朝の繁華街。夜になればけばけばしいネオンが立ち並び、酔っ払ったサラリーマンや、露出度の高い衣装に身を包んだ女たちで賑わうのであろうその場所は、今は太陽の光に照らされて静まり返っている。・・・が。

 ガッシャーン!!

 「ざけんじゃねぇ、このボケナスどもがぁ―――!!!」

 ・・・ふいに、ガラスの砕け散る音と少年の怒声。そして、濁った男たちの悲鳴が、辺りの静寂をぶち壊した。

 

 CAT,s EYE

 

街角にひっそりと佇む喫茶店、《The Plow》。相変わらず閑古鳥の鳴いている店内には、今現在、ふたりの客しかいなかった。
 上下ともに黒衣を纏った少年・冴羽零と、金髪にサングラスの青年・玖月故。適温に冷ましたコーヒーを啜っているレイに対し、その相棒は整った顔に呆れたような表情を浮かべて質問した。

「状況を簡潔に説明していただけますか?」
 「繁華街調査中に5人組の男どもに襲われそうになったんで、ぶちのめして逃げてきた。」
 「・・・それで、被害の程は?」
 「見ての通り、無傷だ。」
 「いや、そーじゃなくて。僕が訊いているのは、あなたをナンパした挙句叩きのめされた、不幸な人たちのことですよ。」
 「俺の辞書によると、力ずくで路地裏に引きずり込もうとするのはナンパとは言わないな。・・・でもまあ、格別の慈悲をもって、一応手加減してやったから。死んじゃいねーだろ、たぶん。」

 
・・・『たぶん』かい。ユエは本日何度目かのため息をついた。初めてレイに出会った人間はまず間違いなく、その少女めいた繊細な容貌に騙される。軽い気持ちで近づいて百倍返しをくらう男たち――場合によっては女たち――を、彼の相棒になってから何人目にしたことか。とりあえずその件は後回しにして、調査の結果を尋ねる。

「・・・で、『彼女』は見つかったんですか?」
 「んーにゃ。確かに翠の目ぇした子はいたけど、違った。」
 「そうですか。では、午後は引き続きタレコミ情報の確認お願いします。」
 「うぃーす。でも、やっぱり結構骨が折れるよなぁ。・・・猫一匹探すのって。」

 そう言いながら、しなやかな仕草で伸びをするレイに、ユエは微笑と苦笑を重ねた表情で応えた。

 

 

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