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世界四大文明展〜エジプトとインダス
先週の土曜日、東京の上野公園内にある国立博物館で行われている「エジプト文明展」と東京都美術館で行われている「インダス文明展」を観に行った。3連休でもあり、人が多いだろうな〜、ということをそれなりに覚悟して出かけた。前の週エジプト展に行った友人の話では、開門の30分前にはすでに100人くらい並んでいたという。しかも、チケットを持っている人の列とこれから買う人の列があるから、少なくとも前売り券は持っていったほうがいい、とアドバイスされた。チケットぴあでも取り扱っているとのことだったので、東京に向かう前にファミリーマートのオンラインチケットで購入しておいた。
さて、まずはエジプト展。開門40分前の8時50分頃、国立博物館の門の前に到着した。チケットを持っている人の列にはすでに10人くらいが並んでいたが、予想よりは少なかったのでほっとした。しかし時計が9時を回る頃にふと後ろを振り返ると、あっという間に100人くらいに・・・・そして9時30分の開門時にはおそろしい人数が列を作っていた。早く来て本当に良かった。門の前で待つ時間は長かったけれど、先頭集団に入れたおかげでゆっくり見物することができた。
四大文明展の中で一番人気のエジプト展。ピラミッドやスフィンクスで有名なこともあるし、他の文明と比べて名前のよく知られた歴史上の人物がエジプトには多いからだろう。私もそうだけど、名前を知っているファラオの像なり関連した展示があると、なんとなく嬉しい。メジャーな文明だけに、どうしても興味の持ち方がミーハーに走ってしまいそうになる(笑)。
展示物は、おおむね時代を追って順に並べられていた。古王国時代から中王国時代に関する展示物がわりあいに多かった。3月に福岡で観た「大英博物館古代エジプト展」でもそうだったけれど、古王国時代から既にすばらしい石像やレリーフ造りの技術があったということにはとても感心した。しかしなぜか中王国時代のレリーフは絵が雑になっているように思えた。展示物がたまたまそうだったのか、戦乱で国力が低下していた頃だという先入観をもって観たからか・・・。
埋葬関連では、カノポス壺や壺を納める容器、そして人型の石棺などの展示がいくつかあったが、福岡で観た大英博物館展のようなミイラのオンパレードはなかった。
今回のエジプト展の見どころのひとつは、第21王朝のファラオ、プスセンネス1世の黄金のマスクだろう。有名なツタンカーメンのマスクほどの派手さはないけれど、3000年の時を経てなおそのままの美しさで光り輝く金色のマスクにはしばらく見とれてしまった。また、マスクと同じ部屋に展示されていた、同じくプスセンネス1世の黄金のサンダルや黄金の鉢もとてもきれい・・・。本当に金って安定な物質なのだなぁ・・・と、当たり前なのだけどあらためて実感した。
ミーハーな視点からみて最も目を引いたのは、第18王朝のファラオで宗教改革を行ったことで知られているアクエンアテンの巨大な頭像と、ネフェルティティの未完成の頭像。いずれも、本で何度も見たことのあるのと同じ表情なのでなんだか嬉しくなった。ネフェルティティは最近では少女マンガ「天は赤い河のほとり」で敵役になっているので意外とメジャーな存在かもしれない。アクエンアテンの像は、遠くから見ただけですぐそれとわかる独特な表情。ファラオの像やマスクというのはだいたい本人をモデルしてあっても、私にとっては正直言ってその多くが似たような顔に見えてしまう。そんな中で、アクエンアテンの像は実に特徴がある。線が細く、神経質そうな暗い顔立ち・・・今回の巨大な頭像も、じっと見ているとこっちまで気持ちが暗くなりそうな気がした。
エジプト展を出る頃には、入場するための列はさらに長くなっていた。上野公園内の人の流れをみるとほとんどの人が上野駅方面から国立博物館方面へ向かっている。午後にはさらに人が増えてすごいことになるのだろう。これから入館する人々の列を横目で見ながら国立博物館を後にし、インダス文明展が開催されている東京都美術館に向かった。
インダス文明展も午前中のうちに入場できたおかげで、まだそれほど混んではいなかった。インダス文明のほうは、エジプトと違って有名な歴史上の人物はほとんどいない。でもその分、展示物そのものをゆっくり愉しむことができた。というより、個人的な感想としては、展示物そのものに関して言えばエジプト展よりもインダス展のほうが興味深いものが多かった。
インダス文明展の展示物には、こまごました小物類が非常に多かった。中でも埋葬用に使用されたおびただしい数の土偶はNHKの番組でも紹介されていたが、TVから想像していたよりもずっとずっと小さく、細工が細かかった。さまざまな人の形をした土偶たちは表情豊かで愛敬があり、見ていてちっとも飽きない。時代がやや新しくなってくると、日本で出土している土偶に似たタイプがいくつか見られるのも何やら興味深い。
子供の遊び道具になったであろういくつかのおもちゃ類も出土している。渦巻き状の溝にボールを転がして遊ぶようなおもちゃやチェスのようなゲーム盤も珍しかったが、特に目を引いたのはサイコロだ。これもNHKスペシャルで紹介されていた。サイコロのルーツについてはこれまであまり考えたことがなかったけれど、古代インダス文明ですでにサイコロが存在していた(推定年代はBC2600〜1800年)ということには正直、驚いてしまった。中には現在のサイコロと違って背中合わせになっている面同士で数字を足しても7にならないものもある。その場合、1と2、3と4、5と6が背中合わせになっていた。おもちゃ以外でも、石を切り出して作った正四面体や立方体の分銅など、こまごました品物が多く展示されていて、観て回るのがとても楽しかった。
焼き物に関わっている身としては、数多くの土器類にも思わず目が行ってしまう。でも土器に関して言えば、驚くほど優れた技術で作られたもの・・・というのは見当たらなかった。それより目が釘付けになったのは、石英粉を固めて作られた、小さな水色のファイアンス3点だった。説明文にはただ単に「銅を顔料として混ぜた石英粉を固めて」としか書かれていない。でも可塑性のない石英粉をどうやって? 常滑市の「世界のタイル博物館」にあるエジプトのジュセル王時代(BC2600年代)のタイルが同じように石英質であり、これは有機質のバインダー・・・おそらく膠のようなもの・・・で固めてあったらしい。成形に可塑性粘土を使えばどうしても色が悪くなってしまうのだ。粘土を使わない、まるでファインセラミックスのような成形方法が古代に用いられていたというのは感心するほかない。おそらく今回の展示物もこれと同じように膠などが使われているのだろう。推定年代はBC2600〜1800年とされており、これはジュセル王の時代と比較的近い。尤も、釉薬を使っているか使っていないかの違いはあるけれども、近い時代に別々の場所で同じような技術が使われていたというのも面白いなと思った。
7月にNHKで放映された世界四大文明を観ていて思わず興奮したのは、インダス文明とメソポタミアの間に、現在のバーレーン辺りを介して、海のルートでの交易があったらしいということだ。メソポタミアのシュメール文明の遺跡のひとつウルではインダスの特産品である紅玉髄のアクセサリーが見つかっている。また、メソポタミアやペルシャ湾岸地域から、インダス文字を刻んだ印章が出土している。私たちが中学校や高校の歴史で学んだ世界の四大文明というのは、それぞれが別々のものだという印象が強かった。しかし、さまざまな新しい発見や最新の研究によって、それらの間に交流があったことが少しずつ見えてきているようだ。今後の新しい研究にぜひ期待したい。
さすがに2つの会場をはしごするのは少々疲れてしまった。インダス文明展が行われている会場のロビーで、各会場の様子を映したモニターを眺めながらしばらく休憩した。残りの二つの文明展・・・メソポタミアと中国・・・・。全国巡回展の時にでも、ぜひ観に行きたいと思う。
2000.9.23記
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