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(12/20)プロジェクト荒木町

フロントページにあるとおり、97%が完了である。本日100%になる見込み。正確に言うと、予定にはなかったリライトやおまけがあるので、107%ぐらいにならないとおかしい。107%になったら、ゲラチェックに入る。それが終わったらようやく「もういっちょ」に専念できる。ここまで長かった。なぜ長かったかというと、私が長くしてしまったのである。荒木町のみなさん、すみませぬ。というわけでもう少しがんばります。

 そういうわけで、このところ滞りがちだった更新も、明日からは定期で実施していけるはずである。いろいろ書かなければならないことは溜まっているので、改めて。新しい仕事の予定やらなにやらと、年末お祭り行事に関するもろもろなどいろいろあります。



(12/24)週刊文春のこと

 吉野仁さんが「週刊文春」ミステリーベスト10今年度の投票者の構成についてコメントしておられたので、日本ものの結果を元に調べてみた。手計算なので、数え間違いは許してね。以下、多い順に。

作家:50名。
書店員(取次含む);41名。
書評・評論家(ライターやファンジン系含む):33名。
日本推理作家協会員:16名。
翻訳家:12名。
その他:10名

 書店員の方は確かに多いですね。属性と投票結果の相関関係を分析している余裕はないので、それはまた別の機会に。

 昨年から週刊文春は全コメントをウェブで掲載してくれるようになったので、助かっている(どうして今年は20位まで発表してないんだろう)。週刊誌上の短いコメントでは、判断のよすがが無いからだ。この場合の判断というのは作品の質に対する判断というのもあるが、その本へ投票した人の判断という意味もある。つまり話題作だから投票する、読んでないけどみんなが入れそうだから投票する、といった書評家の観点からすると劣悪な投票者をはじき落とすよすがになるからである。今回の投票でいちばん笑ったというか感心したのが中島博行さん。なんと大倉崇裕さん『無法地帯幻の?を捜せ!』の一点買いだ。コメントも笑った。そりゃ私も『無法地帯』は好きだが(本年度の推理作家協会賞一次選考でも推した)、一点買いしますか、『検察捜査』の中島さんが。意外で、素敵。物書きとして芸を見せるというのはこういうことを言うのです。以降私は中島さんの薦める本については無条件で信用すると決めた。

 で、コメントがあって助かったというのは、今年の日本編第9位『修善寺・紅葉の誘拐ライン』に関する判断ができなかったからだ。これまで発表された全ランキングで、恥ずかしながら、これだけ未読だった。商売で本を読んでいる以上、未読というのはたいへん恥ずかしい。さっそく本を買いました。しかし念のため、この本がどういう人にどう受けているのか、調べてみようと思ったのである。以下、この本に投票した方のリスト。カッコ内はたぶん自己申告の肩書きだ。

浅田隆さん(イラストレーター):4位に投票。コメントはなし。ちなみに1位は『カタコンベ』。

伊多波碧さん(日本推理作家協会員):4位に投票。どうでもいいが、「伊豆に旅行したくなる」というコメントはランキング投票のものとしてはだめですよ。ちなみに1位は『チルドレン』。3 大野優凛子は『しまなみ海道 沈黙の殺人』 でした。

大野優凛子さん(日本推理作家協会員):5位に投票。コメントはなし。ちなみに1位は『犯人に告ぐ』。

小田洋子さん(作家):1位に投票。コメントはなしで、2位は同じ作者の『寝台特急出雲・大井川の殺人交差』。ふうん、2冊も推したくなりましたか、そうですか。3位以下の投票はなし。そうですか。

唐沢類人さん(戦記作家):1位に投票。2位は同じ作者の『寝台特急出雲・大井川の殺人交差』。ふむ。この人も3位に大野優凛子『しまなみ海道 沈黙の殺人』を投票している。しかし、「女性の少ない推理業界でがんばっているので」というコメントはFC的観点では×(BY斎藤美奈子)。だったら大倉崇裕さんだって「特撮フィギュアマニアの少ない推理業界でがんばっている」のに。

北野左近さん(日本推理作家協会員):2位に投票。あれ、1位が大野優凛子『しまなみ海道 沈黙の殺人』だ。ふうん。

砧 大蔵さん(日本推理作家協会員): 1位に投票。若桜木虔『修善寺・紅葉の誘拐ライン』。2位は……大野優凛子『しまなみ海道 沈黙の殺人』か。この人も「女性とは思えない骨太なプロット」と書いていてFC的に駄目です。

嵯峨野晶さん(作家): 5位に投票。おやおや、この人も1位は、大野優凛子『しまなみ海道 沈黙の殺人』 だ。

夏野百合さん(作家):1位に投票。2位がまたしても大野優凛子『しまなみ海道 沈黙の殺人』だ。この2冊はセットで読まないといけないというルールでもあるんですか?

葉南あきこさん(作家):1位に投票。誘拐ものは嫌いだけどこの作家は好きなので手に取った、のだそうだ。なるほど。おや、またしても『しまなみ海道沈黙の殺人』(もう作者名は略)。この作品も読まないといけないのかしら。

藤宮弥生さん(日本推理作家協会員):1位に投票。2位も同じ作者の『寝台特急 出雲・大井川の殺人交差』だ。コメントはない。

山中將司さん(日本推理作家教会員):1位に投票。この人も2位は『寝台特急 出雲・大井川の殺人交差』。お、3位が『しまなみ街道 沈黙の殺人』だ。

若桜木虔さん(作家):お、ご本人。2位に投票されている。「我田引水は申し訳ないが、誘拐ものは創作する側としてはパターンで書けないので、極めて苦労する。そういう点では成功したという自負がある。トリック好きには受けるはず」とのこと。自作投票は覚悟のほどを表すものでしょうから、全部引用しちゃいました。そういえば去年自作投票についてコメントしたな。あとで再掲します。なんと『しまなみ海道 沈黙の殺人』が1位だ。しかし「トリックは機械的なもので前例もあり、大したことはないが、人間ドラマで読ませる」というコメントは作者がちょっと可哀想なのでは。前例があるトリックを使うのは工夫次第で別にかまわないが、大したことがないと太鼓判を押されてもねえ。

若菜等+Kさん(イラストレーター):1位に投票。言い飽きたけど、2位は『しまなみ海道沈黙の殺人』です。ちょっとコメントが笑った。「観光ものは、読みやすく、演劇のことも おもしろい」なぜか七五調なのだ。

 コメントから判断すると『修善寺・紅葉の誘拐ライン』とは、「誘拐もの」で「トリックが満載」、「テンポに酔って」しまうほどで「登場する旅館も実在のもの」だということである。あ、最後のはどうでもいいや。あとわかったのは、投票者が「日本推理作家協会員」に偏っているということ。その肩書きで投票している人が16名いる中で、6名なんだもん。昔流行ったフレーズで言うと「日本推理作家協会員にはたまらないミステリー」ということになろうか。ひさしぶりに使ったなあこの表現。私一応日本推理作家協会賞長篇部門の予備選考委員なんで、読まないといけないですね。うん、読むよ(力強く)。

 それと、『しまなみ海道 沈黙の殺人』も読まないとね。どうして『修善寺・紅葉の殺人ライン』を読むとこの本も読みたくなるのか。そして1、2位に並べて投票したくなるのか、調査が必要だ。なにしろほら、予備選考委員だしさ。しかしこの小説、「かなり泣かせてもらった」(砧)、「全編、幻想的でありながら男臭いドラマに泣かされた」(嵯峨野)「思わず共感の涙がこみあげました」(夏野)、「感動させられる作品だった」(葉南)、「作者は人間の泣きのつぼを押さえている」(山中)と、みんな泣きまくりなのである(高嶋哲夫さんのコメントだけ別。でも「著者が送ってくれました」というコメントは、高嶋さん正直すぎ)。いやだなあ、泣かせのドラマって好きじゃないんですよ。でも、書評家として公平な目で読みますね。うん、読むよ(フォルテッシモで)。

 そんなわけで年末の課題図書が増えたが、まだ仕事納めになってないので、もう少し原稿書きます。懸案の「プロジェクト荒木町」は脱稿。その全貌はいずれ明らかになることでしょう。いや、明らかにさせてくださいよう。

では仕事に戻ります。またね。

(付録 2003/12/26の日記抜粋)

 今年から週刊文春のミステリーランキングは全回答者のコメントがウェブ上で公表されることになった。というわけで投票者の責任は高まったのである。たとえば作家が他人の作品ではなく自作に投票するケースがある。自己顕示欲は作家の性である。まあ、しょうがないだろう。本来は集計を伴うランキングの場以外でやってもらいたいが、自己責任でやっていただくしかない。……というわけで、以下は自作に投票した作家一覧である(五十音順。カッコ内は順位)。

・朝松健→『一休破軍行』(1)、『忍 真田幻妖伝』(2)
・大野優凛子→『城崎・松山 剣魂の殺人』(5)
・高嶋哲夫→『アフガンの風』(1)、『メルトダウン』(2)
・辻村真琴→奈波はるか名義 『少年舞妓・千代菊がゆく! 濡れ衣で祇園追放!?』(1)

 朝松さんは、傑作『黒衣伝説』の作者として、別に自賛しなくても熱狂的なファンがたくさんいると思うのですがね。ちなみに、大野、辻村両氏作品に対する投票者も偏りがあっておもしろいので記しておこう。

大野前掲書:大野優凛子(5)、嵯峨野晶(3)
大野『消えた甲子園』(国内版17位):浅田隆(3)、伊多波碧(4)、高嶋哲夫(5)、辻村真琴(2)、夏野百合(3)、鳴海風(1)、藤宮弥生(2)、米田淳一(3)、若桜木虔(1)、若菜等+Ki(1)
辻村前掲書:大野優凛子(4)、小田洋子(3)、辻村真琴(1)、藤宮弥生(1)、米田淳一(1)

 太字は重複した投票者である。ちなみに辻村氏はこの二作品にしか投票していない。(後略)



あれれ、なんとなく既視感のある顔ぶれだ。



(12/25)プロジェクト荒木町とは

 種明かしをしてしまえば、今大田出版webで連載している「3年B組タケウチ先生」を、単行本にするのです。いずれ明らかになることでしょう、なんて昨日の日記を見て、あまりにもったいぶっていて恥ずかしくなりました。さらっと書いてしまおっと。「3年B組タケウチ先生」というタイトルは、ウェブ連載を始めるにあたり、「なんかいいタイトルないですかねえ」「いいんじゃないですか、3年B組タケウチ先生。そのままで」という編集者と私の熱のこもった議論から2秒で生まれたものです。さすがにちょっとこのタイトルではなあ……。たぶんウェブ連載を読まれている方は少ないと思うので書いてしまいますが、『バトル・ロワイアル2』であっけなく死んでしまった鹿之砦中学校の生徒たちを、一人一人採り上げて、BRゲーム以前の彼らがどんな暮らしをしていたのかを、紹介する内容です。42人+おまけ、ということで43個のショートストーリーというか、スケッチが並んだ内容になっております。書いているうちに、中学時代の自分のボンクラな思い出が甦ってきてしまい、とても苦労しました。中学生ってたいへんですねえ。発売は、よくわからないけど1月末くらいなのかな。正式タイトルが決まったらご報告します。これが終わって、ようやく「プロジェクト荒木町もういっちょ!」の出番だ。

 今日から二泊三日で山梨県某所の山荘に籠もってきます。逆密室恒例の年末山籠もり。お供に持っていく本は、もちろんあの2冊(昨日の日記参照)。

 ……でもそれだけじゃ淋しいから霞流一さんの新刊『羊の秘』のゲラ、持っていこうっと。今度は羊らしいっすよ。来年の干支? それは酉か。