あの空は夏の中
青学の・・・・・・それも一年ごときに負けた。
ボールの音が。
聞きなれたボールの音が響いてゲームセット。
それと同時に時間が止まった。
先輩達の夏が。
続いて行く筈の先輩の夏が終わった。
俺がこの手で終わらせてしまった。
情けないやら悔しいやらで、何も考えられない。
荒い息を抑えながら空を見る。
負けて何も見えない俺とは正反対に。
突き抜けるような蒼さだった。
一点の曇りも無いような蒼。
目を閉じると、自分の心音が響いている。
心も頭もグチャグチャだった。
自分にとっての自信もプライドも粉砕された。
自分のテニスがなくなってしまった瞬間だった。
気がつくと宍戸先輩が俺の前にいる。
いつもはいけ好かないと思っていた一つ上の先輩だった。
責めに来たのかと、そう思った。
勝つのが常の氷帝にとっては異端的な存在だった。
負けたのにレギュラーとして復活した。
正に異例の存在だった。
俺はこの先輩が好きではなかった。
「日吉、泣くな」
なのに。
たった一言。
責めるかと思った言葉は無くて。
一言。
一言で。
その言葉に、目頭が熱くなった。
じわりと眼球を侵食するような熱いモノが溢れてきて。
「・・・・・・泣くな」
ぽんぽんと頭を、まるで小さい子にするかのような行動に。
もう駄目だった。
涙が零れる。
この人は本当に嫌だ。
俺の気持ちを的確に言い当てるから。
堪えていたのに。
人の前では泣きたくなかったのに。
背中に当たる、他人の体温に。
不思議と嫌悪感は湧かなかった。
「・・・・・・ごめ・・・・・・なさ・・・・・・」
終わらせてしまってごめんなさい。
本当なら、勝って全国へ行くはずだったのに。
こんな所で・・・・・・終わってしまうなんて・・・・・・。
本当にごめんなさい。
「ごめ・・・・・・・・・・・・さ・・・・・・」
謝る事しか出来ない俺に、宍戸先輩は笑った。
自分も泣きたい筈なのに。
「死ぬ気で練習すっぞ。」
がしがしと頭を掴まれる。
「まぁ俺が言う事じゃねぇけどな・・・こんな所で止まってたらそれこそ激ダサだぞ?
ここから這い上がって・・・・・・来年はやってやろうぜ?下剋上をよ!!」
笑いながら言う先輩に。
とても救われた。
「お前等が、俺達に見せてくれよ。来年は・・・・・・全国だ」
俺の髪を掻き乱していた先輩の指が真っ直ぐに伸びて。
空を。
太陽を。
頂点を指差した。
真っ直ぐに伸びたその指は、太陽の光を受けてとても煌めいて見えた。
惚けて見ている俺に先輩はニヤリと笑う。
「返事は?」
「・・・は・・・はい!」
慌てて返事をした俺に、先輩は俺の背中を勢い良く叩いた。
「おぅ!整列行こうぜ」
頷くと、先輩は俺の頭をまた撫でた。
気が付くと、あれ程溢れていた涙は止まっていて。
どこかさっぱりとした気持ちが残って。
今日からまた頑張ろうと思った。
突っ立っている俺に。
数歩先にいる宍戸先輩が振り返って。
笑顔を見せた。
「若!特訓付き合ってやるぞ」
さらりと。
何でもないように。
初めて呼ばれた名前に。
どうしようもなく胸が高鳴って。
「……っ…お願いします!!」
赤くなった顔を見られないように頭を深く下げた。
心臓が五月蝿い。
血が頭に上るのを感じて頭を上げる。
ふわりと重力を感じなくなって。
ふらりとした頭で。
空を見た。
その空はどこまでも続いていて。
突き抜けるような蒼さで。
俺はこの光景を忘れずにいようと思った。
END
宍戸さんと日吉くんです。
なんてゆうか……青いよ!!
てゆうか、宍ヒヨじゃないじゃん!!!
まだお互いに気持ちが分かってない二人。
普通に氷帝日常話でもいけんじゃん。
つか、それしか言えないじゃん。
どこが宍ヒヨじゃけんね!!
泣きそうになりながらも宍ヒヨと言いたい。