自治体に不安「存続を」
(2005年)三月中旬の平日。コクドが経営する秋田県北秋田市(旧阿仁町)の阿仁スキー場は深々とした雪におおわれ、リフトが止まっていた。地元商工会幹部は「1987年の開業当初から客足は思わしくなく、数年で三月の平日営業を取りやめた」。冬は雪に閉ざされる過疎の町にとって、スキー場誘致に応えたコケドは、まさに救世主。83年に、社長の堤被告がヘリコブターで来町した際には、五百人を超える町民が歓迎した。
当時、世間は空前のスキーブーム。旧阿仁町の商工観光課の佐藤慶一前課長は「計画段階で他のスキー場を視察するたび『脱過疎の起爆剤』との期待がいやでも膨らんだ」と振り返る。しかし、関東方面からのアクセスの悪さもあり集客は低調。ブームは去り、赤字が常態化した。昨年度の来場者は採算ラインの六割の約四万七千人にまで落ち込んだ。
そんな中、今年一月、同グループの経営改革委員会が不採算事業からの撤退を決めた。
二月、同町の幹部らは埼玉県所沢市のコクド本社を訪れ、存続を陳情。しかし、大野俊幸社長から確約はもらえなかった。同町商工会の石田一男事務局長は「閉鎖と言われたら、どうすればいいのか」とため息をつく。
過疎の町「死活問題」
旧阿仁町に隣接する旧森吉町(北秋田市)にも、コクド経営の(森吉)スキー場と宿泊施設のヒュッテがある。ここも「ヒュッテが不入りで、全体では赤字」(同町企画観光課)。阿仁同様、撤退のうわさが絶えない。スキー場では地域住民三十人が働くほか、周辺には民宿やガソリンスタンドが点在。スキー場近くでコンビニエンスストアを経営する女性は「冬場は一日千人のスキー客を見込んでいる。ただでさえ売り上げが減っているのに、閉鎖なんて……」と困惑顔。近藤健一郎前町長は「撤退による雇用や経済などへの影響は計り知れない」と強調する。
「人口が減り続ける地域にとって死活問題。今後も住民挙げて存続を訴えていく」(旧阿仁町)。
コクドには、リゾート事業を展開する20超の市町村から継続を求める陳情が相次いでいるという。
旧阿仁町幹部の一人は「地域の命運を堤さんと共にしたくはないが、スキー場が存続できても運営は困難。コクドに寄りかかってきたつけが一気に回ってきたのか……」と真情を吐露。表舞台から去った堤被告の負の遺産″ともいえる不採算事業に依存せざるを得ない自治体の苦悩ば深い。
経営改革委 ホテルやリゾート 4分の1撤退検討
西武グループ経営改革委員会は昨(2004)年11月22日、西武鉄道の上場廃止決定などを受けて発足。委員は弁護士、国土交通省OBら五人で、企業統治体制の改革、事業再編のあり方などグループの再建策を検討してきた。今年一月、コクドを会社分割したうえで、西武鉄道と統合することを柱とした中間報告を発表。全国約160のホテル、リゾート施設のうち四分の一程度を不採算事業と認定、売却・撤退を検討することを盛り込んだ。
25日に発表された最終報告では、売却・撤退する施設名は明らかにされなかった。事業の再構築など具体策は、五月以降に発足する新経営陣のもとで進められる。
