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(2/9)息子の質問
ここ数日、家に籠もって仕事ばかりしている。真面目にやってますねって。うん、それもあるんだけど、子供がインフルエンザになって、保育園に行かせられなくなってしまったので、家にいなければならないのだ。インフルエンザという診断を受けたのは5日の日曜日。最初は普通の風邪かと思ったのだけど、近所の大学病院で救急外来に行ったらB型のインフルエンザだと診断された。あらら。火曜日に保育園のお遊戯会があったのだけど、その瞬間に欠席が確定した。仕方がないのでスケジュールを組みなおし、今日に至る。その間のよしなしごとをいくつか。
(K村クリニックの馬鹿)
わざわざ大学病院の救急外来に行ったのには訳があって、近所に日曜日もやっている内科病院があったのだが、診断を断わられたのだった。電話をしたら看護士の人が応答に出て、大学病院に行けと言われた。今日は、診察はしていないのか、と聞くと、しているという。しかしうちは小児科はやってないので(人工透析とかやっている病院だったような記憶が)子供は診ないという。急に熱を出して困っているんだ、かわいそうだと思わないのか。やってないものはやってない。薬ぐらいは出せるだろう。今日は薬剤師がいない。処方箋を書いてくれたら町の薬局に行くから。子供の場合大人と分量が違うので処方箋が違う、とにかくうちでは診ません。こういうやりとりがあって、電話を切られた。
そういうものなのだろうか。そんなに小児科って特別?
熱を出して弱っている子供がいてもすげなく断わるほど特別?
まあ、そのとき変に薬を貰わないで大学病院で診断してもらったからインフルエンザの早期治療ができたのだけど、K村クリニックの応対態度は不親切であり不誠実だと感じた。こうして書いていても納得がいかない。いやな感じ。二度と電話しないや。同じM区のみなさんもお気をつけください。
(息子の質問)
息子は楽しみにしていたお遊戯会を休まなければならなかったのが残念だったようだが、それ以外は淡々として家で過ごしている。インフルエンザと診断された夜の会話。
「あのさあ、死んじゃったおじいちゃん(私の父だ)ってさあ」
「うん」
「死んじゃったおじいちゃんって、インフルエンザで死んじゃったの」
「インフルエンザじゃなくて、おじいちゃんは癌だったんだよ」
「癌って僕知ってるみたい。インフルエンザって死んじゃうの」
「インフルエンザは死んじゃうこともある怖い病気だけど。ちゃんと薬を飲んでいればすぐ治るから。ちゃんと治そう」
「あのさあ」
「はい」
「地球って丸いじゃん」
「丸いね」
「こうやって上になっているときはいいけど、下になったときは落っこっちゃうんじゃないのかなあ」
「地球は丸いけど上にいても下にいても真ん中のほうに引っ張る力が働いているから大丈夫。どうしてそんなことを考えたの」
「落っこちたら、死んじゃうのかな、と思って」
「あのね」
「うん」
「早く寝なさい。君は別に死なないから」
「はあい」
インフルエンザ罹患は、息子なりにメメント・モリな出来事であったらしい。
(スケジュールの調整)
月曜日は本来羽田空港の機体整備工場に取材に行く予定だったのだが、土壇場キャンセルとなってしまった。あまりない機会だったのにもったいない。その日の午後、「ダ・ヴィンチ」の取材で角川書店に行く予定があり、これは先方にお約束をいただいている仕事なので外せない。妻に頼んで家にいてもらい、飯田橋まで出かけた。仕事というのは次号のでやる「京極夏彦映像化特集」のためのもの。先日はWOWOWのドラマ『巷説百物語〜狐者異』のため松竹京都映画撮影所にお邪魔して堤幸彦監督にインタビューしたが、今回は角川映画『妖怪大戦争』のための取材。角川書店のロビーには撮影を済ませた妖怪たちの着ぐるみが鎮座ましましていた。
【百目。『悪魔くん』のときと顔が違う】
【土ころび。これだけではわからないがトトロのようにでかい】
公開はたしか8月だったと思うのだけど、8月までこの子たちはずっといるのかしら。毎日妖怪を見ながら仕事をしている角川の社員が羨ましい。ちなみに木曜日は映画『姑獲鳥の夏』の試写に行って、プロデューサーの方にお話をうかがう予定である。
火曜日は本来お遊戯会で、夜は家族で観劇のつもりだったのだ。チケットが無駄になるといけないので妻と義父母に行ってもらう。急なお願いだったのに義父母が都合をつけてくれたので大層助かった。しかも頂き物までしてしまった。『バトル・ロワイアル2外伝 3-B 42Students』の出版祝いと、干し芋と「ブラック・ジャック」を録画したDVD。なんか不思議な取り合わせだ。義父母は息子に「ブラック・ジャック」を盛んに見せたがっているようだ。もしかすると医学の道に進んでほしいのだろうか。でもそうなってもK村クリニックみたいにはならないでね、息子よ(まだ根に持っている)。
(お仕事がばたばたと)
延ばしに延ばしていた解説原稿をやっと入れる。レックス・スタウト『編集者を殺せ』である。森英俊さんが『ミステリ作家事典本格派篇』で「ビブリオ・ミステリとしても出色の出来」と紹介しておられたMurder by the Bookである。森さんでMurderと書きだすと、どうしてもby
the Mailと続けたくなるな。これは今月の22日に刊行予定。
早川書房では今年中にThe Black Mountainも出すつもりのようだ。こっちは実は邦訳があって『ザ・ブラック・マウンテン』のタイトルで、98年にしゅえっとから発売されている。ただしこれは自費出版だったのである。しゅえっとというのも、翻訳者の西貝マリさんがご自分で興した会社らしい。おお、素晴らしい情熱だ。私はしゅえっと版で読んでいるので、もしスタウトの邦訳を出すのなら別の作品をお願いしたいところなのだが、まあ仕方がないか。The Black Mountainはネロ・ウルフがモンテネグロに行く異色の話なので、シリーズ初心者にはちと辛いかもしれないのだ。解説ではその辺のことについて触れて、ウルフのライバル、アーノルド・ゼックが登場する三部作の邦訳を願いたいと書いたのだが、ここで凡ミスをやってしまった。ゼックものの第一弾、And Be a Villainは、『Xと呼ばれる男』の邦題で雑誌「EQ」に訳載されてましたね。うっかり見落としていた。ウルフファンのみなさん、ごめんなさい。でも『編集者を殺せ』は買ってね。
今月の「問題小説」で採り上げたのは恩田陸『ユージニア』と辺見庸『自動起床装置』。本当は恩田陸ではなく別の作品を採り上げる予定だったのだが、読み始めたらやめられず差し替えになった次第。複数の語り手によるポリフォニーという構成はこれまでの恩田作品でもおなじみのものだが、きちんと落としどころがありながら人を不安にさせる結末に味がある。祖父江慎の装丁もよく、これは文庫ではなく単行本で手元に置いておきたくなる本だ。「記憶の殺人」ものなので、文中にいくつかアガサ・クリスティーを意識したと思しきくだりがある。「でも、あれくらいの時間が経つと、話すほうも事件と少し距離があって、たぶん何度も話してきたせいか、その人の中である程度消化されているんですね」(p58)という独白は、多分『五匹の子豚』あたりに対応する文章が見つけられるのではないか。と言いつつ自分では探してないのだけど。
そのほか、いろいろと仕事をした雑誌が送られてきている。「2005年の仕事リスト」を更新しておきます。今日明日でいろいろ片付けないといけない仕事もあり、まだ気が抜けない状態が続く。ちなみに今日のタイトルはスタンリイ・エリンの短篇から。ちょうど今、『最後の一壜』を読んでいたもので。それにしてもこの本、どうして1篇しか訳してない仁賀克雄さんの名前がメインになっているわけ? 本来なら永井淳・他訳というのが正しいのでは。今日早川書房の人に会ったら聞いてみよっと。
(2/14)押井守監督に会いに行きます
緊張するなあ。本日は「SFJAPAN」の企画で押井さんと沖方丁さんの対談司会である。SF大賞の新旧受賞者対談というわけだ。しまったなあ、先日『ライトノベルめった斬り』の企画イベントに沖方さんがゲストで来られていたのだが(入院中のため点滴の管をつけたままだったとか)、あれに行っておけばよかった。ここでも何回か書いているが、押井さんの作品は大好きで何度も繰り返し観ている。お会いできるだけでも非常に光栄である。しかし緊張するなあ。
前回の日記から間が空いてしまったのだけど、そんなわけでいろいろ書いている余裕がないのでまた改めて。本日からは仕事に専念する日々が始まって日記に書くような出来事もないだろうから、ぼちぼちと紹介していきます(たぶん)。
(2/17)明日は日帰り大旅行
2/14の押井さんと冲方丁さんの対談は、押井さんの熱弁に全員が圧倒される結果に終わりました。冲方さんご自身が押井さんの大ファンなので、まあそういう結果になるわなあ。その模様については次号の「SF JAPAN」にて。
先週からの出来事をここに記そうと思いつつ、昨日妻の祖母が亡くなったとの知らせがあってあたふたしており、余裕がなくなってしまった。明日は日帰りで能登半島まで行ってくるのである。能登は交通の便が悪いんだよなあ。妻の祖母はUFOで有名な羽咋市で一人暮らしをしていたのである。私はそのお宅に、妻と同行せず1人で押しかけたことがある。能登半島を徒歩旅行していたときだ。お昼をご馳走になって、2人でテレビを観た。画面にはなぜか友人の珍々亭無人という人が出てきて、狸の着ぐるみを着て梁からぶら下がり、放水車の水流に耐えるというゲームをやっていた。なにやってんだか。そんなわけで(どんなわけだか)私もお世話になった方なので妻とお焼香に行ってくるのだ。ちなみに子供は生涯初の祖父母の家での一人お泊り。親の心配をよそに本人は嬉しそうだ。
先週の出来事で1つだけ。京極夏彦原作の映画「姑獲鳥の夏」の試写を観てきました。「ダ・ヴィンチ」の「京極夏彦映像化特集」の取材の一環である。こういうのを役得とも言うな。ファンの関心は、原作に忠実な脚本化ができているか、イメージを壊さないキャスティングになっているか、ということに尽きると思う。とりあえず後者については、阿部寛の榎木津礼二郎は最高、とだけ言っておきたい。榎木津が久遠寺梗子の前に姿を現す場面から目は釘付けだ。だって榎木津は「つかつか」歩くのだ。みなさん、現実に「つかつか」歩いている人を見たことはありますか? 阿部寛の演じる榎木津は本当に「つかつか」歩く。乱闘場面でも「つかつか」歩くのだ。素晴らしい。脚本については、あの長大な原作をよく要約したという印象。映像化不可能とまで言われたメイントリックについても、無理のない形で処理されていた。少なくともファンの期待は裏切らないと思う。実相寺監督のお家芸である実相寺カットが多用されていたのもご愛嬌。中禅寺秋彦も関口巽も久遠寺梗子もみんな斜めになって映っています。ラストの中禅寺と関口の会話場面など、メトロン星人とモロボシダンの会話みたいだ。
ルポルタージュ作家の早坂隆さんから相互リンクのお申し出をいただいた。早坂さんは、2001年から2年間ルーマニアに住んでいて、そのときに取材したマンホールで生活するホームレスの少年たちの記録を『地下生活者たちの情景〜ルーマニア・マンホールピープルの記録』としてまとめ、第12回週刊金曜日ルポルタージュ大賞優秀賞を受賞された。現在は『ルーマニア・マンホール生活者たちの記録』として刊行されているので、都市の地下などに関心のある方にはお薦めします。ジェニファー・トス『モグラびと』ほど幻想的ではなく、チャウシェスク政権崩壊後のルーマニアの現況を知るのにもよい本だ。