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もしその場に通りがかった者がいたら、地上に雷が落ちたと思ったかもしれない。
木々の結界が途切れていたら、市内中から警察と消防に問い合わせの電話が殺到したかもしれなかった。
凰藍は、正樹の左手を掴んで、かろうじて体が倒れることを防いだ。―――正確には、その、体と同化していた杖、を。
天上界の門を守る木から造られた杖は、その枝であっても堅牢。形作る物質は、地上の物とは異なり、しかし、凰藍を形作るうちの一つと同じ。だからこそ、杖が橋渡しになり、粒子になりつつあった体同士でも触れることができる。
『正樹』
腕からつながる肩、首、そして顔。それが俯いて見えない。
意識があるのかどうかも判らなかった。無論、思考が伝わるとは思えない。
だが、凰藍に残された手だても時間も、残り少ない。
『このあとは、私が』
呪文は途切れたが、まだ、精霊たちが完全に去ったわけではない。形作るチカラを集めるのは、まだ間に合う。
それがどこまでの力を持つのか、までは、判らないが。
ほぼ意識体となっている自分に、どれだけの力が残されているのかも、判らないが。
―――やるしかない。
杖から伝わる、正樹に残された力を借りて。自分自身の力を、併せて。
―――目を覚ませ。
呼びかける。意識に流れがあるなら、奔流のようになって。
そして、力を放出させた。
消えかかっていた炎が再燃し、水が逆巻き、風が慟哭し、地がふるえる。月はただ静かに、光を投げかけている。
チカラが、収束して。
俯かれていた顔が上がり、 二人の視線が、交差した―――轟音が轟いた。
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ひやりとした感触を背に受けて、正樹は重い瞼を開いた。
ぼんやりとかすむ目に、芝生の小さな葉が揺れる。
何度か目をしばたいて、ようやく上半身を起こしたが、節々が悲鳴を上げて、なかなかいうことをきかない。
それでもなんとか腕に力を込め、膝をついたが、今度は腰に力が入らない。再び地に横倒しになる。
「…ら…?」
その格好のまま、呼んでみたが、声が出ない。酷く喉が渇いていた。
気が付くと全身が水で濡れていて、時折吹く風が濡れたTシャツの上から体を冷やしている。
風邪をひいたのかもしれない、とぼんやりと考えながら、力が入らない下半身を捨て置いて匍匐前進の構えをとった。
内なる声は既に無い。
分離魔法の最初で、意識が先に分離をしたように記憶している。
続いて、体が。詠唱を止めてしまった自分に代わって、凰藍が後を継いでくれたのだ、と、意識が途切れる直前を思い出した。
最後の瞬間、眼に写った双眸。光の彼方にとびかけていた意識が、呼び戻された。
あのまま、呼ばれなかったらどうなっていたのだろうか―――。
腕に力を込めて前進した、その時。
後ろで、何かの気配が動いた。
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