| 6月14日、今日も雨。これでもう8日目。 テレビからは、いつもと変わらぬ天気予報の声。 こんな天気は、どこかふっと切なくなる。 あいつのことを思い浮かべて、来るわけのない窓の外を じっと見ていたあの頃を思い出しそうになるから・・・。 そういえば、あいつが帰ってきたのも、こんな雨の日だった。 突然の電話だった。「窓の外を見てくれ」って。 あいつの声、珍しく震えてた。豪雨の音に消されることなく あいつの声が、そして全身全霊からの叫びが、はっきりと聞こえた。 窓を開けるのももどかしく、私は階段を駆け降りていた。 早く行かないと、また遠くに行ってしまいそうだったから。 あのときの気持ちは、私の一生の宝物。 あいつは、私をただ、ぎゅっと抱きしめてくれた。 あいつの腕が、手が、そして瞳がぶるぶる震えていた。 まるで初めての時のように、熱いキスをした。 ひょっとしたら、あいつ、泣いてたかもしれない。 なんだか、二人とも同じ気持ちになってたから。 |
| 「おーい、蘭、ヤキソバできたぞー。」台所から声がする。 そう、あのときの「あいつ」は、今こうしてここにいる。 あいつが今ここにいる幸せ。 帰ってきてくれて初めてわかった幸せが、いまここにある。 あいつの十八番、シーフードヤキソバの匂いが漂う。 二人して、一緒に食べ出す。 「あのさあ、蘭・・・。今度、半年ほど家空けるから。」 「えええええ?????」 「しゃーねーだろ、少しややこしい事件で、いまさら引き返せないからさ。」 「・・・・・ちゃんと帰ってきてよ。」 「心配すんなって、ガキじゃないんだしさ。」 「だって新一、ほっといたら何しでかすかわからないから・・。」 「おいおい、そんな顔するなよ。半年だって言っただろ。」 「だって、ずっと寂しかったんだよ?勝手に姿消して。 ずっと、訳も話さないで、私に何の相談もしてくれないで。」 思わず、声を荒げる蘭。はっとして、座り直す。 「・・・・・・ばかだなあ。」 「え、今、なんて?」 「ばかだな、って言ったんだよ。」 「どうしてよ?」 「やまない雨はない、だろ?」 そういって、『東の名探偵』は、通算何千回目かの 私のキスを、一瞬のうちに奪っていた。 |