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結局、警察やマスコミや学校関係者の努力も虚しく(?)1ヶ月後には、調べるべき所は調べ尽くし、新たな事件が起こるわけでもなく、そして何一つ解決することなく(被害者の怪我は完治したが)騒ぎは収束した。 「彼らは喉元すぎればなんとやら、TVの話題には都心の方が事欠かない素材なのでしょうしね」 新聞にも取り上げられることが無くなった頃、半年ぶりに様子を見に来た珀氷は、苦笑まじりで呟いた。 「そうそうすぐに穴が空いて、また妖魔が出てくるようじゃ、たまらないしな」 分離魔法の習得に成功していないと見た珀氷は、辛辣だ。 更に、凰藍が天上の魔法で得意としていたのは元素の精霊魔法であり、例えば夜に見回りででかける時、部屋に誰かいるように思わせるであるとか、誰にも出くわさないように広範囲に渡って結界らしきものをはるであるとか、そういった分野は全く新規に覚えなければならない魔法であったので、あれもこれもとはいかない。 「ご自分が魔法を覚えるまで、妖魔が待ってくれるなどとはよもや思いませぬな?」 そんなことはない、とさすがにいきり立って詰め寄ったが、珀氷はつんとすましたまま、消えてしまった。 凰藍はひとつ溜息をついて、近くのベンチに繋いでおいた隣家のコリー犬ランの元に戻った。 「ラン、もうすぐ正樹に戻るから、ちょっと待っていろ」 小さな頭をぐりぐりと撫でて、手綱を持ってベンチに座った。 さて、潜ろうかと目を閉じかかった時、ランが勢いよく吼え始めた。尻尾がこれでもかとちぎれんばかりに振られているので、何か変事ではない。 「たしか…」 ショートヘア、Tシャツ、Gパン姿の女の子に、凰藍は見覚えがあった。正確には凰藍が、ではない。正樹が、である。3年になって同じクラスになった、遠藤幸だ。 「…」 幸の顔が、ふとこわばった。無意識だろうか、手綱を持った右手を左手で掴む。 「…こんにちは」 挨拶をかえしもせずに立ちすくむ幸の様子を見て、凰藍は躊躇した。 挨拶をしてよかったのだろうか。 どう切り出していいか判らなくなった凰藍の前で、幸はくるりと廻って、ベンチの隣に座った。 「ごめんね、この前… あたし、ちょっとかっとしちゃって」 ケンカでもしたのだろうか? 「…ホントは、もっと早く謝ろうと思ったんだけど。なんかさ、…いいだせなくて」 まずいことになった、と凰藍が腰を浮かせた。 「五十嵐君?」 幸は一瞬怪訝な顔をみせたが、何か思い立ったのか、ベンチから勢いよくたちあがり、凰藍の―――正樹の両肩を掴んで、有無を言わせず力ずくで座らせた。 「あの…え、遠藤さん?」 「謝らせて。ごめんね、五十嵐君のこと、すっごく怖いと思っていた。平手、受け止めた時の目が、怖くて。1ヶ月、まともに話できなくて」 平手を受け止めた?正樹が? 「なんか、人と話すのとかって、嫌いなのかなって思ってた。…でもさ」 肩に置いていた手を、ランとじゃれあうコリー犬の頭に乗せて振り返る。 「犬、好きなんだ。さっき、頭なでてた。笑ってたでしょ。ちょっと安心…した」 ふと、凰藍の目の前がぐらりと傾いだ。座っているからか、幸は気付いていない。 「また、明日ね!」 足音も軽く駆け去る幸の後ろ姿を見ながら、なんとかしないと、まずいことになるかもしれない、と思う凰藍の意識が、そこで―――途切れた。 かさり、という音に目を開けた正樹は、ベンチに座った自分の膝上に、ずいぶん多くの枯れ葉が乗っているのに気付いた。 「ラン?」 話しかけると、ランは一声鳴いて答えた。ベンチから立ち上がり、喉元を撫でながら、ふと、正樹は気付いた。 「お前、どうしてそんなに砂だらけなんだ?」 ランは機嫌よく、尻尾をぱたぱたと振るばかりだった。 |
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