NPO法人(特定非営利活動法人) STORY

依存症のためのヨーガ

1.はじめに

・ヨーガとは
 ヨーガの語源はサンスクリット語の「結ぶ」という意味の動詞である、『YUJ』を語源としていると言われます。後に馬車と馬をつなげておくくびき(軛・英語でyoke)がYOGAとして文献にのこっています。古代インダス文明には、ヨーガの坐法で座る神の像が出土していることから、その起源を5000年前にさかのぼる人もいます。いずれにしろインドでは古くからアーユルヴェーダ、すなわち『生命の科学』と、裏腹の関係にヨーガがおかれ、インド思想、医学の深まりとともにさまざまな修行法、健康法として発展してきました。現在では全世界に求道者、愛好者が広がり、痩身法やセラピーとしてのヨーガも広まっているのはご存知のとおりです。

・五感の主としての自分
 人間の身体は生きていくために『依存』が必要です。このことに鋭いまなざしを向けたのが、昔のインドの賢人たちでした。五頭立ての馬車を御者が走らせている図がよく人間の存在を説明するのに使われます。五頭の馬は五感、そして心が御者、五感と心を結び付けておくものがヨーガであるという理解です。五感はそれぞれに自分の欲を満たそうと必死です。ときに一頭の馬が空腹を感じ、満足を知らずにひとつのことに耽溺してしまうと、馬車そのものがさまよってしまう結果になります。だからこそヨーガで五感をしっかりと自分にひきつけておいて、人生の目標をしっかりと見据えることの大事さが力説されます。
依存症のためのヨーガ
・ヨーガの人間観
 また、人間の本性は霊性であり、その源はひとつであるというのもヨーガの根本的な哲学です。さまざまな制約がすべて脱ぎ捨てられたときには人間は霊性として満ちたりた存在であるという人間観です。その考え方に立つと、肉体が整い、心理上の抑圧的な条件付けをはずしてあげればそこには幸せと平和と満足が残るとされます。

・依存症対策の開発の試み
 依存症、特にアルコール依存症は、予後の悪い精神病です。多くの患者は自らをアルコール依存症と認めるまでに長い時間をかけて、それまでに築いた家族や財産、仕事上の信頼などほとんどを失って入院します。退院後はアルコールでダメージを受けた心身に孤独と生活苦を背負っての闘病生活を余儀なくされる場合がほとんどです。世間の依存症にたいする無知がさらに自立へのハードルとなり、生活保護をうけてこのすとおりぃのような中間施設に通う患者が多くいます。アルコール依存症に対しては、ダメージを受けた内臓に対する内科的処方と、抗酒剤を服用する精神科的処方が基本で、どちらも投薬が現在の一般的な療法です。さらに毎日のように行なわれている依存症患者同士の集い(断酒会、アルコールアノニマスなど)に参加し、お互いの絆を深め、全員で断酒を続けていくということで再びアルコールの深い霧の中に彷徨いこまないようにすることも大きな治療法になっています。 2000年、依存を起こした心理的、肉体的経緯を冷静に見つめて、その本質を理解し、より高次の自分によって肉体、そして心を自分の目指す方向へ動くように促すというヨーガの見地にたって、ヨーガが依存症患者の自立に有効に作用するのではないかという期待とともに、当時スタッフであった川崎あきこさんによるヨーガプログラムが始まりました。(現在は整体師であり、断食の研究家である秋田祥一さんと当欄の筆者である友永ヨーガ学院の友永乾史が講師としてヨーガプログラムを担当しています。)肉体が整い、呼吸が整い、心、つまりマインドが整えば自立への手がかりになるのではないかという仮説に立ってのスタートです。

依存症患者の自立にヨーガが役立つのではないかという仮説をたてた理由をいかに述べます。

・内蔵機能への貢献:アルコールやストレスなどでダメージを受けた臓器を、ゆっくりと動かし、ひっくり返し、ねじることで血行をよくし回復を早めます。
・体力アップ:度重なる入院や不規則な生活によって大きく落ちてしまった筋力を有酸素運動によって強く持続力のあるものにします。
・毛細血管の強化:身体の末端を良く動かすことで、アルコール依存症が引き起こしやすい糖尿病の合併症である、末端の血管の障害、神経の障害を防ぎます。
・心身のバランスアップ:さまざまな内臓疾患を抱える依存症患者は、重い倦怠感にさいなまれます。また依存症に陥っていく過程で家族と離れる場合が多く、独居の患者がほとんどです。孤独と体力と気力のダウンもあり、うつ症状が出やすくなります。深い呼吸で身体を動かすことにより脳内の快感物質やホルモンの分泌が正常化され、さらには自律神経のバランスが高まり症状の緩和につながるのではないかと考えます。内蔵機能と体力がアップするに伴い、心身のバランスが整っていくのではという期待です。
・食事の変化:希望者のみを対象に、ヨーガをしながら一日断食を行って、食生活がよりよいものに改善していけばさらに自立に効果があるのではないかと考えました。栄養が偏りがちで、内臓に負担のかかる普段の食生活から、旬の野菜中心の献立を好むようになれば内臓も休まり、患者の解毒力、排毒力が高まって回復に役立つのではないかという期待からです。

この仮説を実証するにあたり、より確かなヨーガを通じての依存症克服方法を確立できればと、日本財団の助成事業へ応募したところ、この公益性を評価くださり、2006年の4月より『依存症克服対策の開発』プログラムが始まりました。すとぉりぃに通所する患者(以下メンバー)を対象に、すとぉりぃのスタッフもヨーガを一緒に習いながら全面的にバックアップするという体制です。

概要は以下のとおりです。
はじめに日本財団の事業に選ばれる1年間のプログラムヨーガと禅の合宿断食の体験これからの課題講師のプロフィール