10 収益還元法(DCF) Discounted Cash Flow とは                       坂本清助                

 現在のパソコンの元祖、マイクロ・コンピユータが発売されたのは、昭和46(1971)
で、30年昔であります。マイクロ・コンピユータの性能を活用できるソフトとして、総合
商社などでは、Discounted Cash Flow (略称DCF)があり、その運用面においては、その道
の権威の方々が論ぜられる問題でありますが、パソコンの適用業務の点で、例題を取り上
げることにいたします。
 団塊の人々が外資系のホテルなどの建設計画にタッチされるとき、このDCFの計算方法
はご参考になるものと思います。
 
 新聞記事よりの紹介
 
 平成十二年八月十三日朝日新聞朝刊の二面記事[社説]に次のような記事がありました。
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不動産鑑定基準2002年にも改定 採算性評価を導入         国土庁 証券化に対応
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  国土庁は不動産の価格を決める際の公的規範である鑑定評価基準を十年ぶりに見直す方針
を固めた。不動産を小口の証券に仕立て直して販売する[不動産証券化]の動きが進んでい
のに、それに対応した記述がないからだ。賃貸ビルなどの採算性の評価に欧米と同し方法を
導入することなどが柱である。国土庁は来年度から基準改定に着手し、早ければ2002年
春にも新基準を決める考えだ。
 基準見直しでは、(1)賃貸ビルなどの投資用不動産を土地と建物一体の[複合不動産]
とみなす。(2)ビルの投資採算性を評価する際に、欧米と同様、賃料などの現金収支を重
視したDCF(ディスカンテット・キャシュ・フロー)法を採用する。(3)ビルが生み出
す収益を算定するため、実質賃料などを細かく調べる[物件精査業務]を実施するーーーー
が主な内容となる。
 投資家から集めた金で不動産を買い、賃料収入や売却益を投資家に配当する不動産投資信
託が今年十一月ごろから導入される。こうした不動産証券化の動きに一般投資家の関心が高
いが、投資用不動産の値決め(鑑定評価)が過大だと、投資家がソンをしかねない。
 ところが、不動産鑑定評価基準は1990年に改定されて以来、手付かずのまま。投資家
保護を急ぐため、国土庁と日本不動産鑑定協会は昨年十一月、特定目的会社(SPC)法に
関する投資用不動産の値決めの方法を、とりあえず協会の実務指針の形でまとめた。
 国土庁はこの指針をもとに幅広い観点に立って不動産を証券化する際の評価方法を、現行
の基準に付け加えることにしている。
 
 投資家保護の観点で論議を
 
(解説)今回の不動産鑑定評価基準の見直しは、三年遅れの感がする。1997年ごろから
大都市の商業地では、土地の収益性に応じた地価が形成されるようになり、不動産証券化の
動きが進展した。だが、国土庁は[急には広がらない]と見通しを誤り、証券化に対応した
基準の見直しを怠ってきた。国土庁や日本不動産鑑定協会の一部に残る保守的な体質もある
[基準は不動産鑑定士にとって言わば憲法。改定は二年以上かかる大作業だし、急に改定す
ると、ついてゆけない鑑定士も多い]と関係者は言う。
 昨秋、同協会の実務指針として事実上の新基準を決めたのは、特定目的会社(SPC)法が
施行され、悠長なことを言っていられなかったからだ。土地と建物を一体的にとらえる[複合
フ動産]の考えかたやDCF法は、欧米で採用されている国際標準。正式に基準に織込めば
日本の不動産(証券化)市場に対する信頼性も増すはずだ。何よりも投資家保護の観点に立っ
て見直し論議を進めてほしい。(政治部・清原政忠)
 この記事の中にDCFについて下記のような説明が行われていました。
 DCF法とは=不動産を利用することによってどれぐらいの収益が得られるか(収益性)に
着目した鑑定評価法を収益還元法と呼び、その一種。多年度にわたる賃料などの将来の現金
収支(キャッシュフロー)法を一定の割引率(デイスカント・レート)を用いて現在の価に置
きえる(還元する)方法 
 
三十年前の月刊雑誌執筆記事よりの紹介
 
 日本経営科学研究所のコンピユータ関係専門月刊誌[COMPUTOR REPORT]
には、四十四年四月、五月および六月号に航空貨物輸送の経済性の分析で執筆したことがあ
りました。ソニーにおいてマイクロ・コンピユータSOBAXICCー2700が、四十六
年三月に発売されました。
 この四十六年(1971年)は現在のパソコンの元祖にあたるマイクロ・コンピユータが
出現した年でマイクロ・コンピユータ元年と呼ばれている。海外への投資プロジェクトを行
っている総合商社へマイクロ・コンピユータを販売するにはDCFは、機械の性能を100
パーセント活用できる対象業務でありました。
 五十年八月号より[マイクロ・コンピユータ・アラカルト]と題して執筆しました。この
中にDCFについての執筆記事が二ヶ所ありました。マイクロ・コンピユータがどんな対象
業務の処理に向くか?私のプログラム作成経験からの紹介で、いまから30年前の記事であ
りますが、建設事業計画の評価手段としてDCFが古くから海外への投資活動を行っていた
総合商社でのコンピユータソフトでありました。
 
連載執筆の内容は次の通りであります。
               記
五十  年 八月号  はじめに 総合商社のマイクロ・コンピユータ利用例
      九月号  事例    木材容積計算    事例    統計計算四元一次回帰式
          事例    給与計算       事例    真鍮ロール板の切断計算
          事例    カタ式気流測定
     十月号   事例    航空機騒音証明   事例    市場調査検証用計算
    十一月号 ○事例    DCF計算      事例    分譲マンシヨン価格試算 
    十二月号   事例一○  輸入南洋材CIF  事例一一  輸出鉄鋼線材FOB
          事例一二  輸入生糸コスト   事例一三  輸出自動車FOB
          事例一四  輸入錫の標準価格計算
五十一年 一月号   事例一五  パレット積付け個数計算
     二月号   事例一六  三変数重相関計算  事例一七  空港でのシフト編成計算
     三月号   事例一八  リース採算計算
     四月号   事例一九  レストラン・フランチャイズの売上目標
     五月号  事例二○  プラント建設売上目標設定
          事例二一  銀行借入実質金利  事例二二  賃金体系調整
     六月号   事例二三  利益差異分析    事例二四  スペース販売価格
           事例二五  航空運賃改定作業  事例二六  関税部分申告計算
     七月号   最終回 
          上記のうちで○印をつけたものを紹介いたします。
 
 
DCF計算
 
 数か月前、ブラジルからアルミプラント使節団が来日した。副団長の外人がブラシルで
SOBAXを個人で所有し、大型コンピユータが時間の制約で使用されないときは、SO
BAXで投資計算を行うため、DCF(Discounted Cash Flow)の
計算プログラムをソニーSOBAXプログラムチームに依頼され、特約店として筆者が引
受けることになった。
 DCF計算は、ソニーのプログラムマニュアルにないプログラムであるので、オーダー
メイドプログラムとなるが、電話で外人にSOBAXの機械構成をきくと、DCFでどの
程度のプログラムを組めばよいかを理解した。
 アルミプラント建設などのように長期にわたる投資計画では、各年次に発生する投下資
本と収益とは時間的な価値を考慮しなければ投資効率はわからない。例えば3億円を金利
10%で7年間複利で回すと約5億8千5百万円となる。7年後の3億円は現在価値では
約1億5千4百万円に相当している。3億円事件も時効成立時には価値は下がっている。                                                                  
 長期間にわたる投資計画で期間をn年、金利率をrとし、各期間の収益を(1+r)nで
割って現在価値を求める計算で累計がゼロになる rの値がDCFレートと呼ばれ、その
値が金利率より上回れば投資効率がよいという判定になる。
 第一表の期間損益で投資計画AとBとを比較すると単純計算ではAが120億円、Bが
160億円の黒字でBは利益が多いが時間的要素を考慮するとどちらがよいかわからない。
 
第一表 期間損益              単位 百万円
 
年度    年次     計画ーA       計画ーB
ーーーー ーーー ーーーーーーーー  ーーーーーーーーー
1975  1   ー10,000    ー15,000
1976  2   ー  2,000    ー  3,000
1977  3   ー   500    ー 1,000
1978  4     2,000        2,000
1979  5     2,500      3,000
1980  6     3,000      4,000
1981  7     3,500      5,000
1982  8     4,000      6,000
1983  9     4,500      7,000
1984 10     5,000      8,000
ーーーー ーーー ーーーーーーーー  ーーーーーーーーー
合計         12,000     16,000
DCFさぐり計算により計画ーAは11.5836%、Bは10.0393%という値を得た。
 
第ニ表  DCF計算
+--------+----------------------------------+---------------------------------+
|DCF RATE|      PLAN-A  DCF RATE= 11.5836%  |     PLAN-B  DCF RATE= 10.0393%  |
+----+---+---------+----------+-------------+--------+-----------+------------+
|YEAR NO |  LOSS & | DCF      |  DISCOUNTED | LOSS & |  DCF      | DISCOUNTED |
|    |   |  PROFIT | RATIO    |   11.5836%  | PROFIT |  RATIO    |  10.0393%  |
+----+---+---------+----------+-------------+--------+-----------+------------+
|1975| 1 | -10,000 | 0.896189 | -8,961.890  |-15,000 | 0.908766  |-13,631.490 |
|1976| 2 |  -2,000 | 0.803155 | -1,606.310  | -3,000 | 0.825856  | -2,477.568 |
|1977| 3 |  -  500 | 0.719779 | -  359.890  | -1,000 | 0.750510  |   -750.510 |
|1978| 4 |   2,000 | 0.645058 |  1,290.116  |  2,000 | 0.682038  |  1,364.076 |
|1979| 5 |   2,500 | 0.578094 |  1,445.235  |  3,000 | 0.619813  |  1,859.439 |
|1980| 6 |   3,000 | 0.518081 |  1,554.243  |  4,000 | 0.563265  |  2,253.060 |
|1981| 7 |   3,500 | 0.464299 |  1,625.047  |  5,000 | 0.511877  |  2,559.385 |
|1982| 8 |   4,000 | 0.416099 |  1,664.396  |  6,000 | 0.465176  |  2,791.056 |
|1983| 9 |   4,500 | 0.372904 |  1,678.068  |  7,000 | 0.422736  |  2,959.152 |
|1984|10 |   5,000 | 0.334192 |  1,670.960  |  8,000 | 0.384169  |  3,073.352 |
|----+---+---------+----------+-------------+--------+-----------+------------+
|TOTAL   |  12,000 |          |     -0.025  | 16,000 |           |     -0.048 |
+--------+---------+----------+-------------+--------+-----------+------------+
                                   BALANCE                            BALANCE    
投資効率としては、PLAN-A  が PLAN-Bよりも よい。                            
以上

 

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