「居住の権利」の確立に向けて
――よい居住環境を享受し、街づくりに参加する住民の権利――
| 1.はじめに 私たちは、板橋区加賀のマンションに居住しています。 2001年より隣に15階(45メール)の巨大マンションが建設され、今年の3月には完成しました。 このマンションの建設により、私たち近隣居住者は、日照が奪われてしまい、これまでの良好な住環境が侵されてしまいました。この巨大マンションの計画段階から、建築主(住友不動産)に計画変更を求め、住民運動を展開してきましたが、利益優先で、全<聞<耳をもたず、押し切られつつあります。 |
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これまで、橋本進さんをはじめ、建設問題反対運動に携わってこられた方々ととも、乱開発の問題についてシンポジウムを開催するなど(2001年3月19日)、話し合いを重ねてきました。
私は、こうした経験から、「居住」あるいはより広<「街づくり」といことを、私の専門の憲法や人権の視点から考えてみることにしました(あるいは考えざるをえなかったともいえます)。 2.規制緩和と住環境の破壊 90年代のバブルの崩壊後、市場万能原理が世界を席巻し、規制緩和の名の下に、様々な規制が緩められてきました。 建築関係をとってみると、住宅自体の市場原理への編入や行政によるコントロールからの離脱、あるいは容積率緩和を内容とする建築基準法等の改正などがなされ、不動産会社やゼネコンの利益追求に都合のよい「建築規制緩和」が なされてきました。本来、建設基準法などは建築主の奔放な開発に規制をかけ、日照権の確保や景観の保存など。近隣住民の住環境を守るための規制立法であったはずです。ところが、規制緩和の波は、建築基準を緩和することによって、 住民の権利を犠牲にし、不動産会社やゼネコンの利益を高めるための規制緩和とされてしまったのです。 こうして、不動産会社やゼネコンは、何ら都市計画や住民の住環境に対する権利を考慮することな<、高層の建造物やマンションの乱立をもたらしつつあるのです。 こうした乱開発ともいえる状況は、既存の地域住民の諸権利を侵害することはもとより、人口が急激に増えることにともない、学校や公共施設の不足など地域全体の生活水準を低下させる要因となります。また地域の歴史的・文化的環境や自然の景観の破壊をももたらすことになりました。 3.人間生存の基礎としての「居住の権利 この点で参考となるのが、1976年のハビタットIの「人間居住宣言」で言われている「人間居住(Human settlement)」という考え方です。そこでは、居住に関して、次のような考え方を提示しています。 「人々が人間性を保って主体的に生活を追求できる場は、家族・コミュニティー民族・国家など多様で多段階的な地域共同体であり、就業、健康、 住居、環境、福祉、教育など諸側面は地域共同体においてー体的に実現される べきであるという考え方である。」 このような「居住」の考え方は、これまでの「住宅」という概念とは異なっています。そこでは、住民の生活とともに、「居住環境」という「公共的概念」が含まれることを特色としています。こうした居住をめぐる考え方から、つぎのような権利や原則が「居住の権利」として位置づけられると思います。 第1に、生存の基盤としての「居住の権利」のもうひとつの側面として、「良い居住環境を享受する権利」ともよぶべき権利が想定されねばなりません。これまで憲法学では、憲法13条の幸福追求権と憲法25条を根拠に「環境権」が提唱されてきましたが、そこではとくに良い自然環境を享受する権利が、その内容とされてきました。 私は、この「環境権」の中に「社会環境」や「文化・歴史環境(景観)」を内包する「居住環境」を居住する権利を提唱したいと考えています。 この点で参考となるのが韓国憲法です。韓国憲法憲法35条は、生存権と環境権を保障していますが、それに加え第3項で「国は、住宅開発政策等を通じて、すべての国民が、快適な住居生活をすることができるように努力しなければならない。」と定め、快適な住居生活の保障を国に義務づけています。 第2に、以上の居住の概念からは、居住というものを公共的生活圏としての 「居住空間」として理解されます。そうした公共性に裏打ちされた居住概念の理解は、同じ<ハビタットIの「人間居住宣言」から導き出される居住をめぐる民主主義の概念に密接に結びつくものと思われます。「人間居住宣言」はつぎのように言っています。 「人間居住政策などの策定に対する住民参加は、人間の尊厳の基本をなすものである。人間居住政策の策定に際しての市民参加は、市民の権利であり義務である。参加を通じて市民は住む能力を発展させる。」 こうした「居住民主主義」とぞいうべき原則が、「居住の権利」の考え方から導き出されます。その具体的内容は、居住に関わる住民参加権です。自らが住む地域におけるマンション開発計画や公共施設の建設、あるいは公共住宅の家賃の値上げや建替えなど、あらゆる公共生活圏である「居住空間」に関わる問題に意見を表明する権利、また広<「街づくり」への参加権など、制度として認められねぱならないといえます。 このような考え方は、私たちが自らの「居住」や「街づくり」を考えるために、重要な視点であろうと思います。 「居住は人権である」という視点を、住民・立法や行政・建設業者が共有することによって、社会的にも法的にも定着させ、それぞれの立場から良い居住環境を確保するために街づくりに参加する仕組みを作っていくことが、私たちに課された課題であろうと思います。(2003年7月26日) |
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