彼なりのアイジョウ





















「やっぱさ……俺、ヒヨは可愛いと思うのね」











部室のベンチに座りながら、ジローが大真面目に言った。
それを、聞いて忍足は雑誌から顔を上げずに頷く。
「さよか……」
それに満足したのかしてないのか、良く分からない顔をしてジローは足をブラブラさせる。
結局どうでも良いのかも知れない。
「だってさ……前髪ながくて…最初はウゼェとか思ってたんだけど……」
「けど…?」
忍足は顔を上げずに促す。
「前髪あげてからかおうとしたら……メチャクチャびじんだった。」
「………俺はそれ以前にジロちゃんが日吉の前髪引っ掴んだっつー事実の方が怖いわ」
「しょうがないじゃん。だってウザかったんだもん。侑ちゃんだってするでしょ?」
「……しないわ!アホか……ジロちゃん。」
「えー…するよ絶対!!」
「俺を元ヤンと一緒にしないでくれへん?ごっつ傷付くわ…」
「え―――!!!ひどい!!侑ちゃん」
『酷いのはお前だ』と、忍足は心の中で思った。
「だってヒヨが……かわいくてさー…目がおどろいてまんまるなの。」
「そりゃ驚くわなー……行き成り、それも先輩に前髪引っ捕まえられて笑顔で脅されたら」
「おどしてないC−……でも…」
「………でも?」










「前髪あげると、ヒヨはヤヴァイよ?ぶっちゃけ………股間にきた」












「うーわ最低や」
しかし忍足は雑誌から目を上げない。
「ほんとヤバイんだC−…あの信じられないような目でみられるとたまんなくなるんだけど。」
ニコニコと笑顔で。
会話の内容と表情が合っていない。
「最低」
淡々とした忍足の声。
「こう、すがめられた目っていうの?ヤバイよ…ヒヨは」
気にもしないジロー。
「最悪」
「もうなんていうか……いじめてオーラが出てる!!!!」
「サド」
「やばいぐらいグッチャグチャに泣かせてぇの……あぁもう!!考えただけでオカズになるね」
「サル」
「ああああああああ!!!!もう!!!」
ガタリと立ち上がって、ジローは叫ぶ。











「日吉くっちまいて―――――!!!!」












その時に部室のドアが開いた。
噂をすればなんとやら…の、日吉本人である。
「あ!ヒヨ〜〜…」
コロリと、態度を変えてジローは日吉の元へ近づく。
「……どうも」
「………………」
忍足は、やはり雑誌から一度も顔を上げる事は無かった。
無言のままページを突き進む。
「ヒヨ〜〜……おれ、ヒヨたべたい」
ジローの言葉に、日吉は眉を顰める。
「は?何で日本語を間違えているんですか…。何か食べたいの間違いでしょう?」
「……そうかもしんない」






『間違ってないでー…日吉』
…そう、忍足は思った。






「しょうがない人ですね……これ、食べます?」
鞄の中から取り出したのは、色鮮やかな炊き込みご飯のおにぎり。
「どうしたの?これ……」
ジローがそれを受け取り、しげしげと眺める。
「授業で作ったんですが……味もちゃんとしっかり出ましたけど……口に合うかどうかは・・・」
日吉の言葉を区切って、ジローは喜ぶ。
「たべる!!たべたい!!!」
その言葉にホッとしたのか、日吉は口角を上げた。
「そうですか……じゃあどうぞ」
日吉の手から、ジローにおにぎりが移る。
「……え?何で?あったかい!!!」
おにぎりを頬に当てながらジローは驚く。
「……5時間目の授業でしたから…早くしないと冷めてしまいますよ?」
日吉の言葉に、ジローは手早くラップを取って齧り付く。
「……………どうですか?味の方は………」
ジローは、ふるふると震えている。







「……おいC〜〜〜!!!やばいよ!!これ!!侑ちゃん!!」
足をジタバタと動かして、ジローが顔を歪める。
「ヒヨぜったいE〜およめさんになれる!!おれがほしょうする!!」
日吉は唖然としてジローの言葉を聞く。
「……嫁………です…か…???」
「うん!!おれのよめさんになっちゃえー!!!」
「……遠慮しときます」
「賢明やでー…日吉」
ボソリと忍足が言葉を告ぐ。






『ナニされるか分からんしな……。まぁ…ナニやろうけど…』






「ヒヨはさぁ…・・・家庭科とくい?」
もごもごと口を動かしながら言うジローに、日吉は苦笑する。
「……裁縫はダメですが……料理なら家でもやっていますし…」
「ええ!!?スゴイ!!!さすがおれの未来の嫁さん!!」
「……は……?」
「な〜に〜〜?ヒヨ」
笑顔でゴリ押しをするジローに日吉は何も言えない。







「強く生きや……日吉…」








初めて雑誌から顔を上げて、忍足が日吉を見た。
その視線は哀れみに近い。
「……何なんですか……二人して……」
訝しげに日吉が二人を見る。
「いや、何でもないねん」
忍足は、押しに弱い後輩を思って溜息を吐く。
ジローは日吉を見てニコニコしたまま。
日吉は日吉で、二人の先輩を見て首を傾げている。











『アカンわ……絶対そのうち食われるわ…』
忍足は心の奥底で深くそう思い、後輩の将来に強く合掌した。


















END???






忍足がツッコミ。
氷帝はかんなりヤバイ奴の溜まり場。
まっとうな奴は、宍戸さんと岳人さん。
日吉は……激ニブ。だからまっとうではナッシング。
そのうち鳳が気付いて青ざめてみたり…。
『わ…若は俺の親友ですから!!虐めないで下さい!!!』
『なんで〜?いじめてないよ〜〜??』
天然暗黒ジロー。
はっ!!…戻られるわ!!