他人の望遠鏡をもっと沢山見せてもらおう
 一昔前までは、望遠鏡の基本性能はすべて口径で決まる...良くこんなことが言われていました。確かに、口径の小さな望遠鏡より大きな望遠鏡の方が集光力があって、暗い星雲まで見ることは出来ますが、それが即ち性能が良いということなのでしょうか?

 実は、この”口径至上主義”的考えは、数年前までの私の考えそのものでした。”大きい望遠鏡は小さな望遠鏡よりよく見えるモノだ”というのは非常に解りやすい理屈です。でも、いろいろな望遠鏡を実際に自分の目で確かめていくと、必ずしもそうではないということが解ってきました。

 結局、私の現在の考えでは、眼視望遠鏡の基本性能を決める要素は3つあります。それは、

  @口径・・・集光力
  A結像性能・・・分解能
  Bコントラスト・・・迷光処理

ということに集約されると思います。また、写真鏡筒の基本性能は、上記性能の他に

  C像面の平坦性・・・写野周辺までの諸収差の抑制
  Dイメ−ジサ−クルの広さ・・・周辺減光の抑制

という要素が加わるでしょう。

 さてさて、今回のお話は私の望遠鏡の性能についての考え方から入りましたが、実際には、この他に取り扱い易さの問題やオプションの充実度、使用目的や使用感実態などを総合的に判断して”望遠鏡の性能”と言うモノは語られるべきと思いますが、ここではいわゆる光学性能というものに注目して下さい。

 前置きが長くなりましたが、”他人の望遠鏡をもっと沢山見せてもらおう”と呼びかけたのは、実は理由があります。それは、自分の望遠鏡しか覗いたことが無い人が以外と多くて、天文談義や某パソコンネットなどでも自分の望遠鏡の経験が一般的のように思っている人が結構多そうだな、って最近感じているからなのですね。

 それともう一つ、これは望遠鏡メ−カ−の販売戦略の悪癖だと思いますが、1台の望遠鏡で写真も眼視観望も極められるような広告を出して販売している。そして、ユ−ザ−レポ−トで、その望遠鏡の眼視性能の優秀さを語っているのは、普段眼視観望をしないフォトコン常連の方々。そもそも、眼視鏡筒と写真鏡筒とでは、設計思想もコンセプトもまるで違うのに、中間思想のマルチタイプが双方極められるハズが無い!だいたいフラットナ−入りの鏡筒なのに”惑星観測にも素晴らしい性能を発揮します”なんてユ−ザ−レポ−トに書く人がいるから、真に受けて購入した初心者がその程度の見え味で”よく見えている”と思いこんでしまうんですよね。(ちなみに私もこの鏡筒のユ−ザ−です。だから声を大にして言いたい!)でも、実際には、惑星などは同口径クラスの普通のアポクロマ−ト望遠鏡の方が遙かに良く見えるんです。この鏡筒の写真撮影における性能は確かに良いモノがあることは認めるけど、眼視性能を謳い文句にして販売しちゃいけないよね。だいたい、ベタ褒めのユ−ザ−レポ−トを載せておいて、メ−カ−が書いたモノでは無いから知らない、ってな感じがありありで非常にイヤですネ。

 そもそも、上記性能のABとCDは相反する関係にあるんですよね。眼視用に極めるなら、Aは中心星像をいかに鋭くするか、ということに尽きます。ところが、写真鏡筒で求められるCは、中心星像のAを甘くして、視野周辺まで平坦な星像を確保しようというもので、本来、フラットナ−の発想というものはそういうものです。また、Dの周辺減光を抑制するなら、鏡筒内に配置する絞り環(バッフル)の径を大きくせざるを得ず、当然眼視観測においてはBの像面のコントラストが低下します。BORG125EDPHなどは鏡筒内にバッフルが1枚も入ってません。(Dを確保するためと思われます。)だから、基本的に眼視・写真両方を極められる欲張り望遠鏡の発想自体が無理があるわけです。理想を言うなら、眼視用の鏡筒1本、写真用の鏡筒1本と使用目的に分けて望遠鏡を所有すべきです。

 しかし、そうは言っても望遠鏡はなかなか高い買い物ですから、そう簡単に何本も買うわけにはいきません。マルチ型望遠鏡は、購入される方があらかじめ上記のような事情を理解されて購入されるのなら良いのですが、ほとんどの方は雑誌広告のメ−カ−サイドに立ったようなユ−ザ−レポ−トなどを見て購入してしまい、購入後はその自分の望遠鏡しか見たことが無いのでそれが一番と思いこんでしまうようですネ。それで、ある観測地などでたまたま人の望遠鏡を覗いて、自分の望遠鏡よりずっと良く見えるので、自分の望遠鏡に失望してしまったりするわけです。

 他人の望遠鏡をたくさん覗かせてもらうと、それぞれの望遠鏡一つ一つに個性があって、自分にあう望遠鏡がどういうモノかが良くわかってきます。また、自分の常識と実際の見え味が全然違っていたりする事もあるでしょう。

 たとえば、良く”シュミカセは像が甘い”と言われます。でも、これはシュミカセが普及し始めた頃に販売されたタイプのモノが、低コストを求めて十分な迷光処理などがされずに出回ったために言われ始めたことだと思います。良く調整された、迷光処理も十分に施してあるシュミカセって結構良く見えますよ。大阪の協栄産業が取り扱っているEXなどは、確かに良く見えます。先日の観望会で知人のC9 -1/4EXでM13を見ましたが、なかなかコントラストが高く、中心まで綺麗に分離した良い像を見せていました。

 また、評価が高いようで実はそうでは無いようなケ−スもあります。
 私の知人が観望会に16cmのニュ−トン反射を持って来て、みんなで一斉に木星を見たときのことです。私の望遠鏡は知人と同じメ−カ−のもので12.8cmのフロ−ライトなのですが、どうみても口径の小さい私の鏡筒の方がずっと良く見える。しかも、像も私の鏡筒の方が明るい...。私の知人は相当これがショックだったようです。(でも、中央遮蔽、反射率と透過率の違い、コントラストの差を考えると私の鏡筒の方が良く見えてもおかしくはないのですが...)その後、知人は同メ−カ−のトリプレット・アポクロマ−トを買ってしまいました。この反射鏡筒もマニアの中では結構評価が高いんですが、知人も口径の小さな望遠鏡に見え味において負けるはずが無いと思っていたようです。

 詰まるところ、結論。”とにかく、いろいろな望遠鏡を実際に自分の目で見てみよう!”ということに尽きます。私のように天文サ−クルに入って他の人の望遠鏡と比較観望会をしたりすると、ほんとに楽しいですよ。ただ単に大きな望遠鏡だけ見せてもらうのでは無く、いろんなタイプの望遠鏡をもっとたくさん覗きましょう! 

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