| 新一の奴、何かあったのかな? せっかく事件が片付いて帰ってこれたのに 昨日から、ソワソワしてばかり・・・・。 シーフード焼きそばは、具がほとんど生だし 食事中もずっと時間を気にしているし・・。 ・・・ひょっとして、新しい事件? いや、それは違う。それなら、むしろ目が輝いて いつも通り元気良く家を飛び出すはずだし。 「・・・・・・・・なあ、蘭?」 「どうしたの、新一?」 「・・・・・今日、お前の誕生日、だよな。」 「そうだけど?」 「今から、ドライブに行かないか? おいしいレストラン見つけたんだけど、食べに行こう。 ・・・・・・もちろん、嫌なら別にいいけどさ。」 「嫌なわけないじゃない。行こうよ!!」 (・・・・・・・・おかしい。) とびきりの笑顔とは裏腹に、私の中で何かが膨らみ始めた。 どうして今日に限って、こんなに優しいんだろう? いつもは、自分の誕生日すら忘れてるのに・・・・。 (まあ、いいか。せっかくだし、今日は甘えてみようっと♪) |
| 「チェッ、また赤信号かよ。」 「いいじゃない、まだ予約の時間には間に合うんでしょう?」 「えっ・・・、なんで知ってるんだよ?」 「電話のメモ用紙、ボールペンの跡が下の紙に残ってたわよ。」 この夫にして、この妻あり、と言ったところか。 ともかく、二人を乗せた車は、無事にレストランに到着したのである。 「・・・・・二人のこれからに、乾杯。」 キーンと澄んだ音を残し、シェリーのグラスを交わす二人。 「・・・・・・・おいしいっ!!」 「だろ?ここは、日本の風土に合わせたワインしか置いてないんだ。」 「ふーん、詳しいんだね。」 「そ、そうか?結構有名な話だぜ。この前、新聞に載ってたしさ。」 「おとといの東京新聞?」 「うん。・・・・あっ、いや、違う違う。」慌てても、もう遅い。 (・・・やっぱり何かあったんだ。)蘭の中で疑念は確信に変わる。 確か、昨日まで新一はシンガポールの事件を追っていたはずなのに・・。 どうして素直に言ってくれないんだろう? どうしても、言えないことなの? ・・・・・もしかして、他の女? 蘭の中で、色々な推測が飛び交い、弾けては生まれてゆく。 (・・・・やめとこう。)蘭はふるふると首を振った。 せっかくの新一の思いを、わざわざここで壊すこともない。 そう思い、オマールのフリットにナイフを通す蘭。 しかし、その味はどこまでも味気なく、さみしいものだった。 |
| 「なかなかおいしかったな。」満足げにハンドルを握る新一。 「うん・・・。」まだ、さっきの考えの抜けない蘭。 「どうしたんだよ、気に入らなかった?」 「そんなんじゃないよ・・。」 「じゃあ、何だよ。」 「そんな事言ってるんじゃないよ!!!」 (キキッ。)さすがに、停車する新一。 「おい、何が言いたいんだよ?」 「それはこっちの台詞だよ。素直に言ってよ。・・・・新一。」 「ひょっとして、ドライブに誘ったこと?」無言で頷く蘭。 「だから、あれは本当に何でもないんだよ。」笑顔で諭す新一。 「じゃあ、なんで、レストランの記事のこと知ってるのよ? 昨日まで、日本にいなかったじゃない。」 「だから、あれは・・・・・」 「もういいわよ!!言い訳なんか聞きたくない・・。新一、車、出して。」 「わかったよ・・。」急発進する新一。珍しく顔が険しい。 蘭は、助手席で、針のむしろに座らされた気分だった。 どうして、あんな事言ったんだろ? せっかくの、新一の気遣いだったのに・・・・。 冷たく重苦しい空気の逃れる中、二人は家に戻ってきた。 |
| 「蘭、悪いけどさ、車庫入れやっといて。」 「え、ええ?自分でやればいいじゃない。」 「いいから頼むよ、な。」 そういって、玄関へと急ぐ新一。 「まったくもう、なんだってのよ・・。」車庫入れを済ます蘭。 彼女が玄関を開けようとした時、家の中から駆け回る音がした。 「ちょっと、新一、何やってるの?」 「え、いや、ちょっと片づけてたんだ。」 「あ、そう。」なぜか微笑んでしまう蘭。なんか今日の彼は、どこか変だ。 ・・・・・・もう9時だ。なんだか一日があっという間だった。 短いのか、長いのかよくわからない不思議な一日だった。 と、その時、蘭は食卓のバラに気が付いた。 確か出かける時、あんなのはなかったはずだ。 「ねえ、新一、あのバラは何?」 「え、もとからあったんじゃないのか?」 それはないはずだ。昨日まであんなものなかったし ドライブの途中でも、花屋には寄らなかったし。 ・・・・・なのに、今、ここにあるということは? 彼女の脳細胞の中を、ありとあらゆる可能性が駆け巡る。 そして2分後、彼女が導き出した結論は・・・・・・。 彼女は、家の中のごみ箱をあさりはじめた。 「お、おい、蘭、なにやってんだよ。」 「もう騙されないわよ。」 「何のことだよ、そんなとこ、ごみしかねえって。」 「青い顔して、何いってんのよ。」 ふと、彼女の手になにか厚紙らしきものが触れた。 (・・・これだ!!!)彼女は直感した。 「ば、ばか、やめろって!!!」もはやパニックの新一。 彼女は勇気を振り絞り、その厚紙を引き抜いた・・・!!!!
恥ずかしくて、うつむいてしまった新一。 読んでるうちに、熱いものが胸に込み上げる蘭。 工藤家に、先ほどの車内とは似てはるかに異なる沈黙が流れた。 「・・・・・だから、見るなって、言ったんだよ。」 「・・・・新一?」 「なんだよ。」少年のように答える新一。 「ありがとう・・・。」 そう言って、蘭は精一杯の「おかえし」を 新一にプレゼントしたのだった・・・・。 |