイトル曲なんやけど、題名からしていぶしっぽいやろ
MJ へー、いけるいける。これ何者ですの?
よっさん もともとはベーシストやね。すごい経歴やで。ファンタスティック・フォーにデトロイト・エメラルズ、アリサにスティーヴィー。60年代終わりからはマイルス・デイヴィスのグループにも在籍したというツワモノですな。歌い手としてはノーマン・コナーズによく使われた人やね
MJ スタジオミュージシャンはいぶし度高し、ちゅうことですか
Michael Orr Presents Spread Love
You Fooled Me
Grey and Hanks
よっさん 生粋のシンガーにいぶし声は少ないのかもしれんね。おっ、これはどない?マイケル・オー。「Spread Love」というアルバムの「Here I Go(Through These Changes Again)」。デトロイトということ以外、何も分からんねんけどな。かなりレアらしいわ。ジャケがまたアホらしくてたまらん
MJ わははははは!このジャケ最高。アラジンと魔法のランプみたいになってますやん!絶対ジャケ買いしないタイプのレコードやな。でも、ペットやヴァイブの使い方とかギターの音色とか、サウンドは結構ジャジーでおしゃれやね。歌もうまい。張り上げたときの声が妙にまったり響いたりして
よっさん やろ?おれもあんたと一緒で、レア盤探しに血眼になるのはアホらしい思うけど、レア盤というだけで毛嫌いしてたらこんなん見落とすでえ。この辺の音を「いぶしグルーヴ」と命名しよう。次はこれどうや、ブラザーズ・バイ・チョイス。♪「She Puts the Ease Back Into Easy PartU」
MJ いぶしグルーヴ…だんだん泥沼に入って行ってる気がする…
よっさん ノってきたでえ。次や。グレイ・アンド・ハンクス「Gotta Put Something In」。おれのテーマ曲。歌ってるのはグレイの方やね。「You Fooled Me」(78年)に入ってて、タイトル曲はいわゆるダンス・クラシックですわ
MJ ディスコティークやけど、骨太な声やから歌が音に負けてませんな。しかし、あまりのいぶし連発に耳が曇ってきた(笑)
よっさん おお、どんどんいぶすでえ。あんたも何かないんかいな
MJ こんなワケのわからんの連発されて後が続きますかいな(笑)しかし「いぶしグルーヴ」というだけで一般受けしそうもないのに、こんなん読んだ人の参考になるんかいな(笑)
よっさん ほんまやな(笑)ちょっとメジャーどころでいうと、ラリー・グラハムとかもこんな声やね。イカツいベースプレイと違って、やたら朗々とバラード歌ってたりするやん。♪「One in a Million You」
MJ あ、ラリー・グラハムはそうやね。このアルバムなんか「バラードの世界」って、すごい邦題ついてますよ。なんかの本で「歌にどうしようもなく味がない」とか書かれとったけど、そんなこともないよね。あとバリー・ホワイトとかもそんな感じですか。なんか単に声が低い人という話になってきたなあ(笑)
よっさん バリー・ホワイトやったら、これなんかかなりいぶしグルーヴやで。♪「September,When I First Met You」
MJ おお、ええ感じええ感じ。なんか安心して聴けるわ(笑)
よっさん まあ、ほかにもいろいろあるねんけど、今日はこれぐらいで勘弁しといたろか(笑)というわけで…
MJ ナイトクラブにでも繰り出しますか(笑)
(2005・1・24 神戸・三宮SugarFreeにて)
第1回 歌伴やって15年。まだまだヤングなマンボがルーツを語る
大西ユカリの本「続・情熱の花」(白夜書房)の中で、彼女のバンド新世界のオルガン弾きマンボ松本と対談した。というか、「マンボ大いに語る」の聞き役を務めさせてもらった。話が盛り上がり、続きをこのHP上でやろかということになった。彼とは長い。18歳で初めてソウル/R&Bバンドを一緒にやった。それ以降も機会があればほとんど彼に手伝ってもらった。付き合いが長いので話が早いというのもあるが、彼が無類の歌好き・ソウルミュージック好きだからというのが大きな理由だ。ストレートで、熱い。鍵盤を叩きながら号泣したりする。歌への感度がものすごく高いのだ。そういうプレーヤーが、あらためて「歌」を語るとどうなるか。何が飛び出すか。それが楽しみで、こういう企画を立ててみた。マンボさらに語る─
■最初に歌ありき
MJ きみは18歳ぐらいでバンドやり始めて、まあFive Soundsや鴨川トリオという例外もあるけど、ずっと歌モノやってるやんか
マンボ オーイェ。せやねー
MJ ピアノでもオルガンでもええねんけど、こう自分がリーダーになってインストもんやりたいとか思ったことはないの
マンボ んー、あんまないねぇ。最初に好きんなったのが、なんちゅうても歌やからねぇ、ソウルミュージックの。オーティス・レディングとかサム・クックとか。まあジャズとか、バップフレーズバリバリみたいなんは、いくら好きでもでけへんちゅうのもあんねんけどね(笑)
MJ きみの場合、最初いうたら「ブルース・ブラザーズ」体験か。みちのくは仙台の高校時代の
マンボ オーイェ!レイ・チャールズにアリサにJBにジョン・リー(・フッカー)。たまらんねぇ。今でもあれで軽〜く白飯10杯はイケますわ
MJ あー、あのレイ・チャールズの「Shake Your Tailfeather」に合わせて、モンキーだ!バードだ!それワツシだ!いうて、町中が踊り出すシーン、カッコよろしねえ。今でも時々観たくなるわ
Ray Charles先生
マンボ せやねん、ムチャクチャ影響受けたわ、あの映画には。あれ観て初めてソウルのレコード買うたんやで。レイ・チャールズのベスト盤。ミッチー音頭(What'd I Say)の入ってるヤツな(笑)
MJ(笑)そういう歌モノ好きから見て、理想的な伴奏してる人ってたとえば誰やの?最近のお気に入りとかは…
マンボ ンー、…スプーナー・オールダムかぁ…
MJ なんじゃそら。どこが最近やねん(笑)。「男が女を愛する時」やんか。ま、エエけど。きみらしいちゅうか…
マンボ (苦笑)でも、わりと最近、ダン・ペンと2人でレコード出したりしてたで。なんつーか、あの、必要最小限しか弾かへんというか、ツボはしっかり押さえつつ歌のジャマはせんというか、そういう感じね。ウーリッツアー(Wurlitzer)っちゅうご機嫌なエレクトリックピアノがあるんやけれど、彼はその名手でもあるんよ。コロリーン、つー音ね。それがエエ。これぞ歌伴奏のお手本的プレイ。ニール・ヤングのバックとかもやってるね
MJ へえ。でも「必要最小限」がええんやったら、インストでもブッカー・T(org)とかあるやん
マンボ オーイェ!エエねぇ。心のふるさとやねえ
MJ なんでもええんか(笑)
マンボ 最近思うねんけどな、ブッカー・Tってホンマはもっとムズカシイこともできるんちゃうかと。オレはもっと弾けんねん、「グリーン・オニオン」で単音のリフ弾いてるだけちゃうぞ!と。でも、たぶんアル・ジャクソン(ds)に「いらんことすな」って言われてたんとちゃうやろかと思ってみたりしてんのよ。結果、無駄に多い音符が無くなって、物凄い説得力のある演奏がそこに展開されたワケやけど。ブッカー・Tみたいな演奏っつーのは、オルガンで歌ってる、つーことやねんわというのがここ何年かでわかってきた気がするわ。MG’sはアレンジも実に個性的やしねぇ。ホント勉強になるわ。オーティスの「Mr.Pitiful」とかな、あらためて聴き直すと、ホンマ変わったアレンジやで、アレ(笑)
Booker T.(左から2人目)と
the MG'sのみなさん
MJ オーイェー!そういやあの歌、だいぶん前にユカリちゃんと一緒に演ったことあるわ。ほんまユカリちゃんも幅広く何でもやってるよなあ。ブッカー・Tのやつは、ダック・ダンのベースが醸し出す跳ね跳ね感が気持ちよかったねえ
マンボ せやんなぁ!あと、影響といえばダニー・ハサウェイさんの登場っつーのもあるわな。
MJ 登場って、わしらが知った時には、もうこの世におらんかったけどな(笑)
マンボ (笑)まあ、でもあの人のピアノは独特ですやん。曲とかイメージは一見洗練されてるけど、アーシーなフレーズがビシバシ出まくりで。あのライヴもそやけど、ロバータ・フラックとやってる「Baby,I Love You」(アリサのカバー)とかね。ブルージーでいて、オリジナリティあふれてるわ
Donny Hathaway師匠
MJ 自分で歌いながら弾く人と、シンガーの後ろで演る人の違いっていうのもあるんかな?
マンボ んー、ホンマは演るべきことはどちらも一緒のはずや思うねんけどな。自分で弾いて歌う場合て、割にシンプルな伴奏になってゆく傾向があるんよ。自分が発射したい気持ちを歌と楽器両方で出すワケですやん。その場合、不思議なもんで伴奏ありきの歌っつーのはナカナカできません、うん。歌に気持ちが大分と傾くちゅうか、「まず歌ありき」の伴奏になんねんわ。ワシの場合はそやね。で、歌ナシで伴奏のみとなると、これまた不思議、「伴奏ありき」の演奏にドンドン傾く。今まで歌ってたパワーも伴奏にドンドン注ぎ込んでしまう。結果、焦点のボケたトゥーマッチな演奏になってしまうことが多いんよ。サイコーのオルガンフレーズを発射したとしても、その位置とか「間」が、てんでおかしかったりするわけ。歌の一番美味しいトコにワシもワシも、と踏み込んでいってしまうんやね。主役のセリフを奪ってしもたらお芝居はなりたたん。
MJ だから、歌い手と一緒にバンドも歌えと、よう言われるワケやね
マンボ と思うで。
MJ きみ演奏中デカい声で歌ってるもんなあ。いつやったか、一緒にライヴやった時、前に立ってるわしらヴォーカル陣よりデカい声出してて、それをマイクが拾っててな。オレも歌ってる最中やから言われへんやん。「おまえ、声デカすぎるちゅーねん」いうて思いながらやってたの覚えてるわ(笑)。ま、きみの場合、それがオモロいからええねんけど
マンボ ホンマかいな!そんなことあったかねぇ(笑)
■音に「血」を注ぎたい
MJ まったく覚えてへん(笑)。しかし、歌のジャマせえへん、いらんことせえへんというても、やっぱり、演奏する人間の色っちゅうんですか、その人「らしさ」みたいなもんは出さな意味ないやん。そういうことは一方で考えたりするんかな
マンボ うーん、難しいとこやろねえ。演奏を極力シンプルにしながら、自分の色をどう残すかやね。自分が何を聴いて、何を好きになってきたかの道程がそこにあるのが望ましいやんなぁ。「血」ということに最近非常に興味があるんやけど。
MJ 「血」ねえ
マンボ 例えばね、ステイプル・シンガーズとか観た時、なんかこう、揺るぎのない南部土着感とか沸いてきたやん。んーもっといえば、アフリカ系とか、ラテン系とかどこの国のミュージシャンでもええねんけど。どんなアーティストもなんかこう、「血」をみせてくれますやんか。「自分はどこのどいつや」っつーその人のバックボーンが垣間みえるのんが好きやねんわ。新世界のベースの森センセがよくいうてはるけど、そういう「血」の存在する演奏て、物凄くグゥーッと首を前の方に出して聞きいってしまうことない?
MJ うんうん、それは分かる
マンボ マジメに追究しすぎると、ワシがソウルミュージックを演奏するっていうのは自分の土着的みちのくの「血」を否定しかねないもんでもあるんやけど(笑)なんつーか、「血」をベースにした己をみせる演奏にとても憧れるわー。自分が今やってるコトはきっと、その「血をベースにした己をみせる」トコロに近づこうとしてるんやろなと、最近やっと客観的にみれるようになってきたかな。まだまだヤングやわ(笑)今までは、やれ何かに似てることをヨシとしてた自分が確かにおったと思うねん。
MJ まあ「血」というのを、土着性とか民族性とかそういうものに狭く規定してしまうと、「なんで日本人やのにブルースやるねん」とか「なんで信仰もないのにゴスペル歌うねん」とか、ありがちな、出口のない疑問にぶつかるわな。非常に排他的なというか、意固地な地域ナショナリズムに陥る危険もあるし。「上方の笑いは関西人にしか分からん」みたいな(笑)。だから、あえて「血」という言葉を使うなら、どこのナニ人やろうが、どこで育とうが、その人が惚れ込んで入れ込んで、好きで好きで熱中してきたモノをどんだけホンマに体内に取り込んで、自分のものとして見せられるか。そこが「血」を感じさせるかどうかのカギなんやろな
マンボ うん、そやね。大西ユカリはそういう「血」を持った己で魅せてるな、ホンマにええミュージシャンやなとつくづく思う今日この頃やねん。ベンチャラちゃいまっせ(笑)そういうオーラを放つ歌手にはそうそう出会えへんやろなと。そういう人と一緒に演奏できるつーのは長い人生でもそうそうない機会とおもてるよ。うん。
MJ ミクスチャー感覚ちゅうんかな。自分のカッコええと思ってきたもんを融合して新しいもんを見せる、そのセンスというか嗅覚の鋭さがスゴいよな
マンボ 月並みやけど新しい価値を創造するっつーのは、スゴイことと思うねんわ、やっぱり。ジェームス・ブラウンかてそうちゃう?ああいうスタイルでの歌唱て、50年代当時にしたら全く新しいもんやんか。なんなんやろね(笑)本人さんはジャッキー・ウィルソンとかが好きであーなったんかもしらんけど、ワシらにしてみたら何がなんだか(笑)どこからどう?みたいな。レイ・チャールズもナット・キング・コールが好きで、初期は過剰な影響を受けてたけど─まあそれもバツグンねんけど(笑)─、ゴスペルのフィーリングを圧倒的に取り入れて自己のスタイルを確立してるしなぁ。なんでも新しい種は「混血」からつーことかねぇ。うん。
MJ おお!JBといえば行ったで、この間のライヴ。きみらも前座務めたけどエラい楽しそうにやってたねえ。ええショーでしたわ
マンボ オーイェ!しかしまぁ、JBの前座には、ワシもたまげた(笑)次回はその感想なんかも掲載できるといーね
MJ しかしきみには珍しく(笑)、エラいマジメな話になったな。本ではあんだけ連発してた擬音もないし(笑)。ま、近いうちにまたWEB版第2弾やりましょか
マンボ サンキュ♪