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第2回 荒川静香 (Update December.11 2002)
<荒川静香インタビュー>
NHK杯女子フリー。荒川静香は「やるんだ」という前向きな意志を顔にはっきり出した。トリプルートリプルの連続ジャンプを成功させるなど終盤まで完璧な演技であったが、最後二つのジャンプをミスしてしまう。演技終了後「やってしまった」と悔しそうであった。
しかし昨シーズンに比べて全ての面で大きくなり、見ているものの心を打つ演技を披露した。そんな素晴らしい演技をして3位となった荒川静香選手がフリー演技翌日の忙しい合間を縫って単独インタビューに応じてくれた。
― 記者会見で「ジャンプに集中するより曲自体を表現したい」というのが印象的でしたが、そのために何か特別にトレーニングしていますか?
荒川:そうですねー。ほんとはバレエとか通いたいんですけどなかなか練習との時間が合わなくで今年もまだ行けてないです(笑)練習では振りをメインに練習してます。振りはいろいろな先生に見ていただいてるのですけど、東京では佐野先生の奥さん(元体操選手)、仙台では阿部奈々美先生などに見ていただいたりしています。
― 今も仙台でも練習しているのですか?
荒川:ラリックトロフィーの時、佐野先生が田村岳斗君について長い間パリに行っていて、神宮のリンクも練習事情がよくないので、その間仙台に行って練習していました。
― 昨日のフリーの前はどういう気持ちで試合に臨みましたか?
荒川:曲が「タイタニック」だったのであまりジャンプの事に集中すると緊張してしまうのでほんとに曲に入り込んで、例えば映画に出てくるローズの気持ちになって滑るということの方に意識を向けて、なるべく自分の体を緊張させないようにフリーの前はしていました。
―最後の二つのジャンプがとても惜しかったと思うのですが、例えば「体が疲れてきていた」とか「集中力が切れていた」など自分なりに分析してどう思いますか?
荒川:あのジャンプの前は逆に緊張しちゃったんですね。そこまでよくできていたのでその前あたりから動きが小さくなってきたのが自分でもわかったのですけど、それはやはりジャンプに集中してしまったというのがあったと思います。簡単なジャンプで失敗しそうにないジャンプなんですけども、そういうジャンプこそ「もしかしたら・・・」というのが頭の中をよぎったんです。「やちゃうかも」と思ったらほんとにやっちゃた(笑)。そう思っちゃいけなかったんですけど・・・。最後まで曲をよく聞いて曲に集中して滑ればよかったです。
―そのまま最後の3トゥループをつけたして降りましたが、それは「最後に飛ばなきゃ」って思ったのですか?
荒川:あの時はもうあせってて…。その前のトゥループをパンクした時点で頭がパーっと真っ白になって、それであせってアクセルも失敗してしまって・・・。そこがやっぱり一番未熟なところだったなーって今すごい感じています。
―今後は「未熟だな」と思った点をどのように克服していきたいと思いますか?
荒川:いかに試合の緊張感に近い状態で練習をして行けるかということが大事だと思います。試合はやはり出て慣れるしかないと思うんです。だからその緊張感を作って、「これが今本番だ」と思って練習していきたいと思います。
―今シーズンの滑りを見て、昨シーズンより全ての面で大きく成長したなと感じたのですが、今シーズン入るにあたって何か特別な思い等はあったのでしょうか?
荒川:いや、私はスタートのスイッチが入るのが遅い人なんで(笑)シーズンオフを長く過ごしちゃうタイプなんですよ。今年は振り付け師(モロゾフ)の方と予定が会わなかったりして6月後半に振り付けを始めて昨年よりかは2ヶ月スタートが遅かったんです。なので特別に何かを思ってやったということはないですね。今シーズンはモロゾフの振り付けに助けられたと思います。それとモロゾフのところにたくさん振り付けをして欲しいっていうスケーターが来ていて、そう人達に刺激されつつ「あ、こういう魅せ方もあるんだ」と思ったりしていろいろ学べたのが今シーズンの滑りにつながっていると思います。
―モロゾフから振り付けされて今までの振り付けと違った点はありましたか?
荒川:なんていうのかな。モロゾフは曲をずーっとエンドレスで流し続けていて曲を聞いて感じたまま動いてそれが振り付けになってしまうって感じです。それがすごいと思いました。だいたい日本で振り付けしてもらうときは先生がリンクでデッキを持って考えてるじゃないですか。モロゾフの場合それがないんです。曲が鳴ったらそこから感じたように動き始めてそれが振り付けになってしまって、ジャンプがうまくはまるんです。というのは最初にジャンプを飛ばせてどのぐらい時間がかかるか時間を計って、それでその時間に合わせて音楽をカットしていくんです。あとはエレメンツの順番、何をどこに入れたいかを聞かれて、そのエレメンツの時間に曲をカットしてその順番に曲を組み立てていく。曲に合わせて振り付け、流れを作るのではなく、エレメンツに合わせて曲をカットして作る感じです。それでも曲の流れがぴったりと合ってくるからすごいなと思います。ヤグディンのプログラムを見てもらったらわかると思いますが毎年ジャンプ、スピン、ステップの順番っていうのはほぼ同じで4年間固定しています。今年は新しいものがいっぱい入ってきました。この振り付けはすごい衝撃的でしたね。
―モロゾフ振り付けのプログラムがすごく合っていたと思うのですが、今後はどのように滑りたいですか?
荒川:ある程度滑れるようになったので、もう一回手直しに行きたかったのですけどそれがなかなかスケジュールが合わなくて行けてないんですよ。フリー見ていただいたらわかったと思うんですけどもうちょっと詰めていかなきゃいけないんですよ。例えばストレートラインステップが段々できるようになってくると時間が余ったりして間があいてる部分があったりするので、直しに行きたいのですけど、なかなかまだ行けないです。
―会見では「まとめる練習より自分自身にどんどん挑戦いく練習をしていきたい」と言っていましたが具体的にどんな練習をしていきたいですか?
荒川:練習でも自分が持っている一番高いところで練習していきたいと思ってます。例えば全部のジャンプにコンビネーショントリプルートリプルをつけてみるとか・・・。そうすれば試合では抜けばいいことで、そこで入らなかったら次ということでやっていけると思うし・・・。そうして常に高いところで練習していれば失敗してもある程度までしか下がらないような気がする。それがそこまで高い位置でやってないと失敗した時にはもっと低い位置に行ってしまうので常に高い位置を目指してやっていきたいと思います。精神的な面も高いモチベーションで練習しなきゃいけないなとここ何年かは思ってます。やっぱり「練習は練習」「試合は試合」とやっちゃうと試合には弱いので・・・。単発では飛べても試合のプログラムになると飛べないっていうのが多かったので、今は試合と同じ状態で練習することが大事だなとは思います。
―佐野稔先生に今季からコーチが変わりましたがレッスンはどうですか?
荒川:いろんな先生に習ってきてそれぞれいろんないいところを吸収できたのですけど、特に佐野先生は試合前にメンタル的な部分をつくるのがうまいと思います。「普段どおりやればいいんだ」と言ってくれて安心します。
―佐野先生からレッスン中よく言われている事などありますか?
荒川:うーん。なんだろ!?私聞いてるようで聞いてないんですよね(笑)耳で聞いてというより体で聞いて体が動くって感じなんで・・・。
―オフアイスでしているトレーニングは?
荒川:特にないですね。たまに自分で走っているぐらいかな。後は佐野先生の奥さん教えている体操教室に時々通っています。
―次の全日本に向けて抱負を教えて下さい。
荒川:全日本というか毎回どんな試合でも出来ることの最高のことをやりたいのでそれに向けて自分に厳しくかつ楽しく練習していけるかということが今一番の課題と思います。
―最近練習楽しくなってきました?
荒川:うーん。やっぱり出来ない時っていやになっちゃうけど、練習のうちからできるようにしておいたら楽しくなってきますよ。練習でもジャンプよりも他の面に集中できるようになり、「ジャンプは振り付けの一部」ぐらいで今はできるようになってきているので楽しいです。
―これからも頑張って下さい。お忙しい中ありがとうございました。
荒川選手が小学生〜中学生の時、一緒に練習していたことがあった。その頃からトリプルートリプルのコンビネーションジャンプ、5種類のトリプルジャンプが飛べており、初めて見た時は衝撃的だった。というのは彼女のジャンプはそんなに高くなかったが、無理せず楽に飛んでいて、軸がまっすぐでとても安定していたからである。ほんの少しの助走で涼しい顔をしてトリプルジャンプを飛んでしまうということも多かった。しかし、当時の彼女は努力型ではなく天才型で、自ら進んでコツコツ練習するというタイプではなく、ジャンプは飛べるけど、芸術面がまだまだ改善の余地ありという感じであった。
「もっと真剣に練習して、表現力と滑りを磨けば世界トップになれるのに…。」と素晴らしい才能があるがゆえに歯がゆい思いで彼女の練習を見ていた。そして日本のトップスケーターとなり長野オリンピックにも出場したが、その後実力はあるが大会でその実力をなかなか発揮することができず、何か印象に欠け成績もいまひとつパッとしないことが多かった。悔しい思いも何度かしたことだろう。
しかしこのNHK杯という大舞台でそのイメージを払いのけ、誰もが目を見張るほんとに情感のこもった心打つ演技を見せてくれた。モロゾフの振り付けが合っていたとも言えるがそれだけではなく、「気持ちから曲に入り込む=曲自体を表現する」と本人が目覚めたことが成果として現れたと言える。今回のインタビューで意欲的な強い意志が伝わってきてそこからもまた成長の跡が伺えた。今後どのような滑りを見せてくれるのか楽しみであり、活躍を期待したい。
(インタビュー・文 今川知子)
<荒川静香のプロフィール>
1981年12月29日 東京都生まれ
早稲田大学3年
身長 166cm 血液型 O型
5歳よりスケートを始める
コーチ:佐野稔
振り付け:ニコライ・モロゾフ
今シーズンの使用プログラム曲
ショート:白鳥の湖(モダンバージョン)
フリー:タイタニック
<主な大会成績>
1998年 長野オリンピック 13位
1998年、1999年 全日本選手権 優勝
2001年 スケートアメリカ 4位
2001年 全日本選手権 2位
2002年 四大陸選手権 2位
2002年 ロシアカップ 5位
2002年 NHK杯 3位
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