―――ヴヴヴッ、ヴヴヴッ、ヴヴヴッ・・・・。
マナーモードにしてある携帯電話が、着信を知らせる。本日何度目かも解らないコールに、ユエは流石に疲れたようなため息をついた。傍らのレイに至っては、既に聞くのも嫌だと言いたげに顔を顰めて、任せたと言わんばかりに明後日の方向に視線を彷徨わせている。渋々携帯を開いたユエは無言で受信ボタンを押したが、その無表情な顔つきからして、話を聞く前からどうやって断ろうかと思案しているのが見え見えだった。
「・・・・はい、《よろず屋》の玖月です。・・・・あぁ、いつもお世話になっております。・・・・え?14日?・・・・そうですか。しかし、大変申し訳ないのですが、その日は既に先約が入っておりまして・・・・はい・・・・・」
「うっわー・・・・なんか今日、随分と商売繁盛してんじゃないのあんた達?」
疲れたような顔をしつつも、声だけはにこやかに応対するユエを眺めながらそんな事を言ったのは、この《The
Plow》唯一の店員である夏木飛鳥である。いつものように白いシャツと黒のスラックスというシンプルな格好で、化粧もほとんどしていないが、それでもなお人目を惹く、凛とした雰囲気の美人である。とある事件でたったひとりの肉親だった弟を失い、紆余曲折を経てここにやって来た彼女だったが、きびきびと立ち働く様子と明るい笑顔からは、そんな辛い傷は微塵も窺えない。
前の客が残していった灰皿の中身を片付けながら彼女が声をかけると、暇そうにコーヒーを啜っていたレイが顔を顰めてぽつりと呟いた。
「あれは繁盛してるとは言わねぇって・・・・。」
「まぁ・・・確かに全部断ってるもんねぇ・・・・?」
アスカが首を傾げた時、丁寧に詫びの言葉を述べたユエがぱたりと携帯電話を閉じた。はぁ――っと深い深いため息をつき、ぽつりと呟く。
「・・・・・32件目。」
「ご苦労さんと言ってやりたいが、残念ながらまだまだ増えるぞ。当日から向こう一週間くらいまでは覚悟しとかねーとな・・・・。」
「そうですねぇ・・・。」
・・・はぁ――――っ。
金と黒のよろず屋たちが揃って吐いたため息に、マスターとアスカは顔を見合わせて苦笑した。
Valentine Wars
「・・・・しっかし、毎年の事ながらあいつらも大変だな。」
マスターの独り言のような呟きを聞きつけ、カウンター内でゴミをまとめていたアスカはふっと顔を上げた。
「え?あの騒ぎって毎年の事なんですか?」
「ああ、あいつらが組んで仕事をするようになってから・・・そう、翌年の二月にはもうこんな感じだったな。」
「・・・二月?二月限定?」
「そう、二月限定。厳密に言うと、二月中旬の十日間くらい限定。」
「・・・・・?」
―――何だそれは。
疑問符を浮かべた彼女に、マスターは笑って「じゃあ、第一ヒント」と言った。
「ユエが断ってる依頼の主は、全て女。しかも民間人で、最低でも一度は、過去にやつらに依頼をした事のある女だ。」
「民間人・・・・?」
「本当ならば、女の依頼は全部断りたいみたいだけどな。まあ、プロならけじめをきっちりつけるから、一応許容範囲にしてるらしい。」
「う、う〜ん・・・?」
「解んないか?」
「わ、解りません〜。」
「ははは、じゃあ第二ヒント。これを言えば絶対に解る。」
「うんうん。」
身を乗り出した彼女に、マスターはにっこりと笑って囁いた。
「・・・それぞれタイプは違うが。あいつら、ふたりともいい男だろう?」
―――ぽんっ。
「ああなるほど、そういう事ですか!」
「そういう事だ。美形は大変だよなぁ。」
「大変だとは思いますけど、もてない男の敵ですよねーそれって。」
「はっはっはっ、違いない!」
「・・・・あーもー、そこっ!人の不幸を笑いの種にすんな!!」
バンッ、とカウンターを平手で叩いたのはレイである。だが、アスカは怯むでもなく、悪戯っぽい微笑を浮かべて彼の目を覗き込んだ。
「あら、不幸だなんて言ったら罰が当たるわよー?世間の男の95%は、人より一つでも多くゲットしようと血眼になってるんだから。
・・・・そんなにたくさんの女の人からバレンタイン・チョコを貰えるなんて、羨ましい話じゃない?」
にっこりと微笑まれて、レイは心底渋い顔になった。
「そんなレベルを超えてんだよこの場合・・・!」
「ふーん、部屋がチョコで埋まったとか?」
「それもそうだけど、そんなのはまだ些細な問題だった。」
「・・・それで些細なの?」
「ああ。ったく、仕事用の携帯に女からの呼び出しコールがひっきりなしにかかってくるし、依頼人を装ってデートの申し込みしてくる奴もいるし、俺やユエの後つけて自宅を突き止めようとする奴もいるし。・・・ちゃんと撒いたけど。」
「そ、それは一歩間違えば犯罪なのでは・・・・。」
「そうだよ!ったく、またそういう図々しい奴に限って、『私の行動は純粋な恋心の発露なんだから何をしたってオッケーよ!』とか、よく解んない理屈を振りかざしてくんだよな。勘弁して欲しいぜまったく。」
「ふ〜ん・・・・。」
普段、何だかんだ言いつつも女性には優しいレイにここまで言わせるのだ。去年までのバレンタイン攻勢は相当に過激なものだったに違いない。
と、その頭を宥めるようにぽんと叩き、傍らのユエが苦笑交じりに補足した。
「好意を持って下さるのは有り難いんですが、何しろ食べ物ですからね。贈り物をして下さる女性たちを疑うのは心苦しいのですが・・・何かが混入されている可能性を考えると、口にするわけにはいかないんです。」
「ああ、そりゃそうか。」
それでなくともトラブルの多い職業だ。彼らを害するために、チョコに何らかの薬品を入れる者がいたとしてもおかしくない。また、悪意は無くとも、「元気になーれ☆」などと言いながら媚薬を混ぜるような、(ある意味)最も危険な手合いも存在する。とてもじゃないが、恐ろしくて口に出来たものではなかった。
・・・げに恐ろしきは、盲目的な女の恋心。
「当日どうするの?下手に出歩くとファンに見つかっちゃうかもよ?」
「今んトコまともな依頼もないから、家で引きこもる予定デス。」
「うわ、寂しー・・・・。」
「しょーがねーだろ、深刻な貞操の危機なんだから!」
「貞操って・・・それ、意味違くない?」
「違くない。」
「?」
「・・・・・・・中には男もいるから・・・。」
「あ、そ・・・・。」
がくっと肩を落としたアスカは、空になったユエのカップを受け取りながら、ふと呟いた。
「でも、そっかー・・・・そういう事情があるんじゃ、あたしのプレゼントも受け取ってもらえないかしらね?」
「え?」
驚いたように顔を上げたユエに対し、彼女はサングラスの向こうの瞳を見つめて、にっこりと笑いかけた。
「あんた達にはお世話になってるし、お礼を兼ねてプレゼントでもしよっかなーと思ってたのよね。ユエはあんまり甘いものが好きじゃないって聞いてたから、チョコ以外で。
・・・でも、そういう裏事情を知っちゃうとねー。贈っても迷惑なだけかしら?」
「いいえ、そんな事はありませんよ。」
「アスカからのだったら、俺も欲しい。」
「ふふっ、ありがと。じゃあ当日、あんた達の家に届けに行くからね。」
「はい。有難うございます。」
「サンキュ、アスカ。」
「どういたしましてー♪
・・・・あ、そうだ!この前ねぇ、お客さんに面白い手相の見方教えてもらったのよー。ちょっと見てあげる、手ぇ貸して!」
「おいこら、お前遊んでないで仕事しろよ!」
賑やかな三人を、マスターは穏やかな眼で見守っていた。
―――バレンタインまで、あと一週間だ。
+++
―――そして、バレンタイン当日。
「・・・・甘かったな。」
「・・・・そぉですね。」
・・・・ふたりは、何故か走っていた。
細い裏道を疾走するレイに続きながら、ユエはちらりと背後を窺った。どどどど・・・・という、雄牛が突進してくるような異様な重量感。明らかに複数の人間、しかも体格の良い男たちの足音が重なり合っているそれに加え、何やら殺気立った怒鳴り声まで聞こえてくる。・・・・曰く。
「玖月―――っ!!テメェこら逃げんじゃねーっ!!」
「おとなしく捕まりやがれってんだよこのクソガキどもがぁーっ!!」
「冴羽―――っ!!悪い事は言わん、俺たちのために死んでくれ―――っ!!」
・・・etc,etc.
最後の台詞に頬を引き攣らせ、「思いっきり悪い事言ってるじゃねぇかよ」と内心で呟いたレイは、前方に視線を固定したまま背後のユエに叫んだ。
「敵の残数は!?」
「約15!」
「ようやく半減かよ!?チキショー、思ったよりしぶてぇ〜・・・・!」
「アレはもう、仕事云々というよりはただの意地ですね。」
ユエの言うとおり、追ってきている面子の顔には、疲労とそれを上回る執念が燃えている。精根尽き果てるまで、地の果てまでも追いかけてきそうなその顔つきに、ユエは走りながらげんなりと肩を落とした。
「捕まっても、別に殺されるとかリンチに遭うとかいうわけじゃないんですし・・・もういっその事、あっさり捕まっちゃいたいですよね。」
「バカ!この手が有効なんだと『奴ら』に思わせてみろ、これから毎年こうやってデッドレースやんなきゃいけないんだぞ!?この先の安寧を望むなら、今日ここで、何としてでも逃げ切らなきゃいけないんだ!!」
「そりゃそうですよ。第一、僕も今日中には家に帰りたいんで捕まるわけには・・・っと!」
不意に背後から聞こえてきた風切り音に、ユエは軽く地面を蹴った。長身がふわりと宙に浮いた刹那、一瞬前まで彼の足があった所に、凄まじい勢いで何かが突き刺さる。
体勢を崩す事もなく着地して再び走り出したユエは、コンクリの地面を割り砕いたそれが、先端に鉄球が取り付けられている鎖――通称モーニング・スターと呼ばれる武器である事に気付いて、背中に冷や汗を滲ませた。アレはどう考えても殺戮用の武器であり、逃げる獲物を捕獲するための武器ではないと思うのだけれど。
・・・っていうか、今の一撃はマジだった。
「前言撤回。捕まったら、腹立ち紛れにボコボコにされそうです。」
「あ〜ヤダヤダ、もてない男の嫉妬は醜いねぇ。」
「それには全面的に賛成ですが、それはひとまず置いといて。どこかで一気に撒かないと、いずれ捕まっちゃいますよ?」
「う〜む、そりゃそうだな・・・よし、あそこだ!」
急ブレーキをかけたふたりが、素早く横道へと姿を消す。「あっ!?」と叫んだ追っ手集団だったが、慌てて横道を覗き込んだ瞬間、その目がキラーンと輝いた。
それもそのはず。突っ走るふたりの行く手には、高さ4,5メートルほどはありそうな壁が立ち塞がっていたのだ。長身のユエでも、上部に手を掛けるのは難しいだろう。ましてや、彼より一回り小柄なレイが乗り越えられる高さではない。自ら袋小路に飛び込んだ彼らに、男たちは一斉に勝ち誇った笑みを浮かべた。
「ざまぁ見やがれ、行き止まりだ!」
「よっしゃあ、追い詰めろ!」
「・・・・へへん、バーカ。勝算もなしにこんなトコ逃げ込むかっつーの。・・・・ユエ!!」
「はい!」
瞬間的にスピードを上げ、レイの前に出た彼が、壁の直前でくるっと向き直った。ちょうどバレーボールのレシーブのように、素早く両手を組んで腰を落とした構えを取ると、全速力で走ってきたレイが、その組まれた両手に右足を掛ける。その瞬間、ユエの両腕が勢い良く跳ね上がり、レイの細い身体がぽーんと宙に踊った。軽々と壁の天辺に着地した彼に、追っ手達から驚愕の悲鳴が上がる。
「ああ―――っ!!?」
「上海雑技団かあいつらはっ!?」
「こ、こうなったらせめて玖月だけでもとっ捕まえろ――!!」
「はっ、させるかよっ!!」
レイの手から、いくつかの黒い球が飛ぶ。小さめのピンポン玉程度の大きさのそれは、壁の下に立つユエと、彼めがけて突っ込む男たちの間に落ち、一瞬の空白の後、凄まじい勢いで白煙を吹き上げた。一瞬で真っ白になってしまった視界に、男たちは大いに慌て、怒鳴り、煙を吸い込んで咳き込む。もう無茶苦茶である。
やがて、煙の噴出が収まり、激しく咳き込んで涙目になったひとりが「お、おい、玖月は!?」と言った時には、既に金髪の青年の姿も、黒衣の少年の姿も、その場から掻き消えていた。
***
―――そんなわけで。
「・・・・それで散々走り回って、よーやく帰ってきたわけぇ?ったく、今日は恋人たちの祭典だってのに、なんでそんなガチンコバトルやってんのよあんた達。バカじゃないの?」
ふたりの自宅であるマンション。熱いシャワーを浴びて清潔な衣服に着替え、リビングのソファで濡れた髪をがしがしと拭いているレイに温かいお茶を淹れてやりながら、アスカは心底呆れたようにそんな事を言った。ユエは今、交代でシャワーを浴びている。部屋のチャイムを鳴らしても応答がないからと、携えてきたプレゼントをメールボックスに放り込んでいる所に、室内にいるはずのふたりが血相を変えて走ってきた時には何事かと思ったが。事情を聞いてみれば、馬鹿馬鹿しい事この上ない。
タオルを無造作に首に掛けたレイは、彼女の暴言にかなり傷ついたような顔になった。
「バ、バカって・・・・ひっでぇ!アスカひでぇ!俺たちだって好きで走り回ってたわけじゃねーっつの!」
「だって、同情の余地なんてないでしょ。要するに、あんた達を追っかけてた連中は、あんた達にチョコレートを渡したいファンの女どもから頼まれて、あんた達を捕獲しようとしてたって事でしょ?」
先ほどのレイの説明を簡潔にまとめたアスカに、レイは不承不承頷く。乱れてしまった髪が、ほんの少し紅潮している頬にぱらりと落ちた。
「まあファンの女の方も、まさか自分で捕まえるのが難しいからって、そのためだけにあんた達のご同業者を雇うとは思わなかったけどさ。自宅の場所までは知られてないんだから、宣言通りに家で大人しくしてれば良かったじゃない。のこのこ出歩くからこういう目に遭うのよ。」
「今日になったら家からは出ないつもりだったよ!それ以前に、家に帰れなかったの今日は!っていうか昨日は!」
「・・・・・は?」
「今日は確かにオフだったんですけどね。バレンタイン前日――つまり昨日は、午後から仕事があったんですよ。」
眉間に皺を寄せた彼女に、その時丁度バスルームから戻ってきたユエが、苦笑交じりに解説してくれた。
「仕事ねぇ。それで?」
「それで・・・ですね。仕事が終わったのが夜の10時くらいで、それからふたり揃って帰宅しようとしてたんですけど。」
「うん。」
「・・・・その時点で、襲撃を受けまして。」
「へっ!?」
眼を丸くした彼女に、ユエは力なく笑った。
「どうやら、敵さんも例年の経験から、僕らが当日は開店休業にして姿を眩ませるだろうという事を予想してたみたいなんですよ。ですから、前日に、まだ僕らが油断している所を捕まえて、当日まで自分たちの監視下に置いておこうと考えていたようですね。」
「・・・・え、じゃあ何。あんた達、昨日の晩から今までずっと逃げっぱなしだったって事!?家にも帰んないで!?」
「帰りたかったですけど、何しろ追っ手の数が多くて。自宅の位置を知られるのは絶対に御免でしたから、わざと遠回りをしたり一時身を隠して追っ手をやり過ごしたりしながら、やっとの事で帰ってきたんですよ。ちょっとした逃亡者気分でしたね、あれは。」
「・・・・・・・。」
最早呆れ果てて言葉も出ない。バレンタインとはこんなにハードなイベントだっただろうかと、アスカは遠い眼をした。
「何て言うか・・・・うん。お疲れさん。」
「・・・・ありがと。」
「でもまあ、あたしは直接渡せて良かったけどね。・・・・はいっ、これはあたしから。これでちょっと糖分補給しときなさい。」
「わ、サンキュ!」
「ああ、有り難うございます。」
彼女が背後から取り出した包みに、レイはぱっと顔を輝かせた。彼好みのシンプルな包装を施された箱から、微かに甘い香りが漂ってくるのに嬉しそうに笑い、「今日初めてまともなチョコ貰ったような気がするよ」と呟く。
一方ユエの方は、レイとは別に渡された箱を手にして、不思議そうに首を傾げていた。そっと控えめに箱を揺さぶり、がさがさと響く乾いた音に「何だろう」と首を捻っている。
そんな彼らの反応に、彼女は楽しそうに笑った。
「安心なさい、毒も媚薬も入ってないから。・・・まあ、後者はちょっと入れてみたかったような気もするけどね。」
「ちょっと待てそこォー!!」
「冗談よ。」
「な、夏木さん・・・それは笑えないんで止めて下さい・・・・。」
「これは失敬。・・・・で、そうそう。ユエに渡してくれって、マスターに頼まれてたものがあるのよ。」
「え、ユエに?」
「そう・・・はい、これね。」
彼女がバッグから取り出したのは、掌に乗るくらいの小さな包みだった。レイは、マスターがユエだけに何かを渡すというかつてない事態に少々面食らっていたが、本人は彼の戸惑いなど何処吹く風と、涼しい顔でそれを受け取った。どうやら、それが今日マスターから送られてくる事は、あらかじめ承知していたらしい。
ユエの礼に軽く手を振って応えると、アスカはバッグを肩に掛け、用は済んだとばかりにさっさと立ち上がった。湯飲みを手にしたレイが、ほんの少しだけ目を見張る。
「あれ、もう行くのか?お茶くらい飲んでけばいいのに。」
「お誘いは嬉しいけれど、ご遠慮するわ。そもそも、あんた達があんなボロボロになってなければ、最初から家には上がらないつもりだったんだから。」
「んだよそれ、つれねーなぁ。」
ふくれるレイに、彼女は悪戯っぽくウィンクをしてみせた。
「お邪魔虫になるのはゴメンですからね。折角家まで帰って来たんだから、せいぜいふたりで仲良くなさいよ。」
「なっ!!」
「じゃ、帰るかな〜。またね、おふたりさん♪」
かっと頬を赤らめたレイに楽しげに笑うと、彼女はひらりと身を翻して廊下へと消えてしまった。
・・・・かと思ったら、首だけドアの所から覗かせてふたりを呼ぶ。
「んだよ!」
「いや?明日さあ・・・・。」
「だから何だよ!?」
「レイがベッドから動けなさそうだったら、コーヒー出張サービスやるからね?」
「いいから早く帰れセクハラ女!!」
「あはは、バイバイ☆」
「・・・・・・・。」
かなり本気のレイの怒鳴り声にも動じず、明るく笑って出て行った彼女に、ユエは内心尊敬の念を抱いた。
後には、赤い顔でわなわなと拳を震わせるレイと苦笑を浮かべたユエ。そして、綺麗にラッピングされた三つの包みだけが残された。