オトコのロマンを求め、私はアリさんの巣作りを観察する!
子供の頃、男の子は虫が好きだった。
こおろぎをカマキリの餌として与えた。バッタの足をむしってありの巣の前に置いた。蝶を捉えて蜘蛛の巣に引っ掛けた。カエルの肛門にストローを差し込んで膨らまし腹を破裂させた。水を張った洗面器にありを浮かべた。虫眼鏡で丸むしを焦がした。
ナメクジが嫌われ塩をかけられるのに殻があるだけでカタツムリは愛されるのが解せなかった。
頭・胸・胴の3つに分かれていて足が6本のものしか昆虫とは呼ばない、と教わり蜘蛛やげじげじが可哀想に思えた。
ミミズは下等だから真ん中で切るとそれぞれ頭部と胴体を再生するので結局2匹になる、と聞かされてもそれのどこが下等なのか理解できなかった。人間は足を切られたら再生できないじゃないか!
鈴虫を飼っていて与えたきゅうりやなすが腐乱して取りかえるのがすごく嫌だった。そんな風にして私は瓜系嫌いになった。
などなど・・・。
これらは男子として生まれた者は必ず経験することである。しかし、成長の過程において生命の神秘について想像することをやめてしまうのだ。私もかつてはそうであった。が、ある事件が私に童心を取り戻させた。
1998年12月23日、東京新宿の「東急ハンズ」
当時遠距離交際中であった彼女に「クリスマスプレゼントは何がいい?」と尋ねられた私は困った。物欲はあまりないほうである。ネクタイというのもありきたりだし、食べ物というのも卑しい気がした。思案している時、熱帯魚飼育のコーナーの前でふと私は立ち止まった。そうだ、アリだ!
子供の頃から何度か中途半端に試みたアリの巣の観察をしてみたい。そんな激しい欲望に突き動かされた私は江理子嬢にそのささやかな希望を伝えた。嘲笑を隠さず彼女は店員に「あの〜子供のクリスマスプレゼントにありの巣の観察セットを探してるんですけどぉ」と臆すことなく尋ねた。店員はすたすたとバックヤードへ向かいすぐさまひとつのパッケージを持ってきた。題して「蟻の国
ANT WORLD」。京都工芸繊維大学教授山岡亮平氏も推薦するこのキットは2,500円。ずいぶん安上がりなクリスマスプレゼントだ。
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| 左端のチューブはアリさんの連絡通路。容器を繋げて アリさん帝国の建設が可能だ。 |
☆後日談
春になって、一人で公園へ出かけ密かにアリさんを採集したが、手ごたえがあったにもかかわらず捕まえたのはたったの5匹。本来なら観察記を公開する予定だったがすっかり意気消沈してしまい以後このページは更新されないまま放置された。それにしても、30代半ばのオトコが一人でスコップもってそのへんの土を掘り返している様子はあまり絵になるものではない。一歩間違えば幼児狙いの変質者と間違われ警察に通報されそうだ。