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人気のない官庁街の近くに広がる、大きな自然公園に戦いの場は移っていた。 「…あと、3」 額から汗が流れ、視界を奪われそうになる。左手でぬぐうが、気休め程度だ。 3匹の化け蜘蛛が広い空間に出た。いわゆるスポーツ広場である。 ―――最後だ。 軋む腕を持ち上げて力を込め、剣を振ろうとした、刹那。 身の内から、何かがぐっとせり上がってくる感覚を、凰藍は感じ取った。 ―――…まずい! 剣を収め、内側に意識を集中させる。今、出てきてはいけない。最悪のタイミングなのだ、と。 正樹の意識が徐々に覚醒しつつあった。それ同時に、凰藍の手足の感覚が麻痺していく。 ―――だめだ。絶対に、身体は渡せない。 意識が覚醒すれば、正樹は無意識に身体を使おうとするだろう。それを直前で止め、身体は自分が動かせる状況にしておかなければならなかった。 背の双翼が、風をはらむのを止める。 正樹の意識が浮上する。 ―――落ちる。 凰藍の身体が、力を失った。 正樹の意識が、光を捉えた。 ―――落ちる! 猛スピードで迫る地上。 ぱしん、とはじける音がした―――刹那。 ―――ああ、草のにおいが。 夜露を吸った芝生のにおいを感じたのは、どちらだろうか。 金色の光は、地面に激突する前に、中空に舞い上がった。 異常を察知してか、逃げるのをやめて向き合う化け蜘蛛との距離は、50m。 剣を地面に突き立て、杖がわりに体重を支える。凰藍の身の内に、確かに彼のものではない意識があった。 凰藍の心の中で、瞬時に声が響いた。寝ぼけてはいないらしい、正樹の声。 「説明は出来ない。だが頼みがある」 再び、剣を構えなおしながら、凰藍は賭けに出ることに決めていた。 「治療魔法を使ってほしい」 強く念じて、正樹の意識に治療魔法のスペルを伝える。出来るかどうか判らなかったが、戸惑ったような正樹の様子から、成功したと凰藍には確信がもてた。 「もう時間がない。失敗したら二人とも…」 死ぬ、という凰藍の意識が、正樹に酷くリアルに伝わった。50m先の化け蜘蛛。ほとんど視認できないが、あれは悪いものだという事は、正樹にも何故か分かっていた。 ―――でも、魔法なんて。 躊躇する正樹の気持ちを悟ってか、凰藍が深呼吸する。落ち着け、ということなのだろう。そして、気持ちが落ち着くことによって、化け蜘蛛との距離がよりはっきりと認識出来た。 『…時間、ないね』 正樹は再び心の中で深呼吸をした。じんわりとスペルが魂に吸い込まれていく。 ―――理解できる。 そして思った。魔法は魂と同化して、使うものなのだと。同化できるものが、使えるのだと。 ふわりと。 だが、それで充分だった。 振り払った瞬間、光が刃の形を為した。 |
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