計算例

例A.1 I形断面の曲げ捩り剛性

本文3.3節ではI形断面の形状の特性を利用してΓを求めたがここでは一般式から計算する.まずΓ1を計算する.この断面では であるからusの項のみ考慮すればよい.図A.4のように座標を定める.

となるから

となる.次にΓ2を計算する

であるから

図A.4 I形断面


本文3.3節の解析結果(8.45)式はΓ1と一致しており,Γ2は考慮されていないことが解る.実験に用いたI形鋼のΓ21は約0.002でありΓ2を無視できることが確認できる.

 

例A.2 みぞ形断面梁の曲げ捩り剛性

せん断中心と曲げによるせん断応力
 
図A.5に示すみぞ形断面梁にせん断力を作用させて曲げる場合,せん断中心は図心の位置と一致せず図中のo点で示すように断面の背部に位置するという実験結果が20世紀初頭にBachにより示された.梁のせん断応力は曲げ応力との釣合いから定めるという単純梁理論ではせん断中心は図心と一致することになりこの実験結果と矛盾する.そこで薄肉断面ではせん断応力は曲げ軸に垂直としないで横断面でのせん断応力の方向は肉厚中心線に沿うものと仮定し,この点以外は従来通り曲げ応力との釣合いから定めることにより実験結果を説明できることが解った.
曲げ捩り剛性を求める前にせん断中心位置を定める必要がある.y軸は対称軸であるからせん断中心はy軸上にあることは明らかである.z方向にせん断力Qが作用すると仮定し,ウェブの肉厚中心線とせん断中心との距離eを求める.軸方向応力σの肉厚方向の変化を無視すると応力状態は図A.2で表され平衡方程式はA.9式で与えられる.ただしここでは軸方向応力 はせん断力による曲げ応力であるから

ここにIはz方向の断面二次モーメント


である.したがって


この積分定数cはs=s0という中心線の端末でせん断応力 の条件から定める.すなわち 

 

となるから

図A.5に示すように始点Aを定めると上部のフランジ(0<s<b)ではz=h/2であるから

ウエブ(b<s<b+h)ではz=-h/2+(s-b)

下部フランジ(b+h<s<2b+h)ではz=-h/2

となって図A.6に示す分布となる

定義によりせん断中心周りの捩りモーメントは0である.この断面ではせん断力Qはウエブのみで支えているから

である.よって


となる.

 

図A.5 みぞ形断面

 

 

図A.6 曲げ荷重によるせん断応力分布

 

 

曲げ捩り剛性
 上記の結果を用いてΓ1を計算すると

これよりusの平均値は



となる.上式を(A.5)式に代入すると肉厚中心線(n=0)のゆがみは



となる.このゆがみの分布は図A.7のようになる.曲げ捩り剛性Γ1は(A.14)式より

(A23.)式のeを代入すると次式が得られる.

I形断面と同様に本断面でもΓ2は無視できる.

 

 

図A.7 捩りによるゆがみの分布

例A.3 Γ1=0となる断面

図A.8に示すように開断面を構成する全ての板要素の肉厚中心線が一点で交差する断面ではせん断中心は交点に位置するため,rsは全て0となる.したがってusもΓ1も0となり肉厚中心線はゆがまない.この場合でもrnは0ではないのでΓ2は0とはならず肉厚方向のゆがみは起こる.例えば(a)図の山形(アングル)ではΓ2=(at)3/18となる.

 

図A.8 Γ1=0となる断面の例