応急措置


出荷停止・支払停止

 継続的な取引を続けていると、例えば、商品を先に納品し代金は指定日の後払いということが非常に多いと思います。しかし、商品の納品前に取引先に信用不安が発生した場合、契約で決まっているからと言って何が何でも商品を納品しなければならない訳ではありません。

 もちろん、ただ何となく不安だからという理由だけで出荷停止ができる訳ではありません。むやみに出荷停止をすれば、取引先から契約違反で損害賠償を請求される可能性があります。

 出荷停止(不安の抗弁といいます)をするためにはまず、客観的な信用不安の調査を行います。その結果、代金決済の見込みが無いと判断された場合には、次に代金引換や確実な担保の提供を要求します。その要求に取引先が応じなければ、出荷停止ができることになります。

 さらに、約束の支払期日に支払わない取引先には、次の納入を差し控えることができます。つまり、前回の代金と引き換えでなければ、次回の商品を納入しないということが言えます。これを同時履行の抗弁権といいます。

 このようにすることで、それ以上の債権を増やさずにすみます。

時効中断

時効とは


 時効とは、真実の権利関係に関係なく、継続した事実状態をそのまま権利関係として認め、権利を取得したり(取得時効)、消滅させたり(消滅時効)する制度です。これは社会の法律関係の安定や権利の上に眠る者は保護しないという考え方からきています。
 例えば、友人などにお金を貸していた場合でも、なにもせずに10年間が経過してしまったらもうお金を返してくれと言えなくなることもあるということです。
 しかし、時効にもそれを認めにくくする制度(中断・停止・放棄)が用意されています。債権者としては、これらの制度を利用して消滅時効を管理していくことが必要です。


債権の消滅時効期間は債権の種類によって異なります

特に、売掛金の時効期間は2年間と短いので注意が必要です。

期間 債権の種類 例と注意点
10年 一般の民事債権(民法167@)



確定判決、裁判上の和解、調停等による
期間延長(民法174の2)

個人間の貸金債権
信用金庫、信用組合、共同組合の個人への貸付金債権
(会社への貸付金は商事債権の5年)

※主債務に確定判決等があると、保証債務も10年に延
長される。逆に保証債務に確定判決等があっても、主
債務ハ延長されないことに注意
5
商事債権(商法522)





定期給付債権(民法169)
「医師、産婆、薬剤師」の債権(民法170)
※債権者、債務者のどちらか一方にとって商行為(商法
501〜503)であれば足りる
※一方が会社であれば商事債権になる
貸主、借主のどちらかが会社の貸付債権、リース料債権、クレジット債権、商事債権の債務不履行による解除権、損害賠償請求権、金融機関、サラ金の貸付金債権
家賃、地代、利息債権
3年 「技師、棟梁、請負人」の債権(民法170)


手形債権(約束債権の振出人、為替手形の引受人に対する債権(手77,70)
不法行為債権(民法709)

PL法の製造物責任(製造物責任法5)

土木建築工事の請負代金債権


手形貸付の手形債権
※支払期日(満期)から進行
事故による損害賠償請求権
※損害と賠償義務者の両方を知るまでは進行しない
欠陥製品による損害賠償請求権
※損害と賠償義務者の両方を知るまでは進行しない
2年
「生産者、卸売商人、小売商人」の代金
債権(民法173)

「居職人、製造人」の債権(民法173)

「校主、塾主、教師」の債権(民法173)
「弁護士、公証人」の債権(民法172)

給料債権(労基115)

産物・商品の売掛金債権
※単なる個人間の売買は10年

理容師、クリーニング業者、建具、家具、靴等の製造人などの代金債権
学校、塾等の授業料


給料、賞与の債権
※退職金債権は5年(労基115)
1年
「労働者、芸人」の債権(民法174)

「運送賃」の債権(民法174)
「旅店、料理店、貸席、娯楽場」の債権
(民法174)
「動産の損料」(民法174)
手形の遡及見(手77,70)

大工、植木職、俳優、歌手、プロスポーツ選手等の報酬


ホテル、飲食店、映画館、ボーリング場等の料金や立替金
レンタカー、レンタルビデオ、CD等の料金
手形所持人の裏書人に対する請求権
※受戻した裏書人の他の裏書人に対する再遡及権は6ヶ月
6ヶ月 小切手債権(小切手51) 小切手所持人の裏書人、振り出し人に対する請求権、再遡及権
※支払い呈示期間(振出日から10間)経過後から6ヶ

時効中断方法


 時効消滅を防ぐための手段として、時効中断の制度があります。

 時効中断とは、いままでの時効期間の経過を振り出しに戻すことです。消滅時効の完成が迫っている場合には、とりあえず、時効中断をしておくことで、消滅時効の完成を阻むことができます。

 時効中断には、
@請求(裁判上の請求・支払督促・和解の呼出し・などの他、裁判外の請求である催告も含まれます。)
A差押・仮差押・仮処分
B承認

 があります。

 費用や時間、手間などを考えると裁判所を経由しないでできる「催告」と「承認」が有効です。時効中断を考える場合にはまず、「催告」と「承認」を考えましょう。

 「承認」とは債務者が債務の存在を認める事ですが、もっとも簡単でコストもかからない方法です。
 さらに時効が完成していた場合でも「承認」があった場合には時効利益の放棄として時効消滅を阻止できる場合もあります。
 方法は、相手方に債務承認書をもらうことが確実ですが、一部の弁済や利息の支払いを受けた場合や、支払いの猶予や減額を求めたりした場合でも「承認」になります。

 「催告」とは中断事由である請求の中に含まれますが、「催告」後6ヶ月以内に他の中断方法をとらなければ中断の効力を生じません。ですから、「催告」を繰り返しても意味はありません。
 これはどのような場合に使うのかというと、消滅時効が迫っている債権を持っている場合、裁判所を経由した時効中断をしていたのでは、時間がかかり、消滅時効が完成してしまうということがあります。
 そこで、とりあえず、「催告」によって時効を中断させておいて、後から、裁判上の請求をすれば消滅時効を防ぐことができるのです。
 「催告」の方法は内容証明郵便により請求をすればよいので簡単にできます。

 内容証明郵便の詳しい説明については、「内容証明郵便支援センター」へどうぞ。 

時効完成後の対応

 債権の時効が完成してしまってもあきらめるのはまだ早いです。時効の権利を受けるか否かを決めるのは個人の意思に委ねられます。したがって、債務者等時効の利益を直接受ける者は時効の利益を受ける旨の主張(援用といいます)しない限り、効力を生じません。

 したがって、時効期間完成後でも時効消滅が阻止できる可能性が残っていることになります。

 そうであるならば、債権者としては、債務者に対して、そもそも時効の利益を時効前にあらかじめ放棄させておく契約を結べばよいではないか、という案もあります。

 しかし、残念ながら時効の利益は、時効完成前には放棄することができません。

 ただし、時効が完成していても、債務者が時効の完成を知らないまま債務の承認、支払猶予、一部弁済をしたような場合には時効の利益を放棄したとされるため、再度時効期間が経過するまで時効は完成しないことになります。

 ですから、債務者に気づかれることなく、債務承認者や一部弁済、利息の支払いを受けてしまうことができればよい訳です。


仮差押

 債権回収に入ろうとしたところ、債務者がめぼしい財産を隠したり、費消してしまうということはよくあることです。しかし、そのまま、放っておきますと、債務者の財産が無くなり、交渉や強制執行をしても、結局取るものは何も無いという状況になってしまいます。

 このような場合には、債務者の財産に仮差押をかけ、現状を凍結しておくことが必要です。

 また、仮差押は債務者にかなりのプレッシャーを与えることができますので、交渉に引き出したり、弁済を促したりする効力もあります。

 デメリットとしては、申し立てには、当初に高額な保証金を用意しなければならない点が上げられます。

 申し立て先は、回収すべき金銭債権の本裁判をする場合の簡易裁判所か地方裁判所、または、仮差押対象物の所在地(債権はその債権の債務者の住所地)の地方裁判所です。

 債権者が管轄裁判所に申立書を提出すると、その後、裁判官との面接が行われます。その時、債権者の提出した疎明資料と面接時の説明だけで仮差押の要件を判断し、債務者に事情を聴くことはありません。そして、保証金を積むことにより、仮差押命令が発令されます。その後、対象物ごとに保全執行が行われることになります。


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