紳助プロジェクトPresents
それから・・・。(シーフード焼きそばのある風景・後編)
Written by 紳助(FZJ05033★nifty.ne.jp)

新一の奴、何かあったのかな?
せっかく事件が片付いて帰ってこれたのに
昨日から、ソワソワしてばかり・・・・。
シーフード焼きそばは、具がほとんど生だし
食事中もずっと時間を気にしているし・・。
・・・ひょっとして、新しい事件?
いや、それは違う。それなら、むしろ目が輝いて
いつも通り元気良く家を飛び出すはずだし。

「・・・・・・・・なあ、蘭?」
「どうしたの、新一?」
「・・・・・今日、お前の誕生日、だよな。」
「そうだけど?」
「今から、ドライブに行かないか?
おいしいレストラン見つけたんだけど、食べに行こう。
・・・・・・もちろん、嫌なら別にいいけどさ。」
「嫌なわけないじゃない。行こうよ!!」

(・・・・・・・・おかしい。)
とびきりの笑顔とは裏腹に、私の中で何かが膨らみ始めた。
どうして今日に限って、こんなに優しいんだろう?
いつもは、自分の誕生日すら忘れてるのに・・・・。

(まあ、いいか。せっかくだし、今日は甘えてみようっと♪)

「チェッ、また赤信号かよ。」
「いいじゃない、まだ予約の時間には間に合うんでしょう?」
「えっ・・・、なんで知ってるんだよ?」
「電話のメモ用紙、ボールペンの跡が下の紙に残ってたわよ。」
この夫にして、この妻あり、と言ったところか。
ともかく、二人を乗せた車は、無事にレストランに到着したのである。

「・・・・・二人のこれからに、乾杯。」
キーンと澄んだ音を残し、シェリーのグラスを交わす二人。
「・・・・・・・おいしいっ!!」
「だろ?ここは、日本の風土に合わせたワインしか置いてないんだ。」
「ふーん、詳しいんだね。」
「そ、そうか?結構有名な話だぜ。この前、新聞に載ってたしさ。」
「おとといの東京新聞?」
「うん。・・・・あっ、いや、違う違う。」慌てても、もう遅い。

(・・・やっぱり何かあったんだ。)蘭の中で疑念は確信に変わる。
確か、昨日まで新一はシンガポールの事件を追っていたはずなのに・・。

どうして素直に言ってくれないんだろう?
どうしても、言えないことなの?
・・・・・もしかして、他の女?
蘭の中で、色々な推測が飛び交い、弾けては生まれてゆく。

(・・・・やめとこう。)蘭はふるふると首を振った。
せっかくの新一の思いを、わざわざここで壊すこともない。
そう思い、オマールのフリットにナイフを通す蘭。
しかし、その味はどこまでも味気なく、さみしいものだった。

「なかなかおいしかったな。」満足げにハンドルを握る新一。
「うん・・・。」まだ、さっきの考えの抜けない蘭。
「どうしたんだよ、気に入らなかった?」
「そんなんじゃないよ・・。」
「じゃあ、何だよ。」
「そんな事言ってるんじゃないよ!!!」
(キキッ。)さすがに、停車する新一。
「おい、何が言いたいんだよ?」
「それはこっちの台詞だよ。素直に言ってよ。・・・・新一。」
「ひょっとして、ドライブに誘ったこと?」無言で頷く蘭。
「だから、あれは本当に何でもないんだよ。」笑顔で諭す新一。
「じゃあ、なんで、レストランの記事のこと知ってるのよ?
昨日まで、日本にいなかったじゃない。」
「だから、あれは・・・・・」
「もういいわよ!!言い訳なんか聞きたくない・・。新一、車、出して。」
「わかったよ・・。」急発進する新一。珍しく顔が険しい。

蘭は、助手席で、針のむしろに座らされた気分だった。
どうして、あんな事言ったんだろ?
せっかくの、新一の気遣いだったのに・・・・。
冷たく重苦しい空気の逃れる中、二人は家に戻ってきた。

「蘭、悪いけどさ、車庫入れやっといて。」
「え、ええ?自分でやればいいじゃない。」
「いいから頼むよ、な。」
そういって、玄関へと急ぐ新一。

「まったくもう、なんだってのよ・・。」車庫入れを済ます蘭。
彼女が玄関を開けようとした時、家の中から駆け回る音がした。

「ちょっと、新一、何やってるの?」
「え、いや、ちょっと片づけてたんだ。」
「あ、そう。」なぜか微笑んでしまう蘭。なんか今日の彼は、どこか変だ。

・・・・・・もう9時だ。なんだか一日があっという間だった。
短いのか、長いのかよくわからない不思議な一日だった。

と、その時、蘭は食卓のバラに気が付いた。
確か出かける時、あんなのはなかったはずだ。
「ねえ、新一、あのバラは何?」
「え、もとからあったんじゃないのか?」
それはないはずだ。昨日まであんなものなかったし
ドライブの途中でも、花屋には寄らなかったし。

・・・・・なのに、今、ここにあるということは?

彼女の脳細胞の中を、ありとあらゆる可能性が駆け巡る。
そして2分後、彼女が導き出した結論は・・・・・・。

彼女は、家の中のごみ箱をあさりはじめた。
「お、おい、蘭、なにやってんだよ。」
「もう騙されないわよ。」
「何のことだよ、そんなとこ、ごみしかねえって。」
「青い顔して、何いってんのよ。」

ふと、彼女の手になにか厚紙らしきものが触れた。
(・・・これだ!!!)彼女は直感した。
「ば、ばか、やめろって!!!」もはやパニックの新一。
彼女は勇気を振り絞り、その厚紙を引き抜いた・・・!!!!



世界で一番愛しい妻へ

蘭、誕生日おめでとう。
今年も、結局一緒にいてやれなくて、ごめん。
本当なら、直接思いを伝えたかったんだけど・・・。

だから、シンガポールから、俺のメッセージを
このバラに乗せて贈ります。
ハッピーバースデー、蘭。

P.S. もし来年一緒にいれたら、ドライブにいこうぜ。




恥ずかしくて、うつむいてしまった新一。
読んでるうちに、熱いものが胸に込み上げる蘭。
工藤家に、先ほどの車内とは似てはるかに異なる沈黙が流れた。
「・・・・・だから、見るなって、言ったんだよ。」
「・・・・新一?」
「なんだよ。」少年のように答える新一。
「ありがとう・・・。」
そう言って、蘭は精一杯の「おかえし」を
新一にプレゼントしたのだった・・・・。

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