害虫の誕生――虫からみた日本史


瀬戸口明久著
ちくま新書
2009年7月6日
224頁
ISBN 9784480064943
定価756 円(税込)

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目次

プロローグ
  〈害虫〉とは何か
  「害虫」という言葉
  環境史という視点

第一章 近世日本における「虫」
1.日本における農業の成立
  焼畑から定住型農耕へ
  「蝗」の誕生
2.江戸時代人と「蝗」
  注油駆除法
  「たたり」としての虫害
3.虫たちをめぐる自然観
  虫は自然にわいてくる
  江戸博物学の流行

第二章 明治日本と〈害虫〉
1.害虫とたたかう学問
  西洋世界における害虫
  アメリカ農学の誕生
  化学殺虫剤の確立
  ベダリアテントウvsイセリアカイガラムシ
2.明治政府と応用昆虫学
  「虫害」の発見
  応用昆虫学の確立
  札幌農学校の昆虫学
3.農民vs明治政府
  サーベル農政
  筑後稲株騒動
  文明開化と〈害虫〉
4.名和靖と「昆虫思想」
  名和昆虫研究所の設立
  明治政府と名和昆虫研究所
  「昆虫思想」の普及
  全国へ広まる「昆虫思想」
  名和昆虫研究所の現在

第三章 病気――植民地統治と近代都市の形成
1.病気をもたらす虫
  熱帯医学の誕生
  蚊の根絶 vs 病原体の駆逐
2.植民地統治とマラリア
  日本のマラリア──北海道と台湾
  寄生虫学と植民地統治
  竹を刈ってマラリアを根絶する
3.都市衛生とハエ
  ハエと腸チフス――アメリカの場合
  ハエとコレラ――日本の場合
  戦後日本と〈衛生害虫〉

第四章 戦争──「敵」を科学で撃ち倒す
1.第一次世界大戦と害虫防除技術
  食糧問題の登場
  天敵導入の開始
  誘蛾灯の時代
2.毒ガスと殺虫剤
  戦争と化学工業
  毒ガスから殺虫剤へ──クロルピクリン
  殺虫剤から毒ガスへ──青酸殺虫剤
  第二次世界大戦と農薬──ドイツとアメリカ
3.マラリアとの戦い
  米軍とマラリア(1)──DDTの発見
  米軍とマラリア(2)――イメージの戦争
  日本軍とマラリア──「衛生昆虫学」の誕生
  兵器としての〈害虫〉

エピローグ
  近代国家と自然の均質化
  環境にとって科学技術とは何か
  戦後日本と〈害虫〉

主要参考文献
図版出典一覧
あとがき

本の紹介

……つまり人間にとって有害な虫をひとくくりにして総称する「害虫」というカテゴリーは、日本においては近代の産物なのである。
 「害虫」というカテゴリーが確立した明治後期は、近代日本が農学研究体制を整備し、「応用昆虫学」という分野が成立した時期にあたる。本書では、日本における「応用昆虫学」の展開を追い、「日本人と害虫の関係」がどのように組みかえられていったのか見ていきたい。そこでは〈害虫〉という小さな生き物が、近代国家の形成(第二章)、植民地統治や近代都市の形成(第三章)、さらには戦争(第四章)といった、日本が直面した重大な局面と深い関係を持ってきたことが明らかにされるだろう。〈害虫〉の歴史は、小さな虫の些末な物語などではない。近代史の重要な一齣として、取り上げるに値するテーマなのである。(「プロローグ」より)

本書は2007年に京都大学大学院文学研究科に提出した博士論文「〈害虫〉の環境史――日本における応用昆虫学の成立と展開」を大幅に改稿したものです。出典や資料の所在などを確認されたい方は、博士論文の方を参照してください。構成はほぼ同じですが、序章(プロローグ)と結論(エピローグ)はほぼ完全に書き換え、2章、3章の一部を削除修整し、4章は大幅に修整しています。

正誤表

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ページ 情報提供者
44 一八〇六年、ドイツの医師アルレヒト・テーアは、ベルリン大学教授を辞して私立の農学校メークリン農業アカデミーを設立した。テーアがそれまでベルリン大学で教えていたのは、ドイツにおける行政の学問、「官房学」である。 一八〇六年、ドイツの医師アルレヒト・テーアは、ベルリン大学教授を辞して私立の農学校メークリン農業アカデミーを設立した。テーアはベルリン大学でも、ドイツにおける行政の学問、「官房学」を担当している。 田中浩朗さん
88 帝国大学教授の佐々木忠次郎 東京帝国大学教授の佐々木忠次郎 住田朋久さん
122 かつて来日した外国人が日本の虫の多さに不満をもらしたように、今度は日本によってアジアへと向けられるようになったのである。 かつて日本の虫の多さに不満をもらした外国人と同様のまなざしが、今度は日本によってアジアへと向けられるようになったのである。
144 帝国大学の佐々木忠次郎 東京帝国大学の佐々木忠次郎 住田朋久さん
153 日本の毒ガス研究は一九二一(大正一〇)年に新たに設立された陸軍科学研究所でおこなわれるようになる。 日本の毒ガス研究は一九二一(大正一〇)年に新たに設立された陸軍科学研究所でおこなわれるようになる。
[ 陸軍科学研究所の設立年は1919年で、1921年は毒ガス研究の開始年です。]
田中浩朗さん
153 陸軍技術本部第六研究所 陸軍技術本部第六技術研究所 田中浩朗さん
153 第六陸軍技術本部 第六陸軍技術研究所 田中浩朗さん

(c) Akihisa Setoguchi