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思い出の同窓会(99/09/06アップ) |
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千晶のイチゴ大福!?(00/04/10アップ) |
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聖夜の願い(01/01/03アップ) |
感想などございましたらエイリアン広場の方へ書き込んで頂けるとうれしいのですが(^^)
郵便ポストに入っていた一枚のはがき。
宛名に「岡村 五月様」とある。
手にとって裏面を見る。
・・・都立黄島高校同窓会のお知らせ・・・真っ先に飛び込んで来た文面。
そっか、もう同窓会なんてのが開かれるんだ。
何年振りだろう?
指を折って数えてみる。
両手でぎりぎりだった。
9年経っていた。
懐かしいな・・・。
まぶたを閉じればあの頃のことが思い浮かぶ。
みんな元気だろうか?
ふと、坂本さんの顔が脳裏をかすめた。
その瞬間、わたしは同窓会への出席を決めていた。
部屋のカレンダーに丸をつける。
カレンダーの横の鏡に映るわたし・・・岡村五月・・・27の秋。
会場は豪華だった。
都内のとある高級ホテルの最上階、ラウンジを借り切っていた。
わたし達、22期生全員を招待していた。
会費も満足に取らないなんて・・・。
不・思・議。
首を傾げながら、招待状を受付に手渡す。
でも、この受付の人達、どう見ても同期生のボランティアじゃなさそうね。
ふかふかの絨毯を安物のハイヒールで踏みつける。
会場内はいわゆる立食パーティの形式をとっていた。
ウエルカムドリンクのシャンパンのグラスを受け取ると、奥へ向かってわたしは進んだ。
100人ぐらいかしら?出席者。
目測で辺りを見渡していた時、後ろから肩を叩かれた。
振り向くと、田中 由香・・・今は風祭 由香だっけ・・・が笑っていた。
「元気してた?五月。」
「由香・・・久しぶり!」
由香と会うのは彼女の結婚式以来だから、ほぼ、一年ぶりかな。
お互いに現況を報告しあう。
「漆谷さんとはその後・・・。」
由香に聞かれた。
さすがに彼女の情報収集能力は落ちないわね。
「つかず、離れずといったところ・・・。」
わたしは正直に話した。
偶然再会した彼とは結局のところ、中途半端な関係が続いている。
その大半の原因はわたしにあるんだけど・・・。
「もたもた、してると誰かに取られちゃうわよ。」
「・・・坂本さんはきてないのかなあ?」
あまり、その話題に触れて欲しくなくて、わたしは急に話しの方向を変えた。
「坂本さん?ああ、真希ね。」
由香は彼女の名前を口にすると、意味ありげに笑った。
「何かあったの?」
「五月、最近、テレビとか見てる?」
「見てるわよ、テレビくらい。」
「ふうん、じゃあ、2ヶ月前話題になったこと覚えてる?」
「2ヶ月前?」
「そう。」
確か、その頃は書いていた小説の締め切り間際で大変だった記憶しかない。
わたしは首を振った。
「降参、教えてよ。」
「五月、ここのホテルってどこの経営か知ってる?」
「知ってるわよ、扶桑グループでしょう。」
扶桑グループと言うのは日本有数の大手企業で、オーナーは世界的な資産家らしい。
「その扶桑グループの後継者、知ってるわよね?」
「まあ、テレビや雑誌で顔を見たことぐらいあるわよ。なかなかいい男よね。」
「よく言われてるわ、映画俳優になったら大成功だろうって。」
「その人がどうかしたの?」
「2ヶ月前、婚約記者会見があったわ。」
そう言われて少し思い出した。
原稿を取りに来た編集の人が興奮してシンデレラストーリーだって話してたのを・・・。
その時は、小説をまとめるのに必死で、ほとんど上の空だったけ。
「わ〜い、岡村さんだあ。」
そのことに思い至った時、甘ったるい、少し舌たらずなしゃべり方で呼びかけられた。
こんなしゃべり方をする人を、わたしはひとりしか知らない。
高校時代の友人で、たった今、話題にした人。
目の前に、相変わらず装飾過剰なドレスを着た坂本さんが立っていた。
「わあ、坂本さん。お久しぶり。」
懐かしさのあまり、彼女の両手を取って上下に激しく動かした。
「真希、こちらは?」
わたしはその声でその男性に気がついた。
そして、その人の顔を見た瞬間、絶句した。
映画俳優・・・じゃなかった、大企業の御曹司が真希の隣りに立っていた。
ゆっくりと腕を組む真希と御曹司。
わたしは金魚が水面で口をパクパクさせるようにして由香を見た。
これで、わかったでしょ、という様に由香は軽く肩をすくめた。
由香、真希、そしてわたし。
高校時代の友達が揃う。
でも、ひとりだけ欠けている。
それは・・・。
「千晶のバカ・・・。どこ行っちゃたんだろう?」
突然、坂本さんが涙をこぼす。
三人に共通の友人。
百武千晶・・・。
既に、消息が知れなくなってからずいぶん経つ。
きっと、由香も坂本さんも必死で探したんだろうな。
自然に話題は百武さんのことになる。
「千晶、見てくれたかな、あたしの晴れ姿・・・。」
坂本さんがぽつりと言う。
日本中に中継された例の記者会見のことらしい。
シジジシジシシュ星が何光年離れているのか、わたしは知らないけど、百武さんが生きている内に電波が届くとは考えられなかった。
百武さん、びっくりするかな?
親友の坂本さんがこんなに素敵なお相手を見つけたなんて。
「最後に千晶に会ったのはみんな、何時だったかしら?」
由香が問う。
そう、あれは・・・・・・・・・。
「ゴガツ!」
街中で呼びとめられた。
学校帰りに渋谷の駅前で、大学3年に進級した年だった。
ゴガツ・・・こんな風にわたしを呼ぶのは世界中にたったふたりだけ。
きょろきょろ辺りを見渡すわたしに、
「どこ見てんのよ、こっちこっち。」
車道を隔てた反対側から声が掛かる。
「あ、岡村さんだあ。」
その声の主はすぐ分った。
ホシオくんだった。
ホシオくんがこちらへ向かって歩いてくる。
「久しぶりだね、岡村さん。」
とても懐かしい顔が目前にあった。
「ホシオくん!」
それ以上、言葉が出なかった。
「岡村さんも元気そうだね。」
微笑むホシオくんにわたしの気持ちは高校生に逆戻りしていた。
間もなくして20メートル先の横断歩道を横切ってきた少女が追いつきざま、
「ホシオ!車道を横切ったら危ないでしょう。」
そう言いながらホシオくんの頭を叩いた。
一瞬、誰だか分らなかった。
「ごめん、千晶。」
・・・ち・あ・き・?
え!?
百武さん!!
肩まで伸びた髪がゆるくウエーブして風にそよいでる。
ほんの軽くお化粧した姿はどんなモデルもアイドルも凌駕していた。
よく女は化けるって言うけど・・・百武さんの場合・・・化け過ぎだわ。
高校の頃から分ってたことなんだけどね。
ああ、きっとこの人将来美人になるなって。
それにしてもその度合いはわたしの予想をはるかに越えていた。
「ゴガツ・・・お久しぶり!あ、こんな呼び方じゃ失礼よね。改めまして岡村さんお久しぶり。」
わたしの当惑をよそに百武さんは満面の笑みを浮かべて、懐かしげな視線を送ってきている。
「ゴガツでいいわよ、百武さんに”岡村さん”なんて呼ばれたら、かえって気色悪いわよ。」
わたしはあの頃の気持ちで切り返した。
それから喫茶店で少しお話をして別れたのだけれど、話しをしている間中、わたしは百武さんから目に見えない圧迫を感じていた。
百武さんは決して変な態度をとったわけじゃない。
高校の頃と同じようにわたしに接してくれた。
わたしにしてもきれいになった百武さんに気後れしたわけじゃない。
多分、あれは気品とか気高さと言った類のものが百武さんから出ていたんだと今にして思う。
何故、そんなものを感じ取ったのか分らないけど。
その年の暮れに出した年賀状があて先不明で返ってきた時、もう彼女は地球にいなかったに相違ない。
わたしが全てを思い出したのはそれからしばらくしてのこと・・・。
エイリアンだったホシオくん。
百武さんは知っていたのかしら。
知っていたんだと思う。
そして何もかも承知で付き合っていたんだと思う。
そしてシジジシジシュに帰れることになったホシオくんと一緒に彼の星へ旅立ったんだと思う。
やるじゃない。
百武さん。
国際結婚なんて目じゃないわよ。
星間結婚じゃない。
きっとホシオくんの星で幸せに暮しているであろう百武さんが想像される。
わたしはひとり顔がにやけていた。
同窓会の帰り道、由香としたたかに飲んで酔いのまわったわたし。
家の近くの公園のベンチに座り夜空を見上げる。
ひときわ明るく輝く星・・・。
あれがシジジシジシュかもしれない。
わたしはその星に向かって叫んだ。
「ホシオく〜ん、百武さ〜ん、元気でやってる〜。坂本さん、結婚するって〜、お祝いしてあげてねえ〜。」
うん、わかったと言う風に星が瞬いた。
そうだ、百武さんは宇宙を飛び越えてでも愛する人のもとに飛び込んだんだ。
それに引き換えわたしは・・・。
わずかな距離を飛び越えるのが恐くて漆谷さんとの対決を避けてきた。
でも、今なら言えるかもしれない。
素直な気持ちで・・・。
「応援してね、ホシオくん、百武さん。」
わたしはもう一度夜空を見上げるとつぶやいた。
「よいしょっと。」
反動をつけ、ベンチから立ちあがるとわたしは彼の家へ向かって歩みを始めた。
星は明るく輝いていた。
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あとがき
千晶の物語と銘打っておきながら、最初からルール違反してしまいました。
何故かこんな話しを想い付いてしまったもので・・・。
笑ってやってください・・・・・。
位置的には「五月日記」のラストから一年後と言う設定です。
この頃、同窓会を開けばきっと千晶のことが話題になるなあって考えて、それならみなさんに千晶の思い出を語ってもらおうかとしました。
結局は「後 五月日記」になっちゃいましたが(^^;;
99/9/6![]()
「うわ!・・・何これ?」
玄関のドアを開けたとたん、あたしが家に入るの阻止するかのように置かれた巨大な荷物。
カバでも入ってる・・・って言うのは大げさにしても、ひとりで持てる大きさじゃないわ。
通せんぼしてるところなんて、まるで妖怪「ぬりかべ」だわ。
ゲゲゲの鬼太郎でも呼んでこないといけなくなるじゃない。
さて、どうしたものかと思案していると、
「おかえり、千晶。」
ひょっこり、という感じで鬼太郎が・・・違う、ホシオが家の中から顔を出した。
でも、もう少し前髪を長くしたら似てるかも?
あたしはホシオの顔とこの間ビデオで見た鬼太郎の顔を頭の中でだぶらせてみた。
・・・ぷぷっ。
ダメ、吹き出しちゃう。
やっぱり、ホシオはホシオね。
「ボクの顔、何かついてる?」
あんまり、あたしがホシオを眺めたあげく、笑うものだから、ホシオが不思議そうな顔をする。
「何でもない、何でもないのよ。ちょっとした思い出し笑いだから・・・。」
あたしは慌てて笑い顔を引っ込めた。
「それにしても、何よこれ?」
「さあ、ボクも知らない。20分前くらいに宅配屋さんが持って来た。」
「ママは?」
「買い物行くって1時間前ぐらいに出て行ったけど・・・。」
「そう。とにかく、そっち持ってよ、ホシオ。」
「えっ?何でボクが・・・。」
「あのね、あたしひとりに運ばせる気?できるわけないじゃない。」
「いや、千晶は力持ちだから案外簡単に、持ち上げそうで。」
真顔でホシオが言う。
こいつ、ホント、居候って言う自覚あるのかしら?
サーカス小屋にエイリアン一人前いりませんか?って売り込んで来ようかしら。
あたしのそんな物騒な想いが伝わったのか、おずおずといった調子でホシオをが荷物に手を差し出してくる。
「せーの」
あたしの掛け声にあわせて荷物を持ち上げる。
その途端、前のめりになった。
見れば、見事にホシオがしりもちをついて、荷物の下敷きになっていた。
はあ・・・。
昔のスーパーマンだったホシオはどこにいっちゃったんだろう?
ホント、力ないわ、ホシオってば。
「色男、金と力は無かりけり・・・。」
「どうでもいいけど・・・助けてくれないの?」
あたしのつぶやきにホシオが情けない顔で荷物の下から答える。
「まったく、しようがないわね。」
荷物の下からホシオを引っ張り出す。
「やれやれ、助かった。」
ホシオは安堵の表情を浮かべ、それから笑顔で付け加えた。
「ありがとう、千晶。」
・・・弱いのよね、この笑顔に。
「ほんと、もう少し力つけてよね。いざって時、誰が守ってくれるの?」
「誰が誰を?」
「キミがあたしを・・・。」
言ってしまってから少し赤面した。
あたしらしくないかしら、こんなセリフ?
ホシオ・・・どう思った?
「そ・・・そうだね。」
あ・・・けっこう、傷つけたかな、今の。
落ち込んだ様子のホシオにちょっと罪悪感。
「ただいま。」
あたしとホシオの間に気まずさが流れ始めたのを救ったのはママの帰宅だった。
「あら、荷物届いたのね。」
「お帰りなさい、何なのよ、これ?」
あたしはママにたずねた。
「ヒント、今度の水曜日は何の日でしょう?」
もったいをつけてママが言う。
「クイズ?・・・えと、今度の水曜日は・・・今日が2月26日だから・・・3月3日・・・。」
「ひな祭り。」
あたしが尚も首を傾げているとホシオが解答を出した。
「何で女の子の千晶が気がつかないで、ホシオくんが気がつくのよ。」
あきれ顔のママ。
・・・そんなこと言ったって。
「じゃあ、これは・・・雛人形!?」
やっと、荷物の正体が判明した。
良かった、良かった・・・って!?!
「誰の?」
あたしのこのひとことにママが凍りついた。
「・・・千晶の育て方、どこで間違えたのかしら?」
深刻そうにため息をつく。
「千晶のだよ。」
後ろからホシオが言う。
「あたしの!」
「そうよ、パパがあんたに買ってあげたのよ。」
「だって・・・。」
雛人形なら・・・あるじゃない。
女の子である以上、雛人形は持っている。
ガラスケースに入ったお内裏様とお雛様だけのワンペア・・・五人官女もいない可愛らしいのだけど。
あたしはあれはあれで気にいっている。
それにこの年でもうひな祭りでもないと思うのだけれど。
どうやら、今回のプレゼントは狭いマンション暮らしから一戸建てへ引っ越したのを機に、大事なひとり娘であるあたしのための物らしい。
パパはどうも雛壇を前に娘と遊ぶひな祭り・・・と言うのを夢見てたらしい。
あと10年早かったらあたしも狂喜乱舞したかもしれないけど・・・。
さん然と輝くひな壇。
頂上には仲良さそうなふたり・・・あたしは少しだけ人形をお互いに近づけるように並べ直した。
やっぱり、いいわね。
真新しい雛人形を前にあたしは満更でもなかった。
それにしてもホシオのはしゃぎようって言ったらすごかったわ。
ママとあたしで並べ始めたのだけど、途中からほとんどホシオひとりで並べてしまった。
その姿がホントうれしそうで・・・。
まるでホシオ君が女の子みたいねってママに言われる始末。
どうしちゃったのよ、ホシオ?
その夜、あたしはベッドに入ったもののなかなか寝つけなかった。
何度か寝返りを打っていると、隣の部屋のドアが開く音。
ホシオ?
トイレかな?
・・・・・・。
10分近く経過したがホシオが戻って来る気配が無かった。
あたしは不審に思ってベッドを抜け出すと階下へ降りた。
「ホシオ・・・。」
昼間、雛人形を並べたリビングの明かりが灯っていた。
そっと中をのぞくとホシオが雛人形をじっと見つめていた。
その目許に光る一滴・・・。
ホシオ・・・泣いてるの?
普段、見なれているホシオとは別人の顔がそこにはあった。
ホシオに気がつかれないように引き返そうとした時、
「千晶・・・。」
呼び止められた。
「ごめん、起こしちゃったみたいで。」
いつものホシオだ。
「どうしたの?こんな夜中に・・・。」
「人形が見たくて。・・・思い出しちゃったんだ。故郷のこと。」
「故郷って、シジジシジシシュのこと?」
「うん。千晶、聞いてくれる?」
そう言ってホシオが話し出したのは切ない語り伝えだった。
・・・昔、ふたつの国があった。
その国同士は仲睦まじく暮して来たのだが、ある年、大きな災害が襲った。
大雨が降り、両国を隔てる川が氾濫し大洪水が押し寄せた。
人々は祈り、助けを求めた。
国の支配者は占い師に助かる方法を占わせた。
占いの答えは、
「火の年に生まれた者をこの国から、水の年から生まれた者を彼の国からひとりづつ選び出し、川へ捧げよ、さすれば静まる。ただし、このふたりは真に愛し合う者同士でなければならぬ・・・。」
該当する組み合わせはたった一組しかいなかったんだ。
将来を誓い合ったふたりだったけど、その仲を引き裂かれて・・・。
荒れ狂う波間へ引き出されたふたり・・・。
そして、両国の対岸から同時に投じられた・・・。
すると、嵐は嘘のように去り、再び平和が訪れたんだ。
でも、ふたりは帰ってこなかった。
人々はやがてふたりの人形を作り、川に投じられた日に家々に飾るようになるんだ。
「これがボクの星に残る古い言い伝え。何となく雛人形を見てる内、思い出しちゃって。」
そう言ったホシオの横顔はとても悲しそうだった。
今更ながらホシオの立場が辛く感じられる。
本来なら、こんな所であたしと暮してるはずじゃなかったのに・・・。
ひょんなことからここにいるホシオ。
何かの運命なのだろうか。
急に目の前のホシオが愛しく、すがり付きたいような衝動に駆られた。
「・・・ごめん、こんな話しするつもりなかったのに。」
あたしの泣き出しそうな顔を見てホシオが謝る。
「ううん。そんなことない。」
「ならいいけど・・・そうそう、この話しには後日単があってね。再び、両国に危機が訪れる時、ふたりはよみがえり、空の彼方から現れ、両国を救わん・・・って言うんだ。」
「じゃ、あのふたりはどこかにいるってこと?」
「そうだね、きっとどこかにいるよ。」
ホシオが断定する。
「何やってるんだろうね、そのふたり。」
「案外、こんなことかもよ。」
そう言うとホシオがあたしの頬に・・・キスした。
・・・!!。
あまりにも突然だったのでドキドキする。
「千晶があんまり深刻そうな顔してるから。」
「・・・もう、この力無しの色男!」
あたしは照れを隠したくてホシオに軽くクロスチョップをかけた。
その晩、あたしが見た夢は・・・。
ひな壇の上からあたしとホシオを見下ろすペアの雛人形。
その顔にまだ見たこともない、言い伝えのふたりの顔が重なる。
笑ってた。
楽しそうに・・・。
その笑顔が突然、ホシオになった。
「千晶・・・大好きだよ。」
そう、隣りにささやいていた。
END
***********************************************************************
あとがき
やっと書けた千晶のSSです。
悪戦苦闘・・・と言うほどではないのですが、けっこう難しかった。
ラストの言い伝えは「エイリアンシリーズ」のラストを踏まえてます。
判る人には判りますよね?
タイトルは謎です。
本来、「TIAKISS-1」のようなファイル名を付けるはずだったのに、その時、眠い目を擦りながら保存したら、何故かこんなファイル名がついていました。
次の日、気がついて・・・???でした(笑)
なんで?
00/04/10
「・・・クシュン。」
あたしの背後で聞こえたくしゃみ。
振り返るとホシオが鼻先を指でこすっていた。
「風邪?」
あたしの問いに首を傾げるホシオ。
「そんなはずないんだけどな・・・。」
ぼそぼそと小さな声で言う。
そもそもエイリアンって風邪なんか引くのかしら?
普段はほとんど意識したことの無いホシオの本当の姿。
何かをきっかけに意識してしまう時がある。
テーブルの上からティッシュをとって鼻をかんでいるホシオを眺めながらそんなことを思う。
「やりづらいんだけど・・・。」
ホシオが手を止めてあたしに向かって言う。
どうやらあたしが見ていると鼻をかみづらいらしい。
「バカね。後ろ向けばいいじゃない。」
「あ、そうか。」
さも新発見をしたとでも言うようにホシオは手をたたいた。
百武家の居間でテレビを見ていたあたしとホシオ。
商店街でサンタクロースが何かを配っている様子が映し出されたテレビ画面。
「あしたは・・・クリスマスイブか。」
あたしはため息混じりにつぶやいた。
「深刻そうだね。」
鼻はかみ終えたのか、さっぱりした顔でホシオがあたしの隣りに来て座った。
「受験じゃない・・・もうすぐ。」
「あ、そうだったね。」
まるで緊張感の無いホシオ。
まあ,この子がおっとりしてるってのは充分承知していたつもりなんだけど。
こうノンキに構えていられると大丈夫かなと思わざるを得ない。
「ね、ちゃんと勉強してる?」
「大丈夫だよ,千晶こそ遅くまで起きてて、寝てないんじゃない?」
「・・・もし、落ちたらって考えると、つい不安になって・・・。」
「そんなに思いつめると落ちるよ。」
ホシオが情け容赦無く言う。
「うっ・・・。」
返事に詰まるあたし。
「そうだ、あしたは一日勉強を忘れて出かけよう。」
ホシオがあたしを気遣ってくれる。
嬉しい反面、反発する心がむくむくともたげる。
「受験生に休息は禁物だわ。」
「どうして?きっと楽しいよ。千晶とふたりなら。」
「一日の遅れが三日になるのよ。」
「ボクは千晶と出かけたいな。」
「古文の復習を・・・やめた。」
目の前で微笑んでいるホシオの顔を見ていたらつまらない意地を張り通すのも馬鹿らしくなってしまった。
「じゃ,決まりだね。」
何処へ行こうか・・・ホシオの問いにあたしは前から見たかった映画の名前を上げた。
空は快晴。
澄み切った青空の下、ホシオと街中を歩く。
思い切って出て来て良かったと思う。
だって・・・悲しいじゃない。
世間一般はクリスマスムードで盛り上がっているのにひとり机に向かっているなんて。
だからこうして誘ってくれたホシオに感謝。
・・・と言ってもあたしはひとこともホシオに何か言ったわけじゃない。
「ありがとう。」
そうひとこと言えば済むのに何故か言えなくて・・・。
さすがに映画館は混雑していた。
それでも立ち見という最悪の事態は避けられ、ホシオと並んでシートに座ることができた。
「良かったね。」
ホシオが言う。
「そうね。」
そっけないあたし。
「あれ?千晶はそう思わないの?」
「だって、あたしたちが座ったってことは誰かが座れなくなったってことでしょう。」
「いつから千晶はそんなヒューマニストになったのさ。」
「今日からよ。」
「それは知らなかった。」
「あたしも知らなかったわよ。」
・・・何つまらないことで雰囲気壊してるんだろう、あたしは。
これって単なるあたしのわがままなのかもしれない。
つい,ホシオのいい所へ甘えてしまって。
受験のイライラをホシオにぶつけてるだけ・・・。
普通の男の子だったら、怒って席を立つかもしれない。
でも、ホシオは相変わらず笑顔のままあたしの隣りにいる。
なんか・・・いいのかな・・・こんなあたしで・・・。
映画は前評判通り、素晴らしかった。
スクリーンに没頭してる間は嫌なことを全て忘れられた。
でも,館内が明るくなるとあたしは現実に引き戻された。
いろんな考えが頭をよぎる。
会話の少ないままあたしとホシオは何となくいつもの定番コースを廻っていた。
食事をして・・・ショーウィンドゥを覗いて・・・・・・。
ホシオの様子がおかしいと気が付いたのは公園のベンチで座っている時だった。
あたしが物思いに沈み込んでいたのでホシオが話し掛けて来ないのを変に思わなかった。
ふと横目で見たホシオが両手で頭を抱えていた。
・・・苦しそうに・・・。
「ね、キミ、どうしちゃったのよ?・・・ホシオ?」
「ごめん・・・何でもないんだ・・・でも、さっきから頭が痛くて・・・。」
「バカね。何で言わないのよ!」
「だって、せっかく今日は千晶の為に出てきたんだし・・・あと少しだから。」
思わずホシオを殴りつけたくなった。
どうしてそこまでそんな風に考えられるの?
あたしなんかのために・・・。
ううん。
殴りつけたいのはホシオじゃなくてあたしだ。
あたし、自分のことしか考えてなかった。
ちゃんとしていればホシオのこともっと早く気が付いてあげられた。
「帰りましょう、早く。」
ベンチに座ったままのホシオを引っ張ろうとして手を取った時、思わずあたしは手を離した。
ひどく熱かった・・・ホシオの左手。
「もしかして、熱あるんじゃない。ちょっといい。」
あたしは急いでホシオの額に手を当てた。
はっきりと温度が感じられた。
それも高そうな・・・・・・。
足元のふらつくホシオに肩を貸しながら家に帰り着くと誰もいなかった。
リビングに置手紙。
田舎で急用がありパパもママも出掛けたらしい・・・帰りは明日になる・・・。
もう、こんな時に・・・。
取りあえずホシオを寝かせると、氷枕を用意しにあたしはキッチンに飛び込んだ。
体温計は信じられない数値を示していた。
42度・・・。
壊れてるんじゃないでしょうね、これ。
でも、目の前のホシオの様子を見ればそうでないことは間違いなかった。
「そうだ、薬・・・。」
あたしは慌てて薬箱の中から熱さましを取り出して、ホシオに飲ませた。
夜になってもホシオの熱は下がらなかった。
やっぱり、ホシオには効かないのかしら・・・。
ときおり、苦しそうにうめくホシオ。
あたしは見ていられなかった。
「ホシオ、病院へ行こう。あたしが連れてってあげるから・・・。」
首を振るホシオ。
「どうして・・・。」
「ボクの正体・・・知られるかも・・・知れない・・・。」
あたしはハッとした。
ホシオ・・・シジジシジシシュ・・・。
いくら外見が同じでも・・・血液検査なんかで・・・。
どうしたらいいいの?
ねえ。
どうしたらいいの?
誰か教えて・・・・・・。
ホシオが助かるなら・・・それで全てが失われてしまってもいいのなら・・・。
あたしは・・・。
あたしは・・・ホシオが助かる道を選びたい。
ね、ホシオ。
それでいいよね。
この暮しが終わりになっても、ホシオがどこかへ閉じ込められても。
ホシオがいてくれさえしたら・・・あたしはそれでいい。
もう、あたしがホシオに相応しいかなんて考えない。
ホシオがいてくれさえすれば・・・あたしは何にも要らない。
「待ってて、ホシオ。」
今は意識さえあるのか分からないほど目を閉じたままのホシオに向かってあたしは言った。
救急車を呼んで、ホシオを病院へ連れて行くつもりだった。
居間へ行き、電話の受話器を掴む。
ボタンを三回押せば全てが終わりになるかもしれない。
一瞬のためらいの後、あたしはボタンをひとつづつ押して行った。
1・・・1・・・。
最後のボタンに指先が掛かった時、玄関のチャイムが鳴った。
誰?
あたしは一旦、受話器を置くと玄関のドアを開けた。
「千晶!メリークリスマス!!」
陽気なモヒカン頭のサンタがいた。
「ジョナサン!」
サンタクロースのかっこをしたジョナサンだった。
「何の用よ、いきなり。」
「相変わらず冷てえな、人がせっかく祝ってやろうというのに。」
「お生憎さま、こっちはそれどころじゃないのよ。」
あたしはジョナサンに今の状況を説明した。
「生態能力の低下ってやつだな・・・。」
「何よそれ?」
「まあ、簡単に言えばホシオの奴もすっかり地球人化しちまったってえとこだな。」
「どうすればいいのよ?」
「一定の能力を保ってるシジジジジシジシシシュの奴なら風邪なんか引かないんだが・・・そうだ。あれを使うか・・・でもなあ・・・。」
ジョナサンが意味ありげにあたしを見る。
「何よ・・・どうしたって言うの?」
ジョナサンがポケットから取り出したカプセル。
「こいつは生態能力活性剤ってのだが、こいつをホシオに飲ませれば一晩で全快だ。」
ジョナサンはそこで区切ってから付け加えた。
「ただなあ・・・こいつには副作用がある。」
「副作用?」
「そうだ。体細胞を活性化させるんだが、その際、古い細胞を燃やしちまう・・・もちろん、脳細胞もだ。これが何を意味するか分かるか、千晶?」
あたしは首を横に振った。
「忘れちまうってことだよ・・・千晶、お前のこと全てをな・・・。」
あたしはただ立ち尽くしていた。
そんなことって・・・。
頭の片隅に苦しそうなホシオの顔が浮かぶ・・・。
ホシオ・・・・・・。
「構わないわ、お願い。」
30秒後あたしはそう答えていた。
カプセルをホシオの口に含ませ、コップで水を注ぎ込む。
あたしはジョナサンの一連の動作を黙って見つめていた。
「これで良し。だけど本当に良かったのかよ、千晶。」
「・・・いいの、これで・・・。」
「・・・さっき、言い忘れたんだけど、ひょっとしたら大丈夫かもしれない。」
「え?」
「ホシオの千晶を想う気持ちが人並み以上なら・・・例え表面上の記憶細胞が死滅しても深層部の記憶が残るからな・・・。」
「どうしたら・・・いいの?」
「ずっと、ホシオの手を握って離すんじゃないぞ。そしてホシオが目を覚ましたら真っ先に奴の視界に飛び込め。後はずっとホシオののことを念じるだけさ。」
それだけ言い残してジョナサンは立ち去った。
あたしはベッドに横たわるホシオの側へ膝をついた。
熱で火照るホシオの左手。
あたしは両手でそっと包んだ。
神社の境内でキミを蹴ったのはいつだった?
それからあたしの家まで付いて来て・・・ふふっ。
いつのまにか居候。
ニューヨークから来たイトコなんて・・・。
不器用でいて・・・優しくて・・・それで・・・。
ねえ、忘れてしまっても忘れないから、あたし。
キミのこと大好きだった。
だからね。
出会えて良かったよ。
本当に。
もう一度だけ「千晶」って微笑んで欲しい。
それだけあればあたしは何も入らない。
ねえ、ホシオ。
忘れないでね。
あたしとの日々。
ねえ、ホシオ・・・・・・。
ねえ・・・。
・・・。
急に肩をたたかれた気がしてあたしは目を覚ました。
・・・寝ちゃったんだ、あたし!
顔を上げると目の前にホシオの顔。
あたしはあのままホシオの上に突っ伏して寝てしまっていた。
無言であたしを見つめるホシオ。
あたしは急いで顔をホシオへ近づけた。
ホシオの瞳にあたしが映る。
きょとんとしたホシオの表情。
・・・忘れちゃったんだ、ホシオ。
目の前が真っ暗になる。
あたしは力なく立ち上がると、そっと部屋を出ようとホシオに背を向けた。
・・・バイバイ、ホシオ。
ドアノブをゆっくり回す。
・・・さよなら、楽しかったね。
ガチャ。
ドアが開く。
部屋の外へ一歩足を踏み出そうとした時・・・。
「どこ行くのさ、千晶。」
え?
振り向いたあたしの目に飛び込んで来たのは・・・。
ベッドの上で上半身を起こして微笑んでいるホシオだった。
「おはよう、千晶。」
声も立てず、あたしはホシオの胸元に飛び込んだ。
あたしは泣いていた。
いろんな感情が込み上げてきて・・・抑え切れなかった。
「ちょ、ちょっと千晶・・・。」
ホシオが困った様子でおろおろしてる。
でも、いいのあたしはしばらくこのままでいたかった。
しばらくして・・・。
「あ、雪・・・。」
ホシオの言葉に顔を上げる。
窓の外を粉雪が舞っていた。
「メリークリスマス、千晶。」
「うん、メリークリスマス、ホシオ。」
どちらからともなくそんなセリフ。
お互いで笑い合う。
ホシオがいてくれるだけでそれが最高のクリスマスプレゼント。
笑顔のエイリアンを見つめながらあたしはそう思った。
大好きだから・・・ね。
END
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あとがき
千晶の物語第3弾です。
なんかうまくまとめられなくて消化不良ですが、どうでしたでしょうか?
ホシオと千晶の絆みたいな物を描きたかったのですが、再現できたかどうか心許ないです。
何でクリスマスか・・・って言うと実はこれはコミケで「エイリアン本」を出されていた方の為に書きました。
が・・・冬コミ落ちたとのことで実現しませんでした。
途中まで書いておいたものをお正月に書き加えて完成させました。
それで・・・X’masです(^^;
01/01/03