夢を捨てたらいか-我楽房-

 


 

九州・佐賀にある唐津焼の窯元の中でも、ユニークなのが藤田幹敏さん(57歳)。頂いた名刺の表には、「陶器を焼き、パンを焼き、人の世話を焼く・・・」と記し、まさに我流で何でもこなし、好奇心いっぱいに生き抜く達人に出会った。

 藤田さんは、唐津市厳木町岩屋の出身で、団塊の世代と呼ばれる中で「盆地育ちではいかん、世界を知らんと・・・」と自分に言い聞かせ、1972年に日本から脱出。海外の旅で出会った人や文化の違いに身震いしながら、山岳部で鍛えた丈夫な体を使って、何度も旅を重ね、人間を取り巻く自然界の力の強さを知る。

 「人間の力で自然に向かっても負ける」では自然とともに生き、自然体で生きることはどうすれば良いか・・・と試行錯誤しているうちに、 故郷である唐津に戻ってきた。子どもの頃から「レジスタンス坊や」と負けず嫌いだっただけに、人の力を借りることなく、水と土地を求めて山に入り、自分の原点も探した。そして2001年、自らが面を引き完成させたのが『我楽房(GARAKUBO)』。 ここでは、30歳の頃から始めた陶芸と石窯天然酵母パンを作りを一生の業として、元気いっぱい毎日を過している。全て独学というだけあって、作品のオリジナリティーと力強さと優しさがパン作りにまで生きていることは感動深い。最近は、3人の息子のうち2人が手伝ってくれ、更に仕事が活性化しているように見えた。「人生にはゴールはない」「一生勉強しないと一歩も前には進まない」と自分を戒めて生きてゆく姿は、ただの負けん気だけでは続けられないことだ。

 藤田さんのDNAの中には、ボヘミアン的唐津人の血が流れ、旅の中から自分を知り、磨き、人に出会うことで自らの人生を完成させ てゆく姿には頭が下がる。



佐賀県 唐津市