電子カルテ体験物語 2006

 2002年に 「電子カルテ体験物語」 という話を書きました。
 それに書いたように、2002年に電子カルテを導入した安城更生病院から逃げ出し、紙カルテの静岡済生会総合病院で働いていた僕ですが、この病院にも、またまた電子カルテの波がやってきました。

 でもこの4年、さすがに電子カルテ環境も進歩しました。
 2002年の富士通の電子カルテは正直、ひどすぎましたが、2006年の電子カルテは、問題の多くが解決され、そこそこ使いやすくなりました。

 でもまだ紙カルテの能率を超えてはいません。
 「せっかくの電子カルテなんだから、こうすればもっと便利になるのに」という点がいっぱいありますよ。

 そこで4年ぶりに、題材にさせてもらった、当院への納入メーカーは、SBS情報システムです。
 (静岡市駿河区登呂3-1-1 静岡放送の子会社)

1.まずカルテを開いたら、何を表示する?
2.参照と記入のパターンをふまえた画面
3.頻用されるオーダーは?
4.電子カルテの速さ
5.過去の記録の参照
6.電子カルテだから実現してほしい事
7.医師から看護師へ。入院患者指示経路
8.外来の電子カルテ。もっと自動化を
9.複数患者カルテオープン、あるいは電子カルテの2重起動
10.基本設計についての注文は以上です....が



1.まずカルテを開いたら、何を表示する?

 SBSの電子カルテで僕が感動したのは、2画面モニターでした。
 「へー、まるで1画面みたいに、2画面間をマウスポインタが自由に行き来、できるんだ。」
(そんなの当たり前だよ、と言われるかしら?)

 SBSのカルテは、左モニター画面が記事入力画面、右モニター画面が過去数日分の記事です。
 でもそれだけでは、知りたい情報の何分の1でしかありません。
 せっかく2画面あるから、患者の状態を一目で把握するため、もっといろんな情報を表示してほしい。


こう表示してほしい電子カルテ・外来編
(情報の優先順位)

1.その患者のサマリー。(何で自分にかかってるか、既往歴、他にかかってる医者、危険因子など。自分で入力しないといけない記事。)これを見られないと診療にならない。

2.過去数回分の診療記事。これは当然。
 (ついでに、「何日に何科に受診した」という情報くらいは、過去数十回分を表示してほしいな)

3.数回の処方歴と処方オーダ画面

4.数回の再診予約歴と再診予約画面

5.新記事入力欄 (過去の記事の最終行でよい)

以上で画面はいっぱいかな?
 欲張れば、以下も表示できるといいな。

6.最近の検体検査結果
7.検体検査以外の検査履歴
(放射線検査、生理検査、内視鏡など。その結果を見たければクリック操作は必要で当然)


こう表示してほしい電子カルテ・入院編
(外来と入院と、見たい情報は違うのです。)

1.この1、2日の医者とNr.の記録
2.体温表
3.最近の検体検査結果
4.注射歴 (注射してない人は、もちろんこの欄は不要)
5.新記事入力欄 (最近の記事の最終行でよい)

以下、もしまだ表示可能であれば。
6.処方歴
7.検体検査以外の検査履歴

 現在のSBSのカルテは、これだけの情報の一覧ができません。
 それで、あっちを開きこっちを開きして診療してます。電子カルテは忙しい。

 できればユーザーごとに、カルテを開いたときはどの情報画面をどのくらいの大きさで表示させる、と各自でカスタマイズできると一番いいのですが。



2.参照と記入のパターンをふまえた画面

 以下は電子カルテで実際に医者がやる操作です。
以下のような操作がやりやすいように、各画面を設計・配置してほしいです。

・これまでの記録、検査結果、体温表を見ながら記録、処方あるいは注射オーダーする。
・次回再診日を見ながら処方日数を決める。
・これまでの処方歴、血液検査、検体検査予定を見ながら処方する。
 (ワーファリンの処方はこの手順が必要です。)
・これまでの記録、体温表、注射オーダーを見ながら入院経過要約を書く。
・これまでの記録、処方歴、注射歴を見ながら紹介状や診断書を書く。
・これまでのオーダー歴を見ながら病名をつける。
・これまでの記録、体温表、検査結果を見ながら他科依頼を書く。
・処方歴を見ながら服薬指導依頼を書く。
・現在の食事を見ながら栄養指導依頼を書く。

 SBSのカルテは記事を書く時には体温表を見られないし、病名をつけるときには過去のオーダー歴を見られないなど、問題がちらほら....。

付記:排他画面のこと

 「排他画面」って何?今僕が作った言葉です。
 その作業を終わらせないと他の作業をできないページの事です。
(もっと良い専門用語があるかも。)

 SBSの電子カルテでは、次の画面では、入力を途中で保留にして他の作業に切り替えることができず、入力をともかく終わらせないといけない。
 そういう傲慢な(?)画面はなるべくなくしてほしいです。

・「病名入力」
・「入院指示」
・「検体検査オーダー」
・「ホルター心電図予約画面」
・「他科依頼箋」
・「リハビリオーダー」
・「栄養指導」
・「服薬指導」



3.頻用されるオーダーは?

 電子カルテに導入される(つまり病院で発行される)オーダーは40種以上になるでしょう。
 その中でも頻用するものは、使いやすい(クリック数の少ない)ように置くべきです。

 SBSのオーダーシステムは、約50のオーダーボタンを、1ページあたり12個のボタン、7ページにまとめてあります。
 頻用するボタンは1ページめに置いてくれてあり、それらは1クリックでオーダーに入れます。
満足すべき配置といえましょう。
 (どれが頻用するボタンかは、病院からリクエストしました。)

 頻用するオーダーは下記です。
処方 再診予約 検体検査 放射線 注射 入院指示(Nr.への指示) 病名 生理 初診カルテオープン 

 準頻用オーダーは以下。
・サマリー記入 (電子カルテに移行してすぐは特に)
・書類 (入院診療計画書、退院証明書、診療情報提供書) 
・外来の指導管理料 

 (ただし「検体検査結果」と(入院患者は)「体温表」は最初から開いているはず、としての話です。)



4.電子カルテの速さ

 僕は2種の電子カルテを体験しました。それぞれどのくらいの速さか。

2002年富士通2006年SBS
入院カルテを開くのに必要な時間入院2週間分に20-30秒 入院2ヶ月分に約20秒
注射欄オープン7秒3秒
体温表オープン20-30秒2秒
体温表を1週間ずらす5秒2秒
医者→看護師への指示欄オープン40秒ー1分5秒
検査歴確認15秒1瞬
処方歴確認13-15秒1瞬
ちょっとした(湿布など)の処方30秒ー1分20秒弱

 この4年でずいぶん速くなりました。よかった。
 (さらに速くなるともっといいな。)



5.過去の記録の参照

記入職種ごとの表示
 カルテに記入する職種は、医師・看護師・薬剤師・栄養士・リハビリ・ケースワーカーetcいろいろです。
 どの職種記事を表示するか、全表示するかなど、簡単に切り替えができてほしい。
 SBSカルテは、たとえばケースワーカーの報告はどこだっけ?などと、数日分の大量の表示の中を探しまわらないといけません。
 (この点で、SBSのカルテは富士通カルテの「ロールブラウザ」に負けてます。)

全科表示か自科のみ表示か指定科の表示かの切り替え。
 これはSBSカルテは1クリックでできます。合格。

・入院カルテと外来カルテでは過去の記事参照期間は別々にしてほしい。
 外来は半年以上の長期間を参照できないといけないし、入院は数週の短期間でよい。
(入院記録を何ヶ月分も表示したらカルテオープンに時間がかかるという理由です。つまり直近の記事から表示して、入力を受け付けてくれれば、何ヶ月分でもかまわないのですが。)

何月何日に何科に受診したか
 診療記事はディスプレイ内に2、3回前までしかみられないのは仕方ないとして、何月何日に何科に受診したか、その時は通院か入院か、という情報くらいは、過去20-30回分(期間にして半年〜1年くらい)を表示してほしい。
 その日付をクリックすればその日あたりの記事にジャンプしてほしい。



6.電子カルテだから実現してほしい事
(紙カルテではできない事)

 「電子化したから能率が上がった」というカルテが理想ですよね。

 その1。入院受け持ち患者全員の次の項目の一覧ができてほしいな。
・昨日今日の体温表
・最新の検体検査結果
・最新のレントゲン結果
・昨日今日の看護記録
・入力切れの注射の有無

 その2。「その日に結果が出たデータ」の一覧
 2の1.外来の検査結果:血液検査をやりっぱなしで帰宅の人がいます。その日の外来が終わった時点で、今日血液検査をやった人を一覧してチェックしなければ。
 2の2.忘れた頃に出てくるデータ(外来・入院共通):たとえば細菌培養の結果。オーダーを出した事を忘れた頃に結果が出る。結果が出たよ、と気づくように、「その日に結果が出たデータの一覧」を表示させてほしい。

・その3。外来患者一覧画面で、検査結果が出たかどうかの表示
 外来患者の呼び込み順を決めるため、受け付け患者一覧画面から(その人のカルテを開かなくとも)検査結果が出たかどうかを表示してほしいな。
 (富士通のEG-MAINはできましたよ。)

・その4。数人まとめて指示を出す
 入浴OK、みたいな簡単な指示は、数人まとめて入力できないかな?
(というのも、Nr.から、この人とこの人とこの人は入浴どうですか?ってまとめて聞かれるからなんですが。)

・その5。病名の自動登録
 睡眠薬、下剤、目薬など、対応病名がワンパターンなものを処方したときは、自動的に病名がつくといいなあ。



7.医師から看護師へ。入院患者指示経路

 病棟で、医師から看護師へオーダー情報はどう伝えられるか。
 情報は2経路に流れます。

主経路:医者が指示→各患者の「ワークシート」(紙カルテの「カーデックス」にあたる)に情報がコピーされる→「ワークシート」は毎日、前夜にNr.が印刷して参照使用します。

緊急経路:医者が看護師へ指示→病棟マップの該当患者ランプが点滅→ランプをクリックするとどんな新指示が出たかわかる。これは当日急に出た指示などを確認するための情報経路。

 この2経路あるのはよい設計です(当然かな)。

・医者・看護師間の完結したオーダー(安静度とか、発熱時どうするとか)は、「オーダー日以降ずっと有効」オーダーと、何日から何日まで有効という「期限指定」オーダーに出し分けられます。これは上出来。

・「緊急経路」の設計に注文です。一人一人の患者をクリックしないと新指示の中身がわからない。過去数時間(あるいはその日)に出された指示は、患者数十人を一括して見られるようにしてほしい。(どの数十人かは、「看護チーム」単位で登録できるようにしてほしい。)

看護師→医師へのオンライン連絡システムもあった方がいいかなあ?
 現在のSBS電子カルテの運用は、看護師→医師への連絡だけ、紙メモが大活躍してます。ここにもオンラインシステムを導入する余地があるかも?
(看護師から医者に「入浴OKですか?」と紙メモで質問するのに対し、医者は「入浴OK」と電子カルテに入力するのは、めんどくさいなあ、というのが本音かも)



8.外来の電子カルテ。もっと自動化を

 外来カルテで毎回同じオーダーするものは、「これでオーダーを発行してよいか?」とOKを出す直前まで自動化してほしいです。

自動処方コピー
 過去2、3回の処方が同じであれば、前回の処方が自動的にコピーされて「これで発行OKか?」という表示状態までなってほしい。

再診予約
 患者ごとに「何ヶ月ごと受診」と前もって登録しておけば、次回は何月何日の何時、とコンピューターが候補をあげてくれるといい。

自動検体検査オーダー
 毎回同じ検体検査をする人は、(もし医者が次回の検査オーダーをするなら)毎回の検査を登録でき、「これで発行OKか?」という状態になってほしい。
 (実は当院では毎回同じ検査(血糖、プロトロンビン時間など)は受付事務の業務にしてあり、それでよいのですが。)

外来指導料算定オーダー
 設定しておけば、月に1回自動的に指導料を算定してくれるプログラムにしてほしい。
(神経内科なら、「難病指導料」「てんかん指導料」をとるべき人が、外来患者の中にまざって数人受診します。この人は指導料をとらなきゃ、という判断は現在、医者の「注意力」に全面的にゆだねられていて、見逃して不思議ない。)


(・次善の策:前回外来オーダーの一括コピー。)
 以上が自動化できなければ、前回外来の処方、検査、再診、指導料は、今日の外来に一括コピーできるといい。
 (これ、富士通のEG-MAINはできました。この機能だけは偉かったなあ。)



9.複数患者カルテオープン、あるいは電子カルテの2重起動

 電子カルテに向かって、ある患者のオーダー・記載をしていると、Nr.から質問されたりオーダー入力を頼まれるのは、たいてい別の患者です。
 現行の電子カルテでは

「今開いてるこの人の入力を終わらせないと、その人の事を聞かれたって、わからんわい!」
....という応対をしてるのが日常です。

 だから
・一つの電子カルテプログラムで複数の患者をオープン・オーダーできるようにする。
・それとも、一つの端末で複数の電子カルテプログラムを立ちあげられるようにする。
 どちらかを可能にしてほしいな。



10.基本設計についての注文は以上です...が

 実は、もっと細かい注文はいっぱいあります..。

・カルテ記録に画像をコピーペーストできればいいのに。

画像の参照に3クリック必要。もっと手軽にならない?

・一度書いたカルテ記事を修正するために開くのに3クリック必要。もっと手軽にならない?

シェーマがもっと手軽にかけないかな?

・診療記事を書くのに複数のテンプレート(+シェーマ)を組み合わせて使いたい。
 (SBSのカルテは一つの記録に使えるのは1テンプレートだけなのです)

注射オーダーが明日から入っていない、というのが患者一覧画面にしただけでわかるようにしてほしい。

・うっかり間違って出した処方の種類(定期、臨時、緊急)の変更を容易にして。
 (現在は一度取り消して、新たに出しなおさないといけない。)

2種の保健処方(特定疾患+健保とか)の一括発行を可能にして。

・入院患者の新処方のデフォルトはその日処方にして。
 (デフォルトが「定期曜日処方」になってるので、うっかりそのまま処方すると当日に薬が来ない。)

過去の指示歴を見ながら病名入力ができるように。
 (病名入力画面が「排他画面」になってるので、それを開くと過去の指示歴を見られない。)

・微生物培養結果の複数検体分を一覧できるようにして。

・ほとんどのオーダー発行がみなカルテ記事画面を経由する設計だけど、こんな画面は経由しなくていい。クリックの無駄。(これ、実はすべてのオーダーを problem oriented system 下にまとめようとした名残り。医者から不評でボツになった。)

・外来受け付け患者一覧は、誰が初診患者かわかるようにして。

オーダーの一括取り消しを可能にして。(たとえば血糖測定を未来10回分オーダーしてあった人が退院します。この削除、一回分ずつ削除オーダーしてはカルテ発行、を繰り返さないといけないという....。)

・処方などの控え印刷をするかしないか、オーダー発行後その患者処理を続けるか別患者に変えるか、などの設定を初期登録可能にして。


....きりがないのでこんなところでやめます。

 まあ、4年前の富士通の電子カルテにくらべれば、ずいぶん改善されました。
 あと5年くらいすれば、電子カルテは紙カルテより便利になるでしょう....?
topページへ
mailは gbg00162@nifty.com 鈴木康弘