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(ジリリリリリリリリ!!!!!!!) 夏もいよいよ終わろうかという8月のある日、 遠山家に昔から備え付けられていた電話のベルが鳴り響いた。 「はいもしもし遠山です。」 「あ、和葉ちゃん?」平次の母、服部静華の声だ。 「はい。あの、母に何かご用ですか?」 「いや、用があんのは和葉ちゃんの方なんよ。 ちょっと大変なことが起こったから、ウチまで来てくれる?」 「あの、何かあったんですか?」 「平次の様子がおかしいんよ!!!!!!」 次の瞬間、和葉は受話器を置くのももどかしく、猛然と走り出していた。 ・・・・そして3分後。 「おばちゃん、平次がどうかしたん!?」和葉が到着した。 「ああ、よう来てくれたね。今日帰ってきてから平次が閉じこもったままなんよ。」 「一体何があったんですか?」 「わからへん。今日ね、甥っ子の結婚式に呼ばれたんよ。 それで私とダンナと平次の三人で行ったら、この有り様なんよ。」 静華は、平次の部屋のドアを指差した。 「結婚式の時に、何か変なところはなかったですか?」和葉が思わず尋ねる。 「いや、なーんも。なあ?」静華、ビールを飲む夫に尋ねる。 「それどころか、仲のよかったいとこが結婚するって大喜びやったで。」 「じゃあ、特に心当たりはない、と?」 「ええ、だからどないしたら良いのか・・・・。あっそう言うたら!!!」 「どうしたんですか?」 「式場からハイヤーで帰る時、アイツ外ばっかり見とったな。」平蔵、妻の方を見る。 「そうそう。私らの話にいっこも耳貸さんでなぁ。」静華も思い出したようだ。 「帰る時に?」 「そうなんや。ガラにもなくタメ息ついてなぁ。」 「フームッ・・・・・。」名探偵さながらにアゴに手をやり悩む和葉。 (普段から仲のよかったイトコの結婚式。 出席当時は喜んでいた平次・・・。そして帰り道についたタメ息・・・。) 一体何なんや!?何が苦しくてアイツは・・・・・??? なんで平次はみんなに心を閉ざしたんや!? ・・・・待てよ。楽しい結婚式の帰り道。 喜びを分かち合った後の、甘酸っぱい気持ち・・・・。 新しい一歩を見届けた喜びと、二人が新しいどこかへ行ってしまう寂しさ・・・。 ・・・・・・・・・・・まさか!!!!!! 「ねえ、おっちゃん?」 「うん、何か思い付いたんか?」”おっちゃん”こと平蔵が反応する。 「イトコの結婚式って言いましたよね?」 「ああ、そうやで。」 「失礼ですけど、今日結婚した人って、平次から見てどんな間柄なんですか?」 「えーと、父の兄の息子、かな。」 「おっちゃんは、何人兄弟の何番目ですか?」 「わしか?3人兄弟の末っ子や。」 「おっちゃんとお兄さんは何歳違いですか?」 「一番上が6歳上、2番目が4歳上や。」 「おっちゃんのお兄さん達の中で、晩婚の人は?」 「おらへん。みんな二十歳過ぎすぐに結婚したけど。」 「ちなみにおっちゃんも早婚だったんですか?」 「いや、わしは世間並みぐらいかな。」 「・・・・なあ、和葉ちゃん。何を聞いてるの?」静華が思わず尋ねる。 「謎は全て解けました。」 「ええっ!?」府警本部長夫妻、思わず大声になる。 「ちょっと平次の部屋に行ってきます!!!」和葉は平次の部屋の方へ走っていった。 「・・・・・平次、入っていーい?」 「和葉か。一体何の用や?」ドア越しに声がする。 「・・・・・正体がわかったんよ。平次が心を閉ざしたものの正体が・・・。」 「・・・・!!!!!」動揺したのだろう。平次が息をふっと吸い込むのが聞こえた。 「・・・・怒ってる?」論理的試行の結果とは言え、やはり気が引ける。 「怒るも何も聞いてみないと、合っとるかどうかわからんやないか。」呆れた声が聞こえる。 「そやな。じゃあ言うね。」和葉はドアにもたれてみせた。 「平次が今日ふさぎこんだ理由はただ一つ。・・・・・それは、社会的重圧や!! 」 「!!!!!!!!!」 「平次、今日結婚式に呼ばれたんやんな。新郎は平次と昔からの大の仲良し。 当然、平次はおっちゃんたちと一緒に出席した。」平蔵、静華もドアの前で聞き耳を立てる。 「・・・・・・・・・」応答が無い。けど、ここまで来たらもう後戻りは出来ない。 「平次は、大好きなイトコの結婚式ということで大喜びやった。 だから、式に向かう前、そして式の最中は全く動揺することも無かった。」 「ええぞ和葉、その調子や。」お株を奪われた名探偵、まんざらでもないようだ。 「平次のお父さんは兄弟の仲で末っ子やった。 そしてお父さんの兄弟はみんな早目早目に結婚した。だから、おっちゃんの兄弟の息子、 つまり平次のイトコ達は全員平次より早く生まれた。だから平次は今日・・・・・・」 (クッ・・・・・・・・・)歯を食いしばる平次。アカン、和葉の奴、ホンマに推理を・・!! 「・・・・・・・・・だから平次は、平次は・・・・。」もう、涙に潤んで声がうまく出ない。 「も、もう言うなーーーーっ!!!!!」たまらずドアを開ける平次。 「イトコの中で最後に独身で置いていかれて悔しかったんやーっ!!!!!」 もう笑いが止まらない。 「ハーッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!!!!!」服部家に大爆笑の嵐が起こった。 ・・・・・そしてそれから5分後。平次を含む全員が居間に移動していた。 「全くもう、和葉、おまえしゃべりすぎやぞ。」 「こら平次、あんたせっかくの心遣いに何て事いうんよ。」母がたしなめる。 「そうやぞ。そら言い方には多少問題あったかしれんが、全てお前を思うての事なんやぞ。」 「フンッ!!!!」クッキーをボリボリかじる平次。 「・・・けど、和葉ちゃん、ようわかったねー。」 「まあ、平次の事やからきっと他愛ないことやろなと思ったんです。結構意地っ張りやから。」 「なるほどねえ。こりゃ、和葉ちゃんに一本取られたな。さすが遠山とこのお嬢さんや。」平蔵、苦笑い。 「ま、何かあったら、この【西の名探偵】遠山和葉にご相談ください♪」 「おい和葉、調子に乗りすぎやぞ。」 「ええやないの。たまにはこれぐらい言わせてよ。」 「おーおー、これは頼もしいなぁ。ほな早速頼みがあるんやが・・・・。」平蔵、興味津々。 「ちょ、ちょっと待て!!!ホンマの【西の名探偵】は俺やぞ!!俺に相談せーよ。」 「いーや、お前ではアカンのや。」 「何っ!?」和葉、どんなもんだとVサイン。 「で、おっちゃん何なんです、依頼って?」もみ手で近寄る和葉。 「・・・平次の嫁さんになってやってくれ。」 「!!!!!!!!!!!!!!」平次、和葉、両名地蔵モード突入。 「そ、そそそ、そんな、嫌です!!!」 「そういうなや、平次たっての頼みなんや、な、頼むわ!!」 「おい親父、勝手に人の名前使うなや!!」 「そう硬いこと言うなや。大した事やないやろ?」 「比べるモンがないほどの大問題や!!!!」 「あ、おっちゃん。私、もう帰りますね。」 「え、もうちょいゆっくりしときーな。今、遠山もここに呼ぶさかいに。」 「うちの父を?」 「そうや。平次が正面から結婚に向き合ったことを祝ってやなぁ・・・。」 「し、失礼します!!!」もう逃げるしかない。これ以上何を言われるかわからない。 「ちょっと待ちぃな・・・・。行ってしもた。」ため息を吐く静華。 「こうなったら、もうアレしかないな。」平蔵、厳かにうなづく。 「そうですね。」 「親父、何やねんアレって?」 「決まっとるやないか。お前が責任もって和葉ちゃんの面倒見るんやんか。」 「・・・・面倒見るって?」 ガラガラガラガラガラピシャン!!!!服部家の玄関が重く閉ざされる。 「えーか平次!!無事に和葉ちゃんと結婚するまでは、家の敷居はまたがさへんで!!」 「そ、そんな殺生や!!」 「殺生もナニもあるかい!!和葉ちゃんの心配かけたんは自分のせいやないか!!」 「あれはお袋が勝手に電話をかけただけや!!」 「とにかく!!和葉ちゃんを貰ってくるんや、わかったな!!!」 ・・・そして、家の戸は本当に閉じられてしまった・・・・。 「もー、結婚なんでこりごりやー。おれはぜっっったいに和葉となんか結婚せーへん!!!!」 西の名探偵の雄たけびは、その夜盛大に響き渡ったそうな、めでたしめでたし。 |