紳助プロジェクトPresents
ジョハリの窓
Written by 紳助(FZJ05033★nifty.ne.jp)

「じゃあ、また明日な。」
そういってあいつはいつもの道を歩いていく。
これまでにこんな光景を何度見てきたのだろう。

物心ついたころから、あいつと一緒にいた。
学校から帰るときも、遊びつかれて帰る時も、絶対あいつと一緒やった。

二人で並んで、夕陽を見ながら一緒に歩いて
トーフ屋さんの角を曲がって、駄菓子やさんトコの坂を下って3つ目の交差点・・・。
いつも、あいつと私が別々になる場所。ここが私と平次の「境界線」。
そして、「幼なじみ」と「服部平次」の境界線。

私は、ここから先の「服部平次」を全然知らない。
ここで別れた後の、ただの「服部平次」を全然知らない。

それは、私達が小さい頃からの関係のままでいたから。
小さい頃にかぶった「幼なじみ」という仮面を外す勇気が無かったから。
仮面をかぶりつづければ傷付くことも無いと、自分を偽りつづけていたから。
「幼なじみ」の特権で一緒にいられれば良いと、果てしないウソをつきつづけてきたから。

・・・・あいつにとって、私は一体何なのやろう?
あいつの目には、私はどう写っとるんやろう?
「幼なじみ」の仮面をかぶって、気が強くて元気な女の子を演じ続けてきた私を見て
あいつは、今何を思ってるのやろう?

あいつは本当の私を知らないし、私だって本当の私なんかわからない。
あいつから見た私も、私から見た”私”も全て、「幼なじみ」という仮面。
「本当の私」ってどんな人なんだろう。幼なじみという言い訳を止めたとき
私はあいつにどんなことをしてやれるんやろう?

生まれたころから、ずーっと変わらん水平線。
行けども行けどもいっこも動かない水平線。
「幼なじみ」という言い訳の境界線。
私と平次は今までずーっと水平線。

最初はこれで良いと思ってた。
いつも平次と一緒にいて、あいつの後をついていって、おしゃべりして・・・。
それだけで十分だった。もう他には何もいらないと思ってた。

けどいつからか、その関係が心地よくて失うのが恐くなってた。
今ここで動けば全てを失うかもしれない。そんなリスクを背負ってまで
平次に世界で2番目に近い場所を失いたくなかった。
フラれるのが恐かった。けど、1番近い場所に行くのはもっと恐かった。

・・・・私はどうしたらええのやろう?
いつまで、こんなウソをつき続ければええんやろう?

ウソをつき続けている自分が恐い。
そして、その嘘をちっとも疑ってくれない平次が恐い。
この関係をずっと続けてたら、それが「真実」になってしまいそうで。

私はいつになったら平次に素顔を見せられるんやろう?
いつになったら、この永いウソが終わるのやろう?
平次、早いこと見破ってや、こんなウソ・・・・・。

こんな私の事もいっこも知らんと、あいつはまーっすぐ家に向かってる。
ほんまにもう、あんたホンマに「西の名探偵」なんか!?
もう、しゃーないなぁ。少しヒントでもやっとこうかな。ホンマにもう。

「へーえーじーっ、家の前まで送ったるわーっ!!!!」


※この詩のタイトルは、心理学で用いられる「ジョハリの窓」からとりました。
「自他共に認める自分」「他人が知ってる自分」「自分が知ってる自分」のアレです。
果たして彼女の中の「本当の自分」は何を望んでいるのでしょうね。

 小説ダウンロードトップへ
「無印作品」TOPへ