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変わりゆく言葉〜追記

言葉の持つ、本来の意味を考える時、その漢字の意味から推測できるものは多く、改めて観察してみると面白い。例えば「絶対」という言葉。字をそのまま理解するなら、「対になるものが絶えている」ということで、数学で使う「絶対値」や、科学用語の「絶対温度」「絶対零度」などは、まさにこの意味がぴったり当てはまる。他にも「絶対王政」「神は絶対的な存在」など、相対するものがない様子を示す使い方をする。一方で、「絶対来てね」というように、「必ず」の意味で使われる場合もあり、この場合は本来の漢字の意味から変化したところで使われるようになり、それが定着したものだろう。

昨日、別のページで「全然」という言葉を中心に、日本語が変化していくことについて書いたけれど、実は書きながらずっと疑問に思っていたことがある。それは、「全然」というのは、否定の言葉を伴って使用するのが正しいとされているにもかかわらず、その字面だけを見れば「全く・然り」で、必ず否定でなければならない、という要素がないことだ。

それを調べたいから、ということでもなかったが、今日、前々から欲しいと思っていた岩波書店の広辞苑を購入した。1998年に発行された第5版である。この種の辞典は他にも三省堂の「大辞林」、小学館の「大辞泉」などがあるが、「広辞苑」の特徴は、ひとつの言葉で様々な用法がある場合には語源に近いものから順に記してある、ということだ。他の辞典では、現代の使用法を優先的に配置してあるらしい。本当なら両方買って、同じ言葉がどのように書かれているかを比較してみるのも面白いのかもしれないが、それなりに値段が張るからそうそう気軽に買えるものではない。

早速、気になる事項を調べてみた。すると、なんと「全然」の項で最初に記されている意味は、「全くその通りであるさま。すべてにわたるさま」ときている。トップにこのような意味が書かれていることに対し意外な気もしたが、一方ではやっぱりそうかとも思った。一般的に熟語の意味を考える時、基本の意味はやはり漢字本来の意味からくるものと考えていいのだろう。否定的な言葉や打ち消しの言葉を伴う用法は副詞の2番目に記されていた。でも、いつから否定的な表現に限って使われるようになったのだろう・・・・? そして最後の3番目に、「俗な用法で肯定的にも使う」として、「全然同感です」という用例があった。さすがにこれは「俗な使い方」とするにとどまっているようだ。

ところで昨日のページの中で、「全然おいしい」というのには、本来なら「断然」を使うべき、と書いた。しかし「断然」も改めて字面を見れば比較をあらわす要素がないことに気付く。これまた「広辞苑」で調べてみると、やはり最初に記されているのは「きっぱりとしたさま。おしきって行うさま。」というように、まさに漢字からイメージするそのままである。さらに2番目の意味として、下に否定の言葉を伴い、断然〜ない、という使い方があるように書かれている。それにしても、「断じて〜ない」とは言うけれど「断然〜ない」という使い方は今ではあまり見かけない。一体いつ頃から使われなくなったのだろうか・・・・。そして最後に書かれているのがやっと、「他とかけ離れてちがうさま」といった、現在なじみのある意味になる。

広辞苑でも、言葉の歴史についてそれ以上に詳しく語ってくれるわけではないが、それを元に、いろいろと想像を巡らすことができる。言葉が変化してきた道筋というものは本当に面白いものだと思う。

2000.2.5記


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