紳助プロジェクトPresents
あれから・・・。(シーフード焼きそばのある風景・前編)
Written by 紳助(FZJ05033★nifty.ne.jp)

6月14日、今日も雨。これでもう8日目。
テレビからは、いつもと変わらぬ天気予報の声。

こんな天気は、どこかふっと切なくなる。
あいつのことを思い浮かべて、来るわけのない窓の外を
じっと見ていたあの頃を思い出しそうになるから・・・。

そういえば、あいつが帰ってきたのも、こんな雨の日だった。
突然の電話だった。「窓の外を見てくれ」って。
あいつの声、珍しく震えてた。豪雨の音に消されることなく
あいつの声が、そして全身全霊からの叫びが、はっきりと聞こえた。

窓を開けるのももどかしく、私は階段を駆け降りていた。
早く行かないと、また遠くに行ってしまいそうだったから。

あのときの気持ちは、私の一生の宝物。
あいつは、私をただ、ぎゅっと抱きしめてくれた。
あいつの腕が、手が、そして瞳がぶるぶる震えていた。

まるで初めての時のように、熱いキスをした。
ひょっとしたら、あいつ、泣いてたかもしれない。
なんだか、二人とも同じ気持ちになってたから。

「おーい、蘭、ヤキソバできたぞー。」台所から声がする。
そう、あのときの「あいつ」は、今こうしてここにいる。
あいつが今ここにいる幸せ。
帰ってきてくれて初めてわかった幸せが、いまここにある。

あいつの十八番、シーフードヤキソバの匂いが漂う。
二人して、一緒に食べ出す。

「あのさあ、蘭・・・。今度、半年ほど家空けるから。」
「えええええ?????」
「しゃーねーだろ、少しややこしい事件で、いまさら引き返せないからさ。」
「・・・・・ちゃんと帰ってきてよ。」
「心配すんなって、ガキじゃないんだしさ。」
「だって新一、ほっといたら何しでかすかわからないから・・。」
「おいおい、そんな顔するなよ。半年だって言っただろ。」

「だって、ずっと寂しかったんだよ?勝手に姿消して。
  ずっと、訳も話さないで、私に何の相談もしてくれないで。」
思わず、声を荒げる蘭。はっとして、座り直す。

「・・・・・・ばかだなあ。」
「え、今、なんて?」
「ばかだな、って言ったんだよ。」
「どうしてよ?」

「やまない雨はない、だろ?」
そういって、『東の名探偵』は、通算何千回目かの
私のキスを、一瞬のうちに奪っていた。

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