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一つ目の大男は、翼ある青年に―――凰藍に向き直った。一つしかない目は血走り、爛々と輝いて凰藍を見下ろす。 一つ目が、咆哮をあげながら凰藍に襲いかかる。その腕をかいくぐり、頭の上で一回転し、凰藍は一つ目の背に廻った。 口を開けた形のまま、一つ目の頭と胴体の半分が、アスファルトに落ちた。下半身が砕けるように、 それに続く。 柿元がうなり声をあげ、ただ、ぽかんと見ていた坂本が慌てて駆け寄る。 「柿元!柿元!しっかりしろ!」 柿元の手が腰と足をさすった。検査をしないと判らないが、そのあたりを酷く打ち付けたようだった。 「助けるなら、それなりの方法があるだろう!」 凰藍は、顔には出さなかったが、助けた若い警官の様子があまりに悪いので、実はかなり動揺していた。そこへきて同僚とおぼしき壮年の―――正樹の父親位だろうか―――警官から一喝され、気圧されたじろいでしまった。 けが人を挟んで、両者の間に長い沈黙が訪れた。 「…すみません」 最初に言葉を発したのは、凰藍だった。坂本ははっと顔を上げ、そして顔をふせ、こちらこそ助けてもらったのに、すまなかったと詫びた。 「…もしかして、治せたり出来るんスか?」 痛みに顔をしかめながら、期待混じりに話しかけてみたらしい柿元に、凰藍はそっけなく否定した。 「治療の魔法だったら勉強中です。完成していませんが、それでよければ施しますがどうしますか」 柿元は鄭重にお断りした。 「君が何者か、自分たちが聞いてもいいのか?」 答えはすぐに返ってきた。柿元に手をかざしたまま、彼はかぶりを振った。 「私の一存ではなんともいえません」 長くかざしていた手を、凰藍はようやくはずした。 「腰椎打撲、あと腓骨にヒビが入っています。痛み止め程度ですが、施しておきました…動けますか」 柿元はおそるおそる手をついて上半身をおこしてみた。あれっ、などと言いながら、ゆっくりと足を立たせてみる。 「ちょっと痛いけど、大丈夫みたいです!」 凰藍はうなずいて、立ち上がった。 「それでは、私はこれで失礼します」 二人に向かって礼儀正しく頭を下げ、彼は金色の翼を大きく広げた。ふわりと、暖かい風が二人の頬に吹き付ける。 「名前!聞いちゃダメッスか!?あの、自分は柿元です!階級は巡査です!こちらは坂本巡査部長です!」 答えが返ると、坂本には思えなかった。が、予想に反して、端正な相好が崩れた。 「―――オウラン。鳳凰の凰に、藍色の藍。凰藍」 今度こそ、彼は金色の光になって、市街地の方へ飛び去って行ってしまった。 「…っこいいっすねぇ…」 どうやら、坂本の部下は凰藍のファンになってしまったようだった。 ―――警察が、協力するなど、おこがましい。 あれは人間の手に負えるものじゃなかった。既に足下で染みすらなくなった一つ目の痕に、足で砂をかける。 ―――警察が協力出来ることなど、果たしてあるのだろうか? やがて、二人を乗せたパトカーはUターンをし、市街地へと戻っていった。 ―――今夜は報告する事が多いが、さて、どこまでしていいやら。 名前をきいたことは、黙っておこう。坂本は柿元と二人の秘密にすることにした。 |
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