松平健 特別公演 ‘観戦’記
3月6日(土)。
前日までのうららかな早春の陽気がウソのような大荒れの天気になった。
昨夜の天気予報で‘最後の冬将軍?’と予想されたとおり、強い風が粉雪をたずさえてそこらじゅうを真冬に引き戻している。
そんななか、私は、博多座に「芸能生活三十周年記念」と銘打った「松平健特別公演」に赴くことになった。
特別公演のタイトルは「暴れん坊将軍スペシャル 唄って踊って八百八町〜フィナーレ・マツケンサンバ」。
しかし、果たして行っても大丈夫なのか・・・このものすごいタイトルの公演に。
窓の外では彼に対抗するかのように冬将軍が暴れている。
不安が沸き起こる。
なぜ、私が、この公演に赴くことになったか、というと、駅に貼ってあるこの公演のポスターに異常に心惹かれたことがきっかけだった。
TVの人気時代劇シリーズ「暴れん坊将軍」の名は、もちろん知っていた。
松平健の代表作であり、お年寄りはもとより、私の友人までもがよく見ている痛快娯楽時代劇である。
彼が三十周年という芸能生活の節目の年に、このお芝居をやるということに疑問をさしはさむ余地はない。
しかし、私のなかに大いなるクエスチョンマークを湧き起こしたのは、公演タイトルの後半である。
「マツケンサンバ」。
とは何だ?
松平健のサンバ?将軍・・健・・・サンバ・・・タイトルなのに意味不明だ。
「唄って踊って八百八町」もいけない。
八百八町から江戸、将軍は素直に感じられるが、唄い踊るというのがどうにもわからない。
時代劇+ミュージカル?
塩サバとクレームブリュレを融合させたようなこの響き。
ますますもって、‘何だ?’感が強まる。
キャストを見ると、そこには山村紅葉が含まれていた。
二時間サスペンスドラマの裏女王の名をほしいままにする彼女が生で見れるというのだ。
ポスターの彼女の写真のうえには、往年のアイドル・太川陽介の名が。
ミュージカルで彼・・まさか、あの名曲「ルイルイ」をこの舞台上でフューチャーしようというのか?
わからない。何もかもがわからない。
こうしてすっかり気になる存在となったこの公演のことを、会社の先輩に打ち明けたところ、先輩はスーパーコネクションを使い、土曜公演の夜の部のチケットをタダで2枚も手配してくれたのだ。
買えば1枚12,600円もするチケットを、「あ、手配できたよ」とにっこり笑ってプレゼントしてくれる先輩の度量はまさに将軍級。
私は事件を解決し去っていく水戸黄門に感謝する町の衆のように何度も何度も腰を曲げお礼を言った。
よぉし、待ってろ。
年度末の煮え煮え状態を一気に吹き飛ばすのだ!
サンバでもコンガでも何でも持って来い!
私は、「・・・どこに行くのね?」と聞く母にろくすっぽ説明もせずに、彼女のオペラグラスをぶんどって、強風で髪を逆立てながら一路博多座に向かった。

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