(2006.10.5 新設 掲載)

VICTOR S-3000 MONITORを聴く

 このページでは、トピックニュース−9で取り上げたVICTORのS−3000 MONITORの試聴記を書きます。このスピーカーシステムはプロユースなので、発表当時は余りアマチュアに騒がれませんでしたが、改めて聴いてみると一部の評価より実力が高そうです。この評価は必ずしも私一人のものではなく、発売から20数年経過した今も探している人が少なくありません。
今回の試聴環境は何時ものラインナップですから、こまかい説明を省略して聴いた印象を中心に書くことにしましょう。

同軸型スピーカーの魅力


 S-3000はマルチウェイシステムですが、他のスピーカーと異なりユニットが1本です。同軸ニユットを用いた2ウェイですからクロスオーバー回路/ネットワークを内蔵しており、マルチアンプ駆動を可能にするため帯域ごとに独立した入力端子も備えています。今回は、時間が無いのでネットワークを介在させたフルレンジモードで試聴しましたが、いずれ、マルチアンプ駆動も試したいと思います。

 ピンポイントの定位感

 9月末にセットしてから1週間ほど鳴らし続け、漸く実験室の空気に慣れてきたS-3000は、3階の空調設備の働きでエンクロージャーが乾燥したのでしょうか、持ち込んだ当時より音が明るくなったように聴こえます。
テストですから何時もの試聴用ディスクを回して聴いて見ましたが、このスピーカーは何といっても音像定位の良さが特徴です。シンプルなマイク配置で録られたと思われるディスクを聴くと、二つのスピーカーの間に楽器や人の姿がクッキリと浮かびます。ご存知のとおり、「2chステレオ」は一種のマジック的な要素があり、空間に音像を描こうとするものです。ステレオ方式で虚像が恰も実像であるかのように聴こえるのは不思議な現象ですが、このスピーカーで聴く演奏は音源がピンポイントで定位し些かの滲みもありません。



グリルネットを装着

 S-3000が聴かせる音は、QUADのESL-63が作り出す後方への拡がりとは異なる表現で、音場の広さや深さを感じさせるというより、一つ一つの音源をクッキリと描き出す感じです。これがスタジオモニターに必要な条件なのでしょうか。カチッとして無駄の無い音は民生機のテクニクス SB-1000とも傾向が異なり、スピーカーに近づいても音源が分かれて聴こえることがありません。これは、同軸型だけの特徴でしょうか。
S-3000が聴かせる弦楽器の再生音は、アルティック 604−8Gのような金属的な癖を感じさせないので、やはり、「生真面目な日本人技術者が作ったスピーカー」という感じです。しかし、だからといって音楽表現が面白くないという訳ではなく、いくぶん淡白で折り目正しすぎる傾向はありますが、誇張感の無さと表現の正確さで他のマルチウェイを凌ぎ、少しも劣るところがありません。
トラックダウンの作業に使うモニタールームだけでなく、私たちが暮らす居住空間は必ずしも広くないので、発音源を一つに纏めた同軸型のスピーカーは大いにメリットがあります。もし、このページを読まれた方が程度の良いS-3000に出会ったら、即、お買いになることをお奨めします。

 続く


 (2007.3.22 掲載)

 S-3000試聴記−続編

 S-3000は、前述したようにスタジオモニター用として作られたようです。このタイプのスピーカーは、観賞用のシステムが得意な雰囲気の再現よりも音源の鮮明な表現が求められます。
私は、テストディスクを用いて他のシステムと比較してみましたが、この結果わかったのはS-3000monitorシステムの音像表現の良さ、確かさです。同軸型ですから当然かもしれませんが、このスピーカーは音源の姿が小さくシャープに纏まって聴こえるのです。これはBOSEの901SSなどの及ばないところです。クッキリ、ハッキリした表現はオーディオ的な快感であるだけでなく、正確な再生を求めるマニアの目標の一つです。他のスピーカーで聴いたあとS-3000に換えると、途端に明快な鳴り方になり音像の定位が良くなります。
しかし、オーケストラのディスク再生は別で、もう少し拡がりや奥行が欲しくなります。この点でBOSE 901やESL-63はS-3000を凌ぎ、サウンドステージの大きさを再現することに長けているようです。技術革新が進むオーディオ界といえども、今のところオーディオファイルの全ての要求を満たすスピーカーは作れないようですが、最新のハイ・テクノロジーを投入すれば、もっと優れたスピーカーが作れるのでしょうか。

 このシステムはマルチアンプ駆動を試そうと思いましたが、他の方に譲ることになりましたので、試聴記を閉じることにします。


トップページへ  目次へ  「実験・テストリポート」へ